「障害者雇用の好事例」とは障害者雇用に関する取り組みが国や都道府県から評価され、他の企業のお手本として紹介されている企業です。
「障害者雇用の好事例集」は厚生労働省が発表しており、公式サイトでは各企業の障害者に対する取り組みを具体的に知ることができます。障害の種類や業種によって様々な事例があるのも特徴です。
国や都道府県から評価されている企業であれば、安心して働けるのではないでしょうか?
以下では好事例として取り上げられた、千葉県の企業の取り組みの一部を紹介します。
2-1 障害者でも働きやすい人間関係の構築に力を入れている企業
ではまず、障害のある方が働く上で最も気になることの1つ「人間関係」の構築に力を入れている会社
「センコーファッション物流株式会社」をご紹介します。
センコーファッション物流株式会社は、千葉県北西部のアパレル店や通販の物流を担当するセンコー物流ホールディングス株式会社の子会社です。
千葉県内の3カ所(市川市、船橋市、習志野市)には、ファッションロジスティクスセンター(FLC)とよばれる物流倉庫があり、衣料品の集荷や配送、検品、タグ付けといった業務を行っています。
中でも市川工場では障害者雇用を行っており、現在8名の障害者が働いています(2019年現在)。
センコーファッション物流株式会社が障害者雇用を始めたのは平成19年のことで、当初は地域の特別支援学校のみを対象に受け入れを行い、生徒を対象に
職場実習も行っていました。
職場実習の際はひとつの事業所だけでなく、様々な事業所で研修を行い、実際に就職する際は
本人が赴任する場所を選べるようにしました。赴任地を選んでもらうことで、誰と一緒に働きたいかといった環境を自分で選べるからです。
赴任地を自分で選択できることからもわかるように、センコーファッション物流株式会社は、障害者雇用を考える上で
職場の人間関係を大切にしています。
他にも、人間関係を重視する取り組みがあります。
現場のリーダーには、障害のある子供を持つ社員が採用されました。そこには「お母さん世代」の女性社員がリーダーになることで、全体を温かく見守ることができるといったサポート力を期待したからです。
また企業が仕事を押し付けるのではなく、周囲の社員の協力の元、障害のある方が自発的に努力できる環境づくりにも尽力しています。
そして、
障害のある方の指導に関しても具体的な指針を導入しているので、安心して仕事を行うことができます。その指針は以下の3つです。
- 実習を通して必要な業務スキルを習得するために、能力以上の仕事を無理に押し付けることはしないこと。
- 本人の自主性を尊重し今できる範囲の仕事を着実に身につけること。
- 現在できる以上のことを今すぐには期待しないこと。
センコーファッション物流株式会社ではこれらに基づく指導を行いながら、障害のある方が少しづつ努力できるような職場を目指しています。
最初に研修を行った特別支援学校の生徒は、今では勤続10年にもなっているそうです。その様子からも、長く働きたいと思える環境が整っていることがわかります。
精神障害のある方は、特に人間関係に対する不安も多いと思います。人間関係を重要視にするセンコーファッション物流株式会社の様々な取り組みは、その不安を和らげています。
参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
2-2 障害のある一人ひとりが戦力として活躍できる企業
2つ目は、一人ひとりの特性や適性にあった業務内容を重要視している会社
「医療法人社団知己会龍岡ケアセンター」を紹介します。
医療法人社団知己会龍岡ケアセンターは、地域の高齢者向けに長期入所、短期入所、通所リハビリテーションのサービスを主に行っている介護老人保健施設です。
170名の職員のうち障害のある方は12名で、主に清掃業務、調理補助、介護補助、事務補助などサポートする仕事を行っています。
龍岡ケアセンターの障害者雇用で採用されると、まず3日間の
職場実習を行い、12項目で構成された「
実習評価表」をひとりひとり作成します。
実習後には本人からもレポートを提出してもらうことで、本人の適性や症状を正確に図っていきます。そして採用後は本人の意思も加味した上で、適切な業務に就くことができます。
さらに入社後も、継続して働いてもらうためにきめ細やかな工夫を行っています。
- 簡単な業務でも分かりやすくマニュアル化する
- 通勤の都合に合わせた勤務時間の調整が可能
- 受診日や休憩時間など個々への配慮を行う
他にも、
上司との面談を定期的に行い相談できる場を設けています。
龍岡ケアセンターでは様々な障害のある方が、それぞれ自分にあった職種で活躍しています。中でも介護補助業務は、人手の足りない介護の現場で貴重な戦力となっています。
しかし、特に精神疾患のある方の中には、介護、福祉といった人と関わる仕事に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そういった不安を解消するためにも、龍岡ケアセンターでは入社前の実習やレポートなどを通して、自分の適性に応じた担当業務につくことを大切にしています。そして適正にあった仕事は、やりがいを持って働くことにもつながっていると言います。
施設自体の理念「人が人間らしく生活する」は、サービスの利用者だけでなく、そこで働く職員にも反映されていると言えるでしょう。現在も施設内の障害者の役割の拡大を検討しているので、さらに自分に合った仕事がみつけやすくなるかもしれませんね。
このように、医療法人社団知己会龍岡ケアセンターでは、障害の特徴や症状、一人ひとりの得手不得手などを確認し、本人とも相談しながら担当業務を決めることで、個人の力を発揮できる環境作りがなされています。また、通院などに合わせた勤務時間の調整や上司との定期的な面談により、採用後もしっかりサポートできる体制が整っています。
参照:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構