仕事が続かない精神障害の方へ 408人から学ぶ仕事を続けるためのヒント

仕事が続かない精神障害の方へ 408人から学ぶ仕事を続けるためのヒント

精神障害を抱えながら仕事している方で、仕事が続かない、仕事ができないと悩んでいる方はいらっしゃいませんか。
多くの方は、仕事を始めるとき「この職場で長く働こう」と思うことでしょう。しかし、精神障害のある方の約半数が、1年以内に離職しているというデータ※があります。

病気や障害が悪化した、体調が優れないなど、ご自身に負担がかかる状況が続く場合は、決して無理をせず、休職や離職、転職を検討することは大切なことです。

一方で、職場の「働きにくさ」により転職や離職を考える方も多くいらっしゃいます。しかし、一度働きにくいと感じた場合でも、ご自身による少しの工夫や職場のちょっとした配慮により状況が改善され、働きやすい状況に好転することがあります。

このコラムでは、精神障害者手帳をお持ちの方で、障害者雇用で就職(転職)した408人の方から寄せられた口コミをもとに

・仕事を続けられない悩み
・仕事を続けるための工夫や対策

といったアドバイスをご紹介していきます。

離職や転職について悩んでいる方、仕事を続けたいという想いのある方は、寄せられた口コミを参考にし、ご自身に合った環境で長く働いていくための手がかりとしていただけますと幸いです。

※参考:障害者雇用の現状等(2017年9月20日、厚生労働省職業安定局)

目次

1.仕事を続けられない悩み

2.仕事を続けるための工夫や対策

3.職場から得られた合理的配慮

4.最後に

1.仕事を続けられない悩み

精神障害といっても、多様な病気や障害があります。たとえ同じ病名であっても、その症状は一人ひとり異なる場合もあります。しかし、様々な精神障害を抱える方から寄せられた口コミをみていくと、仕事を続けられないという悩みに関しては、いくつか共通する傾向がうかがえました。精神障害のある方が離職してしまう要因に関する口コミを分類すると、以下の通り、4つの悩みに分けることができました。

    【仕事を続けられない悩みとその傾向】

  • 仕事内容が病気や障害の特性に合わない
  • 職場に状況を理解してもらえない
  • ハラスメントがある
  • キャリア構築が困難
ここでは、精神障害のある方が離職に至ってしまう要因について、それぞれの悩みごとに、職場での具体的な状況をみていきましょう。

1-1. 仕事内容が病気や障害の特性に合わないという悩み

面接時や就労開始時には遂行可能と思えた業務内容も、体調の波や症状の変化によって仕事の継続が困難になる場合があります。また、面接時に仕事内容について確認し了承していたとしても、実際に仕事を始めてみると、その仕事内容がご自身の病気や障害の特性に合わないことが発覚する場合もあります。
こうした状況に直面した方々は、具体的にどのような悩みを抱えていたのでしょうか。口コミをみていきましょう。

【悩み】

料理がすきだったので、できただけで、仕事はきついし、朝は早いので、大変なだけ、よくはないので、続けることができなかった。
双極性障害、小売・流通・商社系、飲食、女性

公務員は、休職などの制度は整っていて、人数も限られて病気であっても与えられた仕事を責任をもってやらなければなりません。うつ病で休職し、戻った時医師には無理をしないこと、残業もダメと言われましたが。薬のせいもあり注意力が持たず、時間もかかりミスもあり、残業してもうまく行かなくて続けられませんでした。
うつ病、女性

最初は単純作業で体を動かす仕事でしたので、何も考えずにひたすらもくもくと仕事をやり続けました。しかし慣れてきたころに、単純作業とプラスして管理業務や細かい事務作業を任されるようになりました。そのためかわからないですが、頭や神経(気)を使うようになり、うつ状態になる時が多くなり休みがちになりそのまま長期休暇→退社となってしまいました。
うつ病、メーカー・製造系、男性

最初は清掃だけだった事もあって、親身になって色々教えてくれたり自分のペースで働きやすかった。しかし半年と少し働いたところでフロントもやらなければならなくなってしまって、覚える事が増えてストレスが溜まりやすくなってしまった。
その他の精神疾患、IT・通信・インターネット系、清掃、男性



口コミからは、得意なことや好きなことを仕事に選んだ場合でも、付随する仕事内容や勤務時間が特性に合わない場合があることがわかります。精神障害の悪化や再発を防ぐために、規則正しい生活をおくることが必要です。そのため、たとえ自分に合った仕事内容であったとしても、早朝勤務や深夜シフトなど不規則な勤務時間である場合は、生活リズムを整えることが難しくなるため、ふさわしい仕事とは言えないかもしれません。

また、面接時には自分の特性に合っている仕事内容だと思った場合でも、自らの体調の変化や、職場都合での業務内容の追加や変更などの理由により、働き続けることが難しくなってしまう場合もあるようです。

1-2.職場に状況を理解してもらえないという悩み

精神障害のある方が離職してしまう要因として、ご本人と職場との意思疎通が十分に図れておらず、職場での困りごとが放置されてしまったり、本人にとって働きにくい状況が続いたりしてしまう場合があることがわかりました。具体的な状況について、口コミを見ていきましょう。

【悩み】

業務に対する相談をしても、解決しない。言ったことを守ってくれず、負荷がかかりサービス残業となる。業務に対して上司の確認が無く、失敗すると担当が全責任を取らされる。 精神疾患になっても、会社は特に何もしてくれない。自分で病院を探して行くか、会社を辞めるしかない。 様子がおかしくても放置。
双極性障害、IT・通信・インターネット系、エンジニア・技術職、男性

悩みごとがあっても、気軽に相談できる人がいない。 一般の方と変わらない、仕事量だと感じる。急がなくていいといいながら、急がなくてはいけない雰囲気しかない職場環境。 忙しすぎて、心も体も調子を崩すことが多い。 そのため、度々休むことがある。休職も2回目。 自分自身の心と体が持つまでは、頑張りたいけど、いつまで、辞めないでいられるか、わからない。
強迫性障害、小売・流通・商社系、軽作業、女性

面接の時に障害のことは伝えたうえで、採用してもらいました。ただ、精神・身体ともに見た目では分かりにくい障害であるため、不調を訴えても十分に理解してもらえなかった。
適応障害、メーカー・製造系、飲食、男性

時々、予想外に沢山の書類整理をさせられたことでストレスがたまり、周囲の話し声と笑い声が気になり仕事に集中できないので上司に相談したが、職場環境が良くならないのでその後退職しました。
統合失調症、金融・保険系、事務、女性



口コミをみていくと、悩みを相談したにも関わらず何の対処も行われない場合や、仕事に対する不満や困りごとがあっても相談できる人が職場にいない場合、職場環境の改善を図ることが難しいと感じて職場への信頼感が揺らぎ、自ら職場を離れるという選択に至ってしまう様子がうかがえます。

また、人手不足などにより慢性的に忙しい職場では、時間に追われながら仕事をせざるを得なかったり、休暇の取得について言い出しにくかったりする雰囲気があり、職場へ何か相談することがはばかられる状態であることが多いものです。
さらに、体調が悪い際も言い出しにくく、無理を重ねた結果、離職せざるを得ない状況になってしまう場合もあることでしょう。
こうした状況は、職場と十分にコミュニケーションが図れないために、業務量の相談や調整が上手くなされなかったことによって引き起こされるといえるでしょう。

1-3.ハラスメントによる悩み

精神障害のある方で、障害者雇用にて働いた経験がある方の口コミからは、離職や転職の要因として、職場でのハラスメントをあげている方も多くいらっしゃいました。具体的な悩みの内容は、どのようなものなのでしょうか。口コミをご紹介します。

【悩み】

病状への配慮や理解が全く無く、言葉も態度もキツかったです。「いない方がマシ」と言われ続けたのは、およそ2年前のことなのに未だに夢に見ますので、同じような職場には行きたくないという思いがあります。
うつ病、メーカー・製造系、エンジニア・技術職、女性

以前の仕事場では障がい者認定されていないこともありましたが、現場の人間と上司(現場を知らない)との考え方の溝が大きく、且つ上司が高圧的だったため、ミス1つで大小に関わらず、大声で正確や人間性を否定され続けました。それはほぼパワハラで、私以外にもそのせいで多くの人が病気になったり、退職されたりしていました。
気分障害、サービス・外食・レジャー系、男性

調子が悪くなり、失敗すると厳しく指摘されてしまう。障害に関する理解が進んでいなかったので、誤解が生まれている時点では、自分の立場がどんどん厳しくなってしまっていた。時に応じて精神保健福祉士の職員の助言がないと、勤務し続けるのはしんどいなと感じた。
統合失調症、サービス・外食・レジャー系、販売・接客・サービス、男性



ハラスメントが要因となって退職や転職をした方の口コミをみると、勤務中のミスなどに対して必要以上に高圧的に叱責されてしまうという状況があることがわかります。こうした職場は、病気や障害への理解が進んでおらず、従業員の個別的な事情を汲むことができていない場合が多いようです。
 
  しかし一方で、病気や障害について職場に明らかにしていない場合、職場としても必要な配慮の把握が困難であることも事実です。ハラスメントが発生したり、ハラスメントを容認したりする職場は精神障害の悪化を招く可能性があるため、無理にその職場での仕事を継続する必要はありませんが、もしも自分の病気や障害についてまだ明らかにしていない場合は、伝える方法を考え、職場に自分の特性などについて相談してみることで、状況が変わる可能性もあります
 
 

1-4.キャリア構築が困難という悩み

仕事を続けられない理由として、その職場での将来のビジョンやステップアップのイメージが描けないという口コミも寄せられていました。将来の心配がある状況について、具体的な悩みの内容を見ていきましょう。

【悩み】

障害者は原則契約社員としての採用で、昇給賞与なし。正社員登用の機会が与えられる人は1割に満たない。キャリアパスが描けない。
双極性障害、事務、男性

職場で上司とのやり取りがかみ合わず、人間関係でストレスばかり感じる。煩雑な業務ばかり任せられるのに、無駄に忙しいばかりで、やったことがしっかりと評価されない。障害者の雇用なので、給料が当初最低賃金以下に設定されており、働き続けていても、手取りの給料で生活していくこともままならない。
統合失調症、事務、男性

仕事量に対して、業務量が過多な為、給料が増えないし、環境も悪化しているため。
うつ病、事務、男性

やはり、障がいを持っているという事だけで、補助的な仕事しか与えられず、責任を持たしてくれない。賃金が安い。
うつ病、サービス・外食・レジャー系、教育、男性

介護福祉士の資格も持っていても清掃や雑用等がメインで就労しています。ステップアップしたいですし、雇用形態、条件も昇格して働きたいです。
統合失調症、サービス・外食・レジャー系、清掃、男性



口コミからは、低賃金であること、昇給、昇格の機会がない、または少ないことなどが要因となり、長く働き続けることが困難であるとの考えに至っていることがうかがえます。

そのほか、補助的な仕事しか与えられない、責任のある仕事を任せてもらえないなど、スキルアップの機会がなく、やりがいを感じられないこと、能力を発揮できていないと感じてしまうことも、将来的なキャリアのイメージができなくなってしまう要因といえるでしょう。

ここまで、仕事の継続が困難になってしまう理由について、精神障害のある方から寄せられたコメントを「仕事内容が病気や障害の特性に合わないという悩み」、「職場に状況を理解してもらえないという悩み」、「ハラスメントによる悩み」、「キャリア構築が困難という悩み」の4つに分類してご紹介してきました。

すべての悩みが解決された職場に出会い、長く働くことは理想ですが、就労前には職場の様子は見えにくいため、就労後に「こんなはずではなかった」と思ってしまうこともあるかもしれません。

それでは、思い描いていた職場の状況とはギャップがあるとき、自分の特性とは合わないと感じたとき、キャリアアップへの道が見えないと感じたときは、退職のほかに方法はないのでしょうか。

口コミをみていくと、精神障害のある方で、職場で長く働いている方は、必ずしも最初からイメージ通りの職場環境であったわけではないようです。自ら工夫や対策を実施して、自分が勤務しやすい環境になるよう、職場への働きかけを行っている様子がうかがえました。

次に、長く働くための工夫や対策、自ら実施できる取り組みについて、口コミを参考にみていきましょう。

2.仕事を続けるための工夫や対策

入社後に働きにくいと感じた場合や、理想とのギャップがわかった場合、どのようにその状況を改善していけばよいのでしょうか。ここでは、寄せられた工夫や対策に関する口コミを以下の3つに分類して紹介します。

    【仕事を続けるための工夫や対策】

  • 体調に合わせて休憩をとる、勤務日数や雇用形態を変更する
  • 自分にとって働きやすい環境を整える
  • 周囲の理解を得る
さらに、それぞれの項目において、職場へ働きかけを行う際は何をどのように働きかけ、相談するべきかについても整理していきましょう。

2-1. 体調に合わせて休憩をとる、勤務日数や雇用形態を変更する

例えば、フルタイムの職員として就職した場合、当初の雇用契約を守るためにフルタイムのまま頑張りすぎてしまい、障害や病気の症状の悪化を招いてしまう場合があることが口コミからみえてきました。
では、就職時の雇用契約のとおりに勤務することが難しい場合は、退職するほかに方法はないのでしょうか。

職場としては、従業員に長く働いて欲しいと考えている場合が多いものです。そのため、職場に相談してみることで、勤務時間や雇用形態を調整・変更してもらえる場合があるでしょう。自分の体調に合わせて休みをとることも、働き続けるための大切なポイントといえます。勤務中に負担がかかりすぎないよう工夫をしたり、勤務時間や雇用形態について職場に相談したりするなどの対策を行った方の口コミをご紹介します。

【工夫や対策】

服薬すれば通常勤務はできるのですが、服薬量に制限があるため、大幅に勤務時間を減らしました。現在は訪問介護なので、1日1件までとし、週に2~3日までと希望して、何とか職場の理解を得ることができたので働くことができています。
その他の精神疾患、うつ病、サービス・外食・レジャー系、女性

時短勤務で続けさせて貰っている。休憩を多めに取るように指示されている。
パニック障害、小売・流通・商社系、事務、男性

調子が悪いときはその事を正直に報告し、無理をせず休ませて頂いています。
うつ病、メーカー・製造系、清掃、男性

夜は早く寝るようにして充分な睡眠を確保する。疲れたらトイレに行ったり、水分補給をしたりして気持ちの切り替えを行う。
不眠症、うつ病、サービス・外食・レジャー系、営業、男性

ストレスを極力ためないようにする。例えば、1時間に1度は、会社のカフェテリアに行ってコーヒーを飲むとか、昼休みに食事を終えて自分の席に戻ってきたら、ストレッチをするとかして、できるだけストレスを「逃がす」ように心がけてきました。
双極性障害、メーカー・製造系、エンジニア・技術職、男性

お客様に理不尽なことを言われたとき、当初はしんどくなってもシフトが終わるまで耐えてやる!と意地になっていたがその対応が逆効果であり、結局途中でだめになってしまったため、しんどいときは短時間の休憩を取らせてもらうことにした。
うつ病、パーソナリティ障害、小売・流通・商社系、女性

早朝の勤務を辞退しました。薬の副作用などで、ミスや遅刻をしてしまうことが怖かったので、オーナーに掛け合って早朝の勤務を外してもらいました。
パーソナリティ障害、うつ病、小売・流通・商社系、女性

朝から会社に行くのではなく午後から出勤する事を許可してもらい少しずつ通うようにした。上司に症状を伝え、主治医に診断書を書いてもらい、相談しながら会社へ行くようにした。病気に理解がある会社で良かった。体に無理のないように動いた。
双極性障害、金融・保険系、女性



口コミをみていくと、働きながらご自身が働きやすいペースを徐々に掴んでいき、勤務時間中の休憩や気分転換でストレスが軽減できる場合は、こまめな休憩を取ることによって対応していることがわかります。

さらに、勤務日数などの調整が必要な場合は無理をせず職場に相談し、自分の体調を考慮した勤務日数や雇用形態に変更するなど、仕事を継続するための取り組みを行っていることがみえてきました。こうした口コミをみていくと、必ずしも当初の雇用契約のまま働き続ける必要はなく、頑張りすぎない度合いを自分で見つけていくことが仕事を継続するポイントであることがわかります。

それでは、体調に合わせて仕事中に休憩をとったり、勤務日数や雇用形態を変更したりするために、職場にはどのように相談や働きかけを行えばよいのでしょうか。口コミをもとに整理してみると、次のようなことがみえてきました。

【職場に働きかける際のポイント】

・まずは、仕事中にこまめに休憩をとるよう心がけてみる
・職場にはどのような休暇制度があり、どのような雇用形態があるのかを確認する
・無理せず勤務できる日数や時間帯などをイメージする
職場に相談や働きかけを行う前に、まずは仕事中にこまめな休憩をとるよう心がけてみることも、ご自身で実行できる大切な工夫の一つです。適宜休憩をとることは、仕事をさぼることとは全く違います。ずっとアクセル全開でいては、エンストを起こしてしまうこともあるでしょう。

仕事中のこまめな休憩は、エンストを起こさないための自己メンテナンスといえます。仕事中に休憩を挟んで、気持ちをリフレッシュしたり、心を落ち着かせたりすることでストレスが軽減され、勤務日数などの調整が不要になる可能性もあります。口コミでは、職務規定上、決まった時間にしか休憩が取れない場合は、水分補給やトイレ休憩として一息つくという工夫が寄せられていました。

休暇の取得や勤務時間の短縮、雇用形態の変更が必要と考えられる場合は、まず、職場にはどのような制度があるのかを確認しましょう。周知されていないだけで、意外と活用可能な休暇制度があるかもしれません。

例えば、通院のための休暇制度があれば、それを活用して通院の回数を増やすと症状が落ち着く場合もあるかもしれません。また、リフレッシュ休暇制度にて数日間まとまった休暇を取ることができれば、気分や体調を整えるのに役立つ可能性もあります。その他、時短勤務やフレックスタイムなどの制度の有無、適用条件なども確認のうえ職場に相談できると、スムーズな話し合いにつながるでしょう。

実際に職場に相談する際は、ご自身にとって勤務可能と思われる日数や時間帯などを事前にイメージしておくことが役立ちます。
例えば、朝に症状が重いという特性がある場合、トータルの勤務時間は変えずとも、朝に出勤するという状況だけ改善できれば、勤務を継続できるかもしれません。「朝の出社を避ける」という条件を一つとっても、出勤時間を遅らせ、その分退社時間も遅らせて働きたいのか、それとも、体調を整えるために勤務時間そのものを短くしたいのかなど、その対応策は様々です。

具体的に自分が働きやすい時間や勤務状況のイメージを持っておきましょう。服薬の影響なども考慮のうえ、必要に応じて医師に相談するのも良いでしょう。

こうしたポイントを押さえたうえで職場に相談し、ご自身の希望と職場の希望をすり合わせ、無理のない勤務時間や雇用形態を探ることは、仕事を続けるためのヒントとなることでしょう。

2-2. 自分にとって働きやすい環境を整える

仕事を継続するうえで、ご自身の病気や障害の特性にあった職場環境であるかどうかは非常に重要なポイントです。口コミをみていくと、周囲の方は気にならないようなことでも、本人にとっては気になって仕方がなく、仕事の集中力が途切れてしまうケースや、病気や障害の特性に合わない作業をする際に時間がかかってしまう、ミスをしてしまうというケースがあることがみえてきました。

一人ひとり違う人間であるため、仕事に集中できる環境や、仕事をスムーズに行える手順や方法にそれぞれ違いがあるのは当然のことです。しかし、自分にとって働きやすい環境を整えるために、他の従業員とは違う配慮が必要な場合は、職場へ知らせ、働きかける必要があります
ここでは、自分にとって働きやすい環境を整える工夫や対策を行った方から寄せられた口コミをご紹介します。どのような工夫を行ったのか、どのように職場に働きかけを行ったのかについてみていきましょう。

【工夫や対策】

最初は自分の言動を我慢していましたがこのままでは耐えきれなくなってしまいせっかく雇用してもらった事もあったのでそれまでは大人数の部署で作業していましたが上司に相談して1人で作業が出来る部署に移してもらいました。
人格障害、うつ病、メーカー・製造系

ホールの仕事から、厨房に入って皿洗いをやりました。それでも仕事が遅く、店長からも、何度も注意されたのですが、病気のことを打ち明けたら理解してくれまして、厨房の盛り付けをやりました。これなら何とかなるような気がしました。
統合失調症、サービス・外食・レジャー系、男性

聴覚過敏があったため、常に耳栓をするように心がけていました。耳栓がないときはイヤホンでそっと音楽を聴くようにしてリラックスするようにしました。
不安障害、女性

体温の上昇や人混みが発作のきっかけとなりやすいので、飲料水や扇風機を用意したり、昼休みをずらしてとるようにしていた。
パニック障害、マスコミ・広告・デザイン・ゲーム・エンターテイメント系、事務、男性



耳栓やヘッドフォンを使う、こまめな休憩をとる、静かで集中できる環境をつくるなど、仕事に支障のない範囲で自分が働きやすいように環境を変えたり整えたりすることは、ストレスを溜めずに仕事を継続するための大切な工夫といえます。

また、作業そのものがご自身の特性に合わない場合、職場に相談し、違う仕事内容に変えてもらうという方法もあります。職場の許す範囲にて、ご自身にとって働きやすい環境を追求するためには、職場にどのように働きかけると良いのでしょうか。口コミからみえてきたポイントをご紹介します。

【職場に働きかける際のポイント】

・自分の病気や障害の特性と照らし合わせ、職場環境や仕事内容のうち、改善したいポイントを明確にする
・求める環境や必要な道具を明らかにする
・環境を整備したい理由とその目的を具体的に説明する
 
仕事環境を整理するにあたり、まずは自分が日々の仕事内容や職場の環境のどの部分にストレスを感じたり、どの部分が精神障害の特性に合わないと感じたりしているのかという点を明確にすることが必要です。
そのためには、ご自身の精神障害の一般的な特性に照らし合わせることはもちろん、日々の業務のなかで「集中できない」と感じる瞬間や「落ち着かない」と感じる瞬間はどのような時かを考えてみることも役立つでしょう。

ストレスを感じる環境や作業内容などが明確になったら、次に、どのような環境や作業内容であればストレスを軽減できるかについて考えてみましょう。例えば、集中できない要因が職場の騒音である場合、「音が静かな場所」での作業であれば落ち着くことが出来るのか、それとも「一人で作業すること」が必要なのか、という具合に、自分にとってどのような環境であれば働きやすいと感じられるのかについて整理してみましょう。

職場に働きかける際は、まずはご自身の精神障害の特性を知ってもらったうえで、その特性によって日々の業務のなかでストレスややりにくさを感じる部分を具体的に伝えるようにしましょう。

さらに、それらを踏まえて、ご自身が求める環境や、ストレスを軽減させるために勤務中に使用したい道具などについて具体的に提案することで、職場としても課題が見えやすくなり、対応策のイメージを持つことができるでしょう。

こうした手順を踏むことにより、今までご自身しか見えていなかった仕事上の課題を職場と共有することができ、職場としても合理的配慮の検討がしやすくなることでしょう。

2-3. 周囲の理解を得る

「理解を得る」というと、職場の全員に自分の症状について話さなければいけないと感じてしまうかもしれません。
しかし、口コミをみていくと、ご自身の状況について工夫して説明することで、必ずしも職場の全員に詳細について説明しなくとも、働きやすい状況を自ら作り出していくことが可能であることがうかがえました。具体的な工夫の方法について、口コミをみていきましょう。

【工夫や対策】

心療内科に通院していますので、医師に処方してもらった薬を飲むことで発作が大抵和らぎます。信頼できる同僚が一緒の業務の日は、体調がすぐれないことを話しておくことによっても安心感が得られて、体調が悪化せずにすむことがあります。
パニック障害、サービス・外食・レジャー系、女性

周りに軽く伝えておき、スタッフなどにはしっかり病状を伝えた上で対処していただいています。お客様自体が優しい方ばかりなので工夫というよりは助けていただいております。また、事前にメンタルクリニックで症状を確認してもらい、処方された上で働いているので気をつけて生活することをまずは心がけています。
双極性障害、サービス・外食・レジャー系、女性

上司には病気についてネットなどの情報も見せ、理解して貰えるように自分の口からこういう時にはこういう対応をお願いしたいと自己申告していました。なにか問題があれば必ず上司に時間を作ってもらう事、その時必ずしっかりと話せるように言いたいことは前もってメモなどに記載し下準備を必ずしてから話し合いの場を設けてもらってその場でどのような対応が適切か常に話し合いで決めていきなんとかお仕事のしやすい環境を作る努力をしました。
発達障害、不安障害、パニック障害、うつ病、小売・流通・商社系、女性

障害の診断を受けてからは、障碍者手帳を取得し、障害があることをオープンにして就職しました。あと、配慮してほしいことを「私の説明書」として作成し、面接で提出しました。職場という世界の中でできた事はこのぐらいでした。
うつ病、サービス・外食・レジャー系、女性

自分の得意・不得意(苦手)なことを事前に相手に伝えておき、可能な範囲の配慮をお願いする。
発達障害、うつ病、サービス・外食・レジャー系、事務、女性

常に会社に相談し、疾患が出たときの対応や、あらかじめ把握して欲しい『自身の障害マニュアル』と『会社が求める対応に応えられるか確認したい意思』を面接時に伝えました。勤務時になるべくチャットルームで指示を頂くようにしたり、できない場合に教えてもらう際や、症状が出たときに『緊急バッグ』を用意し、誰でもいいので、持ってきてもらえるよう。障害にすぐ対応できるようにしました。
その他の精神疾患、コンサルティング・専門サービス系、事務、女性



口コミをみていくと、周囲の方に病気や障害の症状や特性について伝えることは、体調が悪くなった時に休みや休憩をもらいやすいという具体的な効果のほかに、精神的な安心感につながるということがわかります。
また、周囲の方の理解を得ておくことで、緊急時の対応などがスムーズになされることや、特性に合った指示出しの方法を取ってもらえるなどの合理的配慮につながることもうかがえます。

それでは、周囲の理解を得るためには、どのように職場に働きかけると良いのでしょうか。寄せられた口コミの内容を整理してみましょう。

【職場に働きかける際のポイント】

・仕事をスムーズに進めるため、どの範囲の人に知ってもらうべきか考える
・伝えたい範囲の人に、どの程度知ってもらいたいのかを考える
・まずは上司やリーダーなどに話をし、同僚などにどのように伝えるのかを共に決めていく
ご自身の病気や障害の特性について周囲に知ってもらうことは、ご自身にとっての働きやすさにつながる場合が多くあります。しかし、症状や特性などの詳細について、職場の全員に詳細を伝えるのは気が進まない場合もあるでしょう。口コミをみていくと、症状などの詳細については、必ずしも職場の全員に知らせる必要はないことがわかります。
まずは、ご自身の病気や障害について、どの範囲の人までに知ってもらうべきかを考えてみましょう。例えば、勤務中にパニックを起こしてしまう可能性があるのであれば、その場に居合わせる可能性のある人皆に知ってもらうと安心できるかもしれません。もしくは、口頭での指示が苦手という特性がある場合は、ご自身に指示を出すポジションの人だけに特性を知ってもらうだけでも良いかもしれません。

ご自身の仕事内容や精神障害の特性と照らし合わせながら、同じ職場に勤務する人全員に理解してもらいたいのか、それとも、勤務時間や勤務曜日が重なることが多い一部の人だけか、ご自身の隣や後ろなど、近くに配置されているごく少数のだけに知っていて欲しいのか、上司だけに把握しておいてもらいたいのかなど、病気や障害への理解を促したい範囲について、イメージしてみましょう。

知らせる範囲のイメージが持てたら、次に、その範囲の人にどの程度ご自身の病気や障害の特性について知ってもらうべきか考えてみましょう。

例えば、休暇や通院などの相談、勤務内容の相談などをしやすくするため、上司には病気や障害の特性をしっかり把握して欲しい場合もあるでしょう。一方で、職場の同僚には、「電話応対が苦手」、「朝に体調が悪いことが多い」など、業務に関連することに留めて知ってもらいたいという場合もあるのではないでしょうか。
知らせたい範囲ごとに、どの程度知ってもらいたいかについて考えておくと、職場に相談する際のイメージの共有に役立つでしょう。

実際に職場に相談するにあたっては、まずは上司やリーダーなど、ご自身の職場のまとめ役を任っている人に相談してみると良いでしょう。上司やリーダーに相談する際は、ご自身の病気や障害の特性について知らせたい範囲のイメージと、なぜその範囲に伝えたいのか(業務上で配慮して欲しい点がある、急に体調が悪くなった場合の対応について知っておいて欲しいなど)という理由も共に伝えられると良いでしょう。

理解してもらいたい状況のイメージを上司やリーダーと共有することができれば、伝える範囲や伝え方などを改めて一緒に考えてくれる可能性もあります。また、上司や同僚にご自身の病気や障害の特性について話しをする際は、特性により不得意な業務内容を具体的にあげるとともに、得意な業務内容も併せて知らせることで、従業員同士で苦手な業務をサポートしあえる可能性や配置転換の可能性も広がることでしょう。

3.職場から得られた合理的配慮

ここまで、仕事を続けるための工夫と、職場に働きかける際のポイントについて、口コミをもとにみてきました。それでは、こうした働きかけを職場に対して行うことにより、実際に働きやすく、仕事を長く続けられる状況に職場は変わっていったのでしょうか。

ここでは、相談や働きかけを行うことにより職場はどのように変わるのか、どのような合理的配慮が得られるようになったのかという点について、口コミをご紹介します。

【職場から得られた合理的配慮】

最初は仕事量が少なかったり、鬱やパニックがあるからと簡易作業ばかりで仕事に不満がありましたが、話し合って体調などを見つつ仕事量を増やして頂いたり、逆に調子が悪い時は負担の少ない作業にしてくれたりと色々な配慮をしていただきましたし、健康状態などは常に把握して頂いていたので安心して仕事をさせていただきました。
パニック障害、うつ病、女性

無理(苦手)な仕事は、他の人に振っていただけるので、報告・連絡・相談を密にすれば、無理なく働くことができます。また、始業時刻・終業時間も相談に乗ってもらえるので、短時間(それでも6時間以上?)しか働けなくても大丈夫です。
双極性障害、メーカー・製造系、事務、男性

障害が発覚しても従来どおりの仕事で続けられた。 配置転換や勤務場所変更などで配慮があった。
うつ病、不安障害、不眠症、メーカー・製造系、人事・経理・総務・企画、男性

業務指示を出してもらうときは口頭ではなく手順書をいただくようにして、かつ自分自身でも進捗状況の報告を逐一行って連携をとっている。
気分障害、サービス・外食・レジャー系、事務、女性

代表の方がよく理解のある方で躁鬱を勉強する研修を開いてくれました。もちろん他の職員の方も参加して理解を得てもらったと思いますが、その結果に甘えることなくダメなときには厳しく接することもきちんとお伝えしました。
双極性障害、サービス・外食・レジャー系、男性



最初はどのようなサポートが必要かわからず、職場としても試行錯誤のなか配慮を実施している場合があります。こうした場合、時として職場が実施しているサポートと、本人が求めている合理的配慮にくいちがいが生まれてしまうことがあります。

ご自身の病気や障害の特性、必要なサポートなどについて職場と話し合った結果、少なすぎた仕事量を増やしてもらったり、勤務時間の調整をしてもらったり、精神障害への理解を促すための研修が職場で開かれるなどの取り組みが実施され、状況が改善されたことがうかがえます。

また、病気や障害の特性に合った指示出しの方法や、特性により苦手な業務の遂行をサポートするための取り組みが行われていることもみえてきました。特性により苦手な特定の業務などは、ご自身から職場に相談しない限り、職場として把握することが難しいものです。
一方で、指示出しの方法や苦手な業務に関することは個人的な課題であると考え、職場に対応を求めることにためらいを感じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、働きやすい環境にて能力を発揮してもらい、従業員に長く勤めてもらうことは、多くの職場にとってのメリットといえます。また、従業員の個別事情を汲みながら、働きやすい環境を整備していくことは、誰もが働きやすいユニバーサルな職場を作っていくための大切なステップでもあります。
ご自身から職場に働きかけを行うことは、職場にとって、今まで見えていなかった課題を発見するチャンスでもあるのです。

4.最後に

これまでの内容をまとめます。

・仕事を続けられない悩みとしては、次の4つが多くあげられていました。
 
  • 仕事内容が病気や障害の特性に合わないという悩み
  • 職場に状況を理解してもらえないという悩み
  • ハラスメントによる悩み
  • キャリア構築が困難という悩み
・「仕事内容が病気や障害の特性に合わないという悩み」をみていくと、面接時には自分の特性に合っている仕事内容だと思った場合でも、自らの体調の変化や、職場都合での業務内容の追加や変更、不規則な勤務スケジュールなどの理由により、働き続けることが難しくなってしまう場合があることがわかりました。

・「職場に状況を理解してもらえないという悩み」については、職場と本人とのコミュニケーション不足により、業務量の相談や調整が上手くなされず、無理して働き続けた結果、体調が悪化してしまう場合があることがうかがえました。

・「ハラスメントによる悩み」では、ハラスメントが発生してしまう職場は、従業員の個別的な事情を汲むことができず、病気や障害への理解が進んでいない場合が多いことがみえてきました。

・「キャリア構築が困難という悩み」をみていくと、スキルアップの機会がない職場ではやりがいを感じられず、将来的なキャリアのイメージができなくなってしまうことが離職につながっている状況がうかがえました。

・仕事を続けるための工夫や対策については、次の3つに分類して整理しました。

  • 体調に合わせて休憩をとる、勤務日数や雇用形態を変更する
  • 自分にとって働きやすい環境を整える
  • 周囲の理解を得る
「体調に合わせて休憩をとる、勤務日数や雇用形態を変更する」ために、具体的に実行できることとしては、仕事中にこまめな休憩をとるよう心がけてみることや、利用可能な休暇制度、雇用形態などを職場に確認すること、ご自身が勤務可能と思われる日数や時間帯などを事前にイメージしたうえで職場に働きかけを行うことがあげられます。

「自分にとって働きやすい環境を整える」ためには、ご自身の病気や障害の特性と照らし合わせ、職場環境や仕事内容のうち、改善したいポイントを明確にすることが大切です。そのうえで、その改善のために必要な環境や使用したい道具を明らかにし、環境を整備する必要性や特定の道具を使用する意味について具体的に説明することで、職場との課題共有がスムーズにいくことでしょう。

「周囲の理解を得る」ことについては、仕事をスムーズに進めるため、職場のどの範囲の人にご自身の精神障害について知ってもらうべきか考える必要があります。そのうえで、知らせたい範囲ごとに、病気や障害の特性などの詳細について、どの程度理解してもらいたいのかをイメージしてから職場に働きかけを行うと良いでしょう。

・職場から得られた合理的配慮については、様々な口コミが寄せられました。しかし、共通して言えることは、精神障害の特性により苦手な特定の業務などは、ご自身から職場に相談しない限り、職場として把握することが難しいものであるという点です。ご自身から自分の病気や障害について職場に働きかけを行うことは、職場にとっても、新たな課題を発見し、より良い職場環境を整えていくきっかけになることでしょう。

こうしてみていくと、自ら動いてみることで、働きやすい環境に改善されていく場合も多くあることがわかります。

働きやすい環境のなかで、いきいきと長く働くことができるよう、私たちは願っています。


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