不安障害は、仕事にどのような影響を与えるでしょうか? まずは不安障害による仕事上の悩みをみていきましょう。
【不安障害による主な仕事の悩み】
- 人混みや閉鎖的な空間が苦手
- 人の視線や評価が過度に気になる
- 人と接することに恐怖を感じる(対人恐怖症)
- 人と食事をすることに恐怖を感じる(会食恐怖症)
- 症状が出ることへの不安
このように、不安障害を抱えることで生じる仕事の悩みは多くありますが、口コミには悩みを少しでも解決しながら働きやすくするために工夫や対策をしている方のコメントも多く届いています。 皆さんはどのように働いているのでしょうか?
ここからは悩みとその対策をコメントとともに紹介していきます。
1.人混みや閉鎖的な空間が苦手という悩み
不安障害により、日常生活で不安になったり緊張を覚えたり、頭痛や吐き気を感じる方も多いのではないでしょうか。
これらの経験は特に人混みが多い場所や空間で起こりやすく、口コミでも多くの方が「通勤時の電車やバス、エレベーター内での人混みに強い苦痛や恐怖を覚える」といった悩みを抱えています。
【人混みや閉鎖的な空間が苦手という悩み】
バスや電車に乗ると心臓がドキドキしたり、吐き気をもよおしたりすることもある。
人材、男性
加害妄想が強く、電車に乗るのがとにかく辛かったです。電車を待つ間は「人を線路に落とすのではないか」という不安があり、電車に乗れば今度は「周りの人から見て変な行動を自分がしていないか」という不安に苛まれとにかく辛かったです。
IT・通信・インターネット系、女性
不安障害のある方の多くは、人混みや閉鎖的な空間に対しストレスを感じています。
通勤の手段を変えることは難しくても、いろいろな工夫を行い苦手な空間を回避している方もいます。
バス・電車での通勤時、外出時の工夫、またリモートワークを選択している方々がどのように仕事に向き合っているかなど、いくつか紹介します。
【対策】
症状が激しくなってからは通勤のない在宅での仕事をすることによって対応しました。また、強迫性障害の不安感を緩和する薬を服用し、認知行動療法を行い通勤の仕事もできるようになるためにリハビリをはじめました。
IT・通信・インターネット系、女性
一人で行動するのではなく、不安障害に理解がある人と共に行動できれば、症状が出た時に頼れるという安心感が持てます。また、人混みを避けた場所や時間帯を選べば、不安を和らげることができます。
これから仕事を探すという方は、企業選びの条件に通勤時間が短いことや在宅勤務を加えることも、ひとつの方法です。
2.人の視線や評価が過度に気になる
不安障害の方は、周囲の人の視線や自分に対する評価に対して過敏になることが多く、実際に視線が向けられていなくても、見られているのではないかという思いが強くなり、ますます不安に襲われることもあります。
多くの人と同じ空間で過ごし、仕事ぶりを比較されることも多いのが仕事です。そのため、その傾向も強くなるのではないでしょうか。
【人の視線や評価が過度に気になるという悩み】
人に対する信頼や人に対しての怖さがあったので、少しでも怒られたり何かいわれたりすると家に帰ってもずっとその言葉がグルグル廻っていて、なかなか切り替えることができませんでした。
教育、女性
「過剰に反応する」というコメントがあったように、普通なら軽く受け流したり、気持ちを切り替えたりできることが、いつまでも落ち込んだ気持ちを引きずってしまうこともあります。また、その経験を繰り返すことで、人に対する恐怖心が増してしまうという方も少なくありません。
そのような方の中には、周囲を気にしないための考え方をしたり、行動をとったりすることで、周囲の視線を意識しないように工夫している方もいます。その方法を紹介します。
【対策】
働いているときは、病名までは言わなくとも、「人前で緊張してしまうんです」というように少しアバウトな感じで伝えます。そうすると、大体の人が理解を示してくれます。
ビジネスコンサルティング、女性
対人を意識しないようにする。自分の仕事だけに集中するようにしています。
一般事務、女性
周囲の「人」を意識すると、どのように思われているかという考えてしまいます。「今、自分がしている仕事」に集中することで、他事への意識を断ち切ることができます。
また、あらかじめ、職場の同僚に自分の特徴を話しておくことで、理解を得るという方法もあります。不安障害の有無に関わらず、誰もが「緊張」を経験していますので、緊張することへの不安感は、比較的理解を得やすいのではないでしょうか。
しかし、緊張や不安を感じる状況は人により異なります。特に避けたい状況を説明することが必要です。
3.人と接することに恐怖を感じる(対人恐怖症)
初対面の人と話すときなど、人と接するときに緊張することはありますが、仕事が手につかないほど緊張してしまう場合は、対人恐怖症の可能性があります。不安障害の方に多くみられる症状のひとつで、口コミにも対人恐怖症に関するコメントが多くありました。
【人と接することに恐怖を感じるという悩み】
人と接すると緊張してしまう。電話をすると緊張してしまい、内容が飛んでしまうことがある。過剰な対人緊張から胃痛や頭痛、アレルギーの悪化を起こす。他人が叱責されているのを聞いているだけでも疲れてしまう。
教育、出版、映像、マスコミ、記者、原稿作成、女性
人と関わることへの恐怖心がだんだん強くなってしまいました。接客中には、お客さんと目を合わせるのが怖くなったり、緊張して手元が狂ったりしました。また対人恐怖症は、職場のスタッフ間の人間関係にも影響が出ます。うまくコミュニケーションが取れない時もあり、自分がどう思われているか常に不安でした。
ビジネスコンサルティング、女性
対人恐怖症があって、基本人と接することが怖く、とても緊張します。特に対面で人と視線を合わせることが苦手で、それで不審に思われてしまうこともありますし、自分の中で緊張状態を通り越して不快な感情が湧いてしまうこともあります。
専門店、営業事務、女性
人と接する仕事は、接客業だけではありません。どんな職種でも人と接する場面は多くありますし、「電話応対」に恐怖を感じるという方も多くいます。そして社外に対してだけでなく、同じ職場で働く人とのコミュニケーションに影響することもあります。
仕事に人間関係はつきものですから、対人恐怖症を抱えながら仕事をすることはとても辛いことですが、自分から電話対応や人前に出ることが苦手だということを告げることで、苦手な業務から遠ざかっている方もいます
。
【対策】
電話をかける際はどのように受け答えをするのか、お客様に何を確認するのかをしっかりと教えてもらいました。
通販・EC、女性
病気や障害の有無にかかわらず、たとえば「人前が苦手」「機械操作が得意」といった個人の得手不得手を、自然とみんなが活かしてポジションなどを決めてくれる雰囲気があったので嬉しかったです。私は自分が焦ってしまうレジが苦手だったので、周りは配慮してくれていました。
レジャー・アミューズメント・フィットネス、接客、女性
症状を話した当初はやはりあまり理解は示してもらうことは難しかったが、徐々に理解してくれ、休憩時間など一緒にとることの強要はしないでいてくれるようになった。
物流・倉庫、女性
このように、人と接することが苦手であることを伝えるなど、自分から働きかけることで、悩みが解決できることは多くあります。そのためにも、何が苦手で何が得意なのか、自分自身のことをよく分析してみましょう。
また、苦手な作業に対しては、やり方を教えてもらったり、協力してもらったりすることでできることもあります。自分から協力をお願いする姿勢を持つことも大切ですね。
また、対人恐怖症のある方にとって、社内のコミュニケーションも過度な緊張や恐怖を感じるもののひとつかもしれません。特に休憩時間のちょっとした雑談や就業後の懇親会など、業務以外の何気ない会話に、強いストレスを感じやすくなります。
面談などを利用して、口頭ではなく文字を使用したコミュニケーションにしたいとか、休憩は一人で取りたいといった要望を伝えることで、気持ちを理解してもらえることもあります。自分から働きかけて、過ごしやすい環境を作っていきましょう。
4.人と食事をすることに恐怖を感じる(会食恐怖症)
人と接する場面でも、特に誰かと食事をすることに怖さを感じる方もいます。
仕事であれば、ランチを一緒に行かなければならない風習のある職場もあることでしょう。毎日がまんをすることになりますし、せっかくの息抜きの時間も緊張を強いられてしまいます。
【会食恐怖症に関する悩み】
仕事場では、飲んだり食べたり、食事に誘われたりする仕事だったので、自分の病気が会食恐怖症なので、食事を他人とするのがとても困りましたし、怖かったですね…。不安になったり、緊張したり、時にはその場にいるだけで冷や汗をかいたり、動揺したりするので、あまり会食恐怖症と言う病気を知らない人が多いので、気にしなければ食べれるよ、気にしすぎだよ、などと言われる事が度々ありました。
小売・流通・商社系、女性
会食恐怖症でお客様とご飯の話をしたりご飯の匂いだけでも吐き気がする時があり、お客様に少し待ってもらってバックルームで吐けないけど吐き気だけ出してたりしていました。
理容・美容、男性
口コミにもあるように、会食恐怖症という病気を知らない人もいますので、食事が怖いという状況をすぐ理解してもらうのは難しいかもしれません。理解されない人から誤解されたまま過ごすことは辛いことですよね。
しかし、自分から会食恐怖症であることを伝え、周囲の協力により会食に参加できるようになったという方もいます。
【対策】
私の病気を理解してくれる方は、会食に対して私が行きたいお店や入れそうな雰囲気のお店を選ばせてくれたり、途中で食事が採れなくなっても「無理に食べなくていいから」などと言ってくれたりしてくれました。そう言う言葉にとても勇気づけられ、支えになりましたね。
小売・流通・商社系女性
「会食恐怖症」により、ランチなど束の間の休憩時間が苦痛な時間へと変わってしまうことや、仕事の付き合いで職場の人や取引先の人と食事をすることになれば、仕事どころではなくなってしまいます。
そういう方は、用事を済ませてから昼食をとるなど、お昼休憩を少しずらしてとるのも一つの方法です。またお弁当を持参しているので一緒に食べに行けないという断り方もありますね。毎回断るのが心苦しいようであれば、正直に疲れやすいのでお昼は一人で過ごしたいと伝えておくのも良いでしょう。
仕事上の付き合いの時は、自分の過ごしやすい飲食店を利用でいきるように、幹事を引き受けるという方法もあります。口コミにもあるように、予め会食恐怖症があることを伝えておけば、職場の人たちの気づかいを期待できるかもしれませんね。
5.症状が出ることへの不安
不安障害の症状には、突然の動悸やめまい、窒息感、パニック発作などがあります。こうした症状を一度経験すると、「また症状が出たらどうしよう」という不安を常に抱えることもあります。
それが仕事中のような自由に動けない空間であれば、症状が現れることに対する不安もさらにふくらむのではないでしょうか?
【症状が出るという悩み】
症状がいつ起こるかわかるかわからないため、クライアントとの打ち合わせ時間に困りました。
マスコミ・広告、男性
常に症状への不安を抱えていると、仕事に集中することもできません。対外的な業務をされている方は、失礼があってはいけないと思うあまりにさらに不安になり、その不安がまた症状を引きやすくなってしまうこともあります。
少しでも症状を助長する不安を和らげるために、自らサポートの相談をしているというコメントが多く寄せられました。どのようなサポートがあると良いのでしょうか。いくつか紹介します。
【対策】
何かあった時のために、同じ時間帯の勤務人数を増やしてくださいました。また、不安が起きにくいようにポジションの設定や休憩の配慮もありました。
運輸・交通、接客、女性
本来、早朝の清掃業務は一人勤務なのですが、私の障害のことを考えてサポートしてくださるスタッフさんと二人体制で仕事をしています。その方は私が従業員の方に仕事を依頼された時やお客様に何か質問をされた時などには私に代わって受け答えをしてくださいます。
サービス・外食・レジャー系、清掃、女性
不安障害については説明してあったので、調子が悪いときは静かで落ち着けるところでできる作業を回してくれたり定期的に様子を見てくれたりしました。
女性
職場の方々に不安障害への理解があると、様々な協力を得ることができます。このようなサポートは、自ら不安障害のことを詳しく伝えているからこそ得られるものです。
どのような場面が特に苦手なのか、何に不安を感じるのか、症状が出るとどうなるのか、その時どのような対応をしてほしいのか、といったことを細かく伝えることで、初めて職場の方も対応方法を考えることができます。
その結果、症状が出るのではないかといった不安を和らげることに繋がり、仕事を続けやすい環境にしていくことができるのです。