では、神奈川県にある障害者雇用への取り組みが前向きな企業とその内容についてみてみましょう。
2-1 精神障害者が定着できる職場環境作りに取り組む企業
精神障害のある方が働きやすいと評価されている企業の1社目は
サクラ電線工業株式会社です。
サクラ電線工業株式会社は、自動生産機器、産業用ロボット、通信設備など様々な設備やケーブル等を生産する専業メーカーです。
従業員50人のうち6名が障害のある従業員で(2017年12月現在)、製造、検査、出荷等の部署でそれぞれの職業適性等に合わせて勤務しています。
そして6名のうち、知的障害、精神障害のある従業員各1名の勤務年数は10年を超え、別の精神障害のある従業員1名も勤務年数9年目を迎えました。
勤務年数を見ても、
定着率が高い会社だということがわかります。その秘訣な何でしょうか?
サクラ電線工業株式会社ではダイバーシティの考え方の下、様々な状況にある従業員の働きやすさを優先して雇用が進められています。
障害に関しては、障害の有無で仕事の内容を決めるのではなく、その人のできる仕事を行うという考え方のもと担当業務を決めます。つまり、障害のある方も無い方も同僚として同じ仕事をするため、障害のある従業員は疎外感無く、自分の力を発揮することができます。
特に精神障害のある従業員に対しては、地域の支援機関からの紹介を受け、実習生として受け入れた時に職業適性が合っているか見極めた上で雇用しています。また、定時出勤ができなかった場合は勤務時間を変更するなど柔軟に対応しています。
このようにサクラ電線工業株式会社は、
障害の有無ではなく一人ひとりの適性に合わせた業務を担当したり、
勤務時間を柔軟に調整したりするなどの工夫がなされています。
適正にあった仕事、自分の力を発揮しやすい環境、勤務しやすい柔軟な勤務時間の調整などの様々な取り組みにより、精神障害のある方がより長く働きたいと思える職場づくりが行われています。
参照:障害者雇用事例リファレンスサービス
2-2 精神障害者が活躍できる組織作りに取り組む企業
精神障害のある方が働きやすいと評価されている企業の2社目は
株式会社ソシオネクストです。
株式会社ソシオネクストは、半導体製品の開発及び販売を行っている会社で、2015年に設立されました。精神障害者の雇用を開始したのは2017年12月とまだ日が浅いにもかかわらず、6名を雇用しています(2019年現在)。
このように精神障害者の雇用に取り組むきっかけになったのは、障害者雇用に積極的に取り組んでいた東急リバブル株式会社を見学したことでした。
東急リバブル株式会社では、精神障害のあるスタッフが自分たちで工夫や協力をしながら難易度の高い仕事をこなしています。それの様子を見て、株式会社ソシオネクストは緊急ミーティングを行い、会長の許可を得た上で人事部門から仕事を切り出し、実習と面接を経て早速4名の精神障害者を雇用しました。
精神障害者の方々が担当する業務はIR、情報印刷、書類の電子化業務、各種社員配布書類の確認、国内出張旅費精算確認、月末払い伝票の仕分け、勤怠確認、機密文書回収・シュレッダー、会議室の備品点検・清掃など多岐に渡ります。
これら多くの業務を行うために取り組んだのは、
チームで仕事を進めることです。具体的には、ルーティン業務とスポット業務を組み合わせてスケジュールを決め、ホワイトボードで進捗を確認しながらチームで進めていきます。
こうした工夫で、今まで3か月以上同じ会社で働いたことがなかった精神障害のある方も、株式会社ソシオネクストでは定着して勤務することができているそうです。
また精神障害者を受け入れるようになってから、社内では業務の見直しを行うようになり、今では従業員全体の時間外労働時間が大幅に減少するという、うれしい効果もみられました。
他の企業の取り組みを参考にしながら独自の工夫を加え、積極的に障害者雇用への取り組みを行った株式会社ソシオネクストは、障害者の活躍の場を広げただけでなく、会社全体の業務改善にもつながった成功例といえるでしょう。
参照:障害者雇用リファレンスサービス
2-3 障害者の在宅勤務に積極的に取り組んだ企業
精神障害のある方が働きやすいと評価されている企業の3社目は
株式会社スタッフサービス・ビジネスサポートです。
株式会社スタッフサービス・ビジネスサポートは人材派遣会社スタッフサービスの事務処理サービスを行う特例子会社として2000年に設立されました。
現在、精神障害者84名を含む545名の障害者を雇用し、「
チームで働く在宅勤務」を基本コンセプトとして定着促進のため積極的な取り組みを続けています。
具体的にはチームでの目標設定、Web会議システムの運用、在宅社員向けの比較的自由な勤務時間設定、保健師による定期面談などを行っています。
最初は求職者や関係機関に基本コンセプト自体がなかなか受け入れられず、採用活動は困難を極めました。しかし会社が求める人材像を理解してもらうために、募集用DVDを自主制作したり、パンフレットで周知活動をしたりした結果、青森から鹿児島まで約100名の在宅社員が活躍するようになりました。
在宅勤務は全国どこでも仕事ができますし、通勤が困難な方にとっては働きやすい環境です。しかし一方では、孤独を感じることや組織の一員であると意識しづらいなど、仕事へのモチベーションを保つことは難しいように思えます。
でも株式会社スタッフサービス・ビジネスサポートは、
在宅でありながらお互いのコミュニケーションを大切にすることで、チームで働いていることが実感でき、やりがいやモチベーションの向上につながっているようです。仕事に対する「やりがいやモチベーション」は、定着促進のための重要な要素ですね。
参照:障害者雇用リファレンスサービス