双極性障害(躁うつ病)の方の転職に向いている仕事は?358人の体験談を分析

双極性障害(躁うつ病)の方の転職に向いている仕事

双極性障害(躁うつ病)のある方は、向いている仕事や無理なく続けられる適職を求めて、転職を考えることはありませんか?

仕事は、躁とうつによる気分の波を考慮しながら選びたい。だからこそ、転職活動は慎重に進めたいものです。

今回は、働いている双極性障害(躁うつ病)のある方358人の口コミから、おすすめの仕事を業界や職種などに分けて調査・分析しました。

また、障害者雇用の専門家 水谷愛さん(精神保健福祉士、公認心理師)にもアドバイスをいただいています。

同じ双極性障害(躁うつ病)と言っても、症状や働き方により悩みはそれぞれです。ご自身の特徴と見比べながら、仕事との接し方や転職のヒントにしてみてください。

*この記事は水谷愛さんに監修していただきました
水谷愛さん

精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、公認心理師、臨床心理士、産業カウンセラーの資格を取得。精神障害者デイケアにて5年、スクールカウンセラーとして10年、発達障害者就労支援センターにて4年の経験を積み、現在は障害者就労移行支援事業所にてサービス管理責任者として勤務しています。著書『「がんばり屋さん」のこころのトリセツ』も好評。


【この記事でご紹介するデータ】
調査期間:2018年2月~2020年4月
調査方法:弊社サイトUMBREから対象となる口コミ358件を抽出
調査対象:双極性障害(躁うつ病)のある方で働いた経験のある方
※口コミに記載された内容を分類し集計したデータを使用しています。


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目次

1. 双極性障害(躁うつ病)とは

2. 双極性障害(躁うつ病)のある方の仕事満足度

3. 双極性障害(躁うつ病)の方にとって満足度が高い職場とは

4. 双極性障害(躁うつ病)の方にとって満足度が低い職場とは

5. 双極性障害(躁うつ病)の方におすすめの業界

6. 双極性障害(躁うつ病)の方におすすめの職種

7. 双極性障害(躁うつ病)の方の転職活動

8. 専門家からのアドバイス

9. まとめ

1. 双極性障害(躁うつ病)とは

双極性障害(躁うつ病)とは

双極性障害では、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。

躁状態になると、眠らなくても活発に活動する、次々にアイデアが浮かぶ、自分が偉大な人間だと感じられる、大きな買い物やギャンブルなどで散財するといったことがみられます。躁状態ではとても気分が良いので、本人は病気を自覚しづらい傾向があります。

うつ状態はうつ病と同じように死にたいほどの重苦しい気分におしつぶされそうになりますが、躁状態の時の自分に対する自己嫌悪も加わり、ますますつらい気持ちになってしまいます。

躁とうつの症状が現れる間隔は、数ヶ月だったり数年だったりと様々で、躁状態から突然うつ状態へと切り替わることもあります。

本当は双極性障害であるのに軽い躁状態に気づかず、うつ病と診断されている人も少なくありません。また、うつ状態では病院に行くのですが、躁状態のときには治療を受けないことがよくあります。

まずは、うつ状態に加え、躁状態の自分にも気づくことが大切です。そして、自分に向いている職場や仕事で、双極性障害とうまく付き合いながら働くことが必要です。
双極性障害のある方が、どのような仕事をしているのか、どのような仕事であれば働きやすいのかを、体験談をもとに見ていきましょう。

参照: みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)

2. 双極性障害(躁うつ病)のある方の仕事満足度

まずは、満足度の高い職場について、その傾向を見てみましょう。
このグラフは、口コミを寄せられた方の満足度の割合を表したものです。
双極性障害(躁うつ病)のある方の仕事満足度

※口コミの項目「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出



仕事満足度は、以下のような結果になりました。

  • とても満足している、満足している 39%
  • 満足していない、全く満足していない 33%
  • どちらでもない 28%


満足している方がやや多い傾向にあるようです。
では、仕事に対する満足度は何によって決まるのでしょうか?コメントを交えながら詳しく見てみましょう。

3. 双極性障害(躁うつ病)の方にとって満足度が高い職場とは

では、39%を占めた「満足度が高い職場」にはどんな特徴があるのでしょうか?
満足度が高いと述べた方の理由を分類して、集計をとり傾向を見ていきます。

双極性障害(躁うつ病)のある方の仕事満足度が高い理由


※口コミの項目「あなたが述べた満足度について理由を教えてください」を分類しプラス評価している内容を集計して割合を抽出。15人未満の少数回答は除く。


このグラフからは、以下のような理由が多く見られました。

    【満足度の高い職場に必要なもの】

  • 双極性障害(躁うつ病)に対して理解がある
  • 特性にあった働き方ができる
  • 人間関係が良好

では、それぞれの職場の様子を、コメントとともに紹介していきます。

3-1.満足度が高いと感じる理由①「双極性障害(躁うつ病)に対して理解がある」

双極性障害(躁うつ病)の症状は、多くの場合見ただけではわかりません。それだけに誤解されてしまうこともあるのではないでしょうか。

では、双極性障害(躁うつ病)に対して理解のある職場は、具体的にどのようなことを理解してくれるのでしょう。コメントを見てみましょう。

■双極性障害(躁うつ病)について理解のある職場

同僚たちが障害のある人の事をよく理解してくれて、急な体調の変化にも柔軟に対応し手助けもしてくれました。自分に障害があることを隠す必要もなく、差別なども全くなくとても勤めやすかったです。
小売・流通・商社系、医療・介護・福祉、男性

満足度は人それぞれ違いがあるので何とも言えないが、私が嬉しく思ったのは、社長をはじめ職場の同僚たちが病気に対して理解を示してくれていたことです。少し体調が悪いことを伝えると、「休憩室で休んでいてもいいよ」と言ってもらえたり、民間の支援も入ってはいたので経過を見に来てくれて、会社と私の間を繋ぐ支援をしてくれたりと助かりました。
メーカー・製造系、軽作業、男性

障害があることを認めてくれた上で、それ以前のキャリアを生かす仕事をさせてくれ、責任のあるポストを用意してくれたから。調子の悪い時には休みをとったり病院に行ったりすることを優先させてもらえた。
IT・通信・インターネット系、人事・経理・総務・企画

上司も後輩も私のことや病気のことを理解してくれていて、気持ちを楽にして働くことができています。また、勤務形態についても、私に合わせて考えてくれます。
IT・通信・インターネット系、エンジニア・技術職、女性

躁とうつが交互にきて、周囲を振り回したり、「仕事を辞めたい」「しんどい」「この世がなくなったら楽になるのに」と感じて同僚に話したりしたときに真剣に受け止めてくれるため、障害に対する理解があると感じています。私のために、上司が何度も勉強会を開いて職場の理解が得られるよう努力してくれました。
サービス・外食・レジャー系、医療・介護・福祉、男性



これらのコメントから、双極性障害(躁うつ病)について理解がある職場には、以下のような特徴が見られました。

  • 体調の変化に対する柔軟な対応がある(途中休憩や勤務形態について)
  • 双極性障害(躁うつ病)があることに関わらず、仕事に対する姿勢を評価してくれる
  • 双極性障害(躁うつ病)についての理解を深めるための努力をしてくれる(勉強会など)

双極性障害(躁うつ病)がある本人にしかわからないことの一つに、体調の変化があるのではないでしょうか。なぜ体調が悪くなるのか、なぜつらいとかやる気が出ないなどの気持ちになるのかは、周囲の方には理解されづらいことです。体調管理ができていない、努力不足などと勘違いされることもあります。

しかし、双極性障害(躁うつ病)があることを職場の同僚たちが認識し、双極性障害(躁うつ病)とはどのような症状で、何が必要なのかを理解してもらえれば、休憩や休みが必要だとわかっていただけるでしょう。


つまり、双極性障害(躁うつ病)を理解することが、必要な配慮やサポートへの気づきになり、働きやすく満足度の高い職場の実現につながるのではないでしょうか。

双極性障害(躁うつ病)のある方が、休憩や休みを必要とする理由はこちらを参考にしてください。
▼双極性障害(躁うつ病)のある方が仕事を続けるために 358人から学ぶ働き方の工夫

3-2.満足度が高いと感じる理由②「特性にあった働き方ができる」

双極性障害(躁うつ病)のある方は、気分が高まった日が続いたと思えば落ち込む日々が始まり、その気分や体調の波は仕事にも影響を及ぼします。

双極性障害(躁うつ病)のある方が、不安定な気分や体調とつきあいながら働くこと、つまり特性にあった働き方とは、具体的にどのような働き方なのでしょうか?コメントとともに見てみましょう。

■双極性障害の特性にあった働き方ができる職場

  ある程度自分のペースで仕事ができる。体調が悪いときに無理に出社する必要がなく、自宅で作業する事も可能。
総合商社、技術系

仕事上のことをきちんとしていれば、プライバシーに干渉されなかった。平日休みやすいので病院通いも楽でした。1つの場所にじっとしているよりも、ちょこまか時間を見つけて掃除したり、材料の仕込みをしたりしてあっという間に時間が過ぎます。
女性、外食・フード、接客

わざわざ会社に出かけなくてもいいし、面倒な人間関係に悩まされることもなく、業務の連絡はネットで済むので気が楽です。
男性、ソフトウェア・ハードウェア開発、コールセンター・オペレータ



「特性にあった働き方」として、以下のような内容が挙げられました。

  • 仕事の量や進め方が双極性障害(躁うつ病)のある方の症状にあわせて調整できる
  • 在宅勤務など、体調を優先にした形で仕事に従事できる
  • 双極性障害(躁うつ病)の症状に影響を与えやすい不安要素をできるだけ少なくした職場環境で働ける


症状を悪化させるかもしれない不安要素を避けるためにも、自分の双極性障害(躁うつ病)の特徴を把握し、どのような形で働くことが望ましいのかをピックアップしてみると良いでしょう。そして、その内容を職場の同僚たちに周知し、働きやすい環境を整えることが、満足度の高さにつながります。

3-3.満足度が高いと感じる理由③「人間関係が良好」

双極性障害(躁うつ病)のある方の中には、コミュニケーションを苦手とする方もいます。しかし、人間関係は職場の雰囲気を作る大切な要素です。では、人間関係が良好な職場は具体的にどのような様子なのか、コメントを見てみましょう。

■人間関係の良好な職場

同僚たちがいい人で、仕事に関することなら何でも丁寧に何度でも教えてくれる。
事務

同僚たちがとても優しかった。人間関係が良かったので居心地が良かった。
不動産・建設・設備系、医療・介護・福祉、女性



「人間関係の良好な職場」には、以下のような特徴が見られました。

  • 仕事でわからないことを聞ける
  • 質問したことに対して丁寧に教えてくれる
  • 接し方が優しい
  • 居心地が良い


話しやすい、聞きやすい、教えてもらいやすいなど、仕事で戸惑ったときや悩んだときに相談できる人がいて解決することができる、そんな関係は良好な人間関係と言えそうです。
そして特に「居心地が良い」という一言が、人間関係が良好なことの重要性を表しています。

職場にいる時間は長いです。だからこそ、居心地が良い環境であることは、長く働き続ける上で大切にしていきたいポイントです。


ここまで、満足度の高い職場について口コミを取り上げながら見てきましたが、理想の職場を見つけるためには、「満足度が低い職場」についても理解を深めると良いでしょう。満足度の高い職場とは反対に、避けるべき職場として学んでおきたいですね。

4. 双極性障害(躁うつ病)の方にとって満足度が低い職場とは

33%を占めた「満足度が低い職場」にはどのような特徴があるのでしょうか?
満足度が低いと述べた方の理由を分類して、集計をとりました。

双極性障害(躁うつ病)のある方の仕事満足度が低い理由


※口コミの項目「あなたが述べた満足度について理由を教えてください」を分類しマイナス評価している内容を集計して割合を抽出。14人未満の少数回答は除く。


職場に対する満足度が低い理由として、以下のような内容が挙げられました。

    【満足度の低い職場である理由】

  • 仕事量が多く期限に追われる、忙しすぎる
  • 双極性障害(躁うつ病)に対して理解がない
では、それぞれの職場の様子を、コメントとともに紹介していきます。


4-1.満足度が低いと感じる理由①「忙しすぎる」

双極性障害(躁うつ病)のある方は、心や体の状態に激しい波があるので、仕事に対するやる気やモチベーションをいつも同じように保つことが難しいかもしれません。症状に左右されてスケジュール通りに仕事を進めることができない場面も出てくるでしょう。

そのような状況で自分自身の体調の良し悪しに関係なく、期限内に仕事をこなさいといけない、仕事量が減らないという状況が続くと、心身に余裕がなくなり症状を悪化させてしまう可能性が十分に考えられます。さらに、その状況が双極性障害(躁うつ病)のせいだと自分を追い込む悪循環になることは、避けたいですね。

仕事量や忙しさでつらい思いをされた双極性障害のある方のコメントも届いています。

■忙しすぎる職場

スーパー家庭教師になって授業を無理してこなさなければならなくなり、医師から休養するように言われた。戻るともとの仕事量。事務所の人が余計なことを親御さんに話してしまうことや、難しい生徒さんを担当することになり、やめる羽目になった。
教育・教師、塾講師

セールス目標に届かないと帰れない。休みの日まで仕事の事を考えすぎて体調を悪くした。
男性、食品・化粧品、運転手

忙しすぎる。残業多すぎる。サービス残業が普通になっている。昼食時間もない。辞める人、病気になる人が多すぎる。
自動車・運輸・輸送機器、サーバー障害対応



「仕事量が多い、期限に追われる、忙しすぎる」職場で働き続けると、以下のような状況に陥ってしまうようです。

  • ドクターストップが出ない限りは働き続けられると思い込む
  • プライベートの時間がなくなる
  • 休息が取れない
  • 仕事のことばかり考えてしまい、気づくと精神的に追い込まれてしまっている

忙しくて目の前の仕事に没頭しているときは、ストレスを感じず走り続けてしまうこともあります。体に不調が出たときには、ストレスが満タンの状態ということもあり得ます。
双極性障害(躁うつ病)の症状を引き起こす要因の一つは「ストレス」とも言われていますので、症状を悪化させやすくなります。



4-2.満足度が低いと感じる理由②「双極性障害(躁うつ病)に対して理解がない」

「双極性障害(躁うつ病)に対して理解がない」も満足度が低い理由として多く挙げられました。これは、仕事に満足していると述べた方の理由「双極性障害(躁うつ病)に対して理解がある」の真逆の回答です。

双極性障害(躁うつ病)の特性や症状に理解がない職場であると、自分から業務量や業務内容の変更を相談しても伝わらないこともあります。無理して仕事をこなしていかないといけない職場環境は心身に負担がかかり、症状を悪化させてしまう可能性が高まります。

■双極性障害(躁うつ病)に対して理解のない職場

結局、障害を理解してくれる同僚が少なかったため、孤立してしまい退職しました。
女性、医療・医薬、医療関係

病気になるまでは普通に働けていたが、発病後に復帰してからは特に病人扱いをされず、逆に普通の人以上に負荷をかけられ、どんどん病状も悪くなり、入退院を繰り返すようになった。 最後は体力のない私に不向きな現場作業のみの部署に異動させられて、ひどい目に合わされ辞める他なかった。
団体・連合会・官公庁、公務員

病気を理解してもらえず、ずる休みをしているとか、やる気がないと思われていた。
女性、メーカー・製造系、事務



「双極性障害(躁うつ病)に対して理解がない」職場では、以下のような悩みが生じています。
  • 相談できない
  • 症状が悪化しても気づいてもらえない
  • 双極性障害(躁うつ病)の症状が原因であるのに、やる気がないと誤解されてしまう

双極性障害(躁うつ病)に対する理解が得られないと、仕事は長続きしませんね。

転職先を選ぶときは、無理なく働き続けられる職場環境が大切なポイントです。具体的には以下のような項目をチェックすると良いでしょう。

  • 双極性障害(躁うつ病)に対して理解が得られるか
  • 体調への気づかいがあるか
  • 業務内容や量は適正か
  • 相談できる環境があるか


しかし、これらの情報は求人票からだけでは得られにくいものです。仕事選びをする際は、就労相談や職場見学、実際に働いている方の口コミ等からできるだけ情報を収集していきましょう。

5. 双極性障害(躁うつ病)の方におすすめの業界

双極性障害のある方の適職を見つけるためには、業界や職種に注目することも大切です。まずは、双極性障害(躁うつ病)のある方が働いている業界の傾向を見てみましょう。さまざまな業界で多くの方が活躍しています。

双極性障害(躁うつ病)のある方が働いている業界

※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」で記載された企業を業界別に分類し集計して割合を抽出


グラフから、双極性障害(躁うつ病)のある方が多く働いている業界は以下のような結果になりました。

  • サービス・外食・レジャー系 約28%
  • メーカー・製造系 約18%
  • 小売・流通・商社系 約17%


では、人気のある業界の満足度は高いのでしょうか?
業界別にそれぞれの満足度を比べてみましょう。

双極性障害(躁うつ病)のある方が働いている業界別満足度グラフ


※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」と「あなたが述べた満足度について理由を教えてください」をクロス集計して割合を抽出。ただし、答えた人数が10人未満の業界は比較対象外とした。


「とても満足している」「満足している」と述べている方が多い業界は、以下の通りでした。

  • 小売・流通・商社系
  • マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系

満足度は、ほぼ同じぐらいです。
最も満足度の高い「小売・流通・商社系」は、働いている方の割合が多い第3位の業界ということもあり、満足度の高さと人気度が比例しています。

しかし、次に満足度の高い業界は「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」は、働いている方の割合は4.5%と少なく、必ずしも仕事している方が多い業界ほど満足度が高いわけではなさそうです。

では、人気度、満足度ともに高かった「小売・流通・商社系」の業界で働いている方のコメントを見てみましょう。

■小売・流通・商社

職場の同僚たちは皆さん優しく、わからないことは丁寧に教えてくれた。また、障害を公表してからは体調を気遣ってくれたことも多く無理せず働けた。残業も少なく、過度な負担がかかることもあまりなかった。
女性、小売・流通・商社系、接客

人間関係が良好なので躁うつの波があっても隠しやすい。 就業場所が自宅から極めて近いので一人になる時間が多く確保できる。また、就業時間が11時から20時過ぎと夜側にずれ込んでいるので、具合が悪く時間ぎりぎりまで逡巡していてもなんとか始業に間に合わせることができる。
小売・流通・商社系、軽作業



「小売・流通・商社系」業界は、店舗で仕事を行うこともあります。その場合、店の同僚が1つのチームとなり業務を遂行します。それゆえに職場での人間関係は重要ですが、満足度が高いと答えた方のコメントには、人間関係の良さが理由として挙げられています。

双極性障害(躁うつ病)があることをオープンにしてもクローズにしても、より良い関係が築ければ、仕事のしやすさにつながります。店舗の規模にもよりますが、アットホームな雰囲気が作りやすいのがこの業界の特徴と言えるでしょう。

なお、店舗での仕事であれば、就職する前に客として利用しながら雰囲気を感じることもできるので、情報収集の一つとしてトライしてみても良いですね。

しかし、接客を行うのか、バックヤードで働くのかによっても向き不向きがあります。これら職種については、次の章で詳しく見ていきましょう。

次に、満足度が高かった「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」の業界で働いている方のコメントを見てみましょう。

■マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系

幸いフレックスタイム制を採用している企業で出勤時間の調整ができたため、体調と相談しながら勤務できた。
男性、ゲーム、接客

フレックス勤務なので、自分でスケジュールをある程度調整できることが一番助かりました。サポート体制を整えてくれたり、通院を認めてくれたりしたのはありがたかったです。
女性、デザイン・出版・印刷、WEBディレクター



この方々のコメントにもあるように、「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」の業界で目立った特徴は、フレックス制度の活用でした。フレックス制度とは、個人にあわせて出勤時間や勤務時間を決められる制度です。

「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンターテイメント系」の業界は設立間もない会社も多くあります。そのため、フレックス制度のような個人を尊重した働き方を取り入れている企業もあり、配慮事項などの要望を受け入れられやすい業界と言えるかもしれません。

最近はどの業界の企業でも、「ワークライフバランス」「働き方改革」「SDGs」「ダイバーシティ」という言葉を聞くことが多くなってきました。社会全体で、満足度が高く働きやすい職場が求められています。これらの各企業の取り組みは、ホームページ等で公表している企業も多くなっています。転職活動の際には参考にしましょう。

他にも「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」それぞれの業界でお仕事している方の口コミがたくさん届いています。 業界別の口コミはこちらから

6. 双極性障害(躁うつ病)の方におすすめの職種

次は、双極性障害(躁うつ病)のある方が働いている職種について見てみましょう。

双極性障害(躁うつ病)のある方が働いている職種

※口コミの項目「どのような仕事をされましたか?」を集計して割合を抽出


多くの人が就いている職種は、以下のような結果になりました。

  • 販売・接客・サービス 19.0%
  • 事務 15.4% 
  • エンジニア・技術職 13.1% 


「販売・接客・サービス」がコミュニケーションを必要とする職種であるのに対し、「事務」「エンジニア・技術職」は、黙々と仕事に集中するタイプの職種です。
人と接する仕事なのか、そうでないのかというポイントを見ただけでも、特徴が分かれますね。

職種を選ぶときは、人気や給料、就労条件といった項目だけではなく、担当する仕事内容も重要です。自身がストレスだと感じる業務は、長く続けることが難しいからです。

では、ここに挙げた人気のある職種の満足度は高いのでしょうか?
それぞれの満足度を比べてみましょう。

双極性障害(躁うつ病)の方が働いている職種満足度上位


双極性障害(躁うつ病)の方が働いている職種別満足度下位

※口コミの項目「どのような仕事をされましたか?」と「あなたが述べた満足度について理由を教えてください」をクロス集計して割合を抽出。ただし、答えた人数が10人未満の職種は比較対象外とした。


「とても満足している」「満足している」と述べた方が多い職種は、以下の通りでした。

  • 清掃
  • デザイナー・クリエイティブ
「とても満足している」「満足している」と回答している方が半分以上います。
では、職種に満足している理由をコメントから具体的に見てみましょう。

■清掃、デザイナー・クリエイティブ

チームではなく1人で行う作業なので、周りを気にすることなく自分のペースで仕事ができる。
サービス・外食・レジャー系、清掃

一度会社で激しい過呼吸になってしまい迷惑をかけた時、社長が今後に備えて過呼吸の対処法を聞いてくれた。それを他の社員にも説明し「次に起こったときはこうしてやってくれ」と言ってくれた。
女性、小売・流通・商社系、デザイナー

極力電話応対を控えさせてもらっていたり、体調が悪い時には休憩スペースにて休ませていただいたりしていた。
女性、専門商社・デザイナー



「清掃」「デザイナー・クリエイティブ」という職種は、以下のような特徴が見られます。

  • 一人できる仕事
  • 自分のペースでできる仕事
  • 困ったときに相談がしやすい仕事


前章で述べた業界と職種の関係から考察してみましょう。双極性障害(躁うつ病)のある方の

・満足度が高い業界は、「小売・流通・商社」
・満足度が高い職種は、「清掃」「デザイナー・クリエイティブ」

このことからも双極性障害(躁うつ病)のある方は、華やかな業界に触れながらも自分のペースで作業できる仕事が向いているのではないでしょうか。すべての方にあてはまるわけではありませんが、興味のある方は検討してみてください。

どのような企業に転職すると良いのかを見極めるときは、給料、待遇面、勤務地、スキルアップができるなど、確認したいポイントはいくつかあります。さらに、長く続けるためには、仕事にやりがいをもてること、自分のペースで仕事ができることも必要でしょう。

双極性障害(躁うつ病)とうまく付き合いながら働いていくためには、双極性障害(躁うつ病)の特性や症状に対して理解がある企業を見つけることが大切です。
そのためにも自分の障害の特性や状態をよく理解し、どのような職種、職場環境が合っているのかを考えていきましょう。

7. 双極性障害(躁うつ病)の方の転職活動

就職活動の進め方には、いろいろな方法があります。最近はインターネットなど情報元も多く、選択肢も増えています。

皆さんは、どのように転職先を見つけているのでしょうか?
次のグラフは、双極性障害(躁うつ病)のある方が利用したサービスを表したグラフです。

双極性障害(躁うつ病)の方が利用した求人サービス

※口コミの項目「どのようにその職場を見つけましたか。就職までに利用したサービスがあれば教えてください。」に述べられた404件を集計して割合を算出


1番多かった回答はその他で34%でした。ハローワークやエージェント(人材紹介会社)を経由せず、自身で仕事を探す方が多いようです。
では、「その他」の回答の内訳をさらに見てみましょう。

双極性障害(躁うつ病)のある方が利用している求人サービスの内訳


※口コミの項目「どのようにその職場を見つけましたか。就職までに利用したサービスがあれば教えてください。」で「その他」と述べた方の詳細コメントを分類し集計して算出


「その他」のコメントの内訳で1番多かったのは、知人などからの紹介という回答でした。では、具体的にはどのような方の紹介があるのでしょうか?

以前期間雇用で務めていた障害者団体の専務が、私を気に入ってくれてその方の紹介で就職しました。
女性、医療・福祉・介護、経理

友達に紹介してもらったことがきっかけで入社しました。求人サービスは特に使用していません。
女性、サービス・外食・レジャー系、接客

求人サービスは利用せず、友人に紹介してもらい入社した。紹介入社という事で採用されやすかった。
女性、サービス・外食・レジャー系、一般事務



自分の人脈やSNSなど、利用できるものを活用して行動に移しています。
就職情報に敏感になる、相談をするなど自分から行動することは大切ですね。

自分で転職・就職活動を行う方も多いと思いますが、さまざまな支援サービスを活用して転職のチャンスをつかんでいる方もたくさんいます。

最近は、障害のある方専用の転職、就職サービスも多くあります。障害の特性を理解したアドバイザーが相談にのってくれるなど、専門窓口ならではの手厚いサービスを受けられるほか、障害者雇用枠などの求人情報も多く扱っています。

求人サービスを利用した方の口コミを紹介します。

今度は就労移行支援へ移りました。ここでは、面接の受け方や社会の仕組み、社会人としてのマナー等を教わりました。就労移行支援の繋がりで入社することになりました。
就労移行支援施設利用、男性、メーカー・製造系、軽作業

ハローワークの精神障害者雇用トータルサポーターに登録して、履歴書の書き方から面接のしかたまで訓練して頂きました。面接にも同行し、私の障害を会社側に説明してくれました。
ハローワーク・就労移行支援施設利用、男性、サービス・外食・レジャー系、警備

仕事内容や勤務地などは自分で選んだ上で、一人の担当者に就労開始までサポートして頂きました。電話で面接の練習をしてくれたおかげで、自信を持って面接に臨むことができました。
人材紹介会社利用、男性、教育、企画・立案



転職にあたり、以下のような悩みや不安はありませんか?

・自己分析をしたいけど、自分のことってよくわからない。
・気になる会社を見学してみたい。
・自分のことを面接で上手く話すのって難しい。

障害について、そして転職を熟知した専門スタッフによる適確なアドバイスがあれば、新しい視野が広がるかもしれません。
また企業との間に入ったサポートで、よりスムーズに転職活動を進めることもできます。 自分と相性の良い転職サービスを活用してみましょう。

障害者雇用枠の求人の探し方について、詳しく紹介しています。
▼ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介

8. 専門家からのアドバイス

仕事探しを考えている双極性障害の方へ、障害者雇用の専門家 水谷愛さんからのアドバイスを紹介します。

■働くことを迷っている双極性障害の方へ

双極性障害のことについて理解を得て働いている方はたくさんいます。
病気を持っているから働くことをためらっているということであれば、今回の口コミをぜひ参考にしてください。そして、双極性障害 に理解のある職場や、自分のペースで働ける職場を探してみると良いと思います。

双極性障害があるからといって働くことができないということはありません。自分の気分や体調をみながら働ける職場を探しましょう。あなたを支えてくれる支援機関もありますよ。

■これから働く双極性障害の方へ

双極性障害の方が働く場合は、自分の気分の波や体調の変化をしっかり把握し、職場に明確に伝えられるようにする必要があります。

今回の口コミを参考にしながら、自分にとって働きやすい職場を選んでいきましょう。自分の障害についてきちんと伝えられて、しっかり配慮してくれる職場もあります。自分のペースを維持できる職場を選べると、安心して働けると思います。

働き始めて不安を感じたときは、相談できる機関もありますので、上手に相談しながらお仕事をしていくと良いですね。

例えば、就労移行支援事業所や市区町村の就労支援センター等が、「職場定着支援」のサービスを行っています。職場内で相談をするのが難しい方や、第三者が間に入った方が良いケースなどでは、制度を使って相談に乗ってもらうということが可能です。

また、仕事の仕方について、どうすれば自分の症状に合わせてお仕事ができるかということを「ジョブコーチ」に入ってもらい、指導を受けることも可能です。

ただし、就労移行支援事業所がやっている「職場定着支援」については、使える方の条件がありますので、前もって調べておいた方が良いです(就労移行支援事業所や就労継続支援A型やB型を利用されていた方が対象です)。市区町村の就労支援センターは登録制です。登録すれば使うことができます。

9. まとめ

転職を考えたときは、誰もが今より自分の希望に近い会社に入りたいと思って仕事探しを始めるものです。 そして、双極性障害(躁うつ病)のある方の転職で一番大切なことは、双極性障害(躁うつ病)と上手くつきあいながら働ける会社を見つけることです。適職や理想の職場に悩んだときは、ぜひ今回のコラムをヒントにしてみてください。

ここで、今までのおさらいをします。

■双極性障害のある方にとって満足度の高い職場とは?

・必要なことは「双極性障害(躁うつ病)に対して理解のあること」「特性にあった働き方ができること」「人間関係が良好なこと」でした。

・双極性障害(躁うつ病)に対して理解のある職場では、体調の変化に対する柔軟な対応があること、双極性障害(躁うつ病)があることに関係なく仕事に対する姿勢を評価してくれること、双極性障害(躁うつ病)についての理解を深めるために努力してくれることなどの配慮が見られました。

・特性にあった働き方として、仕事の量や進め方が双極性障害(躁うつ病)の症状にあわせて調整できること、在宅勤務など体調を優先にした形で仕事に従事できること、双極性障害(躁うつ病)の症状に影響を与えやすい不安要素をできるだけ少なくした職場環境で働けることなどが挙げられました。

・人間関係が良好な職場には、仕事でわからないことを聞ける、質問したことを丁寧に教えてくれる、接し方が優しい、居心地が良いといった傾向が見られました。

■双極性障害のある方にとって満足度の低い職場とは?

・「仕事量が多く期限に追われる、忙しすぎる職場」「双極性障害(躁うつ病)に対して理解がない職場」は満足度が低い傾向にあります。

・忙しすぎる職場では、双極性障害(躁うつ病)のある方が「ドクターストップが出ない限りは働き続けられる」と思い込むことや、プライベートの時間がなくなること、休息が取れない、仕事のことばかり考えてしまい気づくと精神的に追い込まれてしまっているという状況に陥りがちです。

・双極性障害(躁うつ病)に対して理解がない職場では、相談できない、症状が悪化しても気づいてもらえない、やる気がないと誤解されるなどの悩みが生じていました。

■双極性障害(躁うつ病)のある方に向いている業界とは?

・満足度の一番高い業界は、「小売・流通・商社系」「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」でした。

・「小売・流通・商社系」は店舗で働く方も多く、同僚との人間関係が良好であることが大切なポイントとなっていました。

・「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」はフレックス制を導入している企業も多く、柔軟な働き方が望める点がメリットとして挙げられていました。

■双極性障害(躁うつ病)のある方に向いている職種とは?

・満足度の1番高い職種は、「清掃」「デザイナー・クリエイティブ」でした。

・両者には、一人でできる仕事、自分のペースでできる仕事、つらくなったときに相談しやすい仕事という共通点が見られ、その点が評価を得ていました。

■双極性障害(躁うつ病)のある方の転職活動の進め方とは?

・1番多かったのは知人の紹介や直接求人を見つけたという、独自の方法で就職先を見つけた方でした。人脈やSNSを活用する方が多いですが、ハローワーク等の専門窓口を活用する方もいました。


自分に向いている仕事や理想の職場を見つけるためには、双極性障害(躁うつ病)への理解度、職場の雰囲気や人間関係など求人票や会社情報からだけではわからない情報も重要ということがわかりました。

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理想の仕事に出会えることを応援しています。


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監修者

精神障害者デイケアにて5年、スクールカウンセラーとして10年、発達障害者就労支援センターにて4年の経験を積み、現在は障害者就労移行支援事業所にてサービス管理責任者として勤務しています。著書『「がんばり屋さん」のこころのトリセツ』『【HSPの会社員】が自分らしく楽に働くトリセツ』『発達障害の人が「うまく」働いて幸せに生きるトリセツ』も好評。

保有資格

著者

大学・大学院( 博士前期課程 修了 ) を経て、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士の資格を取得。 約10年間、障害がある方への支援活動を行っています。

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