統合失調症の方に向いている仕事は?333人の転職を調査

統合失調症の方の転職に向いている仕事

統合失調症のある方が転職を考えるとき、どのような仕事が自分に向いているのか、無理なく続けられる仕事は何か、といったことで悩む方は多いのではないでしょうか。

仕事で苦労している方がいらっしゃる一方で、自分にあった仕事を見つけることで楽しく働き続けられているという話も耳にします。

今回は333人の口コミをもとに、統合失調症のある方が考える働きやすい職場、業界、職種について調査しました。
障害者雇用の専門家 中村旬さん(社会福祉士)にもアドバイスをいただいています。

仕事の悩みはそれぞれだと思います。ご自身の特徴などと見比べながら、転職する際のヒントにしてみてください。

*この記事は中村旬さんに監修していただきました
中村旬さん

社会福祉士(ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、介護支援専門員。製薬会社にて勤務したのち社会福祉士の資格を取得、専門学校教職員を経て、協同組合にて通所介護事業所の管理者・生活相談員や福祉用具貸与事業所福祉用具専門相談員、生活困窮者支援員を経験。精神障害のある方を対象にした介護職員初任者研修を運営し、講師も務めた。現在はコミュニティ施設運営、放課後等デイサービス運営、介護職員初任者研修講師等。「月刊デイ」への寄稿や社会福祉士全国大会での発表経験あり。


【この記事でご紹介するデータ】
調査期間:2018年2月~2020年4月
調査方法:弊社サイトUMBREから対象となる口コミ333件を抽出
調査対象:統合失調症のある方で働いた経験のある方
データ集計日:2020年7月9日
※口コミに記載された内容を分類し集計したデータを使用しています。


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目次

1. 統合失調症とは

2. 統合失調症の方の職場に対する満足度

3. 統合失調症の方にとって満足度が高い職場とは

4. 統合失調症の方にとって満足度が低い職場とは

5. 統合失調症の方におすすめの業界

6. 統合失調症の方におすすめの職種

7. 統合失調症の方の転職活動の進め方

8. 専門家からのアドバイス

9. まとめ

1. 統合失調症とは

    統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。

    陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。

    その他にも認知機能の低下が共通して認められます。

    周囲から見ると、独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談してみましょう。

統合失調症の症状には、自分でもその状態に気づきにくい、また周りにも理解されづらいという傾向もあるようです。

それゆえに、仕事がうまくいかない、続かない理由がわからないという方も多いのではないでしょうか。

ここからは、同じ統合失調症を抱えながら働いている方の体験談を分析しながら、どのような仕事が向いているのかを見ていきましょう。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

2. 統合失調症の方の職場に対する満足度

まずは職場に対する満足度について、その傾向を見てみましょう。
統合失調症の人が考える仕事の満足度
※口コミの項目「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出



「とても満足している」「満足している」の合計 48%
「満足していない」「全く満足していない」の合計 28%
「どちらともいえない」24%
という集計結果になりました。

満足している方が多い傾向です。
では、職場に対する満足度は何によって決まるのでしょうか?コメントを交えながら詳しく見てみましょう。

3. 統合失調症の方にとって満足度が高い職場とは

約半数を占めた「満足度が高い職場」にはどんな特徴があるのでしょうか?
満足度が高いと述べた方の理由を分類して、集計をとりました。

統合失調症の方の職場満足度が高い理由


※口コミの項目「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」についてプラス評価している方のコメントの内容を集計して割合を抽出。5名未満の少数回答は除く。


このグラフからは以下のような傾向がわかります。

    【満足度の高い職場に必要なもの】

  • 特性にあった仕事ができる
  • 統合失調症に対して理解がある
それでは、満足度の高い職場の様子を、コメントとともに紹介していきます。

3-1.満足度が高いと感じる1番の理由は「特性にあった仕事ができる」こと



特性に合った仕事とは、統合失調症とうまく付き合いながらできる仕事ともいえますが、具体的にどのような仕事のことなのでしょうか?コメントから傾向を見てみましょう。

ぱっとみて障害とはわからないですが、従業員は私が服薬していることを把握していたので、特に睡眠薬の影響による遅刻については寛容でした。15分、30分の遅刻を毎週1回はするので、許してもらえることは、とても助かりました。
女性、チェーンストア・スーパー・コンビニ、接客

基本的には午後からの仕事なので、体調をある程度整えてから仕事に行ける。
女性、教育

仕事の空き時間は自宅に戻れる。また事務所に行くのも月1回でいいので、自分のペースで仕事ができます。
IT・通信・インターネット系、介護

一人でできる仕事は、誰かの足を引っ張ってしまう心配がありませんし、こまめに小休憩がとれます。
メーカー・製造系、軽作業

自分のペースで仕事が行える。営業アシスタントの勤務に慣れていて仕事がやりやすい。
人材、営業補佐

1人で黙々と仕事ができる。電話に出なくていい。普段は在宅勤務で、週1回だけ出社すればいいので、通勤のストレスが少ない。出社した時は、同じ課の3人の女性と昼食をとれる。
メーカー・製造系、事務



これらのコメントを見ると、特性にあった仕事とは以下のような仕事といえそうです。

    【統合失調症の特性にあった仕事とは】

  • 自分の体調にあわせて就業時間や出勤日などを柔軟に調整できる
  • 自分の体調にあわせたペースやスタイルで仕事ができる


統合失調症のある方の中には、薬の作用で朝が苦手という方もいます。また、定期的な通院や体調不良時にそなえて出勤日を調整したいという要望もあるでしょう。このような個人の特性にあわせて就業時間を調整してくれる職場は、満足度が高い傾向にあります。

さらに、周囲の視線や声が気になる方もいます。また、通院や体調不良による欠勤が、仕事へ影響しないだろうかと気になることもあるでしょう。そのような場合は、1人で行える仕事や自分のペースで進められる仕事であれば、心配を軽減することができます。

一方、仕事は大勢で行うほうが、見守ってもらえるため安心という方もいます。
あなたはどのような環境で、どのようなペースで働くことを望みますか?仕事の進め方、働き方は、仕事を続けるうえでとても大切なことですので、じっくり考えてみましょう。

3-2.満足度が高いと感じる2番目の理由は「統合失調症に対して理解がある」こと



統合失調症に対して理解があるといっても、具体的にどのように理解されていると、より働きやすく満足度が高い職場といえるのでしょうか?

今まで一般企業に勤めていたのですが、障害についてなかなか理解が得られず、変人扱いされてきました。今の施設では、私の障害をきちんと理解し、対応してくれるので大変満足です。
女性、医療・福祉・介護

障害で仕事が遅くても文句を言われない。3カ月に1度面談してくれる。
男性、医療・医薬、医療事務

自分の病状を受け止め、ありのままの自分を受け入れてくれる。
男性、団体・連合会・官公庁

病気を理解してくれていた。また、妄想が現れた時に仕える休憩室があった。
男性、食品・化粧品、清掃

障害に対して理解のある職場なので働きやすい。職場では、障害についての講演会などがあり、会社全体に障害に対して理解する姿勢がみられる。
男性、企画・立案

障害者を雇う事が初めての会社だったので、最初はギクシャクしましたが、私の障害を理解しようと勉強してくださいました。おかげで、私も働きやすかったです。
女性、旅行・ホテル



このように、統合失調症に対する理解の仕方や職場の対応は企業によって異なります。口コミをヒントに、望ましい職場の配慮や対応をまとめてみます。

    【統合失調症を理解した上であるとうれしい配慮】

  • 自分のペースで仕事ができる
  • 温かく見守ってくれる
  • 症状が現れたときも優しく支えてくれる
  • 体調不良時に利用できる休憩施設がある
  • 企業全体が統合失調症への理解を深めようと努力している


最近は、障害や病気のある方の働き方について積極的に取り組んでいる企業が増えています。アンブレでも、それぞれの企業の取り組みをわかる範囲で紹介していますので、参考にしてみてください。

障害者雇用に関する企業の取り組み

※企業ページを下の方にスクロールしていただくと出てきます。


3-3.満足度が高い職場と感じるその他の理由



満足度が高い理由には、給料が良いといったコメントをしている方も多く見られました。

統合失調症のある方は、症状によっては長期的な休職が必要になる可能性もありますので、働けるときになるべく収入を得られることが安心感につながります。

給料の遅配がなく、きちんともらえている。無理やり長時間の労働を強制されたりすることがない。
メーカー・製造系、軽作業

会長が社員を大切にして下さり、パートやアルバイトにもボーナスや残業手当を支給して下さいました。
女性、医療・医薬、軽作業

外出できる時間に制限があるが、住居費は負担してくれる。勤務中の行動は自由度が高い。副業も許可されている。
女性、食品・化粧品、清掃



また、満足度の高い理由が「その他」に分類される方のコメントも紹介します。

決して賃金が高い職場とは言えないが、5年間無職でいた自分を雇ってもらえただけでもありがたい。
男性、マスコミ・広告、運搬

私の都合で振り回してしまい、とてもご迷惑をおかけする形になってしまいました。仕事内容を変えていただきました。店長さんがとてもいい人です。具体的にこんなところが役立っていると教えてくれました。
女性、専門店



統合失調症への理解がある、特性にあった仕事ができる職場は満足度が高いことがわかりました。そしてそのような状況で働いていることに対する企業や上司、同僚への感謝の気持ちも口コミには書かれていました。

同僚同士がお互い感謝の気持ちを持ちながら働く職場であれば、居心地もよく長く働き続けられそうですね。

4. 統合失調症の方にとって満足度が低い職場とは

次は、今までとは逆に「満足度が低い職場」について見てみましょう。

28%を占めた「満足度が低い職場」には、どのような特徴があるのでしょうか?
満足度が低いとコメントした方の理由を分類して、集計をとりました。

統合失調症の方の職場満足度が低い理由


※口コミの項目「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」についてマイナス評価している方のコメントの内容を集計して割合を抽出。10名未満の少数回答は除く。


このグラフからは、以下のような傾向が見られました。

    【満足度の低い職場である理由】

  • ハラスメントや叱責を受けた
  • 給料が安い
  • その他(少数意見多数)


それでは、満足度の低い職場の様子を、コメントとともに紹介していきます。

4-1.満足度が低いと感じる理由1「ハラスメントや叱責を受けた」

ハラスメントや叱責を受ける職場で仕事を続けることは、精神面への負担が大きく高リスクな環境に身を置くことになります。このようなストレスに耐えながら働く職場では、当然満足度も低くなるでしょう。

持病がある事を伝えて入社したのに、「嘘ばかりこきやがって」とののしられて終わりました。最悪な一件でした。
女性、メーカー・製造系

店舗リーダーによるパワハラ・セクハラが横行している。ノルマ達成のために手段を選ばない為、毎日気が休まらない。契約社員に女性が多い職場で、熾烈ないじめが蔓延していた。
女性、人材、管理業務・折衝業務

1番上の上司の恫喝がひどく、他の上司や同僚がよく怒られていたので、自分も怒られている気分になりました。
男性、生命保険・損害保険、営業



統合失調症の症状を悪化させる要因にもなりかねない状況で働いている方が、多くいらっしゃることに驚きました。

統合失調症は、以下のような症状が現れるとされています。
  • 妄想や幻覚、思考障害などの陽性症状
  • やる気をなくす、コミュニケーションをとらなくなる、またはとれなくなるなどの陰性症状
  • 記憶力や集中力の低下がみられる認知機能障害
これらの症状が統合失調症によるものであることを理解されないと、誤解を招き、ひどい時はコメントにあるような言葉をあびせられることもあります。その状況が続けば、うつ病などの二次障害を発症してしまう可能性もありますので、ハラスメントや叱責のある職場は避けたいものです。

4-2.満足度が低いと感じる理由2「給料が安い」

給料が安いという理由は、満足度の高い理由「給料が高い」と逆の意見です。このことからも給料や待遇の良さは、満足度に大きく影響していることがよくわかります。

介護職員の給料を上げて欲しい。正社員にして欲しい。ボーナスが欲しい。
医療・福祉・介護

時給はいい方だと思うが、以前より就業時刻が早くなり給料が減った。
医療・福祉・介護、デイサービス

今の給料は、到底普通の生活が送れるだけの額ではない。
金融・保険系・事務

自分の体調のせいもあって、なかなか長時間働けないため、給料が少ない。病気を隠しながら仕事するのはとても辛く精神的にまいってしまいます。
専門店、軽作業

毎日半日しか働いていないので給料が安い。
女性 サービス・外食・レジャー、清掃

査定でボーナスや給料の額が決められ、どんどん減額されるようになった。
男性、通信、事務



体調によっては、時短勤務や欠勤になることもあるでしょう。その場合、働いた時間に対する給与払いではトータルの収入が少なくなることも悩みの1つになっています。

また、上記コメントには福祉業界で働いている方の口コミもありますが、福祉業界は全体的に「給与が安い」と感じる方が多い傾向にあります。 ただ、無理をして働き、症状を悪化させることは本末転倒ですね。ではどうすれば良いのでしょうか。ヒントとなる意見もありました。

一応何とか生活していけるだけのお金はもらえているし 福利厚生もしっかりしている。
男性、郵便、軽作業

休暇が非常に取りやすかった。仕事量や業務内容についても、上司だけでなくまわりの同僚みんなが気をつかってくれていた。病状により休職制度も休職からの復帰制度もしっかりしていた。
団体・連合会・官公庁、窓口業務

自宅作業を許可してもらったり、出社時には時短勤務も認めてもらったりしていた。
ソフトウェア・ハードウェア開発、システムエンジニア



福利厚生や休職制度などが整っている企業は、休みに対する補償を受けることもできます。例えば休暇制度は義務化された制度ではないものの、休職中も給与を保証する会社独自の制度として設けている会社もあります。

また体調によっては出勤するのは難しいけれど、自宅でなら仕事ができるという場合もあります。リモートワークOKな会社であれば、本来なら休みとなったかもしれない時間も就業時間にできるので、減収の心配も少し解消されるのではないでしょうか。



▼休職に関する情報はこちらでも紹介しています
・精神障害で休職しよう思ったら、知っておきたい制度と手続き
・精神障害で休職、でも心配なのはお金のこと。収入はどうなるの?



4-3.満足度が低いと感じる理由3「その他の少数意見」

職場に対する満足度が低い理由には、少数意見も多く見られました。

1ヶ月ごとの更新契約なのですが、翌月の仕事の決定が1週間前なのでもっと早く言ってほしい。
男性、コンサルティング・専門サービス系、テレコミュニケーター

4年で契約満了にさせられた。長く継続して働くことができない。
女性、ソフトウェア・ハードウェア開発、ITサポート

長い期間、欲を言えばもっと継続して働きたかった。
男性、チェーンストア・スーパー・コンビニ

自分の障害をオープンにする勇気が出ず、うちに抱えてしまう傾向がある。
女性、医療・福祉・介護

1人でのオープン就労だったので、自分から発信することが難しかった。
男性、専門店、清掃



少数意見の中でも傾向を見てみると、安定して長く働ける保障が欲しいといった意見や、統合失調症であることをオープンにするかクローズにするかといった悩みがみられました。

将来への不安を抱えたまま仕事をし続けることはストレスとなり、仕事に対する意欲の低下にもつながります。

また、就職や転職を考えるときに多くの方が悩む「オープン就労」「クローズ就労」という雇用形態も、仕事への満足度に直結するようです。

障害をオープンにするか、クローズにするか迷っている場合は、その違いによってどのような職場環境が望めるのかを考えると良いでしょう。

▼障害をオープンにするか?クローズにするか?そのヒントはこちらへ。
コラム「統合失調症の方に聞く、続けられる仕事を見つけるポイントとは」



5. 統合失調症の方におすすめの業界

次に、統合失調症のある方が働いている業界の傾向を見てみましょう。様々な業界で多くの方が活躍されています。

統合失調症の方が働いている業界

※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」で記載された企業を業界別に分類し集計して割合を抽出


グラフから、統合失調症の方が多く働いている業界は以下のような結果になりました。

  • サービス・外食・レジャー系 約32%
  • メーカー・製造系 約18%
  • 小売・流通・商社系 約17%

では、これらの業界の満足度は高いのでしょうか?
業界別に満足度を比べてみましょう。

統合失調症の方の業界別満足度


※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」と「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」に対するコメント内容をクロス集計して割合を抽出。ただし、コメントした人数が10人未満の業界は比較対象外とした。


「とても満足している」「満足している」と答えている方が多い業界は以下の通りでした。

  • マスコミ・デザイン・ゲーム系
  • コンサルティング・専門サービス系


自分の専門性を追求できる業界の満足度が、高い傾向にあります。
そして、統合失調症のある方が多く働いている人気の業界が、必ずしも満足度が高いわけではなさそうです。

では、満足度が高かった業界の特徴は何でしょうか?

私の病気に理解があり、同僚、先輩方が優しかった。
女性、マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンターテイメント系

仕事で困ったことがあるときや、難しくてひとりでできないときは、同僚のみなさんが助けてくれました。上司も「仕事は楽しいか」「困ったことはないか」と話しかけてくれました。
女性、コンサルティング・専門サービス系 軽作業

無理しすぎないように働きたいという意向を快く受け入れてもらえ、出社や退社の時間の希望も考慮してくれた。ストレスが病気によくないことを伝えると、仕事の量や納期も調整してもらえた。
女性、コンサルティング・専門サービス系、図面管理



専門性の高い業界では個人プレーの仕事が多く、自分のペースでできるため、仕事がやりやすく満足度が高いのではないかと予想しました。しかしコメントを見ると、個人のペースという利点よりも、同僚のサポートの手厚さが評価を上げています

仕事内容や体調不良などで配慮が必要になった時に、同僚によるサポート体制が整っているというコメントが、満足度の高い業界に多くみられました。

個人の能力を発揮できる場でありながら、チームワークもとれている業界といえそうです。


▼他にも「マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンタテインメント系」それぞれの業界でお仕事されている方の口コミがたくさん届いています。
ぜひこちらから業界を選びご覧ください。

6. 統合失調症の方におすすめの職種

次は、統合失調症のある方が働いている職種について見てみましょう。

統合失調症の方が働いている職種

多くの人が就いている職種は、以下のような結果になりました。

  • 販売・接客・サービス
  • 軽作業
  • 事務
販売・接客・サービスは、人とのコミュニケーションを必要とする仕事です。
軽作業や事務は、コツコツと進めるタイプの仕事です。
人と接する仕事なのか、そうでないかだけでも好みの職種は分かれるのではないでしょうか。

職種を選ぶ時は、人気や給料、就労条件だけではなく、統合失調症と付き合いながらできる業務内容や職場環境なのかといったことを考慮する必要もあります。

では、多くの方が就いている職種に対する満足度は高いのでしょうか?
職種別に満足度を比べてみましょう。

統合失調症の方が働いている職種別満足度


※口コミの項目「どのような仕事をされましたか?」と「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」に対するコメント内容をクロス集計して割合を抽出。ただし、コメントした人数が10人未満の職種は比較対象外とした。


「とても満足している」と「満足している」が占める割合の高い職種は、以下のような結果になりました。
  • 販売・接客・サービス
  • 清掃
  • 軽作業
どの職種も「とても満足している」「満足している」とコメントしている方が半数以上います。

では、各職種に満足している理由を具体的にみてみましょう。

■販売・接客・サービス

上司がとにかく優しいです。通院についても一日のお休みを頂けたり、仕事が無い時は、早くに上がらせて頂いたりしています。
女性、人材・接客

自分の症状を知っているのが専務だったので、あらゆる角度からサポートしてくれましたし、同僚の皆が些細な事でもわかってくれました。
専門店

困ったときには、アルバイトの中で主任にあたる人に相談すると解決策を提示してくれた。
専門店

社員は私が統合失調症である事を知っていました。私が発作を起こした時は、人の目に着かないように対策してくれました。休憩室でしばらく休ませてくれる仲間もいたので、助かりました。
男性、百貨店・量販店



販売・接客・サービスの職種では、上司や同僚の統合失調症に対する理解があるとのコメントが多く挙げられました。
接客業は、お客様などとのコミュニケーションで緊張する場面も多い仕事なので、精神的な負担が大きいようにみえます。しかしそれ以上に、障害への理解があり職場のサポート体制が整っている職場であれば、とても働きやすい環境になるようです。

■軽作業

辛い時、上司や同僚に相談できました。みんないい人だからです。みんな和気あいあいとしています。
総合電機、軽作業

早朝の郵便局の仕事はとても忙しくて、私一人ではスピード的にも能力的にも終わりそうにない時もありますが、必ず同僚や上司が助けてくださいました。
女性、郵便

いきなりレベルの高い仕事ではなく、簡単な仕事から始めて徐々にレベルを上げてもらえた。その間も面接などのケアがあった。
メーカー・製造系

時短で働かせてもらえる。仕事内容についても丁寧にわかりやすく説明してもらえる。環境の変化が苦手だが、同じ環境で同じ仕事をさせてもらえる。体調が悪くなると休憩や早退することができる。
女性、チェーンストア・スーパー・コンビニ

普通のアルバイト店員ならレジ打ちという作業があるが、私の場合は免除された。あまり記憶力が良くなかったので、一度に全ての内容を指示されるのではなく、小出しにしてくれた。
男性、チェーンストア・スーパー・コンビニ



軽作業はマニュアル化しやすく、決まった工程どおりに行っていくお仕事です。ルーティン化しやすいので、環境を変えずに仕事を行いたい方に向いているかもしれません。

このコメントから見られたのは、軽作業は、コツコツを行うことが好きな方に向いている業務内容だということ。慣れるまでサポートを受けながら徐々に覚えられるなど、無理のないペースで仕事が行える環境に、働きやすさの秘訣がありそうです。

■清掃

あまり人と関わらず、自分でもくもくと行う仕事です。ある程度自分のペースでできて満足しています。
IT・通信・インターネット系

職場でのストレスが少なく、距離感が息苦しくない。仕事内容も自分のペースで進められるのでプレッシャーを感じることも少ない。
不動産

民間の企業のように作業のスピードを求められないため、精神的な負担が小さい。
医療・福祉・介護



これらのコメントからは、清掃という職種は、自分のぺースで行えるという点が働きやすさにつながっていることがわかります。人との距離感も程よく、仕事に集中できる環境が整っているため、コミュニケーションが苦手な方には向いている仕事といえるでしょう。

7. 統合失調症の方の転職活動の進め方

転職活動や就職活動の進め方にはいろいろな方法があります。最近はインターネットなど情報元も多く、選択肢も増えています。

皆さんは、どのように転職先や就職先を見つけているのでしょうか?
次のグラフは、統合失調症のある方が転職活動や就職活動に利用した求人サービスの割合を表しています。

統合失調症の方が利用した求人サービス

※口コミの項目「どのようにその職場を見つけましたか。就職までに利用したサービスがあれば教えてください。(複数回答可)」にコメントした233名による310件を集計して合計人数を算出


一番多く利用されているサービスはハローワークで、約40%という結果でした。(複数記載による調査のため全体に占める割合ではなく、記載者の約40%がハローワークも使ったという結果になります)。多くの方が、ハローワークを活用していることがわかります。

利用した方のコメントから、サポート内容や利用するメリットを見てみましょう。

■ハローワーク

ハローワークの窓口の人と話して、精神障害枠で申し込んだ。病院の診断書から週20時間の仕事がよく、パート先に打診してみるようにアドバイスを受けた。
女性、コンサルティング・専門サービス系、図面管理

ハローワークの障害者雇用促進フェアにて、職務経歴を見てくれた社長に面接していただき採用となった。
男性、金属・鉄鋼、デザイナー

長く働くためには、パソコンの技術の習得が不可欠だと思います。絶対にパソコンを諦めてはいけません。それにはまず、ハローワークのパソコンの職業訓練に通うことです。
男性、医療・福祉・介護 



その他にも、利用できるサービスを活用して転職のチャンスをつかんでいる方がたくさんいます。

最近は、病気や障害のある方専用の転職、就職サービスも多くあります。障害の特性を理解しながら相談にのってくれるなど、専門窓口ならではの手厚いサービスを受けられるほか、障害者雇用枠の求人情報も多く扱っています。

以下のグラフは、前述のグラフで9.9%だった「行政サービス」の内訳を表したものです。

統合失調症が利用する政サービス

※口コミの項目「どのようにその職場を見つけましたか。就職までに利用したサービスがあれば教えてください(複数回答可)」について行政サービスを利用したと記載した方の内訳を算出


障害者雇用に関連した行政サービスには、ハローワークの他にもさまざまなサービスがあります。利用した方の声をみてみましょう。

■その他の行政サービス

障害者職業センターに通った後、現在の会社に就職しました。面接の際、障害者職業センターの担当者とハローワークの障害者担当者が同席してくださいました。障害者職業センターは厚生労働省の管轄なので、企業の人事担当者の障害者に対する印象が良かったように感じられました。
障害者職業センター利用、男性、運輸・交通

障害者就業・生活支援センターの訪問サポートを受けました。困ったことがないか詳しく聞いてくれました。
障害者就業・生活支援センター利用、男性、食品・化粧品、清掃

自分で職場を探すより、しっかりモニタリングしてくれる機関へ相談した方がいい。
地域障害者職業センター・障害者就業、生活支援センター利用、女性、団体・連合会・官公庁

私のような病気を持っている人は、ただやみくもに就職活動しても体調を崩すだけだと思います。やはり専門知識を持った障害者就業・生活支援センターに間に入ってもらい、アセスメントを受けた上で活動した方が、ストレスがかからないです。
障害者就業、生活支援センター利用、男性、外食・フード

必ず障害者就業・生活支援センターのサービスを受けた方がいいです。その理由はきちんとしたマッチングをしてもらえるからです。急いで就職するのではなく、スタッフと職場を吟味して、見学の際にはどのような配慮をすべきなのか確認する必要があります。
障害者就業、生活支援センター利用、男性、食品・化粧品、



専門のサービスを利用されている方からは、相談することで効率よく自分にあった仕事を探すことができた、ストレスなく就活や転職活動を進めることができた、という意見が多くありました。

・自己分析をしたいけど、自分のことってよくわからない。
・気になる会社を見学してみたい。
・自分のことを面接で上手く話すのって難しい。

そんな悩みや不安はありませんか?

障害、そして転職や就職を熟知した専門スタッフによる適確なアドバイスを受ければ、新しい視野が広がるかもしれません。
自分と相性の良い転職・就職サービスを活用してみましょう。

▼参考:障害者就業、生活支援センター(厚生労働省)
▼参考:平成30年度 障害者就業、生活支援センター全国一覧 334センター(厚生労働省)
▼参考:地域障害者職業センター(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)
▼参考:障害者職業能力開発校(厚生労働省)

8. 専門家からのアドバイス

仕事探しを考えている統合失調症のある方へ、障害者雇用の専門家 中村旬さんからのアドバイスを紹介します。

■働くことを迷っている統合失調症のある方へ

統合失調症は昨今、認知度が高まり決して珍しい病気ではなくなりました。精神障害者支援施設では、同じ病気を持った人が職員として支援しているという現場も見受けられます。
なかなかご自身の病気をオープンにして就職活動を行うには勇気がいるかと思いますが、理解ある職場で無理なく就労することが、継続就労に向けて必要ではないでしょうか。
マッチングする職場が見つかるように応援しております。

■これから働く統合失調症のある方へ

アンケート統計からもわかるように、職場の同僚や上司の病気に対する理解度が、継続就労に大きく左右されます。クローズ就労でそのうち病状を明らかにせざるを得ないことを心配するのであれば、ご自身の病状をオープンにし、職場の理解を求めた上で臨まれる方が、継続的に勤められることと思います。

これから働こうという意欲を大切にし、何ができるか、苦手なことは何かをしっかりと自己分析した上で、就職活動に臨まれるようにしてください。心より応援いたします。

9. まとめ

統合失調症のある方が考える満足度の高い仕事には、以下のような傾向がありました。

■統合失調症のある方の満足度が高い職場に必要なのは?

特性にあった仕事ができること、統合失調症に対しての理解がある職場です。

また「特性にあった仕事」とは、自分の体調や症状を考慮して就業時間や出勤日が調整でき、無理のない業務内容・ペースで行える仕事のことです。

仕事中の温かい見守り、症状が現れたときのサポートと休憩施設の利用、障害に対する協力が企業全体である職場は、統合失調症に理解がある職場として満足度が高い傾向にあります。

■満足度の低い職場として多く挙げられた理由は?

給料が安いことです。体調不良による欠勤や時短での就業により、思った以上に収入が得られないことも悩みとしてあげられました。福利厚生や休暇制度などが整っている企業かどうかを確認するのも、1つの解決策になります。

■統合失調症のある方の満足度が高い業界とは?

マスコミ・デザイン・ゲーム系、コンサルティング・専門サービス系という結果になりました。専門性が高く個人で行うスタイルの仕事のようにみえますが、チームとして仕事をする場面も多く、そのメンバーの障害に対する理解度やサポート体制が満足度を左右していました。

■統合失調症のある方の満足度が高い職種とは?

販売・接客・サービス、軽作業、清掃という結果になりました。販売・接客・サービスという職種は、同僚の理解やサポートがあると働きやすく、満足度が高い職種といえます。
また、軽作業や清掃という職種は、自分のペースでもくもくと行う仕事が好きな方、コミュニケーションを苦手とする方に向いている職種といえます。
自分の望む仕事が、どのようなタイプなのかについて考えをまとめると良いでしょう。

■統合失調症のある方の転職活動や就職活動の進め方は?

ハローワークを活用する人が1番多かったのですが、障害者就業・生活支援センターなどの行政サービスをうまく活用しながら、効率よく仕事を探している方もいました。

これらを見ると、自分に向いている仕事に転職するためには、求人票や会社情報からだけではわからない情報も重要ということがわかります。
専門サービスへの相談やアンブレのような職場口コミサービスもぜひ活用してみてください。

理想の仕事に出会えることを応援しています。



統合失調症のある方の悩みとその対策についてはこちらをご覧ください。
統合失調症と仕事、どこでどのように働くべき?悩みと対策を徹底紹介

口コミを交えた仕事の見つけ方をご紹介しています。
統合失調症の方に聞く、続けられる仕事を見つけるポイントとは

統合失調症のある方の仕事に関する口コミがたくさん届いています。
統合失調症のある方がお仕事、雇用をされている企業一覧
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監修者

製薬会社にて勤務したのち社会福祉士、介護支援専門員の資格を取得。専門学校教職員を経て、協同組合にて通所介護事業所の管理者・生活相談員や福祉用具貸与事業所福祉用具専門相談員、生活困窮者支援員を経験。精神障害のある方を対象にした介護職員初任者研修を運営し、講師も務めた。現在はコミュニティ施設運営、放課後等デイサービス運営、介護職員初任者研修講師等を行っている。「月刊デイ」への寄稿や社会福祉士全国大会での発表経験もあり。

保有資格

著者

大学・大学院( 博士前期課程 修了 ) を経て、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士の資格を取得。 約10年間、障害がある方への支援活動を行っています。

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