不安障害のある方が転職する前に見ておきたい280人の口コミ

不安障害のある方が転職に向いている仕事 280人の口コミを調査

不安障害のある方は今の仕事に悩み、向いている仕事や適職を求めて、転職を考えることはありませんか?

不安障害のある方の中には、仕事で苦労している方がいる一方で、適職に出会い楽しく仕事を続けている方もいます。

今回は、働いている不安障害の方の口コミ280件を分析し、不安障害のある方が考える働きやすい職場、向いている業界や職種をまとめました。
障害者雇用の専門家 中村旬さん(社会福祉士)にもアドバイスをいただいています。

生活状況や働き方などにより悩みは人によって異なります。自身の特徴と比較しながら、転職を考える際のヒントにしてください。

*この記事は中村旬さんに監修していただきました
中村旬さん

社会福祉士(ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、介護支援専門員。製薬会社にて勤務したのち社会福祉士の資格を取得、専門学校教職員を経て、協同組合にて通所介護事業所の管理者・生活相談員や福祉用具貸与事業所福祉用具専門相談員、生活困窮者支援員を経験。精神障害のある方を対象にした介護職員初任者研修を運営し、講師も務めた。現在はコミュニティ施設運営、放課後等デイサービス運営、介護職員初任者研修講師等。「月刊デイ」への寄稿や社会福祉士全国大会での発表経験あり。


【この記事で紹介するデータ】
調査期間:2018年2月~2020年4月
調査方法:弊社サイトUMBREから対象となる口コミを抽出
調査対象:働いた経験を持つ不安障害のある方の口コミ280件
データ集計日:2020年8月7日
※口コミとして記載された内容を分類し、集計したデータを使用しています。


障害者雇用で転職をお考えの方、無料で転職相談しませんか?
精神疾患のある方の面接のコツや求人の探し方をはじめ、仕事探し、転職活動自体のアドバイスも実施中。
すぐに転職するかわからない、障害者雇用で働くか迷っている方のご相談も承っていますご相談はこちらから

目次

1.不安障害とは

2.不安障害のある方にとって満足度が高い職場

3.不安障害のある方の職場への満足度が高い理由

4.不安障害のある方の職場への満足度が低い理由

5.不安障害のある方が働いている業界

6.不安障害のある方が働いている職種

7.不安障害のある方が仕事探しで活用した求人サービス

8.専門家からのアドバイス

9.まとめ

1.不安障害とは

    元々正常な反応であるはずの不安が、日常生活にも支障を来たすほど強く長く続いたり頻繁に起こるようになり、それと共に動悸や呼吸困難、めまい、不眠、イライラなどの不安発作(パニック発作)が起こることをいいます。

    不安障害には、社会性不安障害、全般性不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)など、いろいろな症状が含まれます。また障害が起こる周期や時間、強さも様々です。

    症状は個人差が大きく、また精神的な障害との区別も必要なので、治療は個々の患者の症状を基にして実施されます。
入社した直後は、慣れない環境から誰でも緊張するものです。しかし、業務内容や職場の雰囲気により、いつまでも過度に緊張してしまうことや、そのことで出社しづらくなったときは、仕事に対して何らかのストレスを感じている可能性があります。このストレスに対処できなくなると、不安障害を引き起こすこともあります。

不安障害の症状を緩和していくために、そして二次的な症状を生じないためにも、ストレス要因を知ることが大切です。
どのような職場や仕事がストレスを生じやすいのかを詳しく見ていきましょう。

参考:厚生労働省「e-ヘルスネット」

2.不安障害のある方にとって満足度が高い職場

まずは、満足度の高い職場について傾向をみてみましょう。
このグラフは、口コミを分析し不安障害のある方の職場への満足度を表したものです。

不安障害の方の仕事満足度
※口コミの項目「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出


「とても満足している」「満足している」45%
「どちらともいえない」36%
「満足していない」「全く満足していない」がそれぞれ42%
という結果になりました。

満足している方の割合が、やや高いようです。

では、満足している方と満足していない方では、何が違うのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

3.不安障害のある方の職場への満足度が高い理由

このグラフは、「とても満足している」、「満足している」と述べた方の理由を分類し集計したものです。

不安障害の方の職場満足度が高い理由
※口コミの項目「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」を分類しプラス評価している内容を集計して割合を抽出。10名未満の少数回答は除く。


3-1.職場に満足している理由1「不安障害について理解がある」

職場の満足度が高い理由は、「不安障害に対して理解がある」ことが最も多く、全体の1/4の方が述べています。

口コミを見ながら、もう少し内容を掘り下げてみましょう。
口コミには不安障害のある方の仕事に対する悩みも寄せられており、大きく分けると以下のような傾向がありました。

①緊張を感じる仕事が苦手

人前、特に目上の人や初対面の人の前で過度の緊張や不安を感じ、発汗したり声が上ずったり頭が真っ白になったりしてしまう。
(マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンターテイメント系、デザイナー、男性)

人と接すると緊張してしまう。電話も緊張して内容が飛んでしまうことがある。過剰な対人緊張から胃痛や頭痛、アレルギーの悪化を起こす。
(サービス・外食・レジャー系、デザイナー・クリエイティブ、女性)

人と関わることへの恐怖心がだんだん強くなってしまいました。接客中には、お客さんと目を合わせるのが怖くなったり、緊張して手元が狂ったりしました。
(コンサルティング・専門サービス系 女性)

伝票の入力などは全く問題がなかったのですが、電話での応対や急な注文等『予想外』のことが起こるたびにドキドキしてしまいました。
(メーカー・製造系 女性)



②大勢の中にいることが苦手

人前で食べられない。話すことがすごく苦手で、食べると不安になり吐きたくなる。自分から話せない。
(メーカー・製造系、軽作業、女性)

大勢の中に長時間いることが困難。
(IT・通信・インターネット系、男性)



③人の視線や評価が気になる

人目が気になり、他人が自分のことをどう思っているのか猜疑心がある。
(団体・連合会・官公庁、公務員、男性)

会議室は人の視線を一番感じ、社員会議のときは緊張しすぎて慣れませんでした。
(メーカー・製造系、公務員、女性)

人の視線を過剰に気にしたり怯えたりするので、作業するところを人に見られていると緊張やこわばりで冷や汗をかき、パフォーマンスが落ちます。
(サービス・外食・レジャー系、男性)

人の視線が怖いので、なるべく単独作業の仕事をしたいと思いました。
(サービス・外食・レジャー系、エンジニア・技術職、男性)



④電車などの特定の空間が苦手

バスや電車に乗ると心臓がドキドキして、吐き気をもよおすこともある。
(サービス・外食・レジャー系、男性)

加害妄想が強く、電車に乗るのがとにかく辛かったです。電車を待つ間は『人を線路に突き落とすのではないか』という不安があります。電車に乗れば『周りの人から見て、変な行動を自分がしていないか』という不安に苛まれます。
(IT・通信・インターネット系、女性)



⑤体調不良や通院による休みや早退が必要

不安のスイッチが入りやすく、一旦不安になると過換気症候群の発作が起きて、作業を中断していました。
(サービス・外食・レジャー系、教育、女性)

調子のいいときは結構できるけど、調子を崩すと半日以上は休まないといけない。無理がきかない。
(メーカー・製造系、人事・経理・総務・企画、女性)

体調が急変し、パニック発作(不安発作)をおこす。体中が痛み、起きられなくて外出もままならない。
(その他、販売・接客・サービス、男性)

朝起きてみないとその日の体調がわからないので、予定を立てるのが難しい。
(小売・流通・商社系、事務、男性)



不安障害のある方の悩みをまとめると、以下のとおりです。
  • 緊張を感じる仕事が苦手
  • 大勢の中にいることが苦手
  • 人の視線や評価が気になる
  • 電車などの特定の空間が苦手
  • 体調不良や通院による休みや早退が必要
このような個々の悩みを理解している上司や職場の同僚がいる環境は、「不安障害に対して理解がある」といえるでしょう。
では、理解がある職場では、どのような配慮やサポートが行われているのでしょうか。

①緊張を感じる仕事に対する職場での配慮

何かあったときのために、同じ時間帯の勤務人数を増やしてくださいました。また、不安が起きにくいように、ポジションの設定や休憩の配慮もありました。
(運輸・交通・物流・倉庫系、介護、女性)

みんな理解して協力してくれた。電話も取らないようにしてくれた。
(サービス・外食・レジャー系、販売・接客・サービス、男性)

早朝の清掃業務は一人勤務なのですが、私の障害のことを考えてサポートしてくださるスタッフさんと二人体制で仕事をしています。その方は、私が従業員の方に仕事を依頼されたときやお客様に何か質問をされたときなどには、私に代わって受け答えをしてくださいます。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、女性)



②大勢の中で行う仕事に対する職場での配慮

混雑を避けるために、食堂へ行く時間を私だけ早めにしてくれた。
(メーカー・製造系、経理、男性)

取引先との待ち合わせ場所は、できるだけ人通りの少ない場所と時間帯にしていただくようお願いしている。打ち合わせでも、社員が私をフォローしてくれるので助かる。
(IT・通信・インターネット系、男性)



③人の視線を感じないための職場での配慮

私の障害を理解していただき、なるべく接客業より自分に合ったキッチン作業をメインにしてもらいました。
(サービス・外食・レジャー系、女性)

工場内で人が多く広かったので、個室のような所で作業させていただきました。
(IT・通信・インターネット系、販売・接客・サービス、女性)



④通勤スタイルや通勤時間に対する配慮

障害について調べて、症状を把握してくれました。遠方への出張は時間を配慮し、利用する交通機関も親身になって考えてくれました。
(サービス・外食・レジャー系、教育、女性)

大勢の人間に囲まれることにも不安を感じるため、電車での出勤が辛いときはタクシーを使ったり、車での送迎をお願いしたりしていました。
(女性)



⑤急な体調不良や通院による休みや早退への配慮

有休を使用するときや欠勤に対しては、融通がききました。体調が悪くなったときは、休憩をさせてもらいました。話を聞いてなだめてくれる職員もいたので、感謝しています。
(団体・連合会・官公庁、一般事務)

会社が自分の体調や通院に合った勤務スタイルを公認してくれました。通院に同行して一緒に状態を確認するなど、コミュニケーションを大事にしてくれました。
(運輸・交通・物流・倉庫系、販売・接客・サービス)



いかがでしたでしょうか。

不安障害のある方にとって働きやすい職場は、不安要素が少ない職場です。苦手な状況を把握し、避けるための対策が職場に周知されていることが必要です。

周囲の理解を得るためにも、まずは自分の症状や特徴を理解しておきましょう

3-2.職場に満足している理由2「周囲の協力と良好な人間関係」があること

職場に満足している理由で次いで多かったのは、「周囲の協力がある」「同僚や周囲との人間関係が良好」でした。先ほど述べた「不安障害への理解がある」につながる事柄です。

不安障害への理解があるから周囲の協力が得られ、周囲の協力が得られるから人間関係も良好になります。

先に述べた、不安障害への理解がある職場の口コミは、周囲の協力が得られている具体例になります。職場の同僚にサポートや配慮をお願いするときの参考にしてみてください。

また、このほかにも周囲の協力や人間関係の良さが感じられるコメントがあります。

最初に「不安障害があることを職場の皆に伝えて理解してもらうようにする」と上司から話がありました。変な目で見られるのではないかと心配でしたが、伝えることで私という人物を理解していただき、働きやすい職場をつくってもらった気がします。
(サービス・外食・レジャー系、教育、女性)

私の障害に対して、理解や配慮をしてくださいました。社員だけでなく、一緒に働いているスタッフの方々も優しく接してくださり、私の障害のことを理解しようとしてくれています。優しい方ばかりなので、人付き合いの苦手な私でも、とても働きやすいです。
(サービス・外食・レジャー系、女性)



職場のあたたかい雰囲気が伝わってくるコメントです。
特に不安障害がある方は、大勢の中にいることや周囲から目を向けられることで、不安が増してしまいます。

働きやすい職場を見つけるためには、職場に優しく見守る姿勢があるかどうかや、人間関係にストレスを感じない環境かどうかが重要です。

「職場の満足度が高い理由」に関するコメントを見ると、満足度が高い職場には以下のような特徴があります。

    【不安障害のある方が働きやすい職場とは】

    ■不安障害のある方の個々の特徴を理解し、それに合わせた周囲のサポートがある職場

     <不安障害のある方が避けたい、または苦手とするものの一例>
    ・緊張を感じる仕事
    ・大勢の人
    ・電車などの特定の空間
    ・周囲の視線や評価
    ■急な体調不良による休みや早退、通院による休みに対する配慮がある職場

    ■人間関係が良好で、ストレスを感じない職場

    ■あたたかな雰囲気の職場


転職や就活をする際、事前に職場の雰囲気や人間関係を確認することは難しいかもしれません。しかし、職場見学や口コミ、実際に働いている方の話や転職や就活に関する専門のアドバイザーなどを活用して、少しでも職場の雰囲気を知ることができればより安心です。

4.不安障害のある方の職場への満足度が低い理由

次は、満足度の低い職場についてみていきます。「職場に満足していない」と述べた方は、どのような点に不満を感じているのでしょうか。以下のグラフは、「満足していない」「全く満足していない」と述べた方の理由を分類して集計したものです。

不安障害の方の職場満足度が低い理由


※口コミの項目「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」を分類し、マイナス評価している内容を集計して割合を抽出。10名未満の少数回答は除く。


4-1.職場の満足度が低い理由1「企業への信頼のなさ」

満足度が低い職場の理由として一番多く挙げられたのは「その他」です。
「その他」には、分類されない個々の少数意見が含まれています。少数回答が多く挙げられたということは、人により様々な意見があるということになります。

復職時の条件で正社員では雇えないこと、どうしても復職したいならパートからのスタートとなると言われました。結局、復職時のステップや環境を整えてもらうことができず、話し合いの結果、会社側は対応できない、あなたはこの会社に合っていないと言われ、退職せざるを得なかった。
(サービス・外食・レジャー系・医療・福祉・介護、女性)

雇用に当たって契約書などは一切なく、蓋を開けてみると現場で動ける人間は自分一人でした。主治医の指示など関係なく、毎日15時間以上の勤務でタイムカードもなし。接客だけでなく、細々した雑務を含めた全ての仕事を、自分がやらないといけない状況でした。
(サービス・外食・レジャー系、冠婚葬祭、女性)

事務員としての時給で雇われているにも関わらず、塾でチューターために自宅での勉強を強制された。
(サービス・外食・レジャー系、教育、男性)

体調を崩しても当日休みをとりやすい環境だが、昇給などを含めて会社の将来性がなさそう。
(コンサルティング・専門サービス系 、エンジニア・技術職 、男性)



これらの口コミからは、企業への信頼のなさが伝わってきます。その内容をまとめると以下の通りです。

  • 復職すると待遇が悪くなり、キャリアアップもできない
  • 入社前に話していた業務内容と実際の業務が違う
  • 勤務時間が大幅に増えている
  • 企業の将来性が不安
本来は、自分と会社との間でお互いの条件を納得した上で入社するものです。その条件に合わせて、自身の体調をコントロールしたり、生活リズムを整えたりします。また、不安障害とうまく付き合いながら働く見通しをたて、今後の暮らしについて予定を立てることもあるでしょう。

しかし、企業の考えが当初の話と異なると、企業や職場の同僚への信頼が薄れます。信頼できないと心配ごとも増えます。そして、職場に対して不安を抱えていると、不安障害とうまく付き合いながら長く働くことは難しくなります。

そのためにも、条件や待遇など気になることは入社前に確認することが大切です。できれば書面を通じて、お互いが確認することが望ましいでしょう。

4-2.職場の満足度が低い理由2「仕事量が多い、期限に追われる」

満足度が低い理由で次に多かった口コミは、「仕事の忙しさ」に関するものでした。詳しくみてみましょう。

こちらとしては不安を抱く内容を面接時に説明していたにも関わらず、通常業務としてそれを組み込んできたことが非常に不満でした。しかし、目に見える形で数字を残してしっかりと貢献しました。それにも関わらず、評価をされなかったことも不満の一因でした。
(小売・流通・商社系、専門商社、男性)

スポーツジムで顧客の健康管理の手伝いのような仕事をしているのに、従業員の健康は考えていないのではないかと思える長時間勤務やサービス残業。それにより自身の病気が悪化しました。
(サービス・外食・レジャー、レジャー・アミューズメント・フィットネス、女性)



これらの口コミからも、入社当初とは違う働き方を求められることで、企業への信頼が無くなる様子が見て取れます。

仕事内容や業務量が増えればそれだけ忙しくなり、不安障害の症状を気づかいながら働くことは難しくなります。仕事へのやりがいよりも、不安や焦りを感じる可能性が高くなるからです。不安や焦りから緊張したり、人目が気になったりすることがないよう、気持ちにゆとりが持てる働き方が必要です。

    【不安障害のある方が職場に不満に感じないために必要なこと】

  • 働く企業を信頼できること
  • 余裕をもった働き方ができること
実際に働いてみたら、入社前の話と違うということがないように、担当業務、待遇、制度など気になることは事前に確認し、お互い納得した上で働くようにしましょう。

5.不安障害のある方が働いている業界

次に、不安障害のある方が実際に働いている(働いていた)業界をみてみましょう。

不安障害の方が働いている業界の割合

※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」に回答のあった企業を業界別に分類し、集計して割合を抽出


サービス・外食・レジャー系が約33%、小売・流通・商社系が約17%を占めています。

一見、「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」は、接客など緊張する場面が多く、不安障害の症状に影響を与えやすい業界にみえますが、働いている方が多くいることがわかります。

では、多くの人が働いている業界は、働きやすい業界なのでしょうか。働いている業界ごとの満足度をみてみましょう。

不安障害の方が働いている業界別満足度


※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」と「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」をクロス集計して割合を抽出。ただし、述べた人数が10人未満の業界は比較対象外とした。


グラフから満足度の高い業界は、メーカー・製造系の業界だとわかります。次いで「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」「不動産・建設・設備系」の業界と続きます。

先ほどの、不安障害のある方が多く働いている業界である「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」は、ともに満足度も高いこともわかります。

では、満足度が高い理由は何でしょうか?

5-1.満足度が高い業界

満足度が高い業界に寄せられたコメントを見ると、業界の特徴がわかります。

■メーカー・製造系

福利厚生がよかった。給料も高かった。自分のペースで仕事ができた。
(半導体・電子・電気機器、男性)

給与、福利厚生がしっかりしているので、安定して就業することができる。
(化学・素材、男性)

大手企業なので非常に施設が充実していて、福利厚生も正社員に準ずる形で提供されること。 服装がある程度自由で、個人的に徒歩数分の通勤が可能なのが非常に助かった。
(総合電機)

休んでも上司の態度は変わりませんでした。皆が真面目に仕事をしている雰囲気がありました。作業はひとりでやることもたくさんあって、落ち着く時間があったのがよかったです。」
(食品・化粧品、女性)

私ができる範囲の仕事をできる範囲でやらせてくださり、上司の方々もきさくでやさしく話しやすい。
(その他)



メーカー・製造系の業界は、福利厚生の充実や給料の良さなどから、会社の従業員に対する待遇について評価が高く、安心して働くことができるようです。

また個々の特徴を理解した上で、できる仕事や働きやすい環境を考慮していることもわかります。

■サービス・外食・レジャー系

シフトや勤務時間が自分に合っていて、発作がおきることは少なかった。
(医療・福祉・介護、女性)

私が勤めている会社は人を大切にしてくださっています。私のように障害があっても働きたい意思を尊重してくださり、何ができるかを一緒に考えてくれます。普通の人と一緒というわけにはいきませんが、それでも私ができることは任せてくれます。私にもできることがあるんだと、そう思わせてくれます。
(女性)

一人での作業だったので、人間関係のストレスがあまりなかった。
(旅行・ホテル、女性)

対人関係で問題を抱える私が、対人サービスの仕事を続けることができるのは、周りのサポートのおかげだと思います。
(医療・福祉・介護、男性)



「サービス・外食・レジャー系」の業界も、先述の「メーカー・製造系」の業界と同じく、個々の特徴を理解した上で、できる仕事や働きやすい環境を考慮していることがわかります。

口コミには、苦手な対人サービスができるようになったのは周囲のサポートのおかげだという声もありました。
周囲のサポートが得られることで、できなかった仕事ができるようになると、仕事や自分に対する自信につながります。

また、勤務形態にシフト制を取り入れている会社も多く、朝が苦手だという方は遅めの時間帯を選択するなど、自分のペースに合わせた働き方ができます。

■小売・流通・商社系

自分が完璧に仕事をしようとする性格だったために、自分自身で心を追い込んでしまったのですが、同僚のフォローが自分の社会経験において、とても勉強になりました。
(百貨店・量販店、男性)

店長さんが病気に対しての理解を深く持っていてくださっていたので、自分の体調を考慮し、シフトの調整などをしてくれたり、常日頃から声がけや気を遣ったりしていただけました。
(販売・接客・サービス、男性)

社会不安障害を抱える自分には、静かな倉庫内での仕事は大変助かり、長期間働くことができた。
(通販・EC、女性)



「小売・流通・商社系」の業界は、オフィスだけでなく店舗や倉庫などで仕事を行うこともあります。店舗は同じ店舗で働く仲間がチームとなって仕事を遂行するため、人間関係は特に重要視すべきポイントになります。

また、倉庫などのバックヤードでの仕事は、接客が苦手な方でも始めやすい仕事の1つです。人の視線が気になる、緊張しやすい、大勢の人が苦手という方には、静かで周りを気にせず働ける環境がおすすめです。

■不動産・建設・設備系

営業所に人が少ないので、気を遣わなくて済むことと、マニュアル化された仕事なので、覚えるのが簡単でした。
(建築、建設・設計・土木、女性)

大変あたたかい社風の中、安心して仕事をすることができました。多くの方の支えのもと仕事を楽しんでいけたのは、大変ありがたかったです。段々と自分の仕事に対する意欲や、やる気も回復していき、楽しんで仕事をすることができました。」
(男性)



「不動産・建設・設備系」の業界は、大手ゼネコンから街の不動産まで事業規模もさまざまです。そのため一概には言えませんが、緊張や気遣い、ストレスを感じることなく仕事ができる環境もあるようです。

たとえば、大勢の人の中に居ることが苦手な方には、少人数で運営する営業所のほうが働きやすいかもしれません。また人からの評価が気になってしまう方は、周りのサポートや支えに頼りながら職場に慣れていくことが、自信につながります。

なかにはやる気が回復して、仕事が楽しくなったという口コミもあります。ぜひ、不安障害のある方だけでなく、職場の方々にも読んでいただきたい内容です。

業界といってもさまざまな企業があり、コメントの内容が当てはまるものばかりではありませんが、不安障害のある方が転職や就活を行う際は、ぜひ参考にしてみてください。

6.不安障害のある方が働いている職種

次は、不安障害のある方が働いている(働いていた)職種をみていきます。口コミを集計した結果は、次のグラフをご覧ください。

不安障害の方が働いている職種

※口コミの項目「どのような仕事を担当していましたか」に回答のあった担当業務をもとに職種別に分類し、集計して割合を抽出


不安障害のある方が働いている方が多い職種は、以下の通りです。
  • 販売・接客・サービス 約21%
  • 事務 約17%
  • 軽作業 約13%
これらの職種の割合を合わせると、全体の半分以上を占めています。
そして、これらの職種を対人コミュニケーションの有無で比較しても、性質の違う職種であることがわかります。
全く異なる職種ですが、満足度が高い理由に違いはあるのでしょうか?

不安障害の方が働いている職種別満足度


※口コミの項目「どのような仕事をされましたか?」と「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」をクロス集計して割合を抽出。ただし、答えた人数が10人未満の職種は比較対象外とした。


満足度が高い職種は人事・経理・総務・企画で、「とても満足している」「満足している」と述べている方が半数以上います。他の職種と比べても満足度の高さが際立って高い結果となっています。

次に満足度が高い職種は、軽作業、販売・接客・サービスでした。

不安障害のある方が働いている割合の高い職種の上位4つが、満足度の高い職種の上位3つと重なっているという結果でした。満足度が高いから働く人も多いのかもしれません。

では、どのような点が評価されているのでしょうか?コメントをみてみましょう。

■人事・経理・総務・企画

月に一回、健康管理室の保健師と面談を設定してもらえる。上司にも困っていることを相談できる。仕事量は控えめに、プレッシャーのかかる仕事はなるべくさせないようにしてもらっている。
(メーカー・製造系、住宅・建材・インテリア・エクステリア)

定期的な面談があり、自分のことを話せる。障害に関わらず、健常者もパワハラなどについて相談できる。匿名でも対応してもらえる電話やメールのホットラインもある。
(小売・流通・商社系、専門商社)



これら「人事・経理・総務・企画」で働く方のコメントには、相談できる環境があるという共通点がみられます。

コンプライアンスや労働環境について企業をとりまとめる部署は、多くの場合「人事・経理・総務・企画」になります。

職場環境に取り組む部署の方々は、より障害や病気のある方の気持ちや悩みを感じ取れる立場にあるのではないでしょうか。
企業全体の取り組みを率先して担う部署であれば、従業員も要望を伝えやすくなります。また、要望が反映されやすいことが、働きやすさにつながっているのかもしれません。

■軽作業

一度にたくさん仕事を任せずに、少しずつ増やしてくれました。
(小売・流通・商社系、百貨店・量販店

その日の体調に合わせた仕事をさせてくれる。こまめに休憩をとらせてくれる。
(サービス・外食・レジャー系、人材)

同僚の中には、自分と同じような障害を持つ方が多くいます。他の社員の方たちも私たちのことを事前に聞かされていたのか、作業中も休みを入れるように積極的に話しかけてくれた。優しい人が多く、怒鳴り声をあげる人はほとんどいませんでした。
(メーカー・製造系、自動車・運輸・輸送機器)



「軽作業」で働く方々のコメントからは、自分のペースで仕事ができる様子がわかります。これも、不安障害への理解があって得られる配慮ではないでしょうか。特に不安障害のある方は日により体調が異なることもあるため、仕事の締め切りなどを気にしなくてよい働き方は、仕事を長く続けるためにも必要です。

■販売・接客・サービス

病気や障害の有無に関わらず、「人前が苦手」「機械操作が得意」といった個人の得手不得手をみんなが活かせるポジションを決めてくれたので嬉しかったです。私は自分が焦ってしまうレジが苦手だったので、周りは配慮してくれていました。
(サービス・外食・レジャー系、レジャー・アミューズメント・フィットネス)

勤務時間・出勤日数を特に配慮してくれた。医師の「過労をやめるように」というアドバイスから業務量を減らしてくれたり、お客様と対話する時間を調整してくれたりして、効率の良い場所で勤務ができたと思う。
(運輸・交通・物流、倉庫系)



「販売・接客・サービス」の職種には、いろいろな担当業務があり、コミュニケーションが少ない業務もあるようです。

できることから始めて、少しずつ職場の雰囲気やコミュニケーションに慣れるという方法もあります。そのためには、やはり周囲の協力が必要です。
職場に対して仕事への意欲を伝えるためには、まず自分の障害について理解し、どのようなサポートがあると働きやすいのかを伝えることが重要です。周囲の協力を得ながらできることが少しずつ増えていくと良いですね。

7.不安障害のある方が仕事探しで活用した求人サービス

口コミをもとに、不安障害のある方の悩みや職場の様子、おすすめの業界や職種をみてきました。
次は、仕事の探し方について集計しました。不安障害のある方が、活用した求人サービスは、次の通りです。

不安障害の方が利用した求人サービス

※口コミの項目「どのようにその職場を見つけましたか。就職までに利用したサービスがあれば教えてください。(複数回答可)」の有効回答218名による267件を集計して合計人数を算出


最も多く利用した求人サービスはハローワークで約47%、次いで求人メディアが約27%、人材紹介会社が約20%と続きます。

まずは、ハローワークを利用した方の様子をみてみましょう。

■ハローワーク

ハローワークの能力開発機構による設計のための勉強を、半年間受けた。それにより得た知識が就職の際に大変役に立った。
(コンサルティング・専門サービス系、エンジニア・技術職、男性)

ハローワークの担当者に履歴書を添削してもらったり、面接での受け答えの練習をしてもらったりしました。
(小売・流通・商社系、事務、女性)



▼参考:厚生労働省職業安定局「ハローワークインターネットサービス」

その他にも、さまざまな求人サービスを活用し、転職のチャンスを掴んでいる方がたくさんいます。

最近は、障害のある方専用の転職、就職サービスも多くあります。障害の特性を理解したうえで就職や転職の相談にのってくれます。専門窓口ならではの手厚いサービスを受けられるほか、障害者雇用枠の求人情報も多く扱っています。

活用している方が多かった「人材紹介会社」もその一つです。

■人材紹介会社(エージェント)

面接時のアドバイスやフォローをしてもらいました。
(IT・通信・インターネット系、販売・接客・サービス、女性)

履歴書・職務経歴書の作成にあたり、アドバイスをしていただきました。面接の練習もあったように記憶しています。
(IT・通信・インターネット系、人事・経理・総務・企画、女性)



最近は、障害や病気のある方専用の人材紹介会社(エージェント)もあり、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが相談に応じます。ひとりで始める就職活動や転職活動とは違い、相談しながら取り組むことができるため、心強いと感じる方も多いようです。

ぜひ、自分にあった求人サービスを利用してみましょう。

▼障害者雇用枠の求人の探し方について、詳しく紹介しています。
ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介

8.専門家からのアドバイス

仕事探しを考えている不安障害のある方へ、障害者雇用の専門家 中村旬さんからのアドバイスを紹介します。

■働くことを迷っている不安障害のある方へ

不安障害は、決して珍しい病気ではありません。統計結果にもあるように、およそ1割の人が何らかの病状を抱えていることが分かります。

近年は、企業側にハラスメント対策や労働環境改善の取り組みが義務化され、病気に対して理解ある企業が増えてきました。
マッチングする仕事や職場が見つかりますように、心より応援いたします。

■これから働く不安障害のある方へ

不安障害を抱える方は、対人恐怖症を持つ方も少なくありませんから、きっと面接に不安がある方も多いでしょう。
体調を整え、良い状態で取り組まれることを望みます。

ご自身の病状をオープンにし、できるだけ企業や職場の理解を得て就職することが、後の不具合を回避できます。 就労への意欲を大切にし、より良い就職活動になるように心より応援いたします。

9.まとめ

口コミをもとに、不安障害のある方の働き方をさまざまな角度から分析しました。これまでの内容をまとめます。

■満足度の高い職場の傾向

不安障害のある方が不安に感じるものや状況は、人によって異なります。
例えば、「緊張を感じる仕事や場面」「大勢の人の中にいること」「電車などの限られた空間」などが苦手な方や、「周囲の視線や評価」が気になる方がいます。
このような個々の特性を理解し、それに合わせた周囲のサポートがある職場は満足度の高くなります。 また、急な体調不良を生じることもあり、休みや早退に対する臨機応変な対応、通院のための休みへの配慮があるかどうかも、確認しておきましょう。

職場への満足度が高い方は、周りの目や評価を気にすることなく働けるあたたかな雰囲気の必要性を挙げていました。周囲の方々のサポートを得るためには、良好な人間関係も大切です。

■満足度の低い職場の傾向

不満を感じると答えた方のコメントからは、企業への信頼度の低さが多く挙げられました。入社前に聞いていた話と異なる業務があったり、時間外労働をさせられたりするなど、担当外の仕事を行うことは、焦りや不安につながります。そしてその焦りや不安が大きなストレスになってしまいます。

不安障害の症状は、ストレスにより悪化する可能性があります。できるだけ余裕をもった働き方が望まれます。

■満足度の高い業界の傾向

満足度の高い業界には「メーカー・製造系」「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」「不動産・建設・設備系」が挙げられました。

これらの業界に共通していたことは、企業が不安障害による個々の特性を理解したうえで、本人のやりやすい仕事と働きやすい環境を考慮している点でした。

また「メーカー・製造系」の業界の多くは、福利厚生や制度が充実していました。さらに「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」の業界は、特性を生かした仕事をするだけでなく、苦手な仕事も周囲のサポートを得ながらチャレンジすることで、自信につながったというコメントもありました。

■満足度の高い職種の傾向

満足度が高い職種は、「人事・経理・総務・企画」「軽作業」「販売・接客・サービス」でした。

「人事・経理・総務・企画」の職種は、コンプライアンスや労働環境について企業をとりまとめる部署であるため、不安障害のある方の働き方にも誠実に対応する傾向があります。

「軽作業」は、自分のペースで仕事ができることが評価の高い理由でした。急に体調を崩しても、仕事の進捗状況に不安を感じることなく休みや休憩がとれることは、不安障害と付き合いながら長く働くためには必要です。

「販売・接客・サービス」は、対人コミュニケーションが必要であるため、不安障害のある方には向いていない職種ようですが、さまざまな担当業務があり、できることから始められるため、少しずつ仕事に慣れていくことができるようです。

■活用した求人サービスの傾向

不安障害のある方が、最も活用した求人サービスは「ハローワーク」でした。ハローワークには障害者専用の窓口があり、履歴書や職務経歴書の添削や面接練習も行っています。就活や転職活動に不安のある方にとっては、心強い味方になります。

また、障害者専用の求人サービスは他にもあります。人材紹介会社(エージェント)は、専門知識をもったアドバイザーの手厚いサポートを受けることができます。

仕事探しに迷ったときは、自分にあった専用の求人サービスを活用してみましょう。

不安障害のある方280人のコメントからは、多くの悩みも聞かれましたが、自身で工夫しながら仕事をしている方や、理想の職場を見つけて周囲の理解を得ながら仕事を続けている方もたくさんいました。

就職や転職を考えているけれど不安がある方は、不安障害と付き合いながら仕事をしている方の声に耳を傾けてみてください。ヒントがみつかるかもしれません。
理想の仕事に出会えることを応援しています。


「不安障害」と付き合いながら働くための解決策を紹介しています
不安障害による仕事の悩みと働き方のコツ、向いている仕事の選び方

「不安障害」をオープンにするかクローズにするか?迷った方へ、仕事探しのポイント
不安障害のある方におすすめしたい、向いている仕事の探し方

不安障害のある方の仕事の体験談がたくさん届いています
不安障害(不安症)のある方がお仕事、雇用をされている企業一覧
障害者雇用で転職をお考えの方、無料で転職相談しませんか?
精神疾患のある方の面接のコツや求人の探し方をはじめ、仕事探し、転職活動自体のアドバイスも実施中。
すぐに転職するかわからない、障害者雇用で働くか迷っている方のご相談も承っていますご相談はこちらから

監修者

製薬会社にて勤務したのち社会福祉士、介護支援専門員の資格を取得。専門学校教職員を経て、協同組合にて通所介護事業所の管理者・生活相談員や福祉用具貸与事業所福祉用具専門相談員、生活困窮者支援員を経験。精神障害のある方を対象にした介護職員初任者研修を運営し、講師も務めた。現在はコミュニティ施設運営、放課後等デイサービス運営、介護職員初任者研修講師等を行っている。「月刊デイ」への寄稿や社会福祉士全国大会での発表経験もあり。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

新着口コミを毎週火曜に定期配信中
働きやすい環境を見つけるきっかけに


新着口コミを受け取る

関連するコラム

精神疾患に関する記事一覧就職・転職のヒントに関する記事一覧