パニック障害の方の転職、330人の実体験を調査、向いている仕事は?

パニック障害の方の転職、330人の実体験を調査、向いている仕事とは

パニック障害は、日常生活の中で急に動悸やめまい、吐き気などの症状に襲われる精神疾患であり、転職の際にも慎重に配慮しなければなりません。

転職がうまくいっても、仕事中に発作が起きて職場に迷惑をかけてしまうことや、最悪の場合、仕事を継続できなくなることも考えられます。

人によっては広場恐怖や予期不安などの心配があり、なかなか転職に踏み出せない方もいるのではないでしょうか。

今回はパニック障害を抱える330人の口コミから、働きやすい職場や業界、職種などを考察してみます。
障害者雇用の専門家ジョジョさん(社会福祉士、プロコーチ)にもアドバイスをいただいています。

パニック障害を抱えている方は、少しでもご自身に合った環境で働けるように本記事を参考にしてみてください。

*この記事はジョジョさんに監修していただきました
ジョジョさん

産業カウンセラー、社会福祉士(ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、プロコーチの資格を持ち、就労継続A、B型にて支援員として、身体障害、精神障害、知的障害のある方への支援を行う。 自身も悩みを抱えギャンブル依存症になった経験から、「悩みから夢まで話せる友達が見つかる東京の居場所”ココトモハウス“と出会い、現在はその管理人として多くの方から信頼を寄せている。生きづらさを抱える人達を社会と繋げて、豊かな社会を作ることがミッション。



【この記事でご紹介するデータ】
調査期間:2018年2月~2020年4月
調査方法:弊社サイトUMBREから対象となる口コミを抽出
調査対象:働いた経験のあるパニック障害の方の口コミ330件
データ集計日:2020年8月10日
※口コミとして記載された内容を分類し集計したデータを使用しています。


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目次

1.パニック障害とは

2.パニック障害のある方にとって満足度が高い職場

3.パニック障害のある方にとって満足度が低い職場

4.パニック障害のある方におすすめの業界

5.パニック障害のある方におすすめの職種

6.パニック障害のある方の転職活動の進め方

7.まとめ

1.パニック障害とは

「パニック障害」も「不安障害」も、近年よく用いられるようになった病名ですが、正確にいうと、両者は並列関係にあるものではなく、「パニック障害」は「不安障害」の下位分類のひとつです。

「不安障害」というのは、精神疾患の中で、不安を主症状とする疾患群をまとめた名称です。その中には、特徴的な不安症状を呈するものや、原因がトラウマ体験によるもの、体の病気や物質によるものなど、様々なものが含まれています。中でもパニック障害は、不安が典型的な形をとって現れている点で、不安障害を代表する疾患といえます。

~中略~

パニック障害では何の理由もなく突然パニック発作に襲われるのが典型的とされていますが、実はこれも、
  • 過去に何らかのきっかけがあった
  • 発症前1年間のストレスが多い
  • 小児期に親との別離体験をもつ
などの心理的要因があるケースが多い、という報告もあります。

パニック障害を引き起こす心理的要因が、職場での人間関係や業務内容など、仕事に関係するものにあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、直接の要因でなくても、仕事によるストレスが症状を引き起こしている可能性もあります。

まずは、ご自身の状況と照らし合わせながら、パニック障害になりやすい職場の傾向に注意しながら、向いている仕事をみていきましょう。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

2.パニック障害のある方にとって満足度が高い職場

パニック障害のある方が働きやすい職場を知るための指標が「職場への満足度」です。まずは職場への満足度に関するデータを参考にして、働きやすい職場の特徴を解説します。

パニック障害のある方は今の職場に満足しているのか?

パニック障害のある方は、そもそも職場に満足しているのでしょうか。詳しく見てみましょう。

パニック障害の方の仕事に関する満足度グラフ
※口コミの項目「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出



グラフによると、「とても満足している」と「満足している」と述べた方の合計が51%となり、パニック障害のある方の2人に1人が職場に満足していることがわかります。

「満足していない」「全く満足していない」と述べた方の合計は23%となり、4人に1人ほどが職場に不満を持っていることがわかります。

全体の半数が職場に満足できていることから、パニック障害のある方でも職場の選び方を間違えなければ、自分に合った職場と出会える可能性は高くなりそうです。

職場への満足度が高い理由は?

満足度の高い職場の特徴を知るために、職場への満足度が高い理由も確認してみます。

パニック障害の方の満足度が高い職場の理由グラフ
※口コミの項目「満足度の理由」を分類し、プラス評価している内容を集計して割合を抽出。上位5位表示。


上位3つの理由を踏まえると、周囲との関係性に満足度の鍵がありそうです。データをもとに、満足度が高い職場の特徴を考察してみます。

満足度が高い職場の特徴1.1人1人の特性について理解がある

パニック障害は、勤務中に発作が起こる可能性が高い疾患です。職場の同僚に症状を理解してもらえていないと、周囲は突然の体調不良に驚くかもしれません。また、適切な対処も望めないでしょう。

ときには、体調不良がきっかけで職場を休みがちになることもあります。職場によっては、パニック障害のある方に配慮する余裕のない同僚や上司もいるかもしれません。

その点でも、障害について理解を得られる職場であることが重要です。

病気の状態を理解してくれて従業員の方もサポートしてくれていました。体調が悪くなった時も休憩ができました。また、サポートにより負担も減らしてくれました。
(女性、小売・流通・商社系)

周りの方がとても親切にしてくださり、サポートして頂けた。
(女性、運輸・交通・物流・倉庫系)

病気(特に精神的)には、やさしく対応してくださり、随時、面談をして気持ちを落ち着かせてくれました。
(男性)

プレッシャーに弱い私のために、みんなが助けてくれた。
(女性、不動産・建設・設備系、医療関係)



口コミからもわかるように、必要に応じて休憩や面談の機会がある職場は、満足度が高くなります。
また、職場の同僚や上司がパニック障害を理解してくれる環境では、サポートが望めるため、肉体的・精神的な負担が軽減されます。

疾患そのものへの理解と同時に、1人1人で異なる症状への理解があることも満足度を上げる要因になります。

パニック障害のある方は、「また発作が起こったらどうしよう」という予期不安から、症状が悪化することも1つの特徴です。

発作の起こりやすい状況は、人により異なります。予期不安を和らげるためには、不安を感じる状況に陥りづらくすることが大切です。

その人にとって発作の起こりやすい状況やシチュエーションを理解・把握し、上手に避けるためのサポートがある職場は、満足度が高くなります。

苦手なシチュエーションの例としては、以下のような口コミがありました。

動悸、呼吸困難感、気が狂ってしまうのではないか、死ぬのではないかという恐怖(予期不安)があります。特に緊張しやすいような場面で、症状は強くなる傾向にあります。
(女性、メーカー・製造系、医療関係)

閉ざされた空間になると、動悸や吐き気がしてしまう。また、その場は大丈夫だったとしても、またそうなるのでは?という不安感が強い。
(女性、小売・流通・商社系、事務)



パニック障害に理解がある職場の中には、以下のような嬉しい対応をしてくれたとの口コミも届いています。

車での現場移動の際は、高速が苦手なことを会社の人達もわかっていたので、下道を使ってくれました。また、電車が苦手な僕に気を使い、僕の家の近くで飲み会をしてくれました。 (男性、小売・流通・商社系、エンジニア・技術職)

パニック障害の症状はハプニングなどにより突然現れるため、口を荒らすお客様などを対応した際には発祥しやすくなります。その事を周りは理解してくれています。私が、そのようなお客様の対応をしている時は、素早く駆けつけてくれてフォローしてくれました。
女性、小売・流通・商社系、接客

幸いにも、症状が出てくるシチュエーションに、一定の条件のようなものがあります。その状況をある程度周囲の方々が気にかけてくれました。症状が出て勤務が続けられないような状態を避けてくれました。
(男性、メーカー・製造系、軽作業)



パニック障害という疾患を理解するだけではなく、1人1人の苦手なことに一緒に向き合って柔軟に対応してくれる職場は、満足度が高くなります。

満足度が高い職場の特徴2.優しく見守り1人を避ける環境が整っている

口コミの傾向をみると、職場環境について、ある共通する特徴がみられました。

棚卸など体力の使う仕事は他の方も一緒に手伝ってくれました。とにかく色々と助けてくれました。
(女性、小売・流通・商社系)

なるべく一人にならない様にしてくれました。
(女性、メーカー・製造系)

症状が出てしまった時に代わってもらえるよう、上司の手が空いている時は遠隔でモニタリングをしてくれていました。
(女性、IT・通信・インターネット系、コールセンター、オペレータ)



どの口コミからも、一人で作業をしなくて済む環境を作ってくれることに満足している様子が伺えます。

パニック障害にともない、広場恐怖(アゴラフォビア)に陥る方もいます。この特徴は、発作が起きたときに助けが得られない状況に、極度の不安を感じることです。中には、この症状が強いために外出ができなくなる方もいます。

広場恐怖の症状があることも踏まえると、パニック障害のある方は、誰かに頼れる状況が担保されていることが必要です。一人にならなくて済む環境が整っていることも、パニック障害のある方が満足しやすい職場の条件の一つといえます。 

満足度が高い職場の特徴3.人間関係が良好である

一般的な職場では、人間関係が悪いと働きづらく、逆に良好であればそれだけで働きやすく感じるものです。それは、パニック障害のある方にとっても変わらないことです。

口コミからもそのことがわかります。

人間関係がわりとよい。シフトの融通がきく。楽しいと思える時もたまにある。
(教育)

比較的に主任や従業員がみんな優しくて、働きやすかった。
(女性、サービス・外食・レジャー系)



パニック障害のある方は、人間関係が良好であり上司や同僚が優しいと、働きやすくなります。そのような中で、仕事に対する楽しみを見出している方もいました。

つまり、パニック障害のある方が満足できる職場で働くためには、職場内の人間関係が良好であることが重要です。

ここまで満足度の高い職場の理由について見てきました。パニック障害のある方にとっての満足度の高い職場の特徴をまとめてみましょう。

    【パニック障害のある方にとって満足度の高い職場とは】

    ① パニック障害について理解し、1人1人に合わせた周囲のサポートがある。具体的には

  • 突然の発作に対する対応を知ろうとしてくれる姿勢がある
  • 急な体調変化に伴う休みに対する理解がある
  • 業務へのサポートがあり不安を和らげてくれる
  • 直接的なサポートがあるだけでなく、見守る気持ちがある
  • 1人1人の予期不安の原因を知り、発作が起きにくい環境を作ってくれる
  • 広場恐怖を避けるために、1人で仕事をする環境を作らないようにしてくれる
  • 人間関係が良好である

    ・パニック障害は、周囲の理解やサポートが必要になります。そのため、職場内の人間関係が良好であることは非常に重要なポイントです。

3.パニック障害のある方にとって満足度が低い職場

パニック障害のある方にとって満足度が低い職場を知ることも、長く働ける職場を見つけるためには重要です。満足度が低い職場の特徴について口コミをもとに解説します。

職場への満足度が低い理由は?

パニック障害の方の満足度低い職場理由グラフ上位


※口コミの項目「満足度の理由」を分類し、マイナス評価している内容を集計して割合を抽出。10名未満の少数回答は除く。


職場に満足していない理由としては「その他」が上位を占めています。「その他」には少数意見が多数集まっています。口コミを分析しながら、満足度の低い職場の特徴を解説します。

満足度が低い職場の特徴1.休憩や教育の環境が整っていない

「その他」の理由に関する口コミを確認してみます。

休憩するスペースがなく、具合が悪くなったときに安心して逃げ込める場所がなかったというのはとても心細かった。
(女性、リース・クレジット・信販)

教育マニュアルが整備されていないため、新入社員が仕事を続けられるかどうかは教育係の人格に大きく左右される。実際に離職率が非常に高く、ハローワークから苦情が届いたこともあったらしい。
(男性 、デザイン・出版・印刷)



パニック障害の症状が出たときに、休憩できないという不安は、満足度を大きく下げる要因につながります。

また、教育環境が整っていない職場に不満を抱えている方もいました。放任主義の職場や、教育マニュアルが用意されていない職場も、パニック障害のある方が不満を抱きやすくなります。

パニック障害のある方は、一人になることに対して恐怖を感じる方もいるため、親身に指導してもらえない環境は、働く場所としてふさわしくありません。

満足度が低い職場の特徴2.時給・賃金が低い

時給が安い。やりがいがない。
男性、事務

障害者ということで最低賃金しか貰えない。
(男性 、サービス・外食・レジャー系)



低い賃金に納得していない方もいます。しかし、賃金については採用前の面接や、入社前の契約の段階で確認できます。

早く採用されることを優先するばかりに、給与を確認しないまま入社するのはおすすめしません。その企業で長く働くためにも、入社前に障害について打ち明けたうえで、どれくらいの給与がもらえるのかを勇気を出して確認するようにしましょう。

満足度が低い職場の特徴3.病気を甘えと捉える風潮がある

症状の度合いは人によって異なりますし、パニック障害の苦労は本人にしかわかりません。それにも関わらず、パニック障害への理解度が低く「甘え」と捉える職場もあるようです。

病気を甘えと捉えるような、現代に遅れをとっている上司が大勢いた。また、他人を理解するという概念を持たない女性社員が多く、自分の要求に応えない部下はいじめの対象になっていた。
(女性、アパレル・日用品)



「現代に遅れをとっている」というワードは見過ごせないフレーズです。今は働き方が多様化し、特にベンチャー企業の中には新しい価値観を重視する企業も多くあります。

歴史が古い企業は従来の考え方が固定化されやすいため、歴史が浅い企業のほうが病気に対して柔軟に対応しやすいかもしれませんね。

4.パニック障害のある方におすすめの業界

業界によって、仕事の内容や職場の環境は大きく変わります。ここからは、パニック障害のある方に向いている業界を分析していきます。

パニック障害のある方が勤務している業界

パニック障害の方が働いている業界の割合

※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業」で口コミのあった企業を業界別に分類し、集計して割合を抽出


まず、パニック障害のある方が勤務している業界の割合を紹介します。

パニック障害のある勤務者が多い業界

1位は「サービス・外食・レジャー系」で、約32%です。

コミュニケーションの楽しさと、自信の付け方と、生きがいと、仕事をする意義を見つけさせてくれた。電車も乗れるようになり、投薬も減った。通院数も減った。
(女性 、外食・フード)



パニック障害の方は、外出を避ける傾向になりがちですが、人と接することで症状が改善していくこともあり、人と接することの多い「サービス・外食・レジャー系」の業界を希望する方が多いのではないかと推察します。

2位は小売・流通・商社系で、約23%です。

淡々とこなす業務は得意なので、それができるように環境を整えていただいたことに感謝しています。
(女性、専門店)



小売・流通・商社系の業界は、物を取り扱うことが多く、検品や商品管理、発注作業など淡々と作業をこなす業務を担当することもあります。このような業務内容は、パニック障害のある方にとって負担が少ない環境が望めるため、人気を集めている理由の1つになっているのではないでしょうか。

3位はメーカー・製造系で、約15%です。

製薬会社は、病気の人のために働く会社だったから余計にかもしれませんが、とにかくみなさんの理解がとてもあり、少しでも具合が悪かったらゆっくり休むよう準備をしてくれていました。
(女性、医療・医薬)



メーカーの中には、製薬メーカーのように人の健康に関する商品を取り扱う業界もあります。病気に関する理解が得られやすい業界であれば、説明もしやすいでしょう。

パニック障害のある勤務者が少ない業界

パニック障害のある方があまり働いていない業界についても見てみましょう。パニック障害のある方は急な体調不良に陥りやすいことから、落ち着いた環境が望める業界に人気がありそうです。しかし、実際には「IT・通信・インターネット系」は約6%と非常に少なく、イメージとのギャップが見られます。

ただし、パニック障害のある方には、外出を避けたい方もいるでしょう。その点では、なるべく外出を必要としない「IT・通信・インターネット系」の仕事は、選択肢としては残しておいてもよいでしょう。



パニック障害のある方は各業界に満足している?

パニック障害の方が働いている業界別満足度グラフ


※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業」と「満足度の理由」をクロス集計して割合を抽出。ただし、口コミを投稿した人数が10人未満の業界は比較の対象外とした。


「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」「メーカー・製造系」はいずれも、勤務している数が多い順に満足度が高いことがわかります。ただし、「メーカー・製造系」に関しては「全く満足していない」という方の割合が約24%となりました。他の2つの業界より不満を感じる方は多くなりました。

身体的にも精神的にもかなりハードな職場だからです。
(女性、 医療・医薬)



「メーカー・製造系」の中には、この口コミのように、病院でケアに携わっている方もいます。体力や精神力が求められる業界は、満足度が下がってしまいます。

「満足している」の割合が最も高い業界についても見てみましょう。結果は「IT・通信・インターネット系」の業界でした。勤務している方は少ない業界ではありましたが、勤務している方からは満足度が高いことがわかります。

自分の裁量で仕事ができた。
(女性、ソフトウェア・ハードウェア開発)



IT業界はパソコンでの作業をメインとしていることから、自分のペースで働ける職場が多いことが関係しているのでしょう。実際に勤務をしている方は少ない業界なので、競争率は高くなる可能性はあります。

少しでも就職できる可能性を高めるためにITツールの使い方を学ぶことや、IT関係の資格を取得することも有効でしょう。

「サービス・外食・レジャー系」と「IT・通信・インターネット系」がおすすめ

「サービス・外食・レジャー系」の「全く満足していない」の割合は、約5%と非常に低くなっています。実際に勤務している人と、満足している人の双方が最も多い業界であることから、パニック障害のある方が働く業界としておすすめです。

一方、「IT・通信・インターネット系」は勤務している方の満足度が最も高かった業界でした。パニック障害のある方でも自分のペースで働きやすい業界ですので、転職の際に候補として抑えておくとよいでしょう。

5.パニック障害のある方におすすめの職種

これまではおすすめの「業界」を見てきました。ここからは、パニック障害のある方におすすめの「職種」を分析していきます。

パニック障害のある方が勤務している職種

パニック障害の方が働いている職種の割合

※口コミの項目「担当していた業務内容」で挙げられた担当業務をもとに、職種別に分類し集計して割合を抽出


まず、パニック障害のある方が勤務している職種の割合を見てみましょう。

パニック障害のある勤務者が多い職種

最も多い職種は「販売・接客・サービス」で、約25%でした。
前述したおすすめ業界の結果でも「サービス・外食・レジャー系」の割合が高かったことから、相関関係が読み取れます。パニック障害のある方は、人と接しながら働いている方が多いことがわかります。

その次に続く職種を見てみると、事務が約22%、軽作業が約12.7%という結果になりました。職種の共通点としてはコツコツと仕事ができる内容であり、体力的にも負担が少ないことです。

その点で、体調不良に陥りやすいパニック障害のある方からも人気があると予想できます。

パニック障害のある勤務者が少ない職種

「営業」や「教育」がともに約1.3%で、パニック障害の勤務者がほとんどいないことがわかります。

営業職や教育系の仕事は、人前に立ってプレゼンするなど緊張する場面も多くなります。また、パニックになったときに一人で落ち着ける環境に避難しづらいことも考えられます。

パニック障害のある方は職種に満足している?

パニック障害の方が働いている職種別満足度グラフ


※口コミの項目「担当した業務内容」と「満足度の理由」をクロス集計して割合を抽出。ただし、口コミを投稿した人数が10人未満の職種は比較の対象外とした。


「満足している」と述べた方の割合が最も多い職種が「軽作業」で約45%です。

週休二日制で、休憩もしっかりあり残業もしたい時だけで可能だったので働きやすかった。
(女性、通販・EC)

休み希望がほぼ通るというのと、体調不良になった際にも休みやすい環境であったため。
(女性、人材)



いずれも商品の仕分けや検品などの軽作業を担当している方の口コミです。共通して、休憩や休みが取りやすい環境に満足していることが伺えます。

体調不良に対応しやすく、パニック障害のある方が就職や転職活動をするうえで注目すべき特徴といえるでしょう。

次に「満足している」と述べた方の割合が多かったのが「販売・接客・サービス」です。ただし、一方で「全く満足していない」と述べた方の割合が約20%で、少なからず不満を持っている方も見られる点に注意が必要です。

人手が足りなく、体調不良や、やむを得ない状況でも休むことが難しかった。
(女性、小売・流通・商社系)



「全く満足していない」と述べた方の口コミを見ると、人手が足りないという意見が見られました。

販売職は、他業種と比べると給料が低くなりがちで、人手不足になりやすい職種でもあります。同僚や上司に余裕がない職場では、パニック障害を持つ方に配慮する余裕がなくなってしまうのかもしれません。

「軽作業」や「販売・接客・サービス」がおすすめ

最も満足している割合が高かった「軽作業」の職種が、体力的な負担が少なくパニック障害のある方におすすめです。人手不足の職場でない限り、急な体調不良でも休みの相談がしやすい傾向がみられます。

「販売・接客・サービス」の職種は働いている人が多く、満足度も比較的高い職種ですが、人手不足な職場では働きづらいことがあるとわかりました。したがって、パニック障害のある方におすすめはできますが、必ずしも適しているわけではないことに注意しましょう。

6.パニック障害のある方の転職活動の進め方

インターネットの普及にともない、さまざまな転職サービスによる求職者と企業とのマッチングが行われるようになってきました。

サービスによって特徴が異なるので、求職者の状況に応じて使い分ける必要があります。ここからはパニック障害のある方に適した転職活動の進め方について解説していきます。

パニック障害のある方が利用している転職サービスは?

パニック障害の方が利用している求人サービス割合

※口コミの項目「その職場を見つけた方法および、就職までに利用したサービス(複数回答可)」の口コミ投稿者102名による109件を集計して合計人数を算出


最も多かった求人サービスが「求人メディア」で約35%です。求人メディアの具体的な内容を口コミの情報から確認してみます。

タウンワークのようなWEBサイトを利用した。
(男性 、レジャー・アミューズメント・フィットネス)

エンジャパンという転職サイトに登録して、応募から内定までの手続きをサポートしてもらいました。
(女性 、ソフトウェア・ハードウェア開発)



WEBサイトを利用した方や、転職サイトに登録して内定までの手続きをサポートしてもらった方がいることがわかりました。

パニック障害だからといって、一般の求人メディアが利用できないわけではありません。
求人メディアによっては得意とする業界や職種が異なります。自分が転職したい職種によって選び分けることで、希望の業界や職種に転職しやすくなります。
さまざまな求人メディアの利用を検討してみるとよいでしょう。

中には、パニック障害とうまく付き合いながら働くためのアドバイスを必要としている方もいます。その場合は、パニック障害などの精神障害に特化した人材紹介会社(エージェント)や、次の紹介するハローワークを活用すると良いでしょう。専門知識を持ったアドバイザーに相談することができます。

ハローワークの利用について

令和2年6月に発表された厚生労働省のプレスリリースによると、ハローワークを通じた精神障害者の就職件数は前年度と比べて約3.3%増加しています。

参考:厚生労働省「令和元年度 障害者の職業紹介状況などの取りまとめ」

パニック障害のある方の利用状況についても確認してみましょう。グラフによると「ハローワーク」を利用した人の割合は約22%で、3番目に高い結果となっています。

ハローワークの障害者相談の窓口で、いろいろな相談をしながら仕事を探していた。
(女性、人材)

ハローワークの掲載を見て応募しました。一般の募集と同じ扱い、同じ流れで就職しましたが、面接時にストレス耐性が低いこととパニック発作があることは伝えました。
(女性、自動車・運輸・輸送機器)



ハローワークの障害者専門の相談窓口で、パニック障害を打ち明け仕事を探した方のコメントです。専門の担当者にパニック障害でも働きやすい仕事を紹介してもらえる可能性が高まるため、就職後の心配やリスクを減らすことができます。

「満足度の高い職場」の特徴では「障害への理解があることが重要」です。理解ある職場を探すためにも、活用できるサービスをうまく利用しながら、向いている仕事を探してみましょう。

7.まとめ

パニック障害のある方の転職事情について、口コミの結果をもとにさまざまな角度から解説しました。内容を振り返りましょう。

■パニック障害のある方にとって満足度が高い職場の特徴は?

・1人1人の特性について理解がある
・優しく見守り1人を避ける環境が作られている
・人間関係が良好である

パニック障害のある方は、突然の発作に加え、広場恐怖や予期不安などの症状にも注意が必要です。特性を理解して体調を崩しにくい環境づくりに配慮してくれる職場や、体調を崩したときに対処してもらえる職場は満足度が高いことわかりました。

周囲からのサポートを得られるかどうかは、満足できる職場を選ぶうえでポイントになってきます。そっと見守ってくれたり、人間関係が良好であったりする環境も働きやすさに関わってきます。

■パニック障害のある方にとって満足度が低い職場の特徴は?

・休憩や教育の環境が整っていない
・時給・賃金が低い
・病気を甘えと捉える風潮がある

パニック障害のある方は、一人で作業することに不安を覚える方もいることから、教育環境が整っていないと不満が生じやすくなります。その他にも給与の低さや、症状に対する理解不足や誤解も不満につながります。

■パニック障害のある方におすすめの業界は?

・サービス・外食・レジャー系
・IT・通信・インターネット系

口コミの中では「サービス・外食・レジャー系」の業界で働き、人と触れ合うことでパニック障害の症状が改善していったという事例がありました。パニック障害のある方が前向きに転職できる業界の1つです。

「IT・通信・インターネット系」は、実際に勤務している方が少ない一方で、勤務者の満足度がとても高いので転職の際に検討してみると良いでしょう。

■パニック障害のある方におすすめの職種は?

・軽作業
・販売・接客・サービス

「軽作業」はコツコツした作業が好きな方には向いている仕事の1つです。パニック障害のある方と相性がよい職種であることがわかりました。自分のペースでコツコツ進める仕事が好きな方は、検討してみるとよいでしょう。

「販売・接客・サービス」もおすすめできる職種ですが、人手不足の職場では忙しくなるなるなど、働きづらくなる可能性もあります。業界全体やその企業の最新動向を確認することも大切です。

■パニック障害のある方がよく利用している転職サービスは?

・求人メディア
・ハローワーク

パニック障害のある方も、一般の求人メディアを使っている方が多いことがわかりました。希望の業界や職種に適した求人メディアをうまく活用してみましょう。

ハローワークを利用する方も多くいます。専門窓口があることが魅力ですが、パニック障害を打ち明けるかどうかで、利用方法や紹介される企業が変わってきます。障害があることを伝えるかについては、働き方を長い目で考慮し慎重に判断しましょう。


パニック障害のある方が転職を成功させるためには、実際に勤務している方の情報を知ることが大切です。
今回紹介した以外の口コミについても把握しておきたい方は、ぜひアンブレで紹介している口コミを活用してみてください。



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著者

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