病気や障害のある方は、働き方を以下から選択することができます。
・一般企業の一般採用枠
・一般企業の障害者雇用枠
・特例子会社
今回は一般企業の障害者雇用枠、特例子会社を比較してみてみましょう。
どちらも障害があることを告げた上で採用され、働くことに変わりはありませんが、働き方に違いはあるのでしょうか?
※一般採用枠と障害者雇用枠の比較は、障害や病気別のコラムで紹介しています。
こちらを参考にしてください。
3-1.アンケートからみる、特例子会社と障害者雇用枠の違い
まず「特例子会社と一般企業の障害者雇用枠の違い」を知るために、アンケートを実施しました。結果は以下の通りになりました。
約半分の方が「特例子会社と障害者雇用の違い」として回答したことは、
配慮やサポート体制でした。その次が
仕事内容でした。
特例子会社の配慮やサポートについては、以下の意見もありました。
・生活指導員が配置されていて、障害や配慮、現状について話し合える
・管理職や指導者以外はほとんどが障害者なので働きやすく仲間意識も強い。
・障害者にふれる機会や経験が豊富。配慮や理解が深い。
配慮やサポートが手厚いことが特例子会社の特徴でもありますが、配慮の程度については「仕事だけでなく日常生活まで管理されたので、向き不向きがある」といった意見もありました。
障害の特徴や感じ方はそれぞれです。入社前に見学や体験などを通して、特例子会社の雰囲気や様子を知っておくのも良いですね。
3-2.特例子会社とその親会社の障害者雇用枠の違い
次は、一般企業の障害者雇用枠と特例子会社の働き方や待遇における違いを、アンブレに届いた口コミを比較しながらみてみましょう。
①配慮やサポート内容、職場環境を比較
■「株式会社リクルートホールディングス」と「株式会社リクルートオフィスサポート」
親会社である株式会社リクルートホールディングスは、人材紹介やメディア&ソリューションなどを行う大企業です。従業員数も多く、全国に事業所を構えています。
特例子会社である株式会社リクルートオフィスサポートは、リクルートグループ各社の総務、経理、人事など幅広い分野のサポートを行っています。
株式会社リクルートホールディングス(親会社)の障害者雇用で働いている方のコメントをみてみましょう。
なかなか理解しがたい病気や障害ですが、体調優先で勤務をしていい、と話してくださる。
(女性、1型糖尿病・適応障害)
かつての上司は、精神障害を配慮して対応してくれていたが、変わった上司は、配慮がなかった。
働いた分の給与は、もらえてなかった気がする。時間の拘束がきつく、精神的にきつかった。
(女性、その他の精神障害)
家事や育児などプライベートが忙しい方も、体調に不安がある方も自宅で無理なく働けます! どんな田舎に住んでいても、パソコンさえあればお家で仕事ができます。また個人への気遣いが素晴らしく、その日その日のスケジュールや体調に合わせて担当する仕事量を調節できます。
(女性、脊髄小脳変性症)
様々な障害や病気のある方々が、様々な部署で働いています。部署が異なれば当然上司や同僚も異なり、その対応も異なります。つまり、
会社としての考え方や取り組みに加え、自分の所属する上司や同僚の考え、病気や障害に対する理解度が、そのまま職場環境に影響します。
そして、在宅勤務している方の口コミもありましたが、最近はテレワークといった働き方も増えています。働き方の選択肢が多ければ、自分の理想とする働き方が得られる可能性も高くなります。
次に、株式会社リクルートオフィスサポート(特例子会社)で働いている方の口コミをみてみましょう。
階段や廊下に手すりがあったのは有難く、調子が悪くなったら掴むことが出来ましたし、休憩室もあったので何も不安に感じることはありませんでした。周りの人達も私の病気に理解を示してくれた人が多かったので気分良く働くことができました。
仕事が忙しい時には体調が悪くなってもなかなか言い出せる雰囲気ではなかったので、その点は残念に思っています。
(男性、尿・腎臓・膀胱に関する疾患)
特例子会社ということもあり、さまざまな障害を持った人が働いているため、自分の障害で引け目を感じることが少なく、体調管理もしやすいと感じます。またさまざまな職歴の人がいるため、初めて携わる仕事だとしても、最初は丁寧に教えてもらえるので、働きやすいと感じています。
障害に対する配慮はあるものの、1人の社会人、労働者として働けることが大前提にあるため、体調が安定しない状態だと、働き続けることが難しいとおもいます。 また自分できちんと体調管理し、不調な時に早め早めで相談するなどできないタイプの人も難しいと思います。
(男性、うつ病)
特例子会社は、障害者が働くことを前提としてできた会社であるために、施設面や仕事の仕方への配慮やサポートは手厚いようです。
ただ、1人の従業員として長く働くためには、会社の状況に任せるだけでなく、体調の自己管理や考えの自己申告ができることは必要かもしれません。
いかかでしたでしょうか?
もちろん、親会社と特例子会社では会社の規模が違いますし、ここに挙げた口コミが全てではありません。
しかし、特例子会社の方が、バリアフリーや休憩室などといった施設面や仕事のしやすさ、周りのサポート力を、期待できるのかもしれませんね。
また特例子会社は、上司の異動が一般企業に比べて少ないようです。そのため、「前の上司は理解してくれたのに、次の上司は態度が違う」というような上司の異動が、職場環境に影響を及ぼすということは少ないように思います。職場環境は安定していたほうが、落ち着いて働けますよね。
②給料などの待遇面の比較
続いては、先述の2社の給料を比較してみましょう。
【株式会社リクルートホールディングス(親会社)の給料一例】
時給985円
(身体障害2級:免疫障害、一般事務、30代、2018年入社、在宅勤務)
→詳しい口コミはこちら
【株式会社リクルートオフィスサポート(子会社)の給料一例】
時給1,000円
(精神障害3級:広汎性発達障害、事務、30代、2019年入社、在宅勤務)
→詳しい口コミはこちら
参照:アンブレに寄せられた口コミより
障害や症状が異なるので、一概に比較することはできませんが、在宅勤務という働き方や事務職、入社年齢、年代などは似ている方々のお給料です。お給料に大きな差は、みられないようです。
もちろん、待遇はお給料だけではなく、福利厚生や昇進や昇格など様々要件が含まれます。そして、会社により待遇はそれぞれ異なります。入社する前に、職場環境だけでなく待遇面などの働く条件も確認しておきたいですね。
※会社についての口コミや会社情報、求人情報は以下をご覧ください。
■株式会社リクルートオフィスサポート(子会社)
■株式会社リクルートホールディングス(親会社)
3-3.同じ業界でみる特例子会社と障害者雇用の違い
次は、
業界という切り口で特例子会社と一般企業の障害者雇用を比較してみましょう。
業界にこだわり仕事探しをする方もいらっしゃると思います。
今回は「アパレル業界」に注目してみました。
アパレル業界の障害者雇用枠と特例子会社の違い
アパレル業界の会社で、バックヤード業務を行っている方の口コミを紹介します。
まずは、アパレル企業の障害者雇用枠で働く精神障害のある方の口コミです。
【株式会社ユニクロの障害者雇用、パニック障害、強迫性障害、男性】
店長や直属の上司に自分の症状を打ち明け、シフトの調節や売場以外の後方業務や倉庫での作業にしてもらいました。売場を歩く際はできるだけ人の目につかない所を選んで歩くなど、必要最低限の行動だけを心掛けました。
売場やレジ・休憩室など、スタッフやお客様が行き交う場所は落ち着かないと思います。働く人数が多く建物が広かった為、安心できる場所が少ないところは悩みでした。
口コミの詳細はこちらから
次に、アパレルを取り扱う特例子会社で働く方の口コミです。
【株式会社アダストリア・ゼネラルサポート、双極性障害、男性】
「長く働き続けるには」を常に考えてもらえる職場で、可能な限り働きづらい環境をなくそう、なくせなくても小さくしようとしてもらえる。体調を維持する対策を提案して、できる事であれば採用してもらえもらえる。
毎日必ず朝礼と終礼を行い、睡眠状況、心身の体調、疲労度を確認してもらえる。
入荷商品の検品、商品やバックヤードの整理、入荷した商品からお客様注文商品の取り出し及び確保、品出し、数量確認、梱包を担当。
重いものを持つことはないが、立ち作業であることや脚立を使う作業など体力が必要。疲れが残ったり足が痛くなったりして体のケアをしないといけない時がある。年齢が高くなると体力的に働き続けられるか不安がある。アパレルブランドの仕事のため、セール等の繁忙期で入荷量の増加があり業務量が増える時期がある。店長によって職場の雰囲気や業務内容や業務量が異なる傾向がある。また店長経験歴の長さによっても業務内容や業務量が変わる。
口コミの詳細はこちらから
一般企業の障害者雇用は、自分の状況を詳しく伝えることで、上司に理解を得ることができ、できる範囲の仕事を任されている様子がわかります。
しかし、一般採用の方と一緒に同じ職場で働くため、行動範囲や休憩の取り方などへの工夫が必要な場合もあります。その工夫が、自分の負担を減らすことに繋がっています。
特例子会社も、周囲の配慮やサポートを得られる環境が整っています。そして特徴的なのは、会社が「長く働き続けるにはどうしたらよいか」という点を大切にしていることです。働いている人が働き続けたいと思えるよう、精神面やモチベーションにも気を配っていることがわかります。
今回の比較は、アパレル業界であるという共通点だけで、企業も働いている方の症状も異なります。しかし、一般企業の障害者雇用枠と特例子会社の違いには、以下の点があげられます。
- 一般企業の障害者雇用枠は、周りが健常者であることが多く、健常者がやっている仕事と同じような仕事を任されることもあります。また、アパレル業界には体力勝負の企業もあります。ただし、できない仕事は、上司や同僚に相談することで、健常者が肩代わりしてくれる可能性もあります。
- 特例子会社は、管理者や指導者以外がほとんど障害者という環境の中で働きます。障害者同士がチームで働くことや、親会社から切り出された仕事を行うことが多いです。重労働は多くない可能性がありますが、障害者の間で助け合ってやっていかなくてはならない部分もあります。