315人の体験談から学ぶ、ADHDの方に向いている仕事と働き方

315人の体験談から学ぶ、ADHDの方に向いている仕事と働き方

大人のADHDという言葉をよく聞くようになりました。
仕事をしている方のなかには、ADHDの特性とうまく付き合いながら働いている方もいれば、仕事が思う通りにできない、ミスが多くて辛い、などの悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

例えば、「マルチタスクが苦手」、「約束の時間に遅れてしまう」など、ADHD特有の悩みを抱えていませんか?

そんなときは、同じ境遇の方々の声に耳を傾けてみましょう。今回のコラムでは、ADHDのある方315人の口コミをもとに

・仕事の悩みとその解決策
・向いている仕事の探し方

についてのアドバイスを紹介します。
障害者雇用の専門家ジョジョさん(社会福祉士、プロコーチ)にもアドバイスをいただきました。

仕事に悩みや不安がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

*この記事はジョジョさんに監修していただきました
ジョジョさん

産業カウンセラー、社会福祉士(ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、プロコーチの資格を持ち、就労継続A、B型にて支援員として、身体障害、精神障害、知的障害のある方への支援を行う。 自身も悩みを抱えギャンブル依存症になった経験から、「悩みから夢まで話せる友達が見つかる東京の居場所”ココトモハウス“と出会い、現在はその管理人として多くの方から信頼を寄せている。生きづらさを抱える人達を社会と繋げて、豊かな社会を作ることがミッション。



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目次

1.ADHDとは

2.ADHDの特性による仕事の悩みとその対策

3.ADHDの方が職場で抱える悩みとその対策

4.転職や就活ではADHDをオープンにするかクローズにするか

5.転職や就活の参考に、ADHDの方におすすめの企業・業界・職種

6.求人の見つけ方

7.企業情報の集め方

8.専門家からのアドバイス

9.最後に

1.ADHDとは

    「発達障害」は、子ども特有のものではありません。成長した後も症状が持続したり、大人になってから気づく人も増えています。中でも、「注意力に問題が生じる・落ち着きがない」などの特徴がある「注意欠如・多動症(ADHD)」は、成人の3~4%が持っていると言われており、診断を受ける大人が増えています。

    【大人のADHDの特徴】
    子どもも大人も同じく、「多動性・衝動性」による特徴と「不注意」による特徴があります。

    ■多動性・衝動性による特徴
    「目的のない動きをする」「感情が不安定になりやすい」「過度なおしゃべりや不用意な発言」などがあります。

    ■不注意
    「注意を持続するのが難しい」「ケアレスミスが多い」「片づけが苦手・忘れ物が多い」などがあります。

    参考:NHKホームページ「大人の 「注意欠如・多動症(ADHD)」とは?特徴や治療を解説!」

ADHDによる症状は人により異なりますが、ある程度の傾向がみられるようです。その傾向は、仕事にも影響を及ぼし、悩みに発展することもあります。
まずは、ADHDの方の悩みを見てみましょう。

2.ADHDの特性による仕事の悩みとその対策

ADHDの特性は人によって異なるため、派生する悩みもさまざまです。しかし、口コミをみていくと、以下のような傾向がみられました。

【ADHDの特性による仕事の悩み、その傾向】
  • 複数のことを同時に処理すること(マルチタスク)が苦手である
  • ミスが多い
  • 集中力が続かない、もしくは集中しすぎてしまう
ここからは口コミをもとに、ADHDのある方が抱える仕事上の具体的な悩みとその対策について紹介します。

2-1. 複数のことを同時に処理すること(マルチタスク)が苦手という悩みとその対策

口コミには、複数の業務を同時に進行できない、一度に多くの仕事を頼まれると混乱するといった「マルチタスク」に関する悩みが多くありました。

【仕事上の悩み】

2つ以上のことを掛け持ちして行うのが苦手です。例えば、時間内にやらなければならない品出しや売り場作りの途中にレジに呼ばれたりすると、どちらかの作業にミスが起きたり、何かを忘れたり、作業にすごく時間が掛かってしまいます。
専門店、接客、女性

一度に複数のタスクを処理することが苦手。集中力が続かない。周りのペースに合わせるのが苦手。
不動産、一般事務、男性

複数のタスクがある場合、優先順位をつけることが苦手で、混乱してしまう。集中力が持続しない。
医療・福祉・介護、受付、窓口業務、男性



マルチタスクをこなすのが苦手という特性は、ADHDの方によくみられます。複数の作業を同時に進行せざるを得なくなった場合に、優先順位をつけることが難しく、作業に時間がかかってしまうことやパニックになってしまうことが、仕事の悩みになっています。

マルチタスクをこなすことが苦手という悩みに対しては、自分なりの工夫や対策を行って乗り越えている方もいます。

【工夫や対策】

何かを中断するときは、戻ったときの自分にわかりやすくしておくように、メモや目印をつけておく。急ぎの場合は周りにリマインドを頼むときもあります。
専門店、接客、女性

タスクの優先順位を決めてメモしている。困ったときには遠慮せず、他人を頼るようにしている。
団体・連合会・官公庁、福祉関係_その他、男性

複数のタスクがある場合には、先輩に聞きながら優先順位を決め、メモに残す。集中力が切れたら、トイレに行く。
医療・福祉・介護、受付、窓口業務、男性



マルチタスクをこなすためには、まず作業の優先順位を付けることが必要です。そのために優先順位を可視化し把握している方がいました。具体的には、メモを活用することです。メモを使えば、仕事のやり忘れを防ぐことにもなるため、取り入れてみましょう。

また、先輩や同僚など周囲の人に定期的な声かけをお願いし、タスク忘れを防いでいる方もいました。

仕事の指示を一つずつ出してもらうことが理想ですが、業務の都合上、マルチタスクを避けることが難しい場合もあります。そんなときは、周囲の同僚や先輩に声かけをお願いしたり、メモを活用したりすると、状況が改善されるかもしれません。

2-2.ミスが多いという悩みとその対策

口コミには、ケアレスミスが多いという悩みも多くみられました。ミスの多さは、仕事への影響も大きく、落ち込む方もいるのではないでしょうか。具体的なコメントをみていきましょう。

【仕事上の悩み】

ケアレスミスが多く、業務上の障害となることが多々あります。頭の中で多くの物事を一時記憶することを苦手としており、突発的な判断で行動してしまうことがあります。
百貨店・量販店、接客、男性

ケアレスミスが多い、モノや時間の管理が苦手、衝動的で落ち着かない。
一般事務、女性

ケアレスミスが多い。ワーキングメモリーが少ないため、直前のことをすぐ忘れる。
外食・フード、調理スタッフ、調理補佐、男性



ケアレスミスが多いことも、ADHDの特性の1つです。口コミには、こうした特性を認識し、仕事をする際に対策を講じている方からのアドバイスも寄せられました。具体的な工夫や対策についてみていきましょう。

【工夫や対策】

分からないことや困ったことがあれば、その都度上司に報告・相談する。
通信、一般事務、男性

やることを声に出すことで、自分にリマインドする。必ずメモをとり、忘れないようにする。
外食・フード、調理スタッフ、調理補佐、男性

メモをこまめに取る。書類の作成等はミスがないか確認を心がける。疲れやすさがあるため、職場は近場を選ぶ、睡眠時間を十分にとるなど工夫をする。
医療・福祉・介護、介護、女性

自己管理が非常に重要な障害であると考えておりますので、疲労が許容範囲を超えないように行動します。TODOリストの作成を心がけており、抜けを極力少なくできるよう二重チェックをするようにしています。
百貨店・量販店、接客、男性



ミスをしないように注意を払うことや再確認をすることは重要です。しかし、疲れが溜まっていると、目の前の仕事に集中することが難しくなります。そのためにも、まずは疲れをためないことを心がけましょう。十分な睡眠時間や休憩をとり、自分のコンディションを整えておくことが大切です。

そのほか、やるべきことを声に出してみたり、メモをとったり、TODOリストを作成することにより、自分自身でタスクを思い出せるように工夫をしている方もいました。また、こまめに上司や先輩に相談し、第三者からの確認を得ることも良いでしょう。

2-3. 集中力が続かない、もしくは集中しすぎてしまうという悩みとその対策

ADHDの方には、苦手な作業や興味のない作業に対しては集中力が途切れやすく、反対に、得意なことや興味があることに対しては集中しすぎて周りが見えなくなってしまうという特性があります。こうした特性は、仕事をするうえでどのような悩みにつながるのでしょうか。具体的なコメントをみていきましょう。

【仕事上の悩み】

一つのことに集中すると、他の仕事を忘れることがあります。
医療・福祉・介護、男性

集中ができなくて、周りをキョロキョロしてしまうところがあるので、他の人より作業に時間が掛かってしまい、職場の同僚に迷惑をかけてしまうことがある。そのため、いつも段取りが悪くて焦ってしまい、余計なミスをして、足を引っ張ることが多く、かなり困っていた。
コンピュータ・通信・精密機器、男性

とにかく一日中バタバタしており、それが度を越しているので、周りに迷惑だと上司の上司から呼び出されて何度か叱責されました。仕事中に呼び止められるなどして、一瞬でも集中が他へ移ると、今やっていたことをすっかり忘れてしまいます。「ちょっと手伝う」はずがそのまま1日他人の作業に費やしてしまい(自分の仕事を忘れている)、当然終わっているはずの自分の担当分が未完で大目玉でした。
化学・素材、女性

過集中と衝動性、時間の感覚が理解できないという症状が業務の上でとてもネックになりました。一度業務に集中しだすと、食事や終業時間も忘れて仕事をし続けていたので、周りの上司や同僚も巻き込んで残業になることが多く困りました。
サービス・外食・レジャー系、女性



集中力が途切れやすい場合は、作業に時間がかかり、反対に集中しすぎる場合は、他のやるべきことを忘れたり、就業時間後も働き続けたりすることがあるようです。

しかし、このような悩みも、自分なりの工夫や対策により解決できることもあります。

【工夫や対策】

作業しているときは、自分が持続できる時間を自分で考えて、実践してできたならすこしずつ時間を伸ばすように工夫したり、段取りが悪いところは自分で考えたりした。それでもダメだったら、周りの人にアドバイスをもらい少しずつ改善をしていた。
コンピュータ・通信・精密機器、男性

集中力が切れたときにはお手洗いへ行き、一度リセットする。
不動産、一般事務、男性

社内では自分に仕事を発注するための時間・タスク管理ツールを制作し、それに従って仕事を発注してもらっている。家ではアラームで過集中を断ち切り、タスクをグループ化して次にやることに迷いが発生しないようにしている。
人材、WEBディレクター、男性

過集中でアラームをつけてもやめることが難しい(頭の中では常に多動)ので、休憩するときは仕事場所から離れて、全く関係のないものを視界に強制的にいれる。
専門店、接客、女性



集中力が続かない場合は、仕事を始める前に仕事の内容を整理して段取りをつけましょう。すると、仕事の順序ややるべきことが把握できるようになります。今集中すべきことを明らかにし、気が散らないように努めるとよいでしょう。

反対に、集中しすぎてしまうという悩みに対しては、パソコンやスマートフォンなどのアラーム機能を使い、強制的に作業を打ち切るという対策がおすすめです。

また、一旦その場を離れて、気持ちを切り替えるという方法も有効です。集中しすぎてしまう方、集中力が途切れてしまう方の両方に効果的でしょう。

ここまでは、ADHDのある方の仕事上の悩みとその対策について紹介しました。
次に、ADHDのある方が職場で抱えやすい悩みとその工夫や対策をみていきましょう。

3.ADHDの方が職場で抱える悩みとその対策

ADHDのある方が抱える悩みはさまざまですが、職場で抱える悩みに絞ってコメントをみていくと、共通している点がみられました。

【ADHDのある多くの方が抱える職場での悩み】
  • 人付き合いが苦手である
  • 話を理解するのに時間がかかる
  • 感覚過敏がある
これらの職場の悩みとともに、悩みを解決するためにできる職場の対応方法を、口コミを交えながら紹介していきます。

 

3-1. 人付き合いが苦手という職場での悩みとその対策

ADHDのある方は、コミュニケーションが苦手な方が多くいます。しかし、仕事をするうえで、職場の人間関係や顧客とのやりとりなど、コミュニケーションは避け難いものです。ADHDのある方は、コミュニケーションが苦手なことで、職場ではどのようなことに悩んでいたのでしょうか。

【職場での悩み】

コミュニケーションをとることが苦手で、お客様との会話を続けられなかった。
百貨店・量販店、女性

人とのコミュニケーションがうまくとれないので、人間関係がいつも悪くなってしまう。
軽作業、男性

やはりコミュニケーションに難しさがあるため、人間関係です。自分にはそこまで問題はないと思っていても、周囲からは「えっ?」と思われる行動が多かったようで、叱られたり、陰口を叩かれたりすることがありました。
教育、男性



顧客とのコミュニケーションが必要な職場では、雑談など、仕事に関すること以外での臨機応変な会話も求められることがあります。しかしADHDのある方は、臨機応変な対応が難しく、会話できないことが悩みになっています。
また、いわゆる周囲の空気を読んで会話するということが苦手なため、誤解を生むこともあります。それゆえに職場の同僚との人間関係が悪化してしまうケースもあります。

ADHDのある方が抱えるこのような悩みに対して、職場ではどのような対応ができるでしょうか。

【職場の対応】

可能な限りで座席の配置を変えてくださったり、案件の納期が近づくと頻繁に声掛けをしてくださったりしました。
サービス・外食・レジャー系、女性

職場内でコミュニケーションがうまくとれないときに、直接言い難いことでもメールでの相談ができ、病院に行きたい、鬱の薬の副作用で仕事がままならないときには、時間の都合を相談できる。また、無理があった場合時間をいただいて仕事をすることができ、スケジュールを明確にしてもらい、突発的なトラブルが避けられるよう勤務内容を把握できるよう配慮してくれた。
専門店、一般事務、女性

苦手な人との昼休憩を時間差でしてくださっていた。今思えば大変な迷惑だったと思う。その方とは入社時から見事に反りが合わなかった。
小売・流通・商社系、総務、女性



職場に苦手な人がいるときは、座席配置を変えたり、休憩時間をずらしたりすることで、なるべくコミュニケーションの機会を減らし、働きやすい環境を作るようにしている職場もあります。また、口頭でのコミュニケーションが苦手な方には、メールを使って連絡することで、相談しやすい雰囲気を作ることができます。

コミュニケーションや人付き合いが苦手であるというADHDの特性を職場で理解してもらい、必要なサポートを受けるためには、どのように働きかけるとよいでしょうか。紹介した口コミを整理してまとめました。

【職場で必要なサポートを受けるための働きかけ】

  • 顧客とのコミュニケーションが必須かどうかなど、仕事内容についてよく確認する
  • 休憩時間のとり方のルールについて、全員一斉にとる必要があるか、交代制か確認する
  • 職場としての、仕事の進め方に関する考え方を確認しておく(同僚や上司にこまめに報告や連絡をしながら仕事を進めるのか、黙々と作業を進めるのか)
  • オフィスワークの場合、座席は固定制か、フリーデスクか、席替えの機会はあるかを確認する
仕事の進め方については、職場により考え方が違います。黙々と作業を進めることが評価される職場もあれば、コミュニケーションを密にとって進めていくことが評価される職場もあります。
こうした評価軸は、明確に定められているというよりは、職場の雰囲気や上司の考え方、仕事内容によるところが大きいでしょう。

そのため、面接などで質問をしても、はっきりとした答えが得られないかもしれません。可能であれば、職場見学などで実際に働く場所を見てみることが、職場の雰囲気を掴むヒントになります。

3-2. 話を理解するのに時間がかかるという職場での悩みとその対策

ADHDのある方の中には、人の話を理解することに時間がかかるという特性を持っている方がいます。口コミをみていくと、「話を理解するのに時間がかかる」という特性から発生する悩みは、大きく以下の2つに分けることができました。

  1. 電話応対が苦手という悩み
  2. あいまいな指示が苦手という悩み
では、これらの悩みを具体的にみていきましょう。

①電話応対が苦手という悩み

【職場での悩み】

人の話を理解するのに時間がかかり、何回も質問しに行きます。電話は相手の顔が見えないのと、声が聞き取りにくいので、特に苦手でした。「だいたい」と言われてもわからないので、明確な時間や量、やり方がわからないと混乱していました。
技術系、女性

電話や口頭で指示を受ける場合、聞き取りが苦手。
医療・福祉・介護、女性

他人との会話がうまくできない、そのため、電話応対や接客などの対人業務が苦手です。
軽作業、女性



電話応対は、相手の要望を聞き、即座に理解して対応をすることが求められる業務です。複数のことを同時に処理する能力が求められる仕事だとも言えます。

そのため、人の話を理解するのに時間がかかる方や、マルチタスクが苦手な方にとって、電話応対の業務は苦痛に感じることがあります。

コメントには、ADHDの方が抱えるこうした悩みを理解し、対応している職場についての意見も寄せられました。具体的にどのような対応がとられているのか、みていきましょう。

【職場の対応】

耳からの情報処理に遅れがあるので、電話対応について相談したところ、どうしても電話番を行わなくてはいけない場合をのぞき、電話番から外してもらっています。仕事を複数抱えているとき、何を優先すればよいのかを聞けば、面倒くさがらずに指示してくれます。
専門店、営業事務、女性

可能な限り、電話での応対を代わっていただきました。なるべく紙に書いて指示をくれた。
医療・福祉・介護、女性

診断書に「外線からの電話は、頭で整理ができないので禁止」と書いてもらったら、休憩時は出ないといけませんでしたが、あとは出なくていいと言われました。
医療・医薬、医療事務、男性



理解のある職場では、電話応対が苦手な人ができるだけ電話応対しなくてよい配慮があります。
電話応対は、臨機応変な対応が必要です。なかなかマニュアル通りに進まないことから、自分でできる対策も限られます。そのため、ADHDの特性を理解し、なるべく電話応対をしなくてもよいように配慮をしてくれる職場は、ADHDのある方にとって働きやすい環境といえます。

②あいまいな指示が苦手という悩みとその対策

【職場での悩み】

健常者と同じように仕事を割り振られたときに、受けた指示(納期や重要な提出項目)が最後まで遂行できない。指示の意図がすぐには理解できず、何度も確認し時間を忘れてしまう。
システムインテグレータ、コールセンター、オペレータ、女性

あいまいな指示を理解するのが苦手だったので『適当にやっておいて』などと指示されると、どのように動けばいいか分からず、固まってしまうことがよくありました。
医療・福祉・介護、女性

大雑把なことやあいまいなことが苦手な私は、最初は床をどこまで綺麗にしたらいいのか困りました。
女性



こうした悩みに対し、職場ではどのような対応ができるのでしょうか。

【職場の対応】

あいまいな指示や急な指示については、いつまでに、どこで、何を、どんなふうに作業するか細かく確認をしてメモするようにしました。
医療・福祉・介護、女性

あいまいなことは苦手なので、ルールの提示があり、とても助かりました。
教育、女性

毎日、他のパートさんの仕上がりの床を見て、従業員に注意受けない程度の仕上がりを確認し、ある程度の仕上がりを覚えられるようになったので、作業にストレスが減りました。
女性



ADHDのある方は「あれ、それ、大体、〇〇ぐらい」といったあいまいな表現を理解することが難しいため、作業手順や納期については具体的な日にちで指示することが必要です。そのような特性が理解できない上司や同僚もいるかもしれません。周囲の理解を得るまでは、明確な回答が得られるように質問し、あいまいな点を少なくしていくと良いでしょう。
また、自分と同じ業務を担っている職場の同僚がいる場合は、その人の仕事の仕方を見て、真似するという方法もあります。

このように、自ら実行できる対策もあります。しかし、職場の同僚や上司があいまいな指示を避けることを、ADHDのある方は望んでいます。明確な指示を受けることは、多くの従業員の働きやすさにもつながっています。また、指示の出し方を相談することは、指示の出し方について職場の全員が考えるきっかけになることもあります。

ADHDの特性を理解し、柔軟な対応をとってくれる職場で働くことは、ADHDのある方にとって理想的です。それでは「話を理解するのに時間がかかる」という悩みをもつ方が、職場で必要なサポートを受けながら働くためには、どのような働きかけが必要なのでしょうか。

【職場で必要なサポートを受けるための働きかけ】

  • 必要に応じて休憩をとらせる、従業員の特性を把握して指示の出し方を変えるなど、臨機応変な対応をとっているか確認する
  • 主にルールやマニュアルに沿って行う仕事か、臨機応変な対応が求められる仕事かを確認する
  • 病気や障害の有無に関わらず、多様な人材を採用しているか確認する
  • 従業員の得意な業務、苦手な業務を把握し、適材適所に配置しているか確認する
  • 柔軟な配置転換を行うのに十分な人員配置となっているか確認する
一人ひとりに合った指示の出し方など、細かな配慮が望めるかどうかは、求人情報などから把握できません。しかし、障害の有無に関わらず、多様な人材を受け入れていて、定着率も高い職場は、従業員の個々の事情を理解し、柔軟に対応している可能性が高いと考えられます。

そのため、理解のある職場を見つけるためには、障害者雇用の実績や定着率、育児や介護をしながら働いている人がいるかどうか、また、そうした方々の雇用形態について確認してみましょう。

また、仕事内容について、主にルールやマニュアルに沿って行う仕事であれば、臨機応変な対応が求められる仕事に比べて、あいまいな点が少ない可能性もあります。ルールやマニュアルの順守が重視される職場かどうかを確認しておくことも有効です。

理想的な職場環境は、従業員それぞれの得意な仕事、苦手な仕事を把握し、適材適所に配置しています。しかし、人員不足の職場であれば、柔軟な配置転換は難しくなります。そのため、面接時や職場見学時、もしくは求人サービスを利用する場合はその担当者に、職場の人員の充足状況や柔軟な配置転換の機会の有無について確認しておくことも、理想的な職場を見つけることに役立つでしょう。

3-3.感覚過敏に対する職場での悩みとその対策

ADHDの方の中には、感覚過敏の特性がある方がいます。感覚過敏のある方は、職場でどのような悩みがあるのでしょうか。

【職場での悩み】

常にBGMや話し声や雑音があふれているので、聴覚が敏感な人にも負担が強い。
百貨店・量販店、接客、女性

感覚過敏があり、人の多い場所や雑音・視覚刺激の多い場所だと、過度に疲労してしまう傾向があります。
百貨店・量販店、接客、男性

感覚過敏があり、小さな音や高い音、ざわざわした空間では集中ができない。
医療・福祉・介護、医療関係、女性



こうした悩みについて、職場ではどのような対応ができるのでしょうか。次に、職場での工夫や対策についてのコメントをご紹介します。

【職場での対応】

出社して仕事を行うとき、オフィスの物音で精神が消耗しないように別室を用意してもらっています。
人材、WEBディレクター、男性

管理職はとてもよくサポートをしてくれ、病院への同行受診をしてくれた。週に何度も2人で話す時間を設けてくれた。衝立のあるデスクを用意してくれて、業務中の音を遮るためのイヤーマフの使用許可をくれた。
医療・福祉・介護、女性



感覚過敏という特性のある方に、休憩できる別室を用意する職場もあります。音や光などを可能な限り遮断し、本人の負担を軽減することが働きやすさにつながります。また、聴覚過敏のある方は、イヤーマフやヘッドフォンなど、音を遮断する道具を使用することで、ストレスを軽減できる可能性があります。個人の状況に応じて、道具の使用が認められる職場は、ADHDのある方も不安を取り除きながら働くことができます。

それでは、感覚過敏に理解を得て、職場で必要なサポートを受けるためには、どのように働きかければよいのでしょうか。上記で紹介したコメントを整理すると、次のようになります。

【職場で必要なサポートを受けるための働きかけ】

  • 従業員の個別の事情を把握する機会を設けているか確認する
  • 必要に応じて休憩がとれる、余裕のある業務スケジュールが組まれているか確認する
  • 休憩できる個室が用意されているか確認する
感覚過敏の方の状況に合わせて、職場全体の音や光をコントロールすることは難しいかもしれません。そのため、個別の対応を許可してもらえるかどうかを事前に確認することが大切です。

定期的な個別面談の実施や社内のホットラインの設置など、従業員の個々の事情を把握する機会を設け、一人ひとりが働きやすい環境の整備を目指している職場は、安心できそうです。

また、職場として個別対応をする姿勢があったとしても、そもそも休憩するスペースが確保されていないなど、物理的に対応が難しい場合もあります。
職場見学などで職場を訪問し、音や光のストレスが軽減できる場所を確認することも、働きやすい職場を見つける手がかりとなるでしょう。

4.転職や就活ではADHDをオープンにするかクローズにするか

ADHDのある方の多くは、障害をオープンにするか、クローズにするかということで悩むのではないでしょうか?
それは、伝えるか伝えないかで、働き方が大きく異なるからです。

では、オープン就労した方(障害者雇用枠で働いている方)、クローズ就労した方(一般雇用枠で働いている方)とでは何が違うのでしょうか?

4-1. オープン就労した方の体験

まずはADHDであることを職場に伝えた方のコメントです。オープン就労でよかったと感じること、反対に悩んだことはどのようなことでしょうか?

【オープン就労の良い点】

オープンで働いたのはまだ2か所なのですが、1か所目は、帰り際に忙しくなると、「忘れ物しないように」「バスの時間に遅れないように帰りなよ」と声をかけてくれました。同時進行で複数のことをやらなくてはいけない状況になっても「こっち優先でいいよ」などと、優先順位まで指示をしてくれるので助かりました。また、「変わったところあってもパソコンができるからいいよね」「笑顔が明るいからいいよね」などと、いいところを見つけてくれました。2か所目は、打ち明けてもADHDや発達障害自体がなんなのかよくわからないようでした。医療職ではあるのですが分野が違い、また、年配の方だとまだまだ浸透していないのだなと思いましたが、それはそれで普通に接してくれるからいいかなと切り替えました。
女性

やはりオープンにするまでは仕事ができないとレッテルを貼られ、責められることがしばしばありました。病気をオープンにしてからの周りのサポートはとてもありがたく、上司も電話応対などよりも資料整理などの仕事を主にしてくれるなど配慮してもらえました。
専門商社、女性

オープンにしたことで、周囲に必要以上に気を遣い、ミスをとがめられないかびくびくしながら過ごすことが減りました。
百貨店・量販店、女性



【オープン就労の悩み】

最初は施設に対しては満足していましたが、段々規模が大きくなるにつれて、スタッフの数の少なさがひどくて、障害をオープンにしてもないがしろにされてしまったことが悔しく思います。パソコンを使って社会貢献という姿勢がよかったと思いますが、せめて色々な障害がある方がいるのであれば、だれか一人でもSOSを聞いて対応してもらえていたら、やめないで済んだと思っています。
団体・連合会・官公庁、女性

ADHDだと診断され、上司との面談で、自分がADHDで物忘れがひどく困っていることを相談したら「そんなの誰にでもあることだから気にしなくていい、それを言ったら私も忘れっぽいから同じ」と言われ伝わらなかったこと。
総合商社、接客、女性

勤務して1年で障害、疾患が発覚する。直属の上司やリハビリテーション科のトップに相談し、ADHDの詳細が載った本や、現状を伝えるが「で、これを知ったところでどうしたらいいの?」、「自分で考えて」と匙を投げられたため。
医療・福祉・介護、医療関係、女性



ADHDのことを職場に伝えた方のコメントから、オープン就労について整理してみましょう。

オープン就労の良い点は、特性にあった指示の出し方や声かけ、業務内容の配分などの合理的配慮が受けられる可能性が高いことです。ADHDの特性により、電話応対などの一部の業務が苦手な方もいます。「失敗したらどうしよう」という不安を抱えながら苦手な業務を担当すれば、非常にストレスがかかります。オープン就労は、自分自身への過剰なプレッシャーの軽減も期待できます。

オープン就労の悩みは、勇気を出して相談したにも関わらず理解を示そうとしない職場や、ADHDへの理解が深まるように働きかけたことをないがしろにする職場があることです。オープン就労そのもののデメリットというよりは、職場に障害への理解がないことが課題でしょう。

 
【オープン就労のまとめ】

オープン就労であれば、ADHDの特性を理解してもらいやすくなり、指示の出し方などの合理的配慮を得やすくなります。結果として、業務でつまずくことも減り、ストレスも軽減されて能力が発揮できる可能性が期待できます。
一方で、ADHDをはじめとする病気や障害への理解が不十分な職場や、人員不足の職場は、オープンにしても配慮が行き届かない場合があります。オープン就労を考えている方は、職場の雰囲気やスタンスをよく確認することが必要でしょう。

ここまでは、オープン就労の良い点や気をつけるべきことを紹介しました。次に、クローズ就労をした方の意見をみていきましょう。

4-2. クローズ就労した方の体験

次は、ADHDであることを職場に伝えずに就労した方のコメントです。クローズ就労で良かったこと、反対に悩んだことについてみていきましょう。

【クローズ就労の良い点】

障害者枠として入社しようとするのであれば、非常に狭き門であることを覚悟した方がよいです。落ちて当たり前です。面接では会社に対して要求する合理的配慮について聞かれます。自分には何ができて何ができないかを明確にする必要があります。私は障害者枠では就職活動に失敗し、結局過去の経験を生かした一般枠での雇用となりましたが、どうにか今の所でうまくやっていけていると思います。
百貨店・量販店、接客、男性

職場には障害をオープンにしていませんが、私が忘れやすいことに少しずつ気づいてくれているようです。締切間近になると声をかけてくれたり、同じ質問をしても優しく教えてくれたりしてくれます。上司は「助けてほしいときは助けてくれって言いなさい」と言ってくれていて、実際いつも助けられながら仕事をしています。
医療・医薬、女性

障害をオープンにしていないゆえの苦しさというのも確かに存在します。その一方で、障害をオープンにしていないからこそ、お給料が障害者雇用よりもいいのかなとも思います。障害者にしてはもらっている方だと思います。ただ、その分大変ではあります。すべて自分で病状を管理しなくてはなりませんので。
医療・福祉・介護、女性



【クローズ就労の悩み】

私の障害のことは、公では言うことができず、ただ物覚えが悪く理解力がなくて仕事ができない人と判断されるような形になりました。それでも負けずに働いていたつもりだったのですが、やはり最終的には、仕事が裁けない、仕事ができないと言う形で見られることになり、思い切って自分の障害を告白すればよかったと思っております。でも、そんなことをしたならば、余計に追い込まれるような気がしましたので言えずにいました。
専門店、接客、男性

障害のことをオープンにするかどうか、という選択肢があったのですが、私はクローズド(障害を持っていることを隠す)の状態で働くことに決めました。一番困ったこととして、私は耳から聞いた情報を記憶できないのです。そのことでコミュニケーションの行き違いがあり、とても怒られましたが、障害のせいだということを表に出さなかったので本当に辛い思いをしました。
医療・福祉・介護、男性

自分が発達障害ということは会社には話していなかったので、社員や従業員は誰も知らなかったせいで健常者として見られていたので、気が利かないとか積極性がないとか見られていたんじゃないかと思います。働いているうちに自分に対する態度が、他の人とはだんだん違ってきて、あまりかかわらなくなっていきました。
物流・倉庫、軽作業、男性



クローズ就労について、上記で紹介したコメントをもとに整理してみましょう。

クローズ就労の良い点は、障害者枠に限定されないため、多くの求人情報の中から仕事を選べることです。納得できる給与を得られる可能性も高まります。また、中にはADHDについて伝えずとも配慮が受けられる職場もあるようです。
しかし、障害のことを職場に伝えなくても理解を示す職場であるかを事前に把握することはできません。配慮が受けられない職場であった場合、クローズ就労で働くことによるストレスで、体調を崩す能性もあります。

クローズ就労の悩みは、ADHDの特性への理解を職場に働きかけられないことです。ADHDの特性のために、話の理解に時間がかかったり、待ち合わせ時間に遅れたり、マルチタスクをこなすのが苦手だったりするにも関わらず、それらが本人の資質によるものとみなされてしまい、職場での評価が不当に下がってしまう可能性があります。

【クローズ就労のまとめ】

クローズ就労した方の中には、一般枠から望む仕事や満足する給与を得られた方もいます。しかし、その方々もクローズ就労を継続することの難しさを述べています。例えば、合理的配慮が得られないため、苦手な業務にも対応しなければなりません。ADHDの特性による業務上のミスも、本人の資質や性格によるものだと誤解され、叱責を受けるなどしてストレスが溜まっていく状況もうかがえます。

職場もADHDの特性を理解していれば、業務の役割分担を配慮し、作業効率を高める工夫ができるかもしれません。自分にも職場にもメリットのある環境にするためには、ADHDの特性を職場に知ってもらうことは必要なのかもしれません。

5.転職や就活の参考に、ADHDの方におすすめの企業・業界・職種

5-1. おすすめの会社、企業名

アサヒ飲料販売株式会社
コンプライアンス重視の企業で、セクハラ、パワハラなどは全くなかった。 障害を持っていても、それを理由に差別されたりなどもなく、人権を非常に重視していた。 産業医や臨床心理士の方がいるので、体調面の不安を気軽に相談することができる。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
→口コミの続きはこちらへ

株式会社かとう製菓
ほかの会社にない素晴らしい理解をしていただき、私にとても親切にしていただいて、休職中も私が抜けて大変なのに、皆さんがカバーしてくれてとても助かりました。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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株式会社丸広百貨店
百貨店のため、小売業などの労働組合があり、その組合の悩み相談(無料電話カウンセリング)が利用できる。福利厚生が充実している。職場の人間関係がよい。用事のあるときは、残業を少なめに早めに帰らせてもらえる。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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株式会社明治
最初は冷蔵・冷凍庫内作業員のアルバイトでの雇用でしたが、一人で黙々とこなす作業で気楽に働くことができていた。のちに正社員雇用となり、所属部署が代わり、多数の人と一緒に作業することになり、自分の特性上、苦手な部分も多かった。そのことを上司に相談すると、すぐに配置転換を行ってくれ、働きやすい環境を速やかに作ってくれた。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★★
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ゴールドエッグ株式会社
障害者に対し物凄く配慮をしてくれる。難しい仕事を無理にさせられなくて済む。 人間関係がとてもよく、親身になってよく相談に乗ってくれた。 障害者に対して物凄く理解のある会社だった。 毎年経営コンサルタントの方が面接を設けてくれていた。 土日祝日も仕事があったけど、子どものいる家庭では物凄く配慮してくれる会社だった。
満足度:★★★★★
配慮 :★★★★★
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株式会社ストライプインターナショナル
冷たい人間は1人もおらず、チームワークや声掛けがほんとうにすごい。セカンドファミリーを掲げていて、人を大切にしている。失敗した日はご飯に連れて行ってくれて励ましてくれ、もうなんというか、このご時世には珍しいほどのいい上司が集まっている。相談もしやすく、ダメなところは叱ってくれ、常に見ていてくれる(放ったらかしじゃない)ので安心して仕事が出来る。時間も相談できるので、短時間にしたいという相談や、休憩時間の長い契約にしてくれた。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★★
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相鉄ローゼン株式会社
この会社がおすすめの方は、こつこつと作業ができ、綺麗に整えることが好きな人です。コミュニケーションが多く求められることもあるのでコミュニケーションが好きな人がいいと思います。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★★
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山形中央信用組合
障害者であっても福利厚生が手厚く、メンタルヘルス面のサポート(特別休暇や優良心療内科の紹介など)がしっかりしているのがおすすめできます。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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有限会社山田家
女性が多くて接客にやりがいがある所です。男性と女性で仕事のポジションが分かれている部分が最高であり、仕事がやりやすいと思いました。
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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5-2. おすすめの業界・職種

それでは次に、ADHDの方におすすめの業界や職種を考えてみます。しかし、業界や職種はさまざまあり、ADHDの特性も人により異なるため、自分に合った業界や職種を見つけることは簡単ではありません。
そこで一つの手がかりとして、アンブレに届いたADHDのある方からの口コミ約300件の統計をとり、傾向をみてみました。

まずは、業界です。

ADHD人気業界グラフ


ADHD業界別満足度グラフ


統計の結果を見ると、多くの方が勤めている業界も、満足度が高い業界も「サービス・外食・レジャー系」「小売り・流通・商社系」でした。
ADHDのある方の満足度が高く、多くの方が働いている業界として、仕事探しの参考にしてみましょう。

次に、職種です。

ADHD職種割合グラフ


ADHD職種別満足度グラフ


統計の結果を見ると、多くの方が勤めている職種は、「販売・接客・サービス」「軽作業」「事務」でした。そして満足度が高い職種も同じく、「販売・接客・サービス」「軽作業」「事務」という結果になりました。

皆さんの予想した人気の高い業界、職種はどれでしたか?
業界と職種に関する詳しい調査結果は、以下のコラムでご覧いただけます。ぜひ参考にしてみてください。

ADHDのある方の転職、おすすめの仕事は?315人から成功例を学ぶ

▼ADHDの方が働いている企業は、こちらで確認できます。
では、このような企業はどのように探せばよいのでしょうか?

次は、仕事の探し方を確認していきましょう。

6.求人の見つけ方

6-1. 働き方によって選べる採用枠

求人には、一般枠(クローズ就労)障害者雇用枠(オープン就労)があり、障害者手帳を所持している方は、どちらにも応募することができます。

先にも述べたように、ADHDをオープンにするか、クローズにするかといった悩みは応募できる雇用形態にも影響してきます。
少し重複する部分もありますが、もう一度簡単に説明します。

一般枠は、障害があることを伝えずに働くことです(=クローズ就労)。職種の選択肢が広がり、昇進や昇給などの機会もあります。しかし、ADHDの理解を得られにくく、周囲のサポートを受けることも難しくなります。

障害者雇用枠は、障害であることを伝えて働くことです(=オープン就労)。職場の上司や同僚は、ADHDの特性を理解していることが前提になります。サポートが受けやすくなるなど、働きやすい環境が期待できます。

▼障害者枠(オープン就労)や一般枠(クローズ就労)についてはこちらでもご紹介しています。
障害者枠(オープン就労)か一般枠(クローズ就労)か?メリットとデメリットを解説

5-2. 求人の見つけ方

ハローワーク

ハローワークには、就職を相談するための障害者専用窓口があります。アドバイスを受けることもできますし、障害者雇用に関する求人情報も多く扱っています。

ハローワークから職業訓練で福祉専門学校にいき、 学校にきた募集告知で先生にすすめられた。
医療・福祉・介護、介護、女性

市のハローワークで探しました。そのときは特に障害に気がついていなかったのですが、昔から脳貧血で倒れやすく、その部分で相談に乗ってもらい、ずっと同じ位置で立ちっぱなしになるレジ業務などは避けて探していただきました。
専門店、受付、窓口業務、女性

ハローワークで、障害者雇用担当のベテランの方に、面接で話すことができない自分に同伴して説明を代行してもらいました。それどころか、本来求人票は一般の障害者向けの軽作業系だったのですが、自分のスキルを売り込んでもらったおかげで、業務内容から雇用条件までガラッと変わり、給与も大幅向上しました。
人材、WEBディレクター、男性、



▼参考: 厚生労働省職業安定局「ハローワークインターネットサービス」

人材紹介会社

障害を抱え、働くことに不安を覚えている方の就職活動を支援する、専用の人材紹介会社をご存知ですか?

履歴書の書き方や面接の練習、おすすめの企業の紹介やその企業との連絡、事前見学の調整、入社後のケアや相談など、全面的なサポートなどを行っています。

また、扱っている求人情報の中には、ハローワークなどでは扱っていない非公開求人もあります。各企業のことをよく把握しているので、ホームページや求人票では得られない職場環境などの情報も得られます。

ひとりではじめる就職活動との違いは、専門のアドバイザーから自分に向いている企業の紹介を受けられることです。そのため、不安を取り除きながら就職活動を進めていくことができます。

専用の人材紹介会社を活用した方の口コミが多くありますので、紹介します。

人材紹介会社から第二新卒という扱いでサービスを受けました。私の障害のことを担当者の方にお話ししましたら、担当者の方が、非常に配慮してくださり、私を導くような形でデイサービスセンターを紹介してくださったことに感謝しております。
医療・福祉・介護、女性

面接の日程調整などを行ってくれたので、非常にスムーズだった。
専門商社、軽作業、男性

私がADHDであることを理解してくださり、できる仕事とできない仕事を綿密にヒアリングして理解してくださいました。私が障害持ちであることを、担当者の方が前もって派遣先の企業に伝えてくださり、入社後も企業とスムーズにやりとりができました。
食品・化粧品、接客、男性



しかし、人材紹介会社も一つの企業です。紹介できる企業の得意分野や担当者の性格はさまざまです。自分の希望や意見が伝えやすく、理解してもらえる人材紹介会社かどうかをチェックしてみましょう。

次は、気になる企業の情報について、収集方法を紹介していきます。

▼障害者雇用の求人サービスについてはこちらでもご紹介しています。
ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介


7.企業情報の集め方

企業サイトや採用ページだけでは、あなたが実際に働くことになるであろう職場の雰囲気は掴めないかもしれません。できるだけ自分の目で確かめてみましょう。

7-1. 事前に見学して企業の雰囲気を確認

応募する前に、職場見学ができる企業もあります。企業に見学のお願いがしづらい方は、ハローワークや人材紹介会社のアドバイザーを通して見学をお願いすることもできます。
口コミにも、事前に見学を行うことで、面接だけではわからない職場の雰囲気がわかるとの意見が多くみられます。

【就職する前に職場見学をした方からのアドバイス】

やはり、会社見学の際に、障害を持っていればその障害を受け入れてくれるような職場環境であるのかどうか、もし、インターンシップ等が実施されているようであれば、受けてみて、その企業の風土を知ることが大切であると思います。
専門店、接客、男性

障害をオープンにするか、クローズにするか。どこまで自分の障害の特性や、苦手なところを理解して相手に伝えることができるか。一度仕事体験や、10分以上の見学をさせてもらう、実際に勤務している人に魅力よりも「どこが大変か」を聞く。一つ一つ丁寧に見ていくことが大事だと思います。
医療・福祉・介護、女性

一番大切なのは職場見学です。企業の障害者に対する取り組みは、段差の有無やトイレの広さなどでわかる部分はあります。また、障害者が少ないと差別的な雰囲気になりやすいので、他の障害者の在職の有無も確認した方がよいです。
物流・倉庫、軽作業、男性



7-2. 面接はその企業をよく知るチャンス

面接は、企業側があなたを審査するだけの場ではありません。大事なことは、あなたが企業に求めるものと、企業があなたに求めるものがマッチングすることです。

そして、不安や疑問がある場合は、面接で確認しておきましょう。具体的に聞いておきたい内容は、以下の口コミを参考にしてみてください。

【面接で情報を得るための工夫】

お給料と、仕事内容や、仕事場所はしっかり確認しておくべきだと思います。 入ってからこんなんじゃかなったと思うことをなるべく少なくするため、面接ときなど、自分の譲れないポイントはしっかり把握して、伝えることが大切だと思います。
接客、女性

就職先は有名企業だからといって、必ず障害に理解があるとは限らないことです。資格者であれば採用はされますが、その後の教育は健常者と同じで、配慮は少ないです。そういった配慮のある教育計画があるか、面接時に質問する必要があります。
医療・医薬、医療関係、男性

自分の長所、短所、できること、できないことをハッキリさせておき、「どんなことで会社に貢献できるか」ということをまとめておいた方が、面接はスムーズに進む。
専門商社、軽作業、男性



面接で緊張しすぎて質問できなかったということがないように、あらかじめ知りたいことをまとめておきましょう。準備をしておくだけで心に余裕ができ、面接にものぞみやすくなります。

働きはじめてから大変な思いをすることは、大きな負担になってしまいます。心地よい職場環境で病気とうまく付き合っていくためにも、面接の場を活用しましょう。

8.専門家からのアドバイス

仕事探しを考えているADHDのある方へ、障害者雇用の専門家ジョジョさんからのアドバイスを紹介します。

ADHDのある方は、応用さや臨機応変な対応が苦手な反面、自分に合った仕事にうまくはまれば、大きく力を発揮できる可能性があります。
そのためにも、自分に適したこと、および、職場環境で働くことが非常に大切です。

働く前に、しっかりと自分と合致している仕事、および職場かどうかを見極めることが、快適に働く上で非常に重要なポイントです。

9.最後に

これまでの内容をまとめます。

■ADHDの特性による仕事の悩み
・複数のことを同時に処理するのが苦手である
・ミスが多い
・集中力が途切れやすい、もしくは集中しすぎてしまう
ADHDの方は、特性によりこのような悩みを多く抱えています。

複数のことを同時に処理するのが苦手、ミスが多いという特性に対しては、メモを使ってタスクを整理するという方法を取り入れてみましょう。メモの活用は作業の優先順位の可視化にも役立ちます。また、ミスを防ぐためには、心と体を安定させることが必要です。質の良い睡眠や体調管理に気を付けましょう。

集中力が途切れてしまう、もしくは集中しすぎてしまうという悩みは、別室やトイレへ行き気持ちを切り替える、アラームをかけて時間を区切るといった方法を試してみましょう。

■ADHDの方が抱える職場での悩み
・人付き合いが苦手であること
・話を理解するのに時間がかかること
・感覚過敏についての悩み
ADHDの方は、職場でこのような悩みを抱えています。

人付き合いが苦手な方は、職場の座席配置を工夫する、1人で過ごせるために休憩時間の取り方を考慮する、といった職場の対応があると、苦手な人とのコミュニケーションを減らせるでしょう。

また、話を理解するのに時間がかかり、仕事への影響を悩む方もいます。話を理解しやすくするためには、ADHDの方が苦手な「あいまいな指示」を避ける対応が、職場には必要です。また、電話応対のような業務が苦手であることも把握しておかなくてはなりません。

あいまいな指示が苦手な方には、メモやメールによる指示出しそ取り入れてみましょう。文章に残すことで、再確認することができます。
また、指示するときは、「何を〇月〇日までに提出する」というように、具体的な数字を入れて、あいまいな指示を避けることも必要です。

電話応対が苦手な方には、電話応対が不要な仕事をお願いするようにしましょう。そのためにも、職場の上司は、従業員の得意なこと、苦手なことを把握した上で仕事を割り振ることが大切です。

感覚過敏がある方は、苦手な音や光を避ける必要があります。しかし、職場全体の音や光をコントロールすることは難しいかもしれません。
だから職場としては、個々の要望に寄り添う姿勢が必要です。感覚過敏のある方は、入社前にその姿勢を確かめると良いでしょう。
例えば、個別面談の機会があるか、個室の休憩スペースかなどを確認することも1つの方法です。

■転職や就職活動を行う上で、ADHDであることをオープンにするかクローズにするかも多くの方が悩むポイントです。まずは自分の特性を第一に考え、どのようなスタイルで働きたいのかを考えましょう。
ADHDへの理解や配慮を職場に求める場合は、オープン就労=障害者雇用も検討するとよいでしょう。


ADHDと付き合いながら、理想の仕事や職場で働いている方も多くいます。ADHDのある方におすすめの企業や業界、職種には傾向がみられますので、同じ境遇の方の意見も参考にしてみましょう。

これまでにご紹介した口コミは、ほんの一部です。症状も人それぞれ、企業の対応もそれぞれ異なります。
まずは自分の症状や、できることとできないことについてまとめてみましょう。そして、向いている仕事を、自分のペースで見つけてください。

気になる企業の様子やサポート状況は、事前に自分の目で確かめることが理想的です。求人票ではわからない企業の様子を知るためにも、ハローワークの専門スタッフに相談したり、人材紹介会社のアドバイザーと一緒に就職活動を進めたりするのも有効です。

さまざまな企業の中で、あなたが幸せに働ける環境に出会えることを、私たちは心から願っています。

※この記事は投稿いただいた口コミから生まれています。
皆さんの貴重な体験談は多く方へ届き、役立ちます。ぜひ体験したこと、感じたことを教えてください。

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監修者

就労継続A、B型にて支援員として、身体障害、精神障害、知的障害のある方への支援を行う。ソーシャルワーカー。 自身も悩みを抱えギャンブル依存症になった経験から、「悩みから夢まで話せる友達が見つかる東京の居場所”ココトモハウス“と出会い、現在はその管理人として多くの方から信頼を寄せている。生きづらさを抱える人達を社会と繋げて、豊かな社会を作ることがミッション。

保有資格

著者

より望ましい職業の選択や能力開発における相談・助言を専門とする国家資格「キャリアコンサルタント」のほか、米国CCE, Inc.認定の「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」の資格を取得。福祉・医療介護分野の研究などにも従事しています。

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