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4.転職や就活ではADHDをオープンにするかクローズにするか
大人のADHDという言葉をよく聞くようになりました。
仕事をしている方のなかには、ADHDの特性とうまく付き合いながら働いている方もいれば、仕事が思う通りにできない、ミスが多くて辛い、などの悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
例えば、「マルチタスクが苦手」、「約束の時間に遅れてしまう」など、ADHD特有の悩みを抱えていませんか?
そんなときは、同じ境遇の方々の声に耳を傾けてみましょう。今回のコラムでは、ADHDのある方315人の口コミをもとに
・仕事の悩みとその解決策
・向いている仕事の探し方
についてのアドバイスを紹介します。
障害者雇用の専門家ジョジョさん(社会福祉士、プロコーチ)にもアドバイスをいただきました。
仕事に悩みや不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
2つ以上のことを掛け持ちして行うのが苦手です。例えば、時間内にやらなければならない品出しや売り場作りの途中にレジに呼ばれたりすると、どちらかの作業にミスが起きたり、何かを忘れたり、作業にすごく時間が掛かってしまいます。
専門店、接客、女性
一度に複数のタスクを処理することが苦手。集中力が続かない。周りのペースに合わせるのが苦手。
不動産、一般事務、男性
複数のタスクがある場合、優先順位をつけることが苦手で、混乱してしまう。集中力が持続しない。
医療・福祉・介護、受付、窓口業務、男性
何かを中断するときは、戻ったときの自分にわかりやすくしておくように、メモや目印をつけておく。急ぎの場合は周りにリマインドを頼むときもあります。
専門店、接客、女性
タスクの優先順位を決めてメモしている。困ったときには遠慮せず、他人を頼るようにしている。
団体・連合会・官公庁、福祉関係_その他、男性
複数のタスクがある場合には、先輩に聞きながら優先順位を決め、メモに残す。集中力が切れたら、トイレに行く。
医療・福祉・介護、受付、窓口業務、男性
ケアレスミスが多く、業務上の障害となることが多々あります。頭の中で多くの物事を一時記憶することを苦手としており、突発的な判断で行動してしまうことがあります。
百貨店・量販店、接客、男性
ケアレスミスが多い、モノや時間の管理が苦手、衝動的で落ち着かない。
一般事務、女性
ケアレスミスが多い。ワーキングメモリーが少ないため、直前のことをすぐ忘れる。
外食・フード、調理スタッフ、調理補佐、男性
分からないことや困ったことがあれば、その都度上司に報告・相談する。
通信、一般事務、男性
やることを声に出すことで、自分にリマインドする。必ずメモをとり、忘れないようにする。
外食・フード、調理スタッフ、調理補佐、男性
メモをこまめに取る。書類の作成等はミスがないか確認を心がける。疲れやすさがあるため、職場は近場を選ぶ、睡眠時間を十分にとるなど工夫をする。
医療・福祉・介護、介護、女性
自己管理が非常に重要な障害であると考えておりますので、疲労が許容範囲を超えないように行動します。TODOリストの作成を心がけており、抜けを極力少なくできるよう二重チェックをするようにしています。
百貨店・量販店、接客、男性
一つのことに集中すると、他の仕事を忘れることがあります。
医療・福祉・介護、男性
集中ができなくて、周りをキョロキョロしてしまうところがあるので、他の人より作業に時間が掛かってしまい、職場の同僚に迷惑をかけてしまうことがある。そのため、いつも段取りが悪くて焦ってしまい、余計なミスをして、足を引っ張ることが多く、かなり困っていた。
コンピュータ・通信・精密機器、男性
とにかく一日中バタバタしており、それが度を越しているので、周りに迷惑だと上司の上司から呼び出されて何度か叱責されました。仕事中に呼び止められるなどして、一瞬でも集中が他へ移ると、今やっていたことをすっかり忘れてしまいます。「ちょっと手伝う」はずがそのまま1日他人の作業に費やしてしまい(自分の仕事を忘れている)、当然終わっているはずの自分の担当分が未完で大目玉でした。
化学・素材、女性
過集中と衝動性、時間の感覚が理解できないという症状が業務の上でとてもネックになりました。一度業務に集中しだすと、食事や終業時間も忘れて仕事をし続けていたので、周りの上司や同僚も巻き込んで残業になることが多く困りました。
サービス・外食・レジャー系、女性
作業しているときは、自分が持続できる時間を自分で考えて、実践してできたならすこしずつ時間を伸ばすように工夫したり、段取りが悪いところは自分で考えたりした。それでもダメだったら、周りの人にアドバイスをもらい少しずつ改善をしていた。
コンピュータ・通信・精密機器、男性
集中力が切れたときにはお手洗いへ行き、一度リセットする。
不動産、一般事務、男性
社内では自分に仕事を発注するための時間・タスク管理ツールを制作し、それに従って仕事を発注してもらっている。家ではアラームで過集中を断ち切り、タスクをグループ化して次にやることに迷いが発生しないようにしている。
人材、WEBディレクター、男性
過集中でアラームをつけてもやめることが難しい(頭の中では常に多動)ので、休憩するときは仕事場所から離れて、全く関係のないものを視界に強制的にいれる。
専門店、接客、女性
コミュニケーションをとることが苦手で、お客様との会話を続けられなかった。
百貨店・量販店、女性
人とのコミュニケーションがうまくとれないので、人間関係がいつも悪くなってしまう。
軽作業、男性
やはりコミュニケーションに難しさがあるため、人間関係です。自分にはそこまで問題はないと思っていても、周囲からは「えっ?」と思われる行動が多かったようで、叱られたり、陰口を叩かれたりすることがありました。
教育、男性
可能な限りで座席の配置を変えてくださったり、案件の納期が近づくと頻繁に声掛けをしてくださったりしました。
サービス・外食・レジャー系、女性
職場内でコミュニケーションがうまくとれないときに、直接言い難いことでもメールでの相談ができ、病院に行きたい、鬱の薬の副作用で仕事がままならないときには、時間の都合を相談できる。また、無理があった場合時間をいただいて仕事をすることができ、スケジュールを明確にしてもらい、突発的なトラブルが避けられるよう勤務内容を把握できるよう配慮してくれた。
専門店、一般事務、女性
苦手な人との昼休憩を時間差でしてくださっていた。今思えば大変な迷惑だったと思う。その方とは入社時から見事に反りが合わなかった。
小売・流通・商社系、総務、女性
人の話を理解するのに時間がかかり、何回も質問しに行きます。電話は相手の顔が見えないのと、声が聞き取りにくいので、特に苦手でした。「だいたい」と言われてもわからないので、明確な時間や量、やり方がわからないと混乱していました。
技術系、女性
電話や口頭で指示を受ける場合、聞き取りが苦手。
医療・福祉・介護、女性
他人との会話がうまくできない、そのため、電話応対や接客などの対人業務が苦手です。
軽作業、女性
耳からの情報処理に遅れがあるので、電話対応について相談したところ、どうしても電話番を行わなくてはいけない場合をのぞき、電話番から外してもらっています。仕事を複数抱えているとき、何を優先すればよいのかを聞けば、面倒くさがらずに指示してくれます。
専門店、営業事務、女性
可能な限り、電話での応対を代わっていただきました。なるべく紙に書いて指示をくれた。
医療・福祉・介護、女性
診断書に「外線からの電話は、頭で整理ができないので禁止」と書いてもらったら、休憩時は出ないといけませんでしたが、あとは出なくていいと言われました。
医療・医薬、医療事務、男性
健常者と同じように仕事を割り振られたときに、受けた指示(納期や重要な提出項目)が最後まで遂行できない。指示の意図がすぐには理解できず、何度も確認し時間を忘れてしまう。
システムインテグレータ、コールセンター、オペレータ、女性
あいまいな指示を理解するのが苦手だったので『適当にやっておいて』などと指示されると、どのように動けばいいか分からず、固まってしまうことがよくありました。
医療・福祉・介護、女性
大雑把なことやあいまいなことが苦手な私は、最初は床をどこまで綺麗にしたらいいのか困りました。
女性
あいまいな指示や急な指示については、いつまでに、どこで、何を、どんなふうに作業するか細かく確認をしてメモするようにしました。
医療・福祉・介護、女性
あいまいなことは苦手なので、ルールの提示があり、とても助かりました。
教育、女性
毎日、他のパートさんの仕上がりの床を見て、従業員に注意受けない程度の仕上がりを確認し、ある程度の仕上がりを覚えられるようになったので、作業にストレスが減りました。
女性
常にBGMや話し声や雑音があふれているので、聴覚が敏感な人にも負担が強い。
百貨店・量販店、接客、女性
感覚過敏があり、人の多い場所や雑音・視覚刺激の多い場所だと、過度に疲労してしまう傾向があります。
百貨店・量販店、接客、男性
感覚過敏があり、小さな音や高い音、ざわざわした空間では集中ができない。
医療・福祉・介護、医療関係、女性
出社して仕事を行うとき、オフィスの物音で精神が消耗しないように別室を用意してもらっています。
人材、WEBディレクター、男性
管理職はとてもよくサポートをしてくれ、病院への同行受診をしてくれた。週に何度も2人で話す時間を設けてくれた。衝立のあるデスクを用意してくれて、業務中の音を遮るためのイヤーマフの使用許可をくれた。
医療・福祉・介護、女性
オープンで働いたのはまだ2か所なのですが、1か所目は、帰り際に忙しくなると、「忘れ物しないように」「バスの時間に遅れないように帰りなよ」と声をかけてくれました。同時進行で複数のことをやらなくてはいけない状況になっても「こっち優先でいいよ」などと、優先順位まで指示をしてくれるので助かりました。また、「変わったところあってもパソコンができるからいいよね」「笑顔が明るいからいいよね」などと、いいところを見つけてくれました。2か所目は、打ち明けてもADHDや発達障害自体がなんなのかよくわからないようでした。医療職ではあるのですが分野が違い、また、年配の方だとまだまだ浸透していないのだなと思いましたが、それはそれで普通に接してくれるからいいかなと切り替えました。
女性
やはりオープンにするまでは仕事ができないとレッテルを貼られ、責められることがしばしばありました。病気をオープンにしてからの周りのサポートはとてもありがたく、上司も電話応対などよりも資料整理などの仕事を主にしてくれるなど配慮してもらえました。
専門商社、女性
オープンにしたことで、周囲に必要以上に気を遣い、ミスをとがめられないかびくびくしながら過ごすことが減りました。
百貨店・量販店、女性
最初は施設に対しては満足していましたが、段々規模が大きくなるにつれて、スタッフの数の少なさがひどくて、障害をオープンにしてもないがしろにされてしまったことが悔しく思います。パソコンを使って社会貢献という姿勢がよかったと思いますが、せめて色々な障害がある方がいるのであれば、だれか一人でもSOSを聞いて対応してもらえていたら、やめないで済んだと思っています。
団体・連合会・官公庁、女性
ADHDだと診断され、上司との面談で、自分がADHDで物忘れがひどく困っていることを相談したら「そんなの誰にでもあることだから気にしなくていい、それを言ったら私も忘れっぽいから同じ」と言われ伝わらなかったこと。
総合商社、接客、女性
勤務して1年で障害、疾患が発覚する。直属の上司やリハビリテーション科のトップに相談し、ADHDの詳細が載った本や、現状を伝えるが「で、これを知ったところでどうしたらいいの?」、「自分で考えて」と匙を投げられたため。
医療・福祉・介護、医療関係、女性
障害者枠として入社しようとするのであれば、非常に狭き門であることを覚悟した方がよいです。落ちて当たり前です。面接では会社に対して要求する合理的配慮について聞かれます。自分には何ができて何ができないかを明確にする必要があります。私は障害者枠では就職活動に失敗し、結局過去の経験を生かした一般枠での雇用となりましたが、どうにか今の所でうまくやっていけていると思います。
百貨店・量販店、接客、男性
職場には障害をオープンにしていませんが、私が忘れやすいことに少しずつ気づいてくれているようです。締切間近になると声をかけてくれたり、同じ質問をしても優しく教えてくれたりしてくれます。上司は「助けてほしいときは助けてくれって言いなさい」と言ってくれていて、実際いつも助けられながら仕事をしています。
医療・医薬、女性
障害をオープンにしていないゆえの苦しさというのも確かに存在します。その一方で、障害をオープンにしていないからこそ、お給料が障害者雇用よりもいいのかなとも思います。障害者にしてはもらっている方だと思います。ただ、その分大変ではあります。すべて自分で病状を管理しなくてはなりませんので。
医療・福祉・介護、女性
私の障害のことは、公では言うことができず、ただ物覚えが悪く理解力がなくて仕事ができない人と判断されるような形になりました。それでも負けずに働いていたつもりだったのですが、やはり最終的には、仕事が裁けない、仕事ができないと言う形で見られることになり、思い切って自分の障害を告白すればよかったと思っております。でも、そんなことをしたならば、余計に追い込まれるような気がしましたので言えずにいました。
専門店、接客、男性
障害のことをオープンにするかどうか、という選択肢があったのですが、私はクローズド(障害を持っていることを隠す)の状態で働くことに決めました。一番困ったこととして、私は耳から聞いた情報を記憶できないのです。そのことでコミュニケーションの行き違いがあり、とても怒られましたが、障害のせいだということを表に出さなかったので本当に辛い思いをしました。
医療・福祉・介護、男性
自分が発達障害ということは会社には話していなかったので、社員や従業員は誰も知らなかったせいで健常者として見られていたので、気が利かないとか積極性がないとか見られていたんじゃないかと思います。働いているうちに自分に対する態度が、他の人とはだんだん違ってきて、あまりかかわらなくなっていきました。
物流・倉庫、軽作業、男性
ハローワークから職業訓練で福祉専門学校にいき、 学校にきた募集告知で先生にすすめられた。
医療・福祉・介護、介護、女性
市のハローワークで探しました。そのときは特に障害に気がついていなかったのですが、昔から脳貧血で倒れやすく、その部分で相談に乗ってもらい、ずっと同じ位置で立ちっぱなしになるレジ業務などは避けて探していただきました。
専門店、受付、窓口業務、女性
ハローワークで、障害者雇用担当のベテランの方に、面接で話すことができない自分に同伴して説明を代行してもらいました。それどころか、本来求人票は一般の障害者向けの軽作業系だったのですが、自分のスキルを売り込んでもらったおかげで、業務内容から雇用条件までガラッと変わり、給与も大幅向上しました。
人材、WEBディレクター、男性、
人材紹介会社から第二新卒という扱いでサービスを受けました。私の障害のことを担当者の方にお話ししましたら、担当者の方が、非常に配慮してくださり、私を導くような形でデイサービスセンターを紹介してくださったことに感謝しております。
医療・福祉・介護、女性
面接の日程調整などを行ってくれたので、非常にスムーズだった。
専門商社、軽作業、男性
私がADHDであることを理解してくださり、できる仕事とできない仕事を綿密にヒアリングして理解してくださいました。私が障害持ちであることを、担当者の方が前もって派遣先の企業に伝えてくださり、入社後も企業とスムーズにやりとりができました。
食品・化粧品、接客、男性
やはり、会社見学の際に、障害を持っていればその障害を受け入れてくれるような職場環境であるのかどうか、もし、インターンシップ等が実施されているようであれば、受けてみて、その企業の風土を知ることが大切であると思います。
専門店、接客、男性
障害をオープンにするか、クローズにするか。どこまで自分の障害の特性や、苦手なところを理解して相手に伝えることができるか。一度仕事体験や、10分以上の見学をさせてもらう、実際に勤務している人に魅力よりも「どこが大変か」を聞く。一つ一つ丁寧に見ていくことが大事だと思います。
医療・福祉・介護、女性
一番大切なのは職場見学です。企業の障害者に対する取り組みは、段差の有無やトイレの広さなどでわかる部分はあります。また、障害者が少ないと差別的な雰囲気になりやすいので、他の障害者の在職の有無も確認した方がよいです。
物流・倉庫、軽作業、男性
お給料と、仕事内容や、仕事場所はしっかり確認しておくべきだと思います。 入ってからこんなんじゃかなったと思うことをなるべく少なくするため、面接ときなど、自分の譲れないポイントはしっかり把握して、伝えることが大切だと思います。
接客、女性
就職先は有名企業だからといって、必ず障害に理解があるとは限らないことです。資格者であれば採用はされますが、その後の教育は健常者と同じで、配慮は少ないです。そういった配慮のある教育計画があるか、面接時に質問する必要があります。
医療・医薬、医療関係、男性
自分の長所、短所、できること、できないことをハッキリさせておき、「どんなことで会社に貢献できるか」ということをまとめておいた方が、面接はスムーズに進む。
専門商社、軽作業、男性
より望ましい職業の選択や能力開発における相談・助言を専門とする国家資格「キャリアコンサルタント」のほか、米国CCE, Inc.認定の「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」の資格を取得。福祉・医療介護分野の研究などにも従事しています。