ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている仕事は?

ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている仕事は?

ASD(自閉スペクトラム症)のある方は、無理なく続けられる仕事や向いている仕事について考えたことはありませんか?

例えば、転職した職場が自分に合わなかったら、仕事を続けられないかもしれません。反対に得意なことを活かせる仕事であれば、やりがいを持って仕事を続けられるかもしれません。

だからこそ、仕事は慎重に選ぶ必要があります。
でも、ASD(自閉スペクトラム症)のある方が自分の力を発揮できる仕事は、どのように探せば良いのでしょうか?

今回は、働いているASD(自閉スペクトラム症)のある方113人の口コミから、向いている仕事、業界、職種などを分析しました。
障害者雇用の専門家ジョジョさん(社会福祉士、プロコーチ)にもアドバイスをいただいています。

仕事の悩みは人によって異なります。このコラムと自身の悩みを照らし合わせ、今後の転職のヒントにしてください。

*この記事はジョジョさんに監修していただきました
ジョジョさん

産業カウンセラー、社会福祉士(ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)、プロコーチの資格を持ち、就労継続A、B型にて支援員として、身体障害、精神障害、知的障害のある方への支援を行う。 自身も悩みを抱えギャンブル依存症になった経験から、「悩みから夢まで話せる友達が見つかる東京の居場所”ココトモハウス“と出会い、現在はその管理人として多くの方から信頼を寄せている。生きづらさを抱える人達を社会と繋げて、豊かな社会を作ることがミッション。



【この記事で紹介するデータ】
調査期間:2018年2月~2020年4月
調査方法:弊社サイトUMBREから対象となる口コミを抽出
調査対象:働いた経験のあるASD(自閉スペクトラム症)の方の口コミ113件
データ集計日:2020年8月26日
※体験談として記載された内容を分類し集計したデータを使用しています。


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目次

1.ASD(自閉スペクトラム症)とは

2.ASD(自閉スペクトラム症)のある方の職場満足度

3.ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の高い職場とは

4.ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の低い職場とは

5.ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめの業界

6.ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめの職種

7.ASD(自閉スペクトラム症)のある方の転職活動の進め方

8.まとめ

1.ASD(自閉スペクトラム症)とは

    「自閉スペクトラム症(ASD)」は、コミュニケーション・対人関係の困難とともに、強いこだわり・限られた興味を持つという特徴がある発達障害で、ASDには、自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群などが含まれます。

    症状は子どもの頃から現れますが、大人になってから診断を受けるケースも増えています。子どもの頃から症状があっても、それが大きな不適応に至らず、知的能力も平均以上の場合は、社会人になってから社会生活や人間関係における困難に気づくことがあります。

【大人のASDの特性】
・親密なつきあいが苦手
・人と共感しない
・冗談やたとえ話がわからず字義通りに理解する
・会話が一方的である
・急な予定変更に混乱する
・融通がきかない

まずは、自分のASDの特性をよく知る事が大切です。その上で、どのような仕事が向いているか、どのような働き方が必要なのかをじっくり考えていきましょう。

参考:NHK「大人の自閉スペクトラム症(ASD)とは?特性の理解が大切!」
参考:厚生労働省「e-ヘルスネット」

2.ASD(自閉スペクトラム症)のある方の職場満足度

はじめに、ASD(自閉スペクトラム症)のある方が実際に働いている(働いていた)職場の満足度について、集計結果をみてみましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の仕事の満足度
※口コミの項目「あなたはその会社の就労環境に満足していますか?」を集計して割合を抽出


全体の傾向をみると、
  • 満足している(とても満足している+満足している)…50%
  • 満足していない(全く満足していない+満足していない)…28%
  • どちらとも言えない…22%
という結果でした。約半数の方が自分の職場に満足していることが分かります。

しかし、仕事に対する満足度はどのように決まるのでしょうか?コメントをもとに詳しくみてみましょう。

3.ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の高い職場とは

満足度の高い理由を分類し、集計した結果が以下のグラフです。
ASD(自閉スペクトラム症)のある方の満足度が高い仕事
※口コミの項目「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」を分類し、マイナス評価している内容を集計して割合を抽出。7名未満の少数回答は除く。


回答の多い順からみると
  • 病気や障害に対して理解がある…19%
  • 特性に合った仕事ができる…18%
  • 上司が信頼できる…12%
という結果でした。

これらは、ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめしたい「理想の職場」とも言えます。さらに詳しくみていきましょう。

3-1.満足度が高い理由1「ASD(自閉スペクトラム症)に対して理解がある」こと

職場からASD(自閉スペクトラム症)に対する理解を得るためには、まず自分自身がASD(自閉スペクトラム症)の特性を理解し、自分をよく知ることが必要です。

ASD(自閉スペクトラム症)には多くの特性がありますが、口コミには特に以下のような特性が述べられていました。ご自身にあてはまることはありませんか?

  • コミュニケーションが苦手
  • 感覚が過敏(聴覚過敏・視覚過敏など)
  • 口頭指示やあいまいな指示の理解が難しい
  • こだわりが強い
  • 急な予定変更や臨機応変な対応が苦手
  • マルチタスクの作業が困難
ASD(自閉スペクトラム症)の特性には個人差がありますので、自分の特性を知っておくことが自分に合った配慮を受けることに繋がります。

では、「理解があるからこそ適切な配慮を受けられた職場」について特性と照らし合わせながらみていきましょう。ご自身の特性に近い内容を優先的に見ていただくと、よりわかりやすいかもしれません。

コミュニケーションが苦手なことに対して配慮のある職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方は、他人の気持ちを理解したり、空気を読んだりすることが苦手なため、コミュニケーションを苦痛に感じる方が多く、職場での会話や電話応対、接客などの「対人の業務」にストレスを抱えがちです。

ストレスを避けるためにも、コミュニケーションが苦手であることに対して、職場ではどのような配慮ができるのでしょうか。具体的にみていきます。

■コミュニケーションが苦手なことに対して配慮のある職場

店頭に出るとお客様との間でトラブルになってしまう可能性もあったことから(実際にそうなったこともありました)、店頭には出ない配置にしてもらえました。
旅行・ホテル、一般事務、男性

入社前に電話応対が苦手なことを伝えたら、慣れるまでは電話応対を免除された。また、複数人での打ち合わせが苦手なことを申し出たら、Skype会議を使うよう提案された。
建築・建設・設計・土木、一般事務、男性



コミュニケーションを必要とする業務を軽減する、または直接顔を合わせなくてもよい手段を提案するという配慮がありました。このような配慮のある職場であれば、ASD(自閉スペクトラム症)のある方の不安が和らぎ、働きやすい環境となるでしょう。

コミュニケーションが負担となる場合は、休憩時間に一人でゆっくりできる環境を作り、静かにマイペースで過ごすことも、仕事を長く続けるためのコツです。

感覚過敏に対して配慮のある職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、聴覚や視覚、触覚、嗅覚、味覚などの感覚が過敏に反応し、仕事に集中できない方もいます。

これらに対して配慮のある職場をご紹介します。

■感覚過敏に対して配慮のある職場

聴覚過敏に対しては入社初日に会社全体に周知され、社員の皆さんからは穏やかな声で話しかけてもらえました。大声を出されパニックになることはありません。
軽作業、女性

オフィスの物音で精神が消耗しないように、別室を用意してもらっています。
人材、WEBディレクター、男性



感覚過敏の特性が周知されることで、職場の同僚がASD(自閉スペクトラム症)のある社員に適切な配慮を提供できていることがわかります。穏やかな声で話しかけてくれたり、静かな環境を整えてくれたりする職場であれば、感覚過敏によるストレスが軽減できます。余計な悩みを抱えず、仕事に集中できる環境であれば、働き続けることができますね。

指示の出し方について配慮のある職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、聞くだけでは話をうまく整理できない方がいます。また、「適当に並べて」といったあいまいな指示や、定義がはっきりしない業務も理解しづらい傾向があります。

これらに対して配慮のある職場をご紹介します。

■指示の出し方について配慮のある職場

作業工程なども文字だけではなく、イラストや番号を振ってくれることで分かりやすくしてくれます。
医療・福祉・介護、男性

状況を説明してからは、業務を一度にたくさんではなく、一つ覚えたらまた次の業務と、一つずつ教えてくれるようになった。
医療・福祉・介護、女性



ASD(自閉スペクトラム症)のある方への指示は
  • 文字やイラストなど視覚情報で伝える
  • 量や期限などの数字は具体的にはっきり提示する
  • 一度に多くの指示を出さない
ことが理想的です。

つまり、目で見える情報を使う、明確な数字や方法を提示する、順序立てて説明することが必要です。職場の方々は、ASD(自閉スペクトラム症)のある方の立場に立った指示の出し方を意識することが配慮につながり、ASD(自閉スペクトラム症)の方にとって働きやすい職場になるでしょう。

こだわりが強いことに対して配慮のある職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、こだわりが強いという特性がある方もいます。こだわりが強いためにひとつの作業に時間がかかるといった悩みもあります。

こだわりが強いことに対して、配慮のある職場をご紹介します。

■こだわりが強いことに対して配慮のある職場

私が動きやすいやり方を工夫し、業務に携わっていけるように配慮してもらえています。
アパレル・日用品、軽作業、女性

自分の生活ペースに合わせて、仕事の予定を組めます。
教育、教師・塾講師・学童担当、女性



配慮のある職場では、本人の特性を理解し、職場全体で働きやすい環境づくりを行っています。 何に対してこだわりが強いのかを職場に説明し、仕事への影響を上司や同僚に相談した上で、効率よく働ける方法を模索していくことが結果的に働きやすさにつながっています。 また、こだわりが強いために朝の準備に時間がかかるという悩みがある場合は、シフトを遅くできたり、フレックスタイム制を使用できたりする職場が理想的です。自分の特性を考慮した上で、仕事を探す方法もあるでしょう。

臨機応変な対応が苦手ことに対して配慮のある職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、急な予定変更や臨機応変な対応が苦手という方もいます。急に業務が変更になると、集中している作業を中断しなくてはならないため、非常に苦痛に感じパニックになる方が多くいます。

これらに対して配慮のある職場をご紹介します。

■急な予定変更や臨機応変な対応が苦手なことに対して配慮のある職場

大人数のお客さんを相手にすることが苦手だったので、別の方が代わってくれた。また、イレギュラーなことも避けてもらえた。私が苦手な臨機応変が要求されることを、しなくてよいようにしてくれた。
外食・フード、清掃、女性

店長をはじめ周りの方は、私が辛そうなときは声をかけて休憩をとるように促してくれます。また私の黙々と作業する姿勢を見て、テキパキ動けていて頑張っていると認めてくれます。臨機応変なことが起こった場合でも、私はスケジュール通り作業させてもらえて、ストレスがかなり減りました。
百貨店・量販店、女性



職場に予定外の仕事が苦手であることを事前に説明しておくことで、仕事を免除してもらえる、早めにスケジュールを知らせてもらえる様子がわかります。苦手な業務を別の社員と変更してくれる職場もあります。
職場から適切な配慮を受けるためには、ASD(自閉スペクトラム症)のことをオープンにし、誤解なく周囲の理解を促すのがよいのではないでしょうか。自分のことを把握し、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を上司や職場の同僚に伝えることも検討してみましょう。

マルチタスクが苦手であることに対して配慮のある職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、複数の作業を同時に進行する「マルチタスク」が苦手な方もいます。同時にたくさんの作業をこなさなければならない場面では、頭が混乱して何もできなくなる方や、ミスが増える方もいます。

これらに対して配慮のある職場をご紹介します。

■マルチタスクが苦手なことに対して配慮のある職場

おすすめポイントは、業務が基本的にシングルタスクであることです。オフィスワークではどうしても複数の業務の並行が求められる場面が多くなり混乱しがちですが、機材を運んだり設営補助をしたりと、一度にひとつの仕事に集中できることは精神的にかなりプラスだと思います。
アパレル・日用品、男性

なるべくマルチタスクにならないように、一個一個の作業のスピードをできるだけ上げつつ、ミスが少ない「時短」のコツをオーナーに聞きました。すぐにはできなかったけど、上達して働きやすくなったように思います。
小売・流通・商社系、男性



例えばコンビニエンスストアの店員のように、複数の業務を同時に進行するマルチタスクタイプの仕事もあれば、同じ業務を繰り返し行うシングルタスクの仕事もあります。仕事の進め方は業界や職種により異なるので、後述する「おすすめの業界や職種」を参考にしてみてください。

また、業務スピードが遅くなると仕事が溜まり、結果的にマルチタスクになることがあります。仕事を一つずつ順番にこなせる体制を整えるとよいでしょう。ただし、仕事のペースを早めたことで混乱しては本末転倒です。自分の抱えるタスクに無理を感じるようであれば、上司や職場の同僚に相談することも大切です。

3-2.満足度が高いと感じる理由2「特性にあった仕事ができる」

ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって、「特性に合った仕事ができる」ことも、仕事の満足度が高くなる理由の1つです。
ASD(自閉スペクトラム症)のある方の特性に合った仕事とは、どのような仕事なのでしょうか?仕事面で発揮できる特性もあります。詳しくみていきましょう。

自分の苦手なこと、得意なことを伝えることで、レジ業務ではなく品出し作業で活躍することができました。上司に理解をしてもらえて、スケジュールを一緒に立て、その通りに動くようにしています。1日の仕事の流れが把握できているので、とても働きやすいです。
百貨店・量販店、女性

得意な仕事と不得意な仕事を一緒に見直し、得意な仕事を多くこなせるようにしてくれました。お陰で他の方と同等、或いはそれ以上のクオリティを保つことができました。他の障害のない社員に対しても、同じように得意不得意で作業を分けるようになったので効率が上がりました。
ゲーム、女性



ASD(自閉スペクトラム症)のある方は、「得意な分野」なら周囲に負けない能力を発揮できる方もたくさんいます。
ここで大切なのは以下の点です。
  • 自分の得意なこと、苦手なことを把握すること
  • 把握した特異なことと苦手なことを上司に相談し、苦手なことは配慮を得ながら行い、得意なことは能力を発揮しながら遂行すること
上記のことを踏まえた上で担当業務や所属を決めてもらえれば、ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとっても、雇用する側や職場の同僚にとっても、お互い良い結果を生み出すことができます。
得意な業務の一例として「同じ作業を繰り返す仕事」が挙げられていましたので紹介します。

レジの専任のお仕事なので、常に集中力とかなりの神経を使いますが、業務の技術力をゲットできたら、とても順調に働けます。
百貨店・量販店、女性

特に、品出しなどの単純作業の仕事の方が向いていると思います。
チェーンストア・スーパー・コンビニ、女性



ASD(自閉スペクトラム症)のある方が得意な業務として、ライン作業のように同じ作業を長時間繰り返すことや、「品出し」「清掃」「レジ専任」「機材の運搬」などのように一つの作業に黙々と取り組む業務が挙げられました。 シングルタスクであれば、一つの作業に集中できるため、誰よりも粘り強く取り組むことができるしれません。

3-3.満足度が高いと感じる理由3「上司が信頼できる」

ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって、「上司が信頼できる」ことも仕事の満足度を高める大切な要素です。
前述のとおり、ASD(自閉スペクトラム症)のある方は、コミュニケーションが苦手であったり、あいまいな指示がわからなかったりという特性があります。ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって、上司の人柄や上司がどのくらいASD(自閉スペクトラム症)を理解しているかは重要なポイントです。満足度の高い職場の上司について詳しくみていきましょう。

毎日日報というものがあり、今日の反省と、わからないこと、悩みなどを記載すると、上司がアドバイスを記載してくれました。翌日見ることで、フィードバックになりました。また、週に1回の上司との面談でもフォローし、関係部署に連絡を取ってくれるときもありました。
アパレル・日用品、男性

あんまり攻撃的でない方や、精神的にも大人な女性と組ませてもらいました。その方は母親と同世代だったのですが、面倒見がいい方だったのでとても仕事がやりやすかったのを覚えています。
チェーンストア・スーパー・コンビニ、男性



コミュニケーションが苦手な方は、報連相(報告・連絡・相談)のタイミングがわからず、問題を1人で抱え込んでしまうかもしれません。しかし、上司に気軽に相談できる仕組みがあれば、タイミングに悩むこともなさそうです。

それでも伝えることが苦手、どうやって話したらよいかわからないという場合は、口頭ではなく、文字に書いて相談するのも1つの方法です。
職場に相談できると思えるだけで、安心感をもって仕事に取り組むことができるのはないでしょうか。

また、ペアやチームで仕事をする場合は、相手との相性も大切です。なかには障害への理解に乏しく、高圧的な態度をとる人もいるかもしれません。仕事がやりづらいと感じれば、遠慮せず上司に相談することも必要です。特性に理解のある方と一緒なら、委縮することなく作業に集中できるでしょう。

では、反対に「満足度が低い職場の特徴」にはどのようなことが挙げられたのでしょうか。理想の職場を見つけるためには、満足度が低い職場があることも知り、比較検討することが大切です。

4.ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の低い職場とは

28%を占めた「満足度が低い職場」にはどのような特徴があるのでしょうか?
満足度が低いと述べた方の理由を分類して、集計をとりました。

ASD(自閉スペクトラム症)の方の仕事満足度が低い理由
※口コミの項目「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」を分類し、マイナス評価している内容を集計して割合を抽出。5名未満の少数回答は除く。


回答の多い順からみると
  • 病気や障害に対して理解がない…22%
  • 仕事量が多い、期限に追われる…15%
  • その他…13%
という結果でした。

これらは、ASD(自閉スペクトラム症)のある方が転職を考える際に「避けるべき職場の特徴」とも言えます。
では、さらに詳しく解説していきます。

4-1. 満足度が低いと感じる理由1「ASD(自閉スペクトラム症)に対して理解がない」

「ASD(自閉スペクトラム症)に対して理解がない」職場は、満足度が高い職場の理由に挙げられた「ASD(自閉スペクトラム症)に対して理解がある」職場の対極にありますが、ASD(自閉スペクトラム症)のある方の特性と照らし合わせながらその様子をみていきましょう。

ここでもう一度、口コミに挙げられたASD(自閉スペクトラム症)のある方の特性を見てみましょう。
  • コミュニケーションが苦手
  • 感覚が過敏(聴覚過敏・視覚過敏など)
  • 口頭指示や抽象的な指示の理解が難しい
  • こだわりが強い
  • 急な予定変更や臨機応変な対応が苦手
  • マルチタスクの作業が困難
これらの特性と配慮のない職場の様子を紹介します。

■コミュニケーションが苦手なことに対して配慮のない職場

勤務後にファミレスで会議や話し合いがあったが、人との食事が苦手という特徴もあり苦痛だった。
専門店、接客、女性

自分が事務の仕事を選んだことも悪かったが、コミュニケーションを取ることを強要されたこともあった。
自動車・運輸・輸送機器、女性



■感覚が過敏なことに対して配慮のない職場

BGMが聴覚過敏にはきつかった。
旅行・ホテル、男性

淡々とした作業を1人でこつこつやる方が得意なので、人の声、怒声、会話が聞こえてくる作業所で務めるのは困難だった。
医療・福祉・介護、女性

感覚過敏で音が非常に苦手。作業中、ガムテープを使う機会が多く、それを剥がす音を聞いていると体調を悪くしてしまう。他にも音の処理が苦手で、何を言っているのかよく分からないことがある。
物流・倉庫、軽作業、女性



■口頭での指示やあいまいな指示が多い職場

業務マニュアルがなく、口頭での指示が多く、それを理解できないことに上の人が不満を持っていた。
ソフトウェア・ハードウェア開発、女性

直属の上司が「これ」「あれ」などの代名詞を多用する人で、何のことを指しているのか理解できないことがたびたびあった。具体的な名前で伝えてほしいと思う。
軽作業、女性

クローズ就労で、向いていない接客業に挑んだことがきつかっただけでなく、「自分で考えて行動して」など抽象的な指示が多くて、混乱してしまった。
旅行・ホテル、男性



■こだわりが強いことに対して配慮のない職場

発達障害により、仕事上の優先順位を付けることが苦手。重要な案件を後回しにして、今する必要のないことをやり続けてしまう。また、自分のやり方にこだわってしまうため、職場内の連携を乱してしまうことが多く、人間関係の悪化を招いてしまった。その結果、働きにくくなり、体調を崩しうつ病等の二次疾患が生じてしまった。
医療・福祉・介護、男性

自閉スペクトラム症の特性であるこだわりの強さからか、自分のやり方で進めようとすることが多く、周囲に迷惑をかけていました。
人材、男性



■急な予定変更や臨機応変な対応が苦手なことに対して配慮のない職場

障害をカミングアウトしても上司は呆れたままで、話が通じないと機嫌を悪くされた。自分のペースや自分らしさは一切持てず、決まったルールや会社の意向に沿って行動しないといけない。マニュアルはなく、最も不得意な空気を読むことや優先順位の正しい行動が求められた。
専門店、接客、女性

私は臨機応変な対応が苦手で、一つのことを黙々と作業しているときに急に違うことを頼まれると、自分の中にあるスケジュールが狂ってしまい、頭の中がパニック状態になります。何時頃にどの作業をしてその作業が終わったらこれ…。というように自分の中でルーティンがあるのです。それを理解してもらうのが大変でした。
百貨店・量販店、女性



■マルチタスクが苦手なことに対して配慮のない職場

上層部の方に感覚過敏や、同時に作業を行うマルチタスク作業、学習障害による算数障害について説明をしたが「障害を持っているようには見えない」、「特別扱いはできない」などと言われ、全く配慮をしてくれなかった。非常に働きづらさを感じた。
物流・倉庫、軽作業、女性



ASD(自閉スペクトラム症)のある方には、その特性のため苦手な仕事もあります。苦痛に感じることを毎日続けて、さらにこれからもそれを続けなくてはいけないと思うだけで、働くことが嫌になってしまいます。ミスが生じれば、周囲との関係も悪くなりがちです。なかには二次障害を生じた方もいました。

苦痛で働きづらくなる理由は、職場の理解が得られないことが原因です。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性が理由で苦手な作業があることを理解している職場であれば、苦手なことを避けられるようにしたり、サポートしたりすることで、本人が働きやすい環境を整えられるでしょう。そして得意なことを活かした仕事ができることで、満足度の高い職場になるでしょう。

職場の理解を得るためには、自身の特性をよく理解した上で、上司や職場の方に説明する必要があります。全ての人がASD(自閉スペクトラム症)について熟知しているわけではないからです。
働きやすい職場を作るためには、理解を促すための働きかけも必要になってきます。

4-2. 満足度が低いと感じる理由2「仕事量が多い、期限に追われる」職場

ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、急な予定変更やマルチタスクなどでパニックを起こす方が多くいます。仕事量が多くなれば、余計にそのような状況にもなりやすくなります。さらに、期限に追われることで、パニックになることに拍車がかかってしまいます。

特に月に2回あったイベントには、多くのお客様や商品がどっと来て、さまざまな指示を次々に受けました。ひとつの作業中にほかのことを言われると優先順位がわからず、固まってしまうことなどがありました。
専門店、女性

数分おきに依頼内容に変更が入り、荷受けトラックとのトラブルも多かったため、対応しきれなかった。
物流・倉庫、女性

マルチタスクが求められる休日や繁忙期はパニックになります。注文を覚えられない、注文がたまると要領を得ないのでスピードが遅くなり、一部のスタッフに使えないやつ扱いされました。
レジャー・アミューズメント・フィットネス、調理スタッフ・調理補佐、男性

繁忙期は特に、同時に色々なことをこなすので、マルチタスクが要求され、発達障害の人は苦労すると思う。
専門店、接客、女性

一度にやることが複数あると、必ずひとつは忘れ、仕事の優先順位もあいまいになり、頭が真っ白になるときがあります。今やらなければいけない仕事のときに、ふと目に入った物が気になり、集中力が途切れます。
レジャー・アミューズメント・フィットネス、女性



忙しい職場や期限に追われる仕事では、どんな方でも焦りがちになり、冷静に仕事をすることが難しくなります。優先順位をつけることや、複数の仕事を同時に行うことが苦手なASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって、忙しい職場や期限に追われる仕事は、余計に働きづらい環境に感じるかもしれません。自分のペースで、1つずつ順序立てて進めることとは正反対の環境になるからです。

まずは入社前に、自分の担当する業務の量やペース、職場全体の忙しさなどを確認することが必要です。また通常期だけでなく、繁忙期がある職場は予想外の忙しさに戸惑うこともあります。あらかじめ、繁忙期にも無理のない範囲で仕事ができるかどうか、確認しておくと安心です。

5.ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめの業界

次に、ASD(自閉スペクトラム症)のある方が働いている業界をみてみましょう。さまざまな業界で多くの方が活躍されています。

5-1.ASD(自閉スペクトラム症)のある方が多く働いている業界

ASD(自閉スペクトラム症)の方の業界
※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」で回答のあった企業を業界別に分類し集計して割合を抽出


グラフを見ると、ASD(自閉スペクトラム症)のある方が多く働いている業界は以下の結果でした。
  • サービス・外食・レジャー系…37%
  • 小売・流通・商社系…15%
  • その他…12%
  • メーカー・製造系…10%
「サービス・外食・レジャー系」「小売・流通・商社系」の2つの業界だけで52%を占めており、半数以上の方がどちらかの業界で働いていることがわかります。

ではつぎに、業界の満足度についてグラフをみてみましょう。

5-2.ASD(自閉スペクトラム症)のある方の満足度が高い業界

ASD(自閉スペクトラム症)の方の業界満足度 �title=
※口コミの項目「働いているまたは働いていた企業を教えてください」と「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」をクロス集計して割合を抽出。ただし、答えた人数が8人未満の業界は比較対象外とした。


「とても満足している」「満足している」と答えている方が多い業界は以下のとおりです。
  • 不動産・建設・設備系…58%
  • コンサルティング・専門サービス系…57%
  • メーカー・製造系、その他…54%
  • サービス・外食・レジャー系…50%
  • 小売・流通・商社系…47%
業界別の満足度に大きな差はなく、どの業界でも約半数の方が「満足」しているようです。
ではコメントを参考にしながら、業界における特徴やASD(自閉スペクトラム症)のある方に特におすすめの業界を考察してみましょう。

5-3.ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめの業界とその理由

不動産・建設・設備系の業界

まずはコメントを紹介します。

建設業は、がさつや荒っぽい感じがあるが、そのことがマイナスポイントかといわれれば違うと思う。マイナスポイントが見つからない。
建築・建設・設計・土木、一般事務、女性

障害に対しての配慮がある。食事中を除いては雑談がほとんどなく、雑談が苦手な人にとっては面倒な人間関係があまりない。また、飲み会も強制されない。
事業所全体の従業員数が多いので社員食堂があり、昼食代を安く抑えることができる。採光が十分なオフィスの環境は良く、快適に仕事ができる。
建築・建設・設計・土木、一般事務、男性



建設業界は、以下のデータにもあるように男性が多い職場といわれています。

▼参考:国土交通省「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査」

男性が多い職場では、サバサバした人間関係になる傾向があるようです。プライベートにまで深入りすることはなく、程よい関係を保つことが期待できるかもしれません。コミュニケーションが苦手な方にとって、職場の同僚との距離間は働きやすさを左右するものの一つと言えるでしょう。

一方、次のような意見もありました。

業務内容に直接関係ないことを多くこなしていく必要があるため、体力・気力がない限り、続けていくのは困難。
建築・建設・設計・土木、男性



「不動産・建設・設備系」の業界にも、「経理」「技術」「営業」というようにさまざまな職種があります。職種により仕事内容は大きく異なるため、業界の傾向に加え、職種の向き不向きも考慮して仕事探しをすることが大切です。

さらに、事業規模によっては人数不足のため担当外の仕事を頼まれることもあるようです。事業規模と業務内容のバランスがとれている企業かどうかも注意すると良いでしょう。

コンサルティング・専門サービス系の業界

まずはコメントを紹介します。

研究所は少人数体制のため、濃密なコミュニケーションを築きやすい。病気による差別をまるで感じないので、おすすめです。
コンサルティング・専門サービス系、女性

従業員の数が少ないので、良くも悪くもアットホームです。仕事中の雑談は当たり前なので、じっくり仕事に取り組みたい人には向いていないと思います。
シンクタンク・リサーチ・マーケティング、女性

論理的な人が多い。特性に配慮してくれる人は、申し訳ないくらいに配慮してくれる。全体的に、指示や伝達は、メッセンジャーアプリを使った文字情報なのでわかりやすい。考え方の違いに寛容。
シンクタンク・リサーチ・マーケティング、一般事務、女性



コメントを紹介した方の企業は、規模が小さく少人数であることが特徴として挙げられました。少人数の職場であれば静かな環境が期待できます。また、コミュニケーションをとる範囲が限られているので、自分の特性について理解を得やすく、情報共有もスムーズで、働きやすいと感じるかもしれません。

ただ、人数が少ない分、同じ人と会話する頻度も多いため、関係性は深くなる可能性もあります。そのようなコミュニケーションが苦手な方には、働きづらい環境かもしれません。

その他のおすすめ①:外資系やベンチャー企業

ここでは、業界という視点ではなく、番外編としておすすめの企業を取り上げます。

注目するのは、考え方に多様性がある「外資系」や「ベンチャー企業」です。コメントをみてみましょう。

自由なベンチャー企業です。服装はジーンズOKなため、感覚過敏で「オフィスカジュアルが着られない」という人には良い職場です。
シンクタンク・リサーチ・マーケティング、女性

外資系で自由な雰囲気があり、とてもオープンで透明性の高い職場です。活気があり、多様性が尊重されるので、個性の強い方でも強みを発揮して働いていけると思います。
通販・EC、エンジニア、男性



企業には「古い慣習」「暗黙の了解」「右にならえ」が当たり前の職場もあります。これらの職場は、「暗黙の了解」を理解するのが難しいASD(自閉スペクトラム症)のある方にとっては、働きづらいのではないでしょうか。

その点、外資系の企業やベンチャー企業は、多様性が尊重される自由な雰囲気の企業も多く、ASD(自閉スペクトラム症)のある方の特性に合わせた働き方ができる可能性が十分にあります。企業のホームページなどを参考にして、多様性への取組みを率先して行っている企業にも注目すると良いでしょう。

その他のおすすめ②:障害者支援の福祉サービス

次におすすめするのは「障害者支援の福祉サービス」です。口コミをみてみましょう。

普段、障害児を見ている通所施設であることから、配慮すべきポイントが専門性の高いものだった。
医療・福祉・介護、男性

障害者支援の仕事だったので、障害に対して理解のあるスタッフが多く、人間関係の構築、状況説明の際は親身になって話を聞いてくれ、理解してくださり、大変感謝しています。ただ、現場は常に忙しいので、常にスピード・マルチな対応が必要でした。その点に関しては、ついていくことが非常に大変でした。
医療・福祉・介護、女性



障害のある方への支援を専門とするプロの集団ですから、ASD(自閉スペクトラム症)に対する理解や配慮に関しては期待できそうです。ただ、体力が必要ともいわれる業界です。職種は直接障害のある方と接する仕事や、事務職などありますので、自身の体調と相談しながら検討してみてください。

6.ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめの職種

次はASD(自閉スペクトラム症)のある方が働いている職種をみてみましょう。

6-1.ASD(自閉スペクトラム症)のある方が多く働いている職種

ASD(自閉スペクトラム症)の方の職種の割合
※口コミの項目「どのような仕事を担当していましたか」で回答のあった担当業務をもとに職種別に分類し、集計して割合を抽出


最も多くの人が働いている職種は、
  • 事務…22%
  • 軽作業…12%
  • 清掃…10%
働いている方が少ない職種は、
  • 営業…2%
  • 農林水産…2%
  • コールセンター・オペレーター…2%
でした。
仕事を選ぶ際は、職種の人気度や待遇だけでなく、自分が担当する仕事の内容や自分にできる仕事かどうかを考えることが必要です。

6-2.ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の高い職種

では、多くの方が就いている職種であれば、満足度は高いのでしょうか?
職種別に満足度を比べてみましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の方の職種に対する満足度グラフ
※口コミの項目「どのような仕事をされましたか?」と「あなたが答えた満足度について理由を教えてください」をクロス集計して割合を抽出。ただし、答えた人数が5人未満の職種は比較対象外とした。


「とても満足している」と「満足している」の回答が占める割合の高い職種は以下です。
  • 清掃…83%
  • 事務…61%
  • 軽作業…43%
  • エンジニア・技術職…40%
業界別の満足度では、業界による大きな差はありませんでしたが、職種による満足度には大きな差があるようです。転職の際には「どの業界で働くか」も重要ですが、「どの職種を選ぶか」もポイントのようです。

6-3.ASD(自閉スペクトラム症)のある方におすすめの職種とその理由

清掃

まずはコメントを紹介します。

状況に応じて一人で作業することもあれば、チームで動くこともあります。その日の役割分担やスケジュールは、スタッフルームのホワイトボードに毎日書かいていただけるので、困ることがありませんでした。
専門商社、清掃、男性

1人で作業ができるので、対人関係にあまり悩まず働けます。じっとしながらする仕事より動くことが好きな人は、リズム感よく働けるので楽しいかもしれません。動いているとあまり悩まずにすみます。
サービス・外食・レジャー系、清掃、女性

自分のペースで仕事ができるので、ストレスが少ない。作業は1人で行い、他者との関わりがないので楽です。
不動産、清掃、女性



清掃の仕事は、一人での作業が多く、対人関係の悩みが少ない点に働きやすさを感じている方が多くいました。ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、相手の気持ちや状況を察して臨機応変に立ち振る舞うことが難しい方もいるからです。

また、やるべき作業がはっきりしていることも働きやすい条件の一つです。どの程度きれいに磨けばよいのか、またどこまでやれば良いのかという「丁度よい加減」を理解することが難しい場合は、最初にきっちり確認しておきましょう。始めにお互いの認識をすり合わせることで、その後の仕事がやりやすくなるでしょう。

事務

まずはコメントを紹介します。

パソコンを使用したデータ入力のほか、書類の作成やファイリング、電話や来客の対応をすることもあります。残業は少なく、定時に上がれることも多いため、用事などにも差し支えなく働けます。医療や銀行、貿易など専門知識が求められる事務職は資格所有者や、経験者が優遇されるケースが多いです。
メーカ・製造系、事務、男性

オフィスなどの集団の中で仕事をするのが向いていないと感じる人に、向いていると思います。申請書を書いて採用される必要があるので、採用に至る道は険しいかもしれませんが、自分のペースで1つのことに集中して取り組みたい人には、向いていると思います。
団体・連合会・官公庁、事務、女性

外部接触がなく自分のペースでできる業務内容にしてもらっている。業務内容が変更になったときには、時間をかけて丁寧に教えてもらっている。
不動産・建設・設備系、事務、女性



パソコンのデータ入力などの仕事は、一定のルール通りに同じ作業を続けるため、ASD(自閉スペクトラム症)のある方には向いているかもしれません。
また、「研究」や「分析」といった仕事は、小規模なチームや個人での業務が中心となることがあるため、「大人数の職場が苦手」という方にはおすすめです。

面識のない相手との会話が苦手な場合には、社内対応を主とした部署の事務などを検討するとよいかもしれません。

軽作業

まずはコメントを紹介します。

仕事場は準クリーンルームになっており、清潔で冷暖房完備の快適な職場です。障害者の受け入れは私が初めてでしたが、とても温かく迎えてもらえたし、何かあれば声をかけてもらえるので、働きやすい職場だと感じます。製品検査が主な仕事なので、おしゃべりが苦手な人でも大丈夫です。こつこつと物事に取り組める人には特におすすめしたいです。
軽作業、女性



ASD(自閉スペクトラム症)のある方には、コツコツと取り組めることや同じ作業を繰り返すことが得意な方がいます。軽作業にはそのような仕事も多く、ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いているのかもしれません。

しかし軽作業を行った方の中には、満足度の低い職場の口コミにあったように「感覚過敏が強く、ガムテープをはがす音が苦手で体調を悪くしてしまった」、「わりと重労働なので肉体的にも疲れてしまった」という意見もありました。

職種に魅力があるけれど、労働環境がよくない場合もあります。できれば実習や見学などを通して、職場の様子や具体的な仕事内容などを確認しておくと安心です。

7.ASD(自閉スペクトラム症)のある方の転職活動の進め方

転職活動や就職活動の進め方にはいろいろあります。最近はインターネットからの情報も豊富で、選択肢も増えています。

皆さんはどのように転職先や就職先を見つけているのでしょうか?
次のグラフは、ASD(自閉スペクトラム症)のある方が転職活動や就職活動の際に活用したサービスに関するグラフです。

ASD(自閉スペクトラム症)の方が利用した求人サービス
※口コミの項目「どのようにその職場を見つけましたか。就職までに利用したサービスがあれば教えてください。(複数回答可)」の有効回答47名による50件を集計して合計人数を算出


最も多かった回答は、ハローワークで45%でした(複数回答による調査のため、全体に占める割合ではなく、回答者の45%がハローワークも使ったという結果になります)。多くの方が、ハローワークを活用していることがわかります。

ハローワークに続いて、就労移行支援施設、人材紹介会社、求人メディアを利用した方もいます。 具体的なサポート内容とサービスを活用するメリットをみてみましょう。

ハローワーク

ハローワークは全国に544カ所あり(平成29年度現在)、お住いの地域にある施設が利用できる身近なサービスです。最近では、自宅からハローワークのサイトを使って検索もできます。行政が運営しているため安心感もあります。

ハローワークは、さまざまな業界や職種の求人を数多く扱っています。また障害者専用の窓口もあり、障害者雇用枠(クローズ就労)と一般雇用枠(オープン就労)とで迷っている方や、障害者雇用枠の求人を探している方も利用できます。

大田区のハローワークを利用しました。障害者雇用担当のベテランの方が、面接で話すことができない私に同伴し、代わって説明してくれました。それどころか、障害者向けの軽作業に関する求人だったのですが、自分のスキルを売り込んでもらったおかげで、業務内容から雇用条件までガラッと変わり、給与も大幅向上しました。
人材、WEBディレクター、男性

ハローワークの求人検索機で現在の仕事を探しました。障害者専門の職員さんに、仕事探しの相談から履歴書の添削、志望動機の書き方の指導などを受けました。応募できるかどうかの交渉もしてもらえました。また、障害者就業・生活サポートセンターの紹介もしてもらい、担当の職員をつけてもらえました。
軽作業、女性



ハローワークには、求人の紹介だけでなく履歴書の書き方や面接の仕方をアドバイスしてくれたり、企業と求職者の仲介をして、障害の状況をあらかじめ伝えてくれたりするサポートもあります。口コミには、以下のサポートを受けたという声がありました。

  • 求人検索機で仕事探し
  • 履歴書の添削・書き方指導
  • 応募の交渉
  • キャリアカウンセリング
  • 適職診断
しかし、なかにはこんなコメントもありました。

ハローワークに出されている求人は、全てが嘘ではないですが、労働環境の酷い企業も多い。

利用するのであれば、ネットで他にも情報を集めるとか、口コミで評判を聞くとか、多面的な情報収集が自分の未来に貢献すると思います。



窓口の担当者との相性もあります。自分でインターネットなどを活用した情報収集と併用して利用すると安心かもしれません。

就労移行支援施設

就労移行支援施設は、相談だけでなく仕事に必要なスキルやマナー、知識を身に付けるための施設で、現在全国には約3500ヶ所あります。(平成30年9月現在)。

就職支援プログラムやビジネスマナーなど、働くために必要なことを学び、1週間の職場実習も2回チャレンジしました。
専門商社、清掃、男性

就労移行支援施設を通じて人材募集があり、応募書類や面接についてアドバイスを受けることができた。
自動車・運輸・輸送機器、一般事務、男性



就労移行支援施設の魅力は、学べる施設だということです。就労前にスキルやマナーを身に付けて自信をつけたい方にもおすすめです。口コミには、就労移行支援施設で学んだ内容や受けたサポートについて、以下のような内容が挙げられました。

  • 職業訓練
  • リクレーション
  • ビジネスセミナー受講
  • 履歴書や応募書類の添削
  • 面接の練習・同行
  • ビジネスマナー講習
  • 就職支援プログラム
  • 職場実習
  • PC作業の訓練(word、excelなど)
学べる内容は施設によって異なります。利用する前に、どのようなスキルが身に付けられる施設かを確認すると良いでしょう。

▼障害者雇用枠の求人の探し方について、詳しく紹介しています。
ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介

8.まとめ

これまでのポイントをまとめます。

■ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の高い職場とは?

①ASD(自閉スペクトラム症)への理解がある職場
  • コミュニケーションに対して配慮のある職場:コミュニケーションが少ない業務や配置転換に応じるなど、臨機応変な対応をしてくれる。
  • 感覚過敏に対して配慮のある職場:音や光など苦手なものに接しなくて良い環境を用意してくれる、周囲が接し方に配慮してくれる。
  • 指示の出し方について配慮のある職場:あいまいな指示や口頭での指示ではなく、文字やイラストを使った指示を出したり、一つずつ指示を出したりするなど、本人の特性に合わせて対応してくれる。
  • こだわりが強いことに対して配慮のある職場:仕事の進め方や順番にこだわりがあれば、その方法を取り入れることを検討してくれる。
  • 急な予定変更や臨機応変な対応が苦手ことに対して配慮のある職場:予定外の仕事があるとパニックになりやすいことを理解し、早めに声をかけるなどの配慮がある。
  • マルチタスクが苦手ことに対して配慮のある職場:タスクが複数にならないように配慮しながら指示を出すことを心がけ、優先順位を伝えながら仕事を依頼してくれる。
②特性にあった仕事ができる職場
本人の得意不得意を理解した上で、担当業務や配属部署を決めてくれる。そのためには、自分の得意不得意を把握しておく必要があります。

③上司が信頼できる職場
上司に相談できる仕組みがあれば、話しかけるタイミングに悩むことも少なくなります。また伝えることが苦手な場合は、文章でのやり取りができるかを相談するのも一つの方法です。いずれにしても、上司と相談できる関係が築ける職場は、満足度も高くなります。


■ASD(自閉スペクトラム症)のある方にとって満足度の低い職場とは?

①ASD(自閉スペクトラム症)への理解がない職場
ASD(自閉スペクトラム症)に対して理解がない職場:満足度の高い職場とは正反対の回答になりますが、ASD(自閉スペクトラム症)の特性に対して理解がなく、配慮が得られない職場は満足度が低い傾向にあります。具体的には、以下の特徴がある職場です。
  • コミュニケーションが苦手なことに対して配慮のない職場
  • 感覚が過敏なことに対して配慮のない職場
  • 口頭での指示やあいまいな指示が多い職場
  • こだわりが強いことに対して配慮のない職場
  • 急な予定変更や臨機応変な対応が苦手なことに対して配慮のない職場
  • マルチタスクが苦手なことに対して配慮のない職場
②仕事量が多く期限に追われる忙しすぎる職場
ASD(自閉スペクトラム症)のある方の中には、自分のペースで一つずつ丁寧に進める仕事が向いている方がいます。いつも慌ただしく、期限に追われる仕事は働きづらさにつながります。慌てることでミスも多くなり、悪循環に陥ることも考えられます。また、普段忙しくない職場でも、繁忙期は予定外の仕事が増え、忙しくなる職場もあります。1年を通した仕事量やペースを確認することが大切です。

■ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている業界とは?

①不動産・建設・設備系の業界
男性が多い業界と言われており、人付き合いはプライベートに深入りすることが少なく、コミュニケーションが苦手な方には働きやすい環境のようです。しかし、体力が必要な部署もあるので、職種も考慮したほうがよいでしょう。

②コンサルティング・専門サービス系の業界
小規模な企業が比較的多い業界です。少人数の職場であれば静かな環境が期待できます。また、コミュニケーションをとる範囲が限られているので、自分の特性について理解を得やすく、情報共有もスムーズで、働きやすいと感じるかもしれません。しかし、少人数であることが関係を深くすることもありますので、職場見学などで職場の雰囲気を確認することをおすすめします。

■ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている職種とは?

①清掃
一人で行う作業が多く、対人関係の悩みが少ない点や、やるべき作業がはっきりしている点が働きやすさにつながっていました。

②事務
データ入力などの仕事は、ルール通りに同じ作業を続けることが求められるので、ASD(自閉スペクトラム症)のある方の特性に合った仕事の一つです。また、面識のない方との会話が苦手な場合には、社内対応を主とした部署の事務を行うことも検討すると良いでしょう。

■ASD(自閉スペクトラム症)のある方の転職活動の進め方

最も多くの方が利用しているのは「ハローワーク」でした。
ハローワークは、扱っている求人数も多く、さまざまな業界や職種を扱っています。また障害者専用の窓口もあり、障害者雇用と一般雇用とで迷っている方や障害者雇用枠を検討している方は活用してみると良いでしょう。

また、求人の紹介だけでなく、履歴書の書き方や面談の仕方のアドバイスや、企業との間に立って障害の状況をあらかじめ伝えてくれるといったサポートもあります。

最近は、ハローワーク以外にも障害のある方に対する専用の転職、就職サービスがたくさんあります。障害の特性を理解しながら対応してくれるなど、専門窓口ならではの手厚いサービスを受けられるほか、障害者雇用枠などの求人情報も多く扱っています。

障害のことを理解した専門スタッフであれば、適確なアドバイスが受けられ、視野が広がるかもしれません。
また企業との間に入ったサポートで、よりスムーズに転職活動を進めることもできます。 自分と相性の良い転職・就職サービスを活用してみましょう。


ASD(自閉スペクトラム症)のある方の仕事に関する口コミには、貴重なアドバイスとなるコメントが多く寄せられています。
一番大切なのは、ASD(自閉スペクトラム症)とうまくつきあいながら、無理のないペースで仕事探しを行うことです。悩んだり迷ったりしたときは、同じような経験のある方のコメントを参考にしてみてください。ヒントとなりお役に立てれば幸いです。
理想の仕事に出会えることを応援しています。


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就労継続A、B型にて支援員として、身体障害、精神障害、知的障害のある方への支援を行う。ソーシャルワーカー。 自身も悩みを抱えギャンブル依存症になった経験から、「悩みから夢まで話せる友達が見つかる東京の居場所”ココトモハウス“と出会い、現在はその管理人として多くの方から信頼を寄せている。生きづらさを抱える人達を社会と繋げて、豊かな社会を作ることがミッション。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

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