「ここなら大丈夫」と思ってほしい。障害をお持ちの方のあらゆる不安をカバーする屋内農園『IBUKI』

「ここなら大丈夫。」

そんな風に、障がいをお持ちの方が安心して働ける場所は、はたして日本にどれくらいあるのでしょう。

特に知的障がいや精神障がいをお持ちの方は、理想的な職場に出逢うのは難しいという声をよく聞きます。
そこで立ち上がったのが、「日本の障害者雇用の新常識をつくる」といったメッセージを掲げるスタートライン。

障がいをお持ちの方向けのサテライトオフィスを展開してきたノウハウを活かし、屋内農園型障がい者雇用支援サービス「IBUKI(いぶき)」を運営しています。

きちんと管理された環境で、知的障がい・精神障がいをお持ちの方でも安心して働ける秘密とは?
スタッフの宮代さんにお話を伺いました。

目次

「失敗する」という概念自体がない、守られた環境での働き方



「IBUKI」では、常駐している管理者の指揮命令のもと、屋内農園でハーブやお花などを栽培しています。
こうして育てたものは企業に還元され、ハーブティーや受付に飾る装花などになるそう。

“農園”ということばから、気候の変化に体調を左右されたり、厳しい肉体労働があったりといったイメージを連想するかもしれません。

しかし実際にその場所に訪れてみると、そこには予想外に整った空間が広がっていました。

宮代さん:見学に来てくださった方や保護者さまに「農園という名前でも、イメージは植物工場に近いです」とお伝えして、納得していただいています。
ここは屋内型なのでエアコンで温度管理をしていて、除湿機も完備しているし、植物の成長はライトでの自動管理。植物にとっても働く人にとっても一年を通して安定した快適な環境なんです。

―確かに、「IBUKI」で働いている障がいをお持ちの方々のご様子を見ても、みなさんとっても安心して穏やかにお仕事をされていますね。

宮代さん:そうですね。うちには仕事をするうえでの「失敗」っていう概念がないんです。だから、今まで「できなかったら、失敗したらどうしよう」と不安を抱いて生きてきた方にも安心してほしくて。

―やはり、「IBUKI」へ応募をされる方の中には、そんな風に「自分にもできるのかな」といった不安を抱えている方が多いのでしょうか?

宮代さん:はい。特に知的障がいをお持ちの方は、これまでの失敗経験がトラウマになり、ささいなこともすごく不安になって落ち込んでしまうケースもあります。
だから、研修の際には「この仕事に失敗というものはないので」、安心してくださいね」ときちんとお伝えしているんです。

―では、「失敗のない仕事」の実態について、もう少し詳しく教えてください。

宮代さん:そもそも植物って、正しく手入れしてもちゃんと育つとは限らないですよね。
「IBUKI」では機械で管理をしているのであまりそういうことはないのですが、それだってすべてがちゃんと育つとは言えません。だから、万が一植物が枯れてしまったとしてもスタッフさんの失敗ではないんです。

宮代さん:もし「失敗」と定義するものがあるなら、「間違ったかもしれない」というのを管理者に伝えないこと。
例えば「種を植え忘れたかもしれない」と不安になってきたら、そのときに私たち職員に教えてもらえば、なにも問題ありません。私たちが確認すれば、「何か月経っても種が出てこない」なんてことも起こらないですしね。

作業内容と一日のスケジュール例

参考までに主な作業内容をご紹介します。

① 種まき
  どんな種類のハーブや野菜、お花をうえるのか、相談して種まきをします

② 水やり
  水と栄養をあげます

  ③ 鉢の選定、伐採
  成長スピードが遅いものや大きく育たないものについては伐採し、しっかりと成長している植物に栽培対象を絞ります。

④ 栽培物の収穫
  無事、収穫を迎えた栽培物は、加工用に収穫をします。

⑤ ドライ加工
  洗浄した葉物を、加工室に備え付けのハーブ乾燥機にセットします。

⑥ 乾燥ハーブの裁断
  ハーブ乾燥機を使用して乾燥させたハーブを、成果物として加工するために、手で細かく裁断します。

⑦ ティーバッグへの袋詰め (※ ハーブティーの場合)
  ティーバッグに袋詰めを行います。ティーバッグは、専用の熱密封の機械を用いて袋詰めします。

よく特殊なスキルや資格が必要なんでしょとお問い合わせいただくのですが、基本的には植物を育てる作業ですので難易度の高いものはありません。もちろん専任の指導員が丁寧にレクチャーいたしますのではじめて植物を扱う方も安心して作業いただけます。

次に一日の作業例をご紹介します。

ある一日のスケジュール

作業内容とスケジュールがきちんと整備されているので、安心してルーティーンワークができます。

安定した給与と福利厚生のある安心



―現在「IBUKI」で働いているのは、どんな方が多いのでしょうか?

宮代さん:「IBUKI」は横浜、戸田、舎人の3拠点があるのですが、特に横浜は20代の方が多いですね。特別支援学校を卒業してからすぐにいらっしゃる方や、ここが2社目という方がほとんどです。障がいの種別でいうと、知的と精神で半分くらいずつになっています。

―「IBUKI」にいらっしゃる方々の障がいの度合いはいかがでしょうか?

宮代さん:自閉症をお持ちで挨拶をするのが難しかったり、コミュニケーションが苦手な方も多いです。
金銭面のリアルなお話になってしまうのですが……本来、こういった方々は工賃での雇用となることが多いのですが、「IBUKI」は時給制でお迎えすることができるのもメリットです。

―金銭面については気になる方も多いと思うのですが、工賃と給与だとどれくらい違いがあるのでしょうか?

宮代さん:工賃だと、月給で2桁までいかないことが多いです。「IBUKI」の場合は企業の障がい社枠採用になるので、週5日の6時間勤務で、工賃に比べて4、5倍の月給になります。加えて、保険加入や有給取得などの福利厚生も入社した企業のものが付与されるので、障がいをお持ちのご本人だけでなく、ご家族の方にとっても安心だという声をいただいています。

―お仕事内容以外にもそうした安心要素があるのですね。

ここで、IBUKIでの雇用の仕組みについてご説明します。

お問い合わせいただいてから採用まで

お問い合わせいただきますと、スタートラインの支援員と相談しながら、その時にIBUKIで求人募集をしている企業と面接をしていただきます。
面接の合格率は約50%と、かなり高め。仮に一社落ちてしまっても、すぐに別の企業をご紹介することも可能です。

採用後の関係性

採用が決まりますと、求職者の皆さまは採用された企業と雇用契約を結んでいただくことになります。
ここで、障がいに関して様々な知識をもった支援員と一緒にミントなどのハーブやお花、野菜などを育てていきます。

サテライトオフィス運営のノウハウを活かした手厚いサポート

―面談やカウンセリングなどのサポート体制についても教えてください。

宮代さん:入社後に行う研修の中で「SAPLI(サプリ)面談」というものを実施しています。ここでは、スタートラインが今までサテライトオフィス事業のなかで培ってきたACT*のノウハウも活かしながら、これまでの障がい歴や教育歴、職歴などを詳しく伺っていきます。 これは、「今までどんな風に生きてきたのか」、「障がいとどんな風に向き合ってきたのか」などを知ることで、今後生まれそうな不安や問題を未然に防いでいくため。
業務のチーム分けの相性も判断して、皆さんに「IBUKI」のスタッフとして快適に働いていただくように工夫をしています。

※ACT…「Acceptance and commitment therapy」の略で、重い精神障がいを抱えた方々が安心して生活できるるように支援する専門的なプログラムのこと。

―「IBUKI」で働きはじめてから、障がいをお持ちの方々に変化はあったりするのでしょうか?

宮代さん:植物という媒介があるからこそ、ストレスなくコミュニケーションが取れるようになっていく傾向はすごくあります。
もともと人と話すことが苦手な方でも、植物の成長という共通の話題があるからこそ、「芽が出てきたね」とか「だいぶ育ってきたね」と関係性を作りやすいんですよね。
前職で事務作業のお仕事などが合わなかった方の中には、人間関係の窮屈さを感じていた場合も多いのですが、そのときのような緊張感はあまりないはずです。
―お仕事に対してのやりがいについてはどうでしょうか?

宮代さん:そうですね、植物がだんだん育っていことで、目に見えて成果がわかるところにやりがいを感じてくださっています。
休日明けの月曜日とかが特に楽しいんですよ。出社したら「大きくなってる!」って。特に3連休があると、「週明けがたのしみだね」と話しながら退勤するんです。

―月曜日にお仕事に来るのが楽しみな場所って、すごく素敵ですね

「安心」と一緒にはたらくのは、「IBUKI」で誰にでも叶うこと



―最後に、IBUKIに関心のある読者の方にメッセージをいただきたいです。

宮代さん:「IBUKI」と提携している企業さまは、名前をよく聞く大企業も多いです。そのせいか、求人が出ても「自分が選ばれるわけない」、「倍率が高いんじゃないか」との懸念から、かえって応募が集まらないこともあって…。
そんな風に躊躇せずに、いいなと思ってもらえたらひとまず応募してほしいです。 「働いてみたい」という気持ちがあれば、たとえご自身が不安でもできないことではないと思います。
ノルマもないので、時間に追われて作業したり周囲に焦らされることもありません。 自分のペースを守って作業すれば大丈夫。できないところはフォローし合って、頑張りすぎずにやっていきましょう!


「IBUKI」の建物に入った瞬間、室内にほんのり漂うハーブの香り。
職員さんの思いやりと管理が行き届いた明るい室内には、障がいをお持ちの方がのびのびと働ける安心の要素がたくさんありました。

「IBUKI」では、定期的に体験会も実施されています。
興味をお持ちの方は、まずこちらに参加し、実際の様子をご自身で感じてみてください。

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