麻痺のある方の中には、症状とうまく付き合いながら理想の職場で働いている方もいれば、悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
例えば、「通勤に時間がかかる」、「定期的な通院のために休みがほしい」、「パソコンを使う仕事なら能力を発揮できる」など、麻痺があることによる特有の悩みや不安、そして職場への要望はありませんか?
そんなときは、同じように麻痺を抱えながら仕事をしている方々の声に耳を傾けてみるとヒントがみつかるかもしれません。今回のコラムでは115人の麻痺のある方の口コミをもとに
・仕事の悩みとその解決策
・仕事探しの方法
についてのアドバイスを紹介します。
障害者雇用の専門家 中村旬さん(社会福祉士)にもアドバイスをいただいています。
仕事との向き合い方や職場に悩みや不安がある方は、解決のヒントとしていただけますと幸いです。
装具や杖を突きながらの歩行が余儀なくされるので、走ることや「テキパキ動く」ことができません。
ソフトウェア・ハードウェア開発、一般事務、女性
左手と左足の麻痺があり、思うように動かすことができません。歩くことはできますが、走ることはできません。左手は荷物を持つことができないため、右手で持ちます。主な仕事はパソコンを使用するもので、右手のみしか使えないので時間がかかります。
医療・福祉・介護、一般事務、女性
車いすでの生活なので身体を使った作業はできません。移動速度ももちろん遅いので、他の人より作業スピードが遅れて困ることがあります。
外食・フード、マーケティング、広報、宣伝、女性
手に障害があるため、タイピングスピードなどひとつひとつの作業に時間がかかります。他の人の4倍の時間がかかっているといわれました。
団体・連合会・官公庁、女性
時間に余裕を持って仕事を行い、会社の上司にも理解していただきました。
環境、営業事務、男性
自分に無理なことは素直に人に頼む。人に遅れないように10分早く行動を起こす。
団体・連合会・官公庁、総務
タイムマネジメントをしっかり行い、仕事を積み残さないようにしました。自分がボールを持つ時間を短くすることに努めました。
医療・医薬、営業、営業補佐
パソコンを使い勝手のよい仕様に変更しました。また職場の協力を得て、オフィス内の動線を動きやすいようにしてもらった。
団体・連合会・官公庁、公務員
階段の上り下りが困難なので、電車通勤は負担が大きいです。
コンピュータ・通信・精密機器、営業事務、女性
下半身不随により歩くことができないため、仕事で移動する時はとても困った。他の人の助けが必須であることが申し訳なく思えて、ストレスがどんどん増えていった。
団体・連合会・官公庁、男性
通勤に電車を利用していましたが、車椅子を利用しているため、悪天候のときは欠勤しなくてはなりませんでした。それゆえ、仕事に対してやる気はあるのですが、その意志とは裏腹にどうしても欠勤しなくてはならないという歯がゆさがありました。
医療・福祉・介護、男性
車いすでの生活なので通勤が大変であることです。基本的に電車通勤ですが、ラッシュ時など電車に乗ることができません。また、天候にも左右されやすく、雨の日は傘をさすことができなくて、ずぶ濡れになってしまいます。
専門店、男性
移動に時間がかかるため、いつも1時間程度の余裕をもって行動していました。
システムインテグレータ、経理、女性
仕事上、電車での移動や物を運ぶことがあったため、一緒に仕事をする人には事前に自分の障害の概要とできること、できないことを伝えるようにしています。
ソフトウェア・ハードウェア開発システム、エンジニア、女性
雨が降っていても傘をさせないので、タクシーを利用する。必要経費と割り切ってタクシーを使う。出張の際は配偶者に付いてきてもらい、グリーン車を利用する。一緒に仕事する人には今の私の状況を伝える。
マスコミ・広告、出版、デザイナー・クリエイティブ
左半身に痺れがあり動かしづらい。薬の副作用により居眠りしやすい。免疫力が弱っていて感染症になりやすい。
ソフトウェア・ハードウェア開発、総務、男性
麻痺があったために長時間の歩行や座ったままの状態、階段の登り降りも負担で辛くなることがありました。
専門店、女性
歩行不可というほど悪くないが、健常者よりもつまずきやすい。ずっと立っていると疲労が溜まりやすい。
チェーンストア・スーパー・コンビニ、女性
右側に温度感覚がなく、仕事でハンダゴテを使用するときに注意が必要。また右半身に感覚がほとんどなく、右靴は視覚でしか確認できない。
メーカー・製造系、技術系、男性
疲れると持病が再発しやすくなるので、適度に休憩をとることを上司と約束している。
メーカー・製造系、営業
身体的に困難な作業は、時間や日を短くする等、上司と相談し無理しない程度にしています。片麻痺なので、なるべく健常者と同じような作業を工夫して行っています。どうしてもできない作業は職場の同僚にフォローしてもらっています。
医療・福祉・介護、清掃
疲労骨折が怖いので、疲れたら休憩をとり無理をしないようにしています。特に、骨に負荷を掛けないことが大切です。
化学・素材、一般事務、男性
病欠や検査などで、露骨に嫌な顔をされたことがある。
コンサルティング・専門サービス系、事務系、男性
あまり休むことができない。客先からも土日関係なく呼び出されることが多々ある。
サービス・外食・レジャー系、営業、男性
残業が多い分、自分の時間がない。シフト制なので連休が少ない。看護研究や委員会の仕事など、本来の業務以外で休日の時間を費やすことも多い。
医療・医薬、医療関係
体調や家庭の事情などで比較的自由に休むことができた。仕事も無理をしないで自分のペースで働けた。
医療・福祉・介護、技術系
週休2日、残業なしで定時帰宅できる。また、出張は行かなくて良いように気を遣ってくれている。
メーカー・製造系、技術系、男性
発症後、有休や欠勤、休職期間がありました。その間も給料を満額くれました(休職期間は本給の7割)。
マスコミ・広告、デザイナー・クリエイティブ
人並みにはやってきたつもりだが、昇進に差がついているような気がする。
団体・連合会・官公庁、総務
体が不自由になったことにより、昇級や昇格が不可能となった。
一般事務
年功序列がある程度は残っているので、実力はあるのにと悔しい思いをすることもある。
医療・医薬、営業、営業補佐
どんなに頑張っても、パートのままです。社員にはしてもらえません。
リース・クレジット・信販、営業、営業補佐、女性
身体障害があっても仕事を任せてくれて、健常者と同じ扱いで働かせてくれたこと。
環境、営業事務、男性
時給がよかった。自分のペースで仕事ができたので、障害のためにほかの人に迷惑をかける心配がなかった。
専門店、男性
職場の人々に恵まれ、障害者だという意識を持たず、責任のある仕事を多数任せていただきました。
システムインテグレータ、経理、女性
病気があるので、あまり責任のある立場に立てない。最近ではデスクワークがほとんどになってしまい、働き甲斐がない。
メーカー・製造系、営業
設備面では十分に配慮してもらっているが、業務内容が自分の能力に対し容易すぎる。
化学・素材、技術系
できればプログラミングの技術を活かして、仕事に役立てたいが、案件が少ない。
ビジネスコンサルティング、総務、男性
土木の仕事でしたので、障害者はほとんどいないのが普通でした。始めは作業員も付き合い方に迷っていたようでしたが、次第に私が仕事を知っていることで、作業員も普通に接するようになり、同じチームのようになりました。障害者に対する理解も増したのだと思います。
建築・建設・設計・土木、管理業務、男性
障害を前提として働きやすい環境を整える風土が職場にあるため、自分の努力次第で道が開けていく。自分の後に続く者のためにも、周囲の期待に応え、実績を作ることが自分の役割と考え、日々の業務に取り組んでいる。
団体・連合会・官公庁、公務員
私自身が本当に働けるかどうかが不安だったので、上司と頻繁に面談し、問題点を話し合いました。仕事にも自信がつき、上司の推薦で定時職員になりました。障害を公表して、周りのサポートを感じられているので、継続して働くことができました。
医療・福祉・介護、清掃
できることとできないこと、配慮が必要なことを隠さず伝えること。その上でアピールすべきです。そうすれば、勤務し始めても相談しやすく、目標を設定しやすくなります。
運輸・交通、接客
自分のできる範囲で頑張ればいいと思う。障害があることを知った上で働かせてもらっているので、へりくだって考える必要もないし、マイナス思考になる必要もない。
物流・倉庫、一般事務、男性
持病があることを上司に伝えたところ、結局、辞職を勧告されてしまいました。気を付けていても、障害があることでの差別は解消されないと、あきらめています。
不動産・建設・設備系、営業事務、女性
仕事量に関しては、障害の有無は関係ありませんが、配慮もほぼありません。障害に関する差別的な扱いはないが、配慮もないのが現状。身体の不調に対する配慮を訴えても、なかなか改善されない。
医療・医薬、医療関係
配慮に欠けている。自分の病状を知っているのが、上司とその他一部の人しかおらず、情報が共有されていなかった。
サービス・外食・レジャー系、営業、営業補佐、男性
自分が障害者というのは伏せてしまいました。最初はよかったのですが、歳とともに麻痺は酷くなり、職場に迷惑をかけたくないので辞めました。
チェーンストア・スーパー・コンビニ、男性
ハローワークに通っていた際、先方の担当者が親身になって会社をさがしてくれたのが印象的です。
マスコミ・広告、営業、男性
ハローワークには障害者の就職サポート体制がしっかりしているので、信頼できます。利用して思ったことは「遠慮しないで自分の気持ちを話すこと」です。そうすれば理想に近い職場がみつかると思います。
外食・フード、マーケティング・広報・宣伝、女性
仮に障害があっても何の問題もなく働けます。その状況を理解してくれる会社というのが絶対に存在するので、体験談や口コミを見ながら就職サービスのスタッフをいい意味で利用し、妥協せずに根気よく仕事を探していくことだと思います。
ソフトウェア・ハードウェア開発、一般事務、女性
人材紹介会社の担当者にアドバイスをいただいた。
専門商社、エンジニア・技術職、男性
会社の雰囲気を知っておくためにも、会社見学ができるならした方がよい。障害の内容を理解してもらうのは難しいが、担当者にできるだけ、これはできる、できないなど具体的に伝える。面接の際には十分に仕事内容についても相談する必要がある。
ビジネスコンサルティング、総務、男性
会社見学をして、設備や仕事内容を見て、これから働けるかどうかを見極めること。自分の障害名を伝えるとともに、どんなことができるかできないかを明確に伝えておく。 そうすることで仕事の割り振りを考えてくれる。
メーカー・製造系、営業事務、男性
職場の動線やトイレは見ておいた方がよい。通勤のルートも見て、できれば実際に一度は通ってみるのがよい。
マスコミ・広告、デザイナー・クリエイティブ
面接時に、自分の障害について正直に話しておいた方がいいと思います。 入社してからじゃないとわからないこともありますが、最低限配慮してほしいことを言っておかないと苦労すると思います。
ビジネスコンサルティング、一般事務
自分の病気の特徴、障害の悪化する可能性、できること、できないこと、将来できなくなるであろうことを明確に伝えておく。主治医の診断書を提出して、無理な労働はないようにして、突然の病気再発でも休暇を無理なくとれるか確認しておく。
メーカー・製造系、営業、営業補佐
人間関係はもちろんのこと、障害がある場合は特に職場環境(バリアフリーであるか、障害に対する理解や配慮があるかなど)、有休消化率、年休日数、部署による残業のばらつきの有無、本来の業務以外の仕事の有無など、その職場独自の行事なども含め、あらかじめ把握しておくことが大事。
医療・医薬
製薬会社にて勤務したのち社会福祉士、介護支援専門員の資格を取得。専門学校教職員を経て、協同組合にて通所介護事業所の管理者・生活相談員や福祉用具貸与事業所福祉用具専門相談員、生活困窮者支援員を経験。精神障害のある方を対象にした介護職員初任者研修を運営し、講師も務めた。現在はコミュニティ施設運営、放課後等デイサービス運営、介護職員初任者研修講師等を行っている。「月刊デイ」への寄稿や社会福祉士全国大会での発表経験もあり。
より望ましい職業の選択や能力開発における相談・助言を専門とする国家資格「キャリアコンサルタント」のほか、米国CCE, Inc.認定の「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」の資格を取得。福祉・医療介護分野の研究などにも従事しています。