ADHDの方におすすめする仕事の選び方

ADHDの方におすすめする仕事の選び方

ADHDを含めた発達障害のある人は、できることとできないことの差が極端なこともあり、職場で誤解されることも少なくありません。ADHDの特徴について周囲の理解が得られなければ、仕事上の人間関係にも影響します。

「上司や同僚からの理解が得られず辛い」
「転職を繰り返し、どこの職場でも長く続かない」
「面接でADHDの特徴をうまく伝えられず採用されない…」
などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?

そんなときは、同じADHDの方の口コミに耳を傾けてみましょう。

この記事では、働きながらADHDと向き合っている方から寄せられた口コミ、そして筆者の経験をもとに、「仕事選びのポイント」や「おすすめの企業」をご紹介します。
また、発達障害の専門家 松好伸一先生(石巻専修大学人間学部人間教育学科 特命教授)にもアドバイスをいただいています。

これから就職や転職を考えている方のお役に少しでも立てれば幸いです。

*この記事は松好伸一先生に監修していただきました
松好伸一先生

仙台白百合女子大学 人間学部 人間発達学科 講師。保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。日本発達支援学会(監事)。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数。


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目次

1.ADHDとは

2.ADHDの方にとって理想の職場

3.ADHDの方におすすめの企業や業界

4.職場環境を確認するためのポイント

5.面接のポイント

6.ADHDの方が入社後に心がけていること

7.専門家からのアドバイス

8.最後に

1.ADHDとは

    ■ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は
    ・注意欠如・多動症
    ・注意欠如・多動性障害
    ・注意欠陥・多動性障害などと訳されます。
    「多動性・衝動性」症状がみられる神経発達症の一つと考えられています。
    ※神経発達症とは「発達障害」とほぼ同じ意味で使われる言葉

    ■多動性・衝動性 症状とは
    ①「不注意」症状
    ・忘れ物が多い
    ・課題が間にあわない
    ・うっかりミスが多い
    ②「多動性・衝動性」症状
    ・じっとしていられない
    ・落ち着かない
    ・待つのが苦手
    大人になると、もともとの傾向は変わらないものの、症状の一部(特に「多動性」)が目立たなくなって、診断の枠に入らない状態になる人もいると言われています。

    自閉スペクトラム症(社会的コミュニケーションやこだわりの問題)や限局性学習症(読み、書き、算数能力の問題)、発達性協調運動症(不器用の問題)などの、その他の神経発達症の症状が同時にみられる場合があります。

    一方で、ADHD傾向のある人の中には、普段は不注意が目立つが大事な時にものすごい集中力を発揮したり、多動性が「高い活動性、積極性」として評価されたり、衝動性が「優れた決断力、発想力」として認められたりすることもあり、その傾向がうまく生かされて社会の中で活躍している人もいると考えられています。

    ADHDは、不注意や多動性・衝動性の症状が同年代よりも強く認められ、症状の少なくとも一部は小さいころから連続して存在していたと考えられ、さらに学校や職場や社会で、その症状のためにうまくいかず困っている状態が確認された場合に診断されます。診断はこれまで児童精神科や小児科で行われてきましたが、最近一般の精神科でも診断されることが少しずつ増えてきています。

    ■子供と大人の症状の違い
    一般的には子どものときにはどちらかというと多動性が目立ち、おとなになると多動性が外面的には目立たなくなるため、相対的に不注意が目立つようになると言われています。

    ■大人のADHDの症状
    ①不注意
    ・仕事や日常生活での不注意ミスが多い
    ・仕事上で、注意の持続が困難。上の空と周囲から注意される。会議中寝てしまう。
    ・仕事の優先順位を考え、計画を立てるのが苦手。仕事を先延ばしにしたり、ためこんだりする。
    ・整理整頓が苦手。机に物を積み上げる。
    ・落とし物、失くし物、忘れものが多い。
    ・スケジュール管理ができない。約束を忘れる。遅刻が多い。

    ②多動性、衝動性
    ・いつも落ち着かない感じを与える。
    ・体を動かしていることが多い。じっとしているのが苦手。
    ・静かにすることが苦手。おしゃべりとか声がでかいとか言われる。
    ・順番待ちや交通渋滞、その他の待つことが苦手。
    ・熟慮せずに発言するまたは行動する。おせっかいや余計な一言が多い。

    ■周りの方のサポート
    ADHDの方は、「自己不全感(うまくいっていない感じ)」や「疎外感」に悩まされていることが多いため、周りの人はまずADHDについて理解し、本人が悩んでいる点について理解を示してあげる必要があります。自己不全感や疎外感を助長するような声かけは、事態をさらに悪化させる場合が多いと考えられています。

    ■ADHDの方が注意すること
    ADHD傾向を持つ人の中には、その傾向のプラスの面が評価され、世の中で活躍している人もいます。現状としてうまくいっていない人でも、適切な支援や治療を受けることにより、ADHDの特性自体は変わりませんが、学校や職場、社会への適応の度合いは向上することが多いと考えられています。

    ADHDという診断を受けた場合には、まずは主治医との治療関係が良い形で築かれることが大切です。おとなのADHDの人は、もともとの特性から通院日や通院時間を忘れてしまったり、服薬が規則的にできなかったりするので、主治医や家族とも相談して、服薬や通院が安定してできるシステムを構築していく必要があります。

    また、ADHDへの理解とそれに伴う自己理解を進めていく必要があります。医療機関や専門機関などが主催する勉強会や講演会に参加したり、当事者向けの本を読んだりすることをおすすめします。

    また、自分をサポートするネットワークを作っていくことも必要です。ADHDの人にとって、安心感のある居場所・行き場所や達成感のある仕事・課題・趣味活動が設定できることは、社会で生きていく際に最も大事なことだと思います。医療機関や地域の生活支援、就労支援事業など、社会資源をうまく活用し、自助グループ、当事者の会などに参加して、できるだけ社会の中で孤立せずに生活していくことが大切です。
参考:公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ

このように、ADHDによる特徴は人それぞれではありますが、ある程度の傾向がみられるようです。
また、仕事をするようになってからうまくいかなくて、自分の特徴に気づいた方も多いようです。

まずは自分のADHDの特徴について理解を深め、周りの方にも理解してもらうことが必要です。それは、仕事をする上でも同じです。

2.ADHDの方にとって理想の職場

ADHDの方が働きやすい職場を選ぶときに注目したいポイントは職場環境です。
仕事内容よりも待遇面よりも重要、と言えるかもしれません。
さらに、職場環境に大きく影響を与えるのは人間関係です。
まず、満足度の高い職場環境で働いているADHDの方の口コミを見ていきましょう。

「仕事をする中で自分でも気づかない部分でミスをしてしまうのでダブルチェックしてもらえるのはかなり有効でした。 嫌な顔せずに、親切にしていただいているので働いていてもっと役に立とうという気持ちにもなれたし、自信にも繋がっていたから。」

「今の職場でのおすすめポイントは業務内容よりも人間関係です。他の支店はわかりませんが、私が勤めている店舗ではたまたま優しい人が多く助かっています。」

「障害の特徴にあった業務を任せていただけるため、集中してやり甲斐をもって業務に取り組むことができるから。」

「慌ただしくやる事が終わらないこともなく周りの気遣いが沢山あり思いやりがあったので楽に仕事をすることができた。」

「上司が業務量をコントロールしてくれるので、ある程度パニックになるのは防がれている。」 「何か仕事中に困った事があったら、その都度気軽に相談して。と言ってもらえたので気持ちが凄く楽になりました。」

周囲の方による配慮がある職場、人間関係が良好な職場は、ADHDの方の職場に対する満足度を高める傾向にあります。
そのためにも、まずADHDの特徴について周囲の理解を得ることが必要なのではないでしょうか。
たとえば、周囲の方がADHDの特徴を理解できれば、仕事のミスに対しても柔軟に対応できます。そのような職場は、ADHDの方にとっても働きやすい職場になるはずです。

それは、ADHDの方の満足度が低かった企業の理由にもあらわれています。ADHDの特徴による度重なるミスに対するフォローは、理解と配慮あってのものです。

また、一日の中で体調に波がある方や、服薬している方にとっては、体調管理の面での配慮も必要です。
理解ある職場の同僚に囲まれ、安心して仕事が続けられる職場を探していきましょう!

3.ADHDの方におすすめの企業や業界

ポジティブな口コミも多く届いています。働きやすい会社の様子は気になりますね。企業名もあげながら、業界や業種などの特徴をご紹介します。

3-1.ADHDの方におすすめの企業

①障害者への理解がある

相鉄ローゼン株式会社
「慌ただしくやる事が終わらないこともなく周りの気遣いがたくさんあり思いやりがあったので楽に仕事をすることができた。忘れないように自分の特性を書いたメモを渡してくれた。」
満足度:★★★★
配慮 :★★★★★
→この企業に関する口コミはこちらへ

株式会社NTT西日本ルセント
「50分に一度休憩があるので、過集中しやすい人も強制的に集中をきることができる。人間関係がアットホームな感じ。仕事の進め方も、丁寧なOJTがあり、不明点は質問しやすい環境ができている。」
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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日本製紙北海道紙工株式会社
「パソコンでの生産管理システムを覚えきれず、ミスがとんでもなく多いため、教える同僚達が疲弊する前に、上司がその作業から外してくれた。」
満足度:★★★
配慮 :★★★★
→この企業に関する口コミはこちらへ

株式会社ピーシーデポコーポレーション
「仕事をする中で自分でも気づかない部分でミスをしてしまうのでダブルチェックしてもらえるのはかなり有効でした。 嫌な顔せずに、親切にしていただいているので働いていてもっと役に立とうという気持ちにもなれた。」
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
→この企業に関する口コミはこちらへ

3-2.ADHDの方におすすめの業界・業種

大手企業
・福利厚生が充実している企業、障害者雇用が積極的に行われている企業が多いでしょう。障害者雇用による採用が多い企業は、その経験から合理的配慮についての意識が高い傾向にあります。

IT業界
・創業まもない企業も多く、働いている人の平均年齢も比較的低いため、多様な働き方が受け入れられやすい業界の1つです。
・パソコンの扱いに慣れていれば、特に若い人は力を発揮しやすい環境が望めるでしょう。

受付業務
・マニュアルが用意されていることが多く、手順通りに仕事が行えるという点では、ADHDの方には向いている仕事の1つといえます。しかし、予想外の対応を求められることもあるため、周囲の方のサポートが必要でしょう。

接客業
・口コミではスーパーマーケット業界が高評価を得ています。
・店舗によって異なるため一概には言えませんが、理解ある上司や同僚の方々がいる環境であれば雰囲気も良く、働きやすい環境が望めるでしょう。
ADHDのある方が働いている企業が一覧で確認できます。
満足度の高い企業をチェックしてみましょう。

詳しくはこちら

4.職場環境を確認するためのポイント

ADHDの方に向いている職場であるかどうかは、どのように判断すれば良いのでしょうか。
就活や転職活動を行ったADHDの方からは、多くのアドバイスが届いています。そのアドバイスをヒントに、確かめたいポイントをまとめていきましょう。

4-1.職場見学で雰囲気を確かめよう

求人票や企業の公式サイト見るだけでは、これから働く職場の雰囲気をつかむことは難しいでしょう。そんなときに役立つのが、企業見学です。

事前に職場を見学させてくれる企業はあります。気になる企業を見つけたら、ぜひ見学のお願いをしてみましょう。体験制度や研修期間を設けている企業であれば、より職場の雰囲気を体感できるはずです。

ADHDの方が無理なく働く上で重要視したいことは「職場環境」です。また面接した場所と実際に働く場所が違うこともあります。可能な限り職場を見学しておくとよいでしょう。
実際に見学する際は、特に職場の人間関係や雰囲気をよく見て、感じることが大切です。

働いているADHDの方からは、このような声が届いています。

「体験入社を一週間続けた方がいいです。事務所と現場の温度差がわかる人にいろいろ聞いた方がよいと思います。面接時には、現場に行かせてもらえるよう頼んでください。」

「これから勤務していく上で大切なのは、仕事内容よりも人間関係だと思います。働く前に体験ができる職場であれば必ず試してみて職場環境、人間関係を見ておいた方がいいと思います。」

「自分の人生なのだから、安易に給与が高いからといった目先のことにとらわれてしまうのはよくないと思う。仕事とプライベートの比率を自分なりによく考えて納得することが、大切であろう。仕事でいっぱいになると、ストレスがたまり、次第に精神がやられてしまうので気をつけたほうがいい。」

4-2.障害者雇用枠やサポートの有無を確かめよう

求人には「一般枠」の他に「障害者雇用枠」もあり、障害者手帳を所持している方はどちらにも応募することができます。
障害者雇用枠での採用であれば、勤務時間や業務内容など配慮された環境で働ける可能性が高くなります。配慮を受けたほうが働きやすい場合は、障害者雇用枠で入社することも検討すると良いでしょう。

一般枠で入社した場合にも、事前にADHDであることをオープンし、スムーズに働くために必要な配慮事項を相談することで、制度や特別なサポートを受けられる場合もあります。
ただし、障害があることを前提に入社する障害者雇用枠とは違い、一般枠で募集している企業には、ADHDについての理解が進んでいないところもあります。

自分の特徴や性格をよく分析しながら、理想の働き方に近い入社方法を選ぶと良いでしょう。

「同じ障害名がついていても、その人によって苦手な作業の種類は違ってきます。それを理解して、障害者というよりも個人として見てくれて、苦手をサポートしてくれる人がいる職場を探せたらいいのではないかと思います。」

「一般枠で入社する場合は障害をクローズにしないといけないので、できること、できないことを自分で把握していないといけません。そして、できないことはどうやって克服していくのか考えないといけません。自分が苦手なこともやらざるを得ず、そこでストレスを感じて休んでしまうかもしれません。その場合は無理せず休み次の日にきちんと挨拶をすれば大丈夫です。」

ADHDのといっても特性の出方には様々なパターンがあります。あなた自身の個性を尊重してもらえる職場が見つかるといいですね。

4-3.就活や転職活動をサポートするサービスを活用しよう

ADHDの特徴により、働くことに不安を覚えていませんか? 就活や転職活動に不安を感じたら、相談可能な専門サービスを活用しましょう。

様々なサービスがありますが、一例を紹介します。
  • ハローワーク
  • 職業訓練が行える就労移行支援施設
  • 障害や病気のある方を専門とする人材紹介会社
このようなサービスでは、面接や履歴書の書き方についてのアドバイスや、おすすめする企業の紹介、入社後の相談など多様なサポートが受けられます。

ひとりで行う仕事探しとは違い、専門のアドバイザーに相談できるので、不安を和らげつつ活動を進めることができます。

「就労移行支援施設を利用しました。職場や施設を訪問し、相談をしてもらうこともあった。」

「ハローワークで探しました。職業訓練にてヘルパー2級を取得しました。」

「就労移行支援施設を利用した。利用するきっかけは、集団プログラムに参加するか否かは個人の自由(自分ひとりで何か学習したりしてOK)、Adobeのイラストレーターやフォトショップが利用できるPCがあるの2点。」

障害や病気のある方専用の人材紹介会社は増えています。手厚いサポートが受けられ、扱っている求人情報も多く、企業の意向も汲んだ上で紹介しているので、さまざまな情報が得られます。
ただし、人材紹介会社も1つの企業。サポート内容や職員による対応の差も違いますので、自分の考えを理解してくれるサービスを利用しましょう。


※他にもADHDの方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
→ADHDの方の口コミはこちらへ

5.面接のポイント

5-1.面接で伝えること

ADHDのある方々からの口コミで面接のアドバイスとして多くあがったのは、「ADHDであることとその特徴、そして、できることとできないことを明確に伝えておく」ということです。

ADHDであることを隠していると、誤解を生じることで職場の人間関係に悪影響を及ぼすことも考えられます。

たとえば、ADHDの特性により仕事で失敗してしまった場合や同じミスを繰り返してしまった場合、周囲の方がその理由を知らないことで自分の信用を失い、辛い思いをするかもしれません。

そして、あらかじめ自分が得意なことと苦手なことを明確に伝えておけば、企業側も担当業務やサポートの仕方を考えやすくなります。疾患名や特徴をわかりやすく伝えるために、診断書を持参するのもよいでしょう。無理のない範囲で働きやすい環境を整える努力をしていきましょう。

次の口コミも参考になります。

「自分がうまくできない事について、相手も理解ができるようになる説明文を考えておくと良いです。理由がわかる場合とわからない場合でサポート手段も変わってきます。」

「自分の特性、得意なことと苦手なこと、フォローが必要なことなどを整理し、就職する相手に伝えられるようにすることが大切です。障害があるのであれば、できれば障害名や医師の見解を伝え、あわせて上記の点を伝えることをおすすめします。伝えることで相手がどのように答えるかを、あらかじめ確認できるからですし、相手も理解して関わっていくことができるからです。」

「自分は本当に何ができるのかを徹底して見つけて、アピールすることはもちろん大切です。」

「それなりの資格があれば有利です。 あと、自分の障害をきちんと説明できる必要はありますので意識してください。」

「面接官に職場での配慮が必要なことをしっかり伝え、入社前にサポート手段を話し合っておいた方が業務に入りやすいと思います。」

ADHDであることを明らかにすることで不採用になるかもしれない、という不安もあるでしょう。しかし、障害があることで不採用にする企業は、たとえ入社したとしても、配慮ある職場環境を望むことは難しいのではないでしょうか。つまり、長く働ける会社には向いていないということです。

お互いが気持ち良く仕事をするためにも、できること・できないことを正直に打ち明けてみましょう。できないことを伝えるのは勇気がいるかもしれません。しかし、中には協力を得ることでできることはありませんか?「できない」のではなく「〇〇があればできる」といった伝え方を考えてみましょう。
そのポジティブな姿勢こそが、この会社に入りたい!という熱意として伝わり、好印象を与えるのではないでしょうか。

5-2.面接はあなたと企業のマッチングの場

面接は、企業があなたを知るためだけに行うのではありません。あなたも企業を見定める場でもあります。

企業が求める人材と、あなたが企業に求めるものがマッチングしなければ、入社後は理想とのギャップに悩むことになります。

疑問や不安があれば、面接時にしっかりと確認しましょう。質問事項は事前にまとめておくことをおすすめします。メモを見ながら質問してもかまいません。可能であれば忘れないように回答を記載させてもらいましょう。

口コミを参考に、ADHDの方が面接で確認すべき内容を見てみましょう。

「障害者枠の有無をきちんと調べるのは勿論のこと、どんな配慮がされているかを、細かく尋ねたほうが良い。 その時点で、(1)返事に具体性が無い、(2)対応がなおざりになる等、ちょっとでもひっかかる点があったら、そこの企業は選ばないほうが良いと思う。」

「障害特性の理解者がいるか、仕事内容が配慮されているか、年収、福利厚生がしっかりしているか、などのポイントが大きいですね。これがある企業だと、とても良い企業だと思います。」

「1番大切だと感じたことは周囲の人柄ですね。面接前にどうにかして職場の方に見つからないように話す機会を作っておくことがいいと思います。自分の障害を知ってもらえるかどうかなどを確認しておいた方がいいです。」

多くのADHDの方が「障害者への理解や配慮があるのか」が重要だとと考えています。人間関係にも大きく影響してくるポイントです。

働きづらい職場環境で無理して働くことは、精神障害など二次障害へのリスクにもつながります。無理せず働き続けられる職場をじっくり探していきましょう。

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6.ADHDの方が入社後に心がけていること

採用され入社が決まったとします。しかしまだこれはスタート地点です。これからこの会社で長く働き続けられるかどうかも気になりますね。

職場環境がよく、配慮やサポートが受けられるとしても、できるだけ失敗やミスは少なくしたいものです。そのためにもADHDの方ならではの工夫や努力も必要です。では、どのようなことを心がけると良いのでしょうか?

「口答指示は必ず復唱し、メモをとるようにしています。また、わからないことがあれば放置せずに他人に聞くようにしています。」

「大事なことは、携帯電話のアラームで知らせるようにしています。できるだけシンプルに物事を考え、行動しています。失敗を良い経験と考えるように心がけています。わからないことは周囲に相談するようにしています。」

「できるだけ慌てずに作業するようにしています。 先を急がず、時間がかかっても丁寧な作業をするようにしています。 うまく伝えられないことは、他の方に伝えていただくようにしています。 仕事で困ったときはすぐに福祉の専門職の上司に相談して、安心して仕事ができるように支援してもらっています。」

「こまめな休憩を取ることを許可してもらえたので、 少し早めの休憩を心がけています。」

「なるべくマイペースを守って仕事をしている。残業せずに争いなく帰るようにしています。」

「今は比較的他人との関わりが少ない画家をしている。販売は、画廊を借りて個展、グループ展、またインターネットを通じて行っている。」

忘れないための工夫、わからないことへの確認、早めの休憩など、ADHDの特徴による悩みをカバーする対策がみられます。

そのためにも、自分の苦手なことや傾向を把握しておくことも必要です。

例えば、忘れやすいのにメモを取る習慣がない人は、まずはメモをとることを意識してみましょう。
しかし、書いたメモを無くしてしまうという人もいるでしょう。またメモを貼っておいても、その光景に慣れてしまって気づかなくなってしまう人もいるでしょう。

そのような場合は、メモを置く位置や貼る場所を決める。メモしたことを忘れないように周囲の方に1日1回声をかけてもらう、というのも1つの方法です。

上記の画家のコメントのように、就職せずに特別なスキルを活かして収入を得る方も多くいます。現在は働き方も多様化しているため、フリーランスという働き方も選択肢の1つです。

どのような働き方でも、自分の特徴を理解し苦手なことを少しでも解決に導くための心がけに気づく、そして取り組むことは必要のようです。

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7.専門家からのアドバイス

仕事探しを考えているADHDの方へ、発達障害の専門家 松好伸一先生からのアドバイスを紹介します。

■働くことを迷っているADHDの方へ

ADHDの方は人と関わるとき、自己肯定感の低さから「自分なんかが手伝うなんてむしろ迷惑」「私に声をかけられても嫌だろう」と自らやめてしまうことがあります。コミュニケーションがうまくいかない原因の多くはそこにあります。

また、相手の気持ちを汲むことの難しさはASDと同じですが、「この場合どう対応すればいよいのか」「選択肢をたくさん思いつきすぎて選べない」と思う点が大きく異なります(ASDは「どうすればいいか」自体がわからない方や、何故そうしなければならないのか理解できない方も多い)。

自己肯定感を上げることは難しいですが、自分から声をかけることで改善することも多くあります。また、自分のミスを報告するたびに叱られてしまうと、報告しなくなりがちです。しかし、それは好ましくありません。報告しないことで、仕事の失敗などがより増えてしまうからです。リカバリーが大変にならないためにも、必ず自分のミスなどはきちんと報告することが大切です。

■これから働くADHDAの方へ

自己肯定感が低い方は「役に立たなきゃ」という思いを強く持っています。そのため「早く!」という思いにもかられやすく、仕事の精度が下がることがあります。

また「役に立つ」ことを目指すあまり、「自己有用感」が強くなる傾向もあります。自己肯定感と似た感覚ですが「役に立たないとダメ」というマイナス要素も持ちあわせているため、バーンアウトにつながってしまうこともあります。自己有用感(役に立たなきゃダメ、役に立っているから認められている)ではなく、自己肯定感(自分自身の存在そのものを認めていく)を高めることが大切です。

8.最後に

ADHDの方が、就活や転職活動で気をつけるべき職場の選びのポイントは、一般的な就職活動とは異なります。
最近は、発達障害者への理解度も少しずつ広がり、サポート体制の整った企業も増えているようです。

理解ある職場に出会うためには、まず、自分のADHDの特徴を理解しましょう。そして、できること、できないこと、あるとうれしい配慮事項は伝えましょう。また企業の制度やサポートの有無など知りたい事は、あらかじめまとめておきましょう。

ADHDの方でもできる仕事、向いている仕事、特徴を活かせる仕事はあります。その仕事が、ADHDの特徴について理解のある職場で行えることが一番の理想です。

また、精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳) を取得していれば、障害者雇用枠への応募も可能です。障害年金など利用できる社会保障制度もありますので、知っておくと良いでしょう。

1人で行う就職活動が難しいと感じたら、障害や病気のある方専門の求人サービスを利用してみるのも1つの方法です。アドバイザーと一緒に、理想の職場環境や仕事内容をじっくり検討しましょう。

もし、あなたが今の職場や仕事に満足していないのであれば、一度立ち止まってみましょう。改善が望めないのであれば、環境を変えることも必要です。

ADHDであるあなたが、ありのままで働ける理想の職場に出会えることを、心から願っています。


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障害者枠(オープン)か一般枠(クローズ)か?メリットとデメリットを解説


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ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介


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監修者

保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数で、2022年3月29日「幼児教育方法論」(共著・一藝社)を刊行。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

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