「障害者雇用の好事例」とは障害者雇用に関する取り組みが国や都道府県から評価され、他の企業のお手本として紹介されている企業です。
「障害者雇用の好事例集」は厚生労働省が発表しており、公式サイトでは各企業の障害者に対する取り組みを具体的に知ることができます。障害の種類や業種によって様々な事例があるのも特徴です。
国や都道府県から評価されている企業であれば、自身の精神障害を隠すことなく、安心して働けるのではないでしょうか?
以下では好事例として取り上げられた、埼玉県の企業の取り組みの一部を紹介します。
2-1 障害者雇用の好事例1:精神障害がある方のキャリアアップを目指せる企業
ポラスシェアード株式会社
埼玉県越谷市にあるポラスシェアード株式会社は、平成27年2月に設立されました。株式会社ポラスの特例子会社として、住宅の設計補助業務や事務作業の代行を行っています。
従業員数37名の内32名が障害者で構成されています。具体的な業務内容は精算補助、書類の電子化、データ入力業務などのパソコンを用いた作業が中心です。
精神障害のある方が働く上で、自身の体調に合わせた働き方はとても重要なことです。障害を持つ方が多いこの職場では、特定の社員に業務が偏ったり、体調によって業務が滞らないよう、
社員同士の助け合いをルール化しました。
社員同士の助け合いのルールは以下の3つです。
・複数人による業務担当制
・ホワイトボードを活用した業務の繁閑の見える化
・ヘルプ業務制の導入
ポラスシェアード株式会社では、ひとりひとりの障害特性を考慮し担当業務を決定しています。加えて特定の社員に業務が偏らないよう、常に複数人でひとつの業務に当たるよう留意しています。
また、各社員の業務の進行状況を電子化せず、あえてホワイトボードに記すようにしています。誰が忙しくて、誰に余裕があるのかを皆が分かりやすいように視覚化することで、管理職や他の社員からの協力を得やすくするためです。
また
ヘルプ業務制を導入しました。社員同士の助け合いをしやすくするためのシステムです。ホワイトボードに「ヘルプ業務」を書きこんでおくことで、困っている社員をすぐ助けられるようにしています。
加えて、ポラスシェアード株式会社では客観的な指標を用いて社員の目標管理を行っています。
本人の能力や意欲に応じたキャリアパスを設定することで、成長しながら働くことができる環境を作っています。
それぞれの社員の目標は会社が押し付けるのではなく、定期面談を通じて本人の状況に合わせて調整していきます。こうすることで、本人のプレッシャーにならない程度にやりがいを持って働くことができます。
そして事前に
育成担当者をしっかり決めておくことで、入社する際の不安軽減にも取り組んでいます。ポラスシェアード株式会社は単純な仕事に終始するのではなく、目標ややりがいを持って働ける企業と言えるでしょう。
※ポラスシェアード株式会社では、障害のある方の採用を行っています。
詳しくは
こちらをご覧ください。
参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
2-2 障害者雇用の好事例2:障害の有無に関わらず、誰もが共に働ける企業
彩裕フーズ株式会社
彩裕フーズ株式会社は惣菜や精肉の生産、加工を主とする企業です。関東に74店舗を展開する大手スーパー「マミーマート」の子会社として、平成11年に設立されました。
全体で勤務している障害者の数は24名で、うち10名が精神障害を抱えています。10名のうち、勤続4年は2名、勤続2年は2名、勤続1年は5名となっており、
精神障害がある方の定着率は高い傾向にあります。
障害のある方の具体的な業務としてはスーパーに送るための惣菜、精肉の製造業務や工場内の清掃などを行っています。業務内容は一般の方と変わりませんが、仕事の際に用いる
マニュアルが視覚的に分かりやすいデザインになっているので、安心して作業に取り組むことができます。
彩裕フーズ株式会社では障害のある方に長く働いてもらえるよう、様々な工夫を行っています。
例えば障害に応じた勤務時間の調整です。彩裕フーズ株式会社の工場は24時間稼働ですが、障害のある方は基本的に9時~18時になっています。またその時間内でしたら午後からの勤務、短時間での勤務などと体調にあわせて
勤務時間を調整することが可能です。
その他にも
セーフティカルテの記入や
定期面談を通じて、本人が意欲を持ちながら、継続して無理なく働ける取り組みを行っています。カルテによって会社側がひとりひとりの症状を把握しているので、万一体調を崩した時でも安心です。
経験を積んだ職員には担当の業務をこなしてもらうだけではなく、新人の研修なども行ってもらい、そういった働きを賃金に反映する仕組みも検討中です。障害がある方もそうでない方も、柔軟に働いていける企業だと言えます。
※彩裕フーズ株式会社では、本社工場にて障害のある方の採用を行っています
詳しくは
こちらをご覧ください。
参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
2-3 障害者雇用の好事例3:雇用だけでなく支援機関との連携も行っている企業
株式会社エーシックスカーゴ
株式会社エーシックスカーゴは、埼玉県桶川市に本社を置く物流会社です。平成3年に設立され、全国22の事業所で4500人が働いています。社員のうち132名が障害を持っている方で、5年以上勤続している方もいらっしゃいます。
事業としては宅配センターや店舗向けに、コープ商品の発注・在庫管理、入庫・在庫保管、集品・仕分け、出庫・流通加工、輸配送業務を行っており、全国の生協の物流を支えています。
障害がある方が担当する業務は主に以下の3つです。
・生協宅配で使用するオリコン(通い箱)の選別・洗浄業務
・生協宅配向け商品仕分け業務
・一般事務
この中でも商品仕分け作業は重い物を運んだり、指示書に基づく判断力が求められるため、当初は障害のある方は担当外でした。しかし、選別・洗浄作業での働きと本人の意欲に応じてステップアップができるよう、会社内で職域拡大が行われました。
社内は自動ドアや多機能トイレなどバリアフリーが充実しており、精神障害の方だけでなく、車いすが必要な方でも担当できる業務になっています。
実際の業務では、本人の様子や希望を見て定期的な面談の実施や、社員の体調に合わせ、作業箇所の変更を行っています。
特に商品仕分け業務では、日によって体調に波がある社員がモチベーションを保てるように、現場の班長を中心に前向きな声掛けを積極的に行っています。日々できていることをほめたり、仕事に対する評価を具体的に伝えることで社員の士気を保っています。
株式会社エーシックスカーゴでは外部支援機関との連携を積極的に行っているのも特徴です。
具体的には特別支援学校からの受け入れ、トライアル雇用の推進、一般社員に向けて障害への理解を促す取り組みといった活動を行っています。
職場内にもジョブコーチや生活相談員を配置し、企業内だけでは解決できないような悩みにも向き合うことが可能です。
特にトライアル雇用の実施は、これから働き続けることに不安のある方にとって嬉しい取り組みではないでしょうか。試用期間が設けられるので、自分が働いていけそうかしっかり判断することができます。
※株式会社エーシックスカーゴでは、障害のある方の採用を行っています。
詳しくはこちらをご覧ください。
参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構