精神疾患で休職しよう思ったときに知っておきたい制度と手続き【休職の申請】

精神疾患で休職しよう思ったときに知っておきたい制度と手続き

うつ病、不安障害、適応障害などの精神疾患は、特別な病気ではなく誰でも発症するかもしれない身近な病気です。このコラムをご覧の方の中にも「一度病院へ行ってみようかな」「病院で精神疾患と診断されたけど、仕事は続けるべきなのか?」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

では、精神疾患により会社を一度休んでみようと思った時、どのような手続きが必要なのでしょう。

このコラムでは、休職の手続きや休職前に確認しておきたいことなど、知っておくと少し不安を取り除くことができることをまとめました。
障害者雇用の専門家 水谷愛さん(精神保健福祉士、公認心理師)にもアドバイスをいただいています。

今後の仕事のあり方を考える方は、ぜひご覧ください。

*この記事は水谷愛さんに監修していただきました
水谷愛さん

精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、公認心理師、臨床心理士、産業カウンセラーの資格を取得。精神障害者デイケアにて5年、スクールカウンセラーとして10年、発達障害者就労支援センターにて4年の経験を積み、現在は障害者就労移行支援事業所にてサービス管理責任者として勤務しています。著書『「がんばり屋さん」のこころのトリセツ』も好評。


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目次

1.精神疾患かも、だれに相談すれば良いの?

2.精神疾患かも、どこへ行けば良いの?

3.休職をする前に知っておきたい支援

4.休職に必要な手続きと手順

5.専門家からのアドバイス

6.まとめ

1.精神疾患かも、だれに相談すれば良いの?

精神疾患と仕事についての相談窓口

仕事をしながら心の不調を感じている人、または精神疾患と診断された人にとって、今後の仕事のあり方は悩みの1つです。
けれども、職場や上司には相談しづらいと感じるかもしれません。

だれでも利用できる「仕事の悩み」や「心の病」に関する相談窓口があることをご存知ですか?
以下の支援やサービスを活用してみることで、悩みが少し解消されるかもしれませんね。

■無料電話相談「働く人の悩みホットライン」
職場や暮らし、家族のことなど働くうえでのさまざまな悩みを相談できます。

電話番号:03-5772-2183
開設時間:月曜日~土曜日 午後3時~午後8時 (祝日・年末年始除く)
相談料:無料(通話・通信にかかる料金は相談者負担)
相談時間:一人1日につき1回30分以内
運営:一般社団法人日本産業カウンセラー協会

詳しくはこちらへ
■働く人の「こころの耳電話相談」
こころの悩みや人間関係の悩み、仕事の悩みについて、労働者やその家族、企業の人事労務担当者の相談を受けています。

電話番号:0120-565-455
開設時間:月曜日・火曜日 午後5時~午後10時
土曜日・日曜日 午前10時~午後4時 (祝日・年末年始除く)
相談料:無料
運営:厚生労働省

詳しくはこちらへ

※メールで相談できる働く人の「こころの耳メール相談」もあります。
詳しくはこちらへ
相談できる場所があることは心強いですね。
ただ、どちらの相談窓口も治療の是非の判断など、医療行為にあたる内容や法律など専門知識を有する相談は行っていません。ご注意ください。

2.精神疾患かも、どこへ行けば良いの?

体の不調が体調の変化や病気によるものなのか、こころの病気なのかという判断は難しいものです。しかし、全身を診断しても原因が見つからない場合や、ご自身で思い当たる原因がある場合は、精神科を受診してみてもよいでしょう。

精神科は総合病院から個人のクリニックまでありますが、それぞれ特徴が異なります。
■大学病院の精神科
・精神科医の数が多く、教授をはじめ専門領域に通じた医師が勤務していて、複数の意見が診療に反映され、入念な診断、治療方針を得ることが可能になります。
・医療保険に算定されていない最新の検査や治療を受けることができることもあります。

■総合病院の精神科(大学病院以外)
・病棟がある場合は、比較的熟練した精神科医が2~3人と若手の医師1~2人の構成であることが多いです。
・他の診療科との連携が密なことが多く、体の病気も抱えた方が診療科間の連携のある治療を受けやすいというメリットがあります。

■精神科病院(国立、公立、私立)
・精神症状や行動の問題が重症な方の対応に長じた精神科医が複数勤務しています。
・精神科救急対応をしている病院や、設備が整った病棟に改築した病院も増えています。
・デイケアが充実している病院が多いので、ある程度の期間、リハビリテーションを行うには適していることが多いです。
・ケースワーカーや作業療法士などのコメディカルスタッフも充実しています。

■精神科診療所(メンタルクリニック)
・ある程度の経験を積んだ精神科医が一人で診療をしていることが多いです。画像診断等の検査も総合病院等と連携していることが多いので、診断に関して他の精神科医療機関に遜色はありません。
・受診が気軽にできる雰囲気になっています。
・交通の便が良い場所にあることが多いです。
・土曜日、平日夕方まで診療をしているので自分の都合に合わせた受診が出来ます。
・デイケアが充実している、心理療法士のカウンセリングが受けられるなど、クリニックごとの特徴があります。通常の外来診察はクリニックで行い、別の医療機関のデイケアを利用することも出来ます。

このように様々な特徴がある精神科医療機関に、医療保険で自由に受診できるのは海外にない優れた点です。
一方で、救急診療の体制など、医療機関同士の連携がまだまだ出来ていない地域もありますので、それぞれの医療機関、精神科医の連携をさらに良くして行くことも、精神科専門医の役割だと思っています。

引用: 公益社団法人 日本精神神経学会
各医療機関の特徴をよくご覧になり、ご自身の症状や生活スタイルに合わせて、医療機関を選んでみるのが良いようですね。

また心身症のように、精神症状に影響がなさそうに見えるけれども、実は精神の不調が体の不調として現れている方もいます。
そのような方は、精神科ではなく「心療内科」の受診を検討してもよいでしょう。

心療内科は内科の1つで、心の病気ではなく体の病気を扱っており、心身の両面から治療をしていくところが精神科と違うところです。

参考: 東京大学医学部附属病院 心療内科

3.休職をする前に知っておきたい支援

精神疾患の症状により、仕事に支障が出る、仕事をするのが辛いという時は、休職してしばらく体と心を休めた方が良い場合があります。また、医師の診断により、長期的な治療が必要で休職せざるを得ない場合もあるでしょう。

休職した場合に心配になるのが「お金のこと」。
収入がなくなるのでは?
どうやって生活していけばよいの?
お金が心配で治療ができないのでは?

そんな悩みに備えた、支援制度や手当があるのをご存知ですか?
知っていれば、今後の休職中の生活に対する不安が少し解消されるかもしれません。

休職中の支援制度、各種手当については下記のコラムで詳しく紹介しています。

企業の制度だけでなく、活用できる国や自治体の制度、各種手当があることを知っていますか?
知っていることで少し安心できる、各種手当や給付制度などについてまとめてみました。

引用: 精神疾患で休職すると収入はどうなるの?【お金の悩み】

4.休職に必要な手続きと手順

次は、休職前に確認すべきことや休職に必要な手続きを手順にそって解説します。

手順1:「年次有給休暇」や「休職制度」があるかどうかを確認する

年次有給休暇は、法定休暇といって労働基準法第39条に定められた休暇の1つです。いわゆる「有給休暇、有給、有休」といわれ、賃金が支給される休暇のことです。 年次有給休暇が付与されるには、特定の条件が必要ですが、ご自身に有給があるようでしたら休職時に取得する(利用する)のもひとつです。年次有給休暇を取得して休めば、その期間中は賃金が支給されます。

休職制度は、法定外休暇といって労働基準法や労働契約法などの法律で義務付けられている制度ではありません。つまり全ての会社が「休職制度」を設けているわけではありません。

まずは、自分が勤めている会社に「休職制度」があるかどうかを確認しましょう。 また、「休職制度」があったとしてもその内容は会社により異なります。一般的に休暇期間は3ケ月から3年とされていますが、ご自身の会社に確認しましょう。またその期間の給与の支払いについても会社により異なります。そちらもきちっと確認しておきましょう。

活用できる制度が勤めている会社にあれば、制度の利用について相談してみると良いでしょう。

手順2:医師から診断書をもらう

精神疾患の多くは心の病。会社の上司や人事にとって、本人からの訴えや外見だけでは、本当に働くことができない状態なのか判断するのは、難しいかもしれません。

そのため、休職を申請する場合には、診断書の提出を求められることが一般的で、ほとんどの会社の就業規則には明記しています。

提出を求められた場合に備えて、可能なら専門医師の診察を受け、診断書をもらっておくと良いでしょう。

手順3:上司に相談する

次は、会社サイドへの報告が必要です。
休職後の復職などを考えると、まずは自分の直属の上司に話を通しておいた方が良いかもしれませんね。

自分の症状や診察の結果などを交えながら、上司にどれぐらいの期間休職したいのか、年次有給休暇を取得するのかなど、今後について相談しましょう。今後の仕事のあり方について、アドバイスをくれる方もいるでしょう。

ただし、直属の上司には話しづらいという場合もありますよね。

そんな時は、1章でご紹介した「働く人の悩みホットライン」に相談するのも良いでしょう。
また会社によっては、内容を口外しない約束で相談ができる専門窓口を設けている場合もあります。
休職するまでの手続きの手順や方法についても、話しづらい上司への配慮も考慮しながら進めてくれるかもしれません。

手順4:産業医の診断を受ける

会社によっては、産業医の診断が必要な場合があります。産業医の診断を受ける場合は、予めもらった医師の診断書を持っていくと良いでしょう。

産業医は、従業員50人以上の会社には必ず配置することになっています。

産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられています。

引用: 日本医師会 認定産業医

手順5:人事部に伝える

休職申請の手順や提出先は、会社により異なります。
上司に伝えるだけで進められるときもありますが、休職届など会社にある所定の申請書類を、人事に提出するケースがほとんどです。

また、提出にともない人事担当者との面談を行う場合もあります。上司に話しづらいとか、職場に問題がありこころを病んでいる場合は、直接人事に相談することもできます。

ご紹介したのは、一般的な休職までの手順です。企業により申請書類や手順が異なる場合がありますので、確認しましょう。

5.専門家からのアドバイス

精神疾患に悩む方へ、専門家 水谷愛さんからのアドバイスを紹介します。

■精神疾患かもしれないと思ったときにすべきこと

精神疾患かも?と思ったときには、まず躊躇せずに精神科に行くことをおススメします。街にはたくさんクリニックがありますし、症状が軽そうに見える方でも、気軽に精神科にかかっている方も大勢います。
風邪を引いたら内科を受診するように、精神疾患かも?と思ったらぜひ精神科を受診してみてください。

症状の軽いうちに行けば、服薬やカウンセリングだけで済むかもしれません。精神疾患においても「早期発見、早期治療」はとても大事なことです。

■休職中の過ごし方について

休職をしたら、休職したことを後ろめたく思わずに、まずはしっかり心身を休めることに専念しましょう。

仕事のことはいったん脇に置いておきましょう。その中でも、なるべく生活リズムは崩さず、朝起きて夜寝ることと、気が進まなくても3食食べることを心がけてください。
生活リズムが整っていれば、復職する時にかなり楽になります。
少し調子が良い日は、軽くウォーキングなどを取り入れると良いですね。日の光をしっかり浴びることも大事なことです。

6.まとめ

精神疾患の症状を自覚することもあります。また、家族や友達など周囲の人たちから指摘されることもあるでしょう。少しでも不安を感じたら、精神科や心療内科を受診して専門医の診断を受けてみると安心できるかもしれません。そして、仕事についても休職するかどうかを医師と相談と良いでしょう。

休職により収入が無くなることが不安で、無理して仕事を続けると症状がさらに悪化することもあります。まずは一人で悩まずに相談することが大切です。そして、様々な制度を活用しながら、ご自分のペースで症状が改善されることを願っています。



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監修者

精神障害者デイケアにて5年、スクールカウンセラーとして10年、発達障害者就労支援センターにて4年の経験を積み、現在は障害者就労移行支援事業所にてサービス管理責任者として勤務しています。著書『「がんばり屋さん」のこころのトリセツ』『【HSPの会社員】が自分らしく楽に働くトリセツ』『発達障害の人が「うまく」働いて幸せに生きるトリセツ』も好評。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

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