知的障害のある方に向いている仕事は?62人の口コミを分析

知的障害のある方に向いている仕事 62人の口コミを分析

知的障害を抱えながら仕事している方の中には、うまく付き合いながら理想の職場で働いている方もいらっしゃれば、仕事が続かない、向いている仕事がわからないという悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

知的障害といっても、その症状や特性は一人ひとり異なるものです。ここでは、同じように知的障害を抱えながら仕事をしている方々の状況について、

・知的障害のある方の仕事に対する満足度
・知的障害のある方が働いている業界や職種
・仕事を探す際に利用した求人サービス

をご紹介していきます。

障害者雇用の専門家みちしたさん(社会福祉士、精神保健福祉士)にもアドバイスをいただきました。

仕事との向き合い方や働き方について悩むこと、不安に感じることがある方は、ぜひ口コミに寄せられた声を解決のヒントとしてみてください。

*この記事はみちしたさんに監修していただきました
みちしたさん

社会福祉士・精神保健福祉士(ソーシャルワーカー、精神科ソーシャルワーカー:社会福祉専門職の国家資格)の資格を持つ。障害者支援施設にて支援員を8年経験した後、福祉資格を持つ地方公務員として採用され、ソーシャルワーカーとして活躍。


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目次

1.知的障害とは

2.知的障害のある方の仕事満足度

3. 知的障害のある方が働いている業界

4. 知的障害のある方が働いている職種

5. 知的障害のある方が活用した求人サービス

6. 専門家からのアドバイス

7. まとめ

1.知的障害とは

    知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳未満)にあらわれ、日常生活の中でさまざまな不自由が生じることをいいます。
    例えば、複雑な事柄やこみいった文章・会話の理解が不得手であったり、おつりのやりとりのような日常生活の中での計算が苦手だったりすることがあります。

    また、障害のあらわれ方は個人差が大きく、少し話をしただけでは障害があることを感じさせない方もいます。しかし、自分のおかれている状況や抽象的な表現を理解することが苦手であったり、未経験の出来事や状況の急な変化への対応が困難であったりする方は多く、支援の仕方も一人ひとり異なります。

参考:東京福祉保健局「ハートシティ東京」

日常生活で不自由を感じるように、仕事でも苦手なことがあります。
苦手なこと、そしてできることを把握しながら、自分に向いている仕事に出会うことが必要です。そして、サポートを要することを考慮し、職場の様子や雰囲気なども十分に確認する必要がありますね。

2.知的障害のある方の仕事満足度

知的障害がある方のうち、現在働いている方、または過去に働いていた方は、その仕事にどのくらい満足しているのでしょうか。

知的障害のある方の仕事の満足度について、グラフをみていきましょう。

知的障害の方の仕事満足度グラフ"


回答結果は以下のとおりです。

  • どちらともいえない 約34%
  • とても満足している+満足していると 約35%
  • 全く満足していない+満足していない 約31%
仕事について、多くの方は満足な点と不満足な点の両方を感じていることがうかがえる結果となりました。次に、ここで取り上げた仕事の満足度別に口コミをご紹介します。

まずは、「どちらともいえない」と回答した方の口コミです。

【「どちらともいえない」と回答した方】

ずっと同じ会社ですが給料が上がらないのがつらいです。病気や障害に対しての理解はあると思います。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、男性)

障害のことを知っている方はごくわずかでした。色々サポートしていただきましたが、嫌なことを言う人もいました。自身の能力に合わせて甘えさせてもらっていることが有難くも憂鬱で辛かったです。
(メーカー・製造系、軽作業、女性)

パソコンを使った作業や印刷などの手伝いが覚えられなかったです。不眠症や自律神経の症状で続けられなかった。人間関係には恵まれました。
(サービス・外食・レジャー系、販売・接客・サービス、女性)

職場の理解があり、人間関係に恵まれているという点には満足しているものの、給料面や仕事内容に不満があるという口コミが寄せられました。

また、知的障害について職場の一部の人にしか知られていない場合、職場内で合理的配慮を受けづらく、仕事のやりにくさにつながってしまう様子もうかがえます。

次に、「満足している」と「満足していない」について、それぞれの口コミをみていきましょう。

【「満足している」と回答した方】

皆さんとても優しい方ばかりなので、些細な事でもくだらない話でも自分の事の様に耳を傾けて改善策を一緒に考えてくれるのですごく助かっています。堅苦しい話だけじゃなく、冗談とか言い合ったりすることもあって一緒に居て楽しいです。
(小売・流通・商社系、軽作業、女性)

冗談をまじえながらコミュニケーションをとるなど、アットホームで明るい職場です。その人にあった仕事を考えてくれますし、スピードが遅いことやできないことがあっても優しく対応してくれます。わからないことがあっても質問しやすいです。マイペースな方でも働きやすいと思います。
(メーカー・製造系、軽作業、女性)

同じ業界の中でも、この会社は福利厚生が非常に良いと思う。ちゃんと有給消化もできるし残業手当もつく。
(小売・流通・商社系、軽作業、男性)

「満足している」理由の特徴としては、次の3つが挙げられます。

  • 人間関係が良好
  • 無理のない範囲で仕事ができる
  • 休暇制度や福利厚生が整っている
このような職場は、知的障害の有無に関わらず、誰にとっても働きやすい職場といえますね。

続いて、「満足していない」と回答した方の口コミをご紹介します。

【「満足していない」と回答した方】

就労支援学校卒業を経て障害者雇用枠として入社しましたが、障害雇用にあまり理解がなく障害にあった配慮をあまり受けることが出来なかった。
(メーカー・製造系、事務、女性)

給料は高くなかったので、金銭的な余裕がなかった。障害者枠として入社したのが初めてだったのか、働きにくいように感じた。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、男性)

障害に対する配慮がほぼなく、強い口調での叱責が日常的に行われていた。
(コンサルティング・専門サービス系、軽作業、男性)

「満足していない」理由の特徴としては次のような点が挙げられました。

  • 知的障害への理解がなく、合理的配慮が受けられない
  • 給料が低い
  • ハラスメントがある
企業として初めての障害者雇用である場合、どのような合理的配慮が必要かわからず、就業者本人が求めるものと職場側の配慮にミスマッチが生じてしまう場合もあるようです。

こうしたことを避けるためには、次のような対策が考えられます。

  • 職場の障害者雇用について過去の実績を確認する
  • 業務で困ったことを気軽に相談できる環境かどうかを確認する
  • 求人サービスを利用して就職する場合は、求人サービスの担当者に企業との間を取り持ってもらう
ミスマッチを減らすためには、こうした対策を行って、ご自身の意向と職場の意向をすり合わせる必要がありますね。

ここまで、仕事の満足度についてみてきました。次に、知的障害のある方が多く働いている業界の傾向をみていきましょう。

3. 知的障害のある方が働いている業界

知的障害のある方は、どのような業界で多く働いているのでしょうか。
知的障害のある方が多く働いている業界を表したグラフは、次のとおりです。

知的障害の方の業種別グラフ


最も多くの方が働いている業界は、以下のとおりです。

  • サービス・外食・レジャー系 50.0%
  • メーカー・製造系 21.0%
それぞれの業界で働いている方の口コミを、満足度別にご紹介します。

3-1. サービス・外食・レジャー系

サービス・外食・レジャー系で働いている方から寄せられた口コミを、「満足度が高い口コミ」と「満足度が低い口コミ」に分けてみていきましょう。

【満足度が高い口コミ】

障害を受け入れ、文章でなく単語を並べてわかるまで何度もやり方を教えていただけた。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、男性)

入社式のときに「どんなに小さな困りごとでも相談してください、店舗に相談しづらいようであれば本社に伝えてくれてもいいよ。」と言われ、開かれた会社だなと思った。入社までに配属先に自分の特性を伝えていてくださったので、スムーズに初日を迎えることができた。勤務時間も実習のペースでまず慣らしてから時間をのばしたいと伝えると、ほぼ同じ時間帯で勤務時間を調整してくれて、ペースを早くつかむことができた。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、男性)

自分のこなせる範囲の仕事をマイペースで行える、働きやすい環境。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、男性)

満足度が高い口コミをみると、サービス・外食・レジャー系の業界で働くメリットとしては、

  • 直属の上司以外にも仕事状況を把握してくれる人物がいる
  • 様々な仕事内容があるので、自分に合った仕事ができる
といった点があることがわかります。

サービス・外食・レジャー系の業界では、店長など現場の責任者の他に、エリアマネージャーや本社の担当者などがいるため、複数の人が一つの現場の状況を把握できる仕組みが整っている場合が多いものです。

働くうえで困ったことがあるときは、まず現場の責任者に相談することになりますが、問題の解決に至らない場合もあるかもしれません。そんな時に、現場の状況を知っている他の方に相談できるというのは、働くうえでの安心感につながることでしょう。

また、サービス・外食・レジャー系の業界は、店舗などの施設で働く場合が多いと考えられます。同じ施設内でも、接客や事務など、様々な仕事があるため、ご自身の特性にあった仕事を見つけやすいということも、人気の理由といえるでしょう。

次に、サービス・外食・レジャー系の業界で働いている方から寄せられた、満足度が低い口コミをみていきましょう。

【満足度が低い口コミ】

人間関係が一番の悩みでした。給料も安いし、病院の方針が納得いかない部分もありました。何せ仕事量が多かったです。
(サービス・外食・レジャー系、医療・介護・福祉、女性)

複数のことを指示されるとパニックになるから、出来れば1つ1つ指示してほしいと依頼していたにも関わらず、実際には複数の指示が当然という態度をとられた。依頼した点については配慮してほしかった。
(サービス・外食・レジャー系、医療・介護・福祉、女性)

部屋が綺麗になっていないと言われたり、オムツ交換が遅いと言われたりした。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、男性)

満足度が低い口コミをみると、サービス・外食・レジャー系の業界で働くデメリットとしては、

  • 人間関係が悪い
  • 給料が低い
  • 業務量が多く、時間に追われる
といった点があることがわかります。

サービス・外食・レジャー系の業界では、店舗等の施設に出勤する勤務形態が多いことは先に述べたとおりです。人間関係は業界に関わらず職場によるところが大きいものですが、施設内などの閉鎖的な空間では、人間関係が悪化した場合に、他の業界よりも一層居づらさを感じてしまうことでしょう。

また、サービス・外食・レジャー系の業界においては、業務量が多く、職場の同僚が合理的配慮をする余裕がない場合もあるようです。業務量が多ければ、必然的に短い時間で早く仕事を終わらせることが求められます。時間に追われるような仕事内容はストレスを感じる要因ともなるため、職場に対する満足度が低下してしまうことにもうなずけます。

仕事探しの際は、職場見学の機会などを活用したうえで、職場の雰囲気や業務量を観察し、自分に向いている職場かどうかを見極めることが重要です。

次に、2番目に働いている方が多い業界である「メーカー・製造系」についてみていきましょう。

3-2. メーカー・製造系

メーカー・製造系で働いている方から寄せられた口コミを、「満足度が高い口コミ」と「満足度が低い口コミ」に分けてみていきましょう。

【満足度が高い口コミ】

施設から体験で入社しました。障害者であることを承知の上での採用だったので、暖かく皆がフォローしてくれます。新入社員が入るときも、私の障害の事を話した上で紹介してくれるので、好奇な目で見られる事もなく普通に接してくれてます。
(メーカー・製造系、清掃、女性)

皆さんが障害の特徴を理解して下さり、私ができる仕事をさせて頂いている。
(メーカー・製造系、軽作業、女性)

自身の体調や最近困っていることがないかということ等を、朝会社に来たときに一番に気にかけてくださり、良いところを上司が人事担当者や管理職のいる目の前でものすごく褒めてくださったため、仕事をする上でモチベーションが上がったと同時にとてもやりがいを感じた。
(メーカー・製造系、軽作業、男性)

満足度が高い口コミをみると、メーカー・製造系の業界で働く方は、

  • 上司や同僚の目が行き届いており、安心した雰囲気のなかで働くことができる
  • 知的障害に理解があり、必要な配慮がある
といった点にメリットを感じていることがわかります。

メーカー・製造系の業界では、工場などの中で固定の従業員と仕事をするという勤務形態が多いことでしょう。常に従業員同士が目の届く範囲にいるため、お互いを気遣い、サポートし合える関係性を築きやすいという点が人気の理由と考えられます。

サービス・外食・レジャー系の業界と異なり、メーカー・製造系の業界の場合は、顧客が施設内にいるわけではありません。そのため、自然とお互いに注意が向きやすいのかもしれませんね。

続いて、メーカー・製造系の業界で働いている方から寄せられた口コミのなかでも、満足度が低い口コミをみていきましょう。

【満足度が低い口コミ】

障害を持っているのにも関わらず、健常者と同等の扱いを受けていた。 症状が悪化して、休職を申し出たら解雇された。
(メーカー・製造系、エンジニア・技術職、男性)

障害者雇用枠で入社はしていましたが、直属の上司以外は私自身が障害雇用で入社していることは知らない状態だった為、業務のスピードや理解力やコミュニケーションの部分で誤解されてしまうことが多々ありました。その事によって孤立し自分への仕事が全く来なくなり、自分の居場所がなくなってしまいとても辛かったです。
(メーカー・製造系、事務、女性)

いつも半年更新で店長と面談するけど、面談した店長が他の店舗に異動するから、「よし改善するぞ」ってやる気のある店長がいても、解決する前にいなくなるので何も解決しない。
(メーカー・製造系、軽作業)

口コミでは、メーカー・製造系で働くことのデメリットとして、

  • 知的障害への理解がない
  • 障害の有無に関わらず従業員を同一に扱うため、合理的配慮を受けづらい
  • 上司の異動により状況が変わってしまう
といった点が挙げられました。

知的障害に理解のない職場では、合理的配慮の必要性を理解していないために、全ての従業員に一律のルールを適用することで「従業員を平等に扱っている」と認識してしまっている場合があります。

こうした場合、知的障害のある方にとっては、合理的配慮を受けづらく働きにくい状況となってしまいます。

また、メーカー・製造系の業界では、現場責任者の役職をキャリアアップのための一つの通過点としている企業も多く、現場責任者として一定期間その職務にあたった後は、本部などに異動となるケースもあります。

しかし、現場で働く方にとっては、頻繁に上司が変わることで、それまで進めていた事柄をまた一からやり直さなければならないといった弊害が生じることもあります。そのため、上司が頻繁に変わることは、働きにくさにつながる可能性も考えなくてはいけません。

メーカー・製造系の業界への就職を考える場合は、次のようなことを確認しておくと、ご自身に向いている仕事を探すための手がかりとなることでしょう。

  • 知的障害のある従業員の雇用実績について確認する
  • 従業員の平均的な勤続年数について確認する
  • 現場責任者の異動の頻度について確認する
現場責任者が変わる度に状況が大きく変わってしまう職場では、安定して長く働き続けることは難しいものです。従業員の平均的な勤続年数を確認することは、従業員にとって働きやすい職場であるかどうかを見極める目安となることでしょう。

4. 知的障害のある方が働いている職種

ここまで、知的障害がある方が多く働いている業界についてみてきました。人気の業界にも、良い点と悪い点があることが口コミからわかってきましたね。

それでは、日々の仕事内容に密接に関係する職種については、どのような傾向があるのでしょうか。

ここからは、知的障害がある方が多く働いている職種についてみていきましょう。

知的障害の方の職種別グラフ


最も多くの人が働いている職種は、以下のとおりでした。

  • 軽作業 58.1%
  • 清掃 12.9%
  • 事務 12.9%
次に、それぞれの職種で働いている方の口コミを、満足度別にご紹介します。

4-1. 軽作業

軽作業の職種で働いている方から寄せられた口コミを、「満足度が高い口コミ」と「満足度が低い口コミ」に分けてみていきましょう。

【満足度が高い口コミ】

休みはきちんと取れるし、有給消化も可能。残業手当もつくし希望する休みはほぼ取れる。
(小売・流通・商社系、軽作業、男性、)

手先を使う作業が苦手で化粧品サンプルを束ねる業務を行うときに苦労していたところ、同僚が「こうすれば上手くできるよ!」といったことをアドバイスしてくれた。たくさんの人が自分のことを応援してくれているんだと思うと、仕事のモチベーションが上がってとてもうれしかった。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、男性、)

朝の満員電車が苦手な社員には、通勤ラッシュの時間をずらした10時を始業開始にしてくださいました。また毎日の終礼では、最近困っていることや体調など、かゆいところまで気にかけてくださるので、障害のある方はもちろん、障害のない方にも働きやすい。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、男性、)

満足度の高い口コミでは、軽作業の職種で働くことのメリットとして

  • 勤務時間の融通がきくこと
  • 周囲から声かけなどの配慮を受けられること
などが挙げられました。

軽作業は、同じ業務内容を複数の従業員が担当していると、遅刻や欠勤があった場合でも、他の従業員がその仕事をカバーできる体制が整っています。そのため、職場によっては、勤務時間や出勤時間の調整がしやすくなります。

軽作業には、チームを組んでの仕事や、ラインでの作業なども含まれます。こうした仕事は、お互いに助け合って仕事を進めていく必要があるため、苦手な業務の交代や、進捗状況の確認のために従業員同士で声をかけあう場面も増えるものです。このような配慮がある職場は、知的障害のある方にとって働きやすいといえるでしょう。

軽作業は知的障害のある方に人気の職種ではありますが、働いている方の中には、不満を持っている方もいらっしゃいます。

満足度が低い口コミから、軽作業の職種を選ぶ際に気をつけるべきことを考えていきましょう。

【満足度が低い口コミ】

どれだけ努力して業務に励んでも正社員にはなれなかった。
(小売・流通・商社系、軽作業、男性)

障害者雇用で入社したのに、健常者として扱われ、障害のために困難な仕事をできないで困っていても、お構いなしで頭ごなしに強く叱責された。
(コンサルティング・専門サービス系、軽作業、男性)

人事異動で上司が変わることがあり、そのつど、少しずつ仕事が変化していき大変だった。
(メーカー・製造系、軽作業、男性)

満足度が低い口コミをみると、軽作業の職種で働くデメリットとして、次のような点があることがわかります。

  • キャリアアップが望めない
  • 上司の異動が多く、変化に対応するストレスがある
  • 仕事内容に関する合理的配慮を受けられない
軽作業の職種では、一般的に派遣やアルバイトという雇用形態が多いものです。正社員になることが難しかったり、昇給の機会が限定的であったりすると、将来のイメージが描けず、仕事に対するモチベーションの低下にもつながりかねません。

メーカー・製造系の業界で働くことのデメリットとして取り上げたように、工場などの現場責任者の役職に就くことを、キャリアアップのための一つのステップとしている企業が多いため、現場で働いている方にとっては、現場責任者がすぐに変わってしまうという状況の職場もあります。

現場責任者が変わる度に新しい現場責任者に合わせて仕事をしなければならないというのは、働く人にとってストレスが多い状況といえるでしょう。

軽作業の職種で働く際は、次のような点について確認することが、ご自身に向いている職場を探す手がかりとなることでしょう。

  • 正社員への登用や、昇給に関して明確なルールがあるか
  • 現場責任者が異動になった際、どのような状況の変化が考えられるのか
  • 仕事について、上司に相談する機会があるか
  • 従業員専用のハラスメント相談窓口などはあるか
こうした点について事前に知るためには、求人サービスの担当者に尋ねてみることや、実際にその職場で働いている方々から寄せられた口コミをチェックして情報を集めることが重要ですね。

次に、2番目に多くの人が働いている「清掃」と「事務」の職種について、それぞれみていきましょう。

4-2. 清掃

まずは、清掃の職種について、「満足度が高い口コミ」と「満足度が低い口コミ」に分けて ご紹介します。

【満足度が高い口コミ】

精神面で、色々フォローしてくれて、困ったな・・・って顔すると『少し話そっか?大丈夫?』と、声をかけてくれます。
(メーカー・製造系、清掃、女性)

「社会の役に立ちたい」「一生懸命に仕事をしたい」というその気持ちをとても尊重してくれた上で障害に配慮し、融通を利かせてその状態でできる仕事を割り振ってくれました。しっかり向きあってくれました。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、男性)

清掃の職種で働いている方からは、知的障害の特性を理解し、気にかけてもらえたという口コミが寄せられました。

清掃の職種は、障害者雇用を積極的に行っている職場が多くあります。そのため、従業員としても、障害のある方と共に働くことの経験を積んでいるケースが多く、互いを気遣いながら仕事を進めることに慣れている場合が多いと考えられます。

次に、清掃の職種で働いている方から寄せられた、満足度が低い口コミについてご紹介します。

【満足度が低い口コミ】

暇な時は暇だが、忙しい時は目が回るくらい忙しい。返ってきた食器が積み重ねられていく様子を見て、最初の頃はただただパニックになってしまっていた。要領を掴むまでが大変だとは思う。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、女性)

マイナス面では労働時間が短い事と賞与がありません。アルバイトの場合、給与は時給計算です。永久的に働ける場所ではありませんね。
(サービス・外食・レジャー系、清掃、男性)

満足度が低い理由として、忙しさと給料の低さが挙げられました。

清掃の職種でも、その勤務先によって忙しさが違ってくることでしょう。例えば、レストランであれば、顧客が多い時間は忙しくなることが予想されます。しかし、例えばオフィスビルの清掃の場合は、一日を通して出入りする人の数は概ね決まっているため、急に忙しくなることは少ないでしょう。

このように、清掃の職種は、勤務先によってその忙しさが変わってくることから、自分に向いている仕事について考える際は、勤め先の忙しさの傾向について、よく確認しておくことが重要です。

4-3. 事務

次に、事務の職種について、「満足度が高い口コミ」と「満足度が低い口コミ」に分けて、それぞれのメリットやデメリットをご紹介します。

 【満足度が高い口コミ】

担当していた業務は入力作業がメインだったので、体力はほとんど使いませんでした。上司も丁寧に教えてくれる人ばかりだった。
(IT・通信・インターネット系、事務、女性)

勤務していたのが障害者の福祉をしてる課だったので、職員の人が優しかったです。仕事も無理のないようになっていますし、電話対応ができないと言ったらやらなくてもよくなり、配慮してくれました。体調が悪くて休んだ時は有給扱いになりました。公務員の職員以外にも健常者の非常職員もいるのですが、その方たちも優しく接してくれて丁寧に仕事を教えてくれました。
(事務、男性)

事務の職種は、体力面の負担が少ないことが、人気の理由の一つです。さらに、福利厚生が整っていること、休暇を取りやすい雰囲気があるということも、事務の職種の働きやすさにつながっているようです。

続いて、満足度の低い口コミから、その理由をみていきましょう。

【満足度が低い口コミ】

障害の種類にもよります
が、昇給やベースアップはあまり期待できない。ただ、業務はそれほど難しくない。 (コンサルティング・専門サービス系、事務、男性)

入社してから、殆ど給与はアップしません。残業はなく副業禁止です。そのため、一人だちするのが難しく、息子は直談判をして特例として「住宅補助」を受けていますが、将来結婚を考えると不安なようです。
(サービス・外食・レジャー系、事務、男性)

満足度が低い理由として、昇給が見込めないことや残業がないことなど、給料を上げることが難しいという点が挙げられました。

事務の職種で仕事探しをする際は、昇給の機会や残業の有無について事前に確認しておくと、働き始めてからの生活をイメージしやすくなるでしょう。

5. 知的障害のある方が活用した求人サービス

向いている仕事に就くためには、どのような求人サービスを活用するかという点も重要です。知的障害のある方に人気の求人サービスには、どのような特徴があるのでしょうか。

知的障害のある方が活用した求人サービスを示したグラフは次のとおりです。



最も多く活用されている求人サービスは「ハローワーク」でした。97%の方が活用していると回答しています(複数選択可の結果)。次いで多く活用されているのは「就労移行支援施設」(48%)という結果でした。

それぞれの求人サービスについて、寄せられた口コミから、その特徴をみていきましょう。

【ハローワーク】

ハローワークからこの会社があるから働いてみないかといわれました。面接が決まったときには、同行してもらいました。裏ではどれくらいの能力を持っているのかを話してくれていたみたいで、働きやすい環境の整備に努めていただきました。
(運輸・交通・物流・倉庫系、軽作業、男性)

障害枠で探しているときにスタッフの方についてもらい、「何ができて何ができないか」を説明し、きちんと配慮を受けられる職場を紹介していただいた。
(サービス・外食・レジャー系、医療・介護・福祉、女性)

パソコンで探しやすいので障害雇用も探せる場所が近くに合ったし、通いやすかったです。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、女性)

ハローワークには障害者雇用を専門とした窓口があります。障害者雇用に関して経験豊富なスタッフがいるというのも、心強いポイントですね。

また、求人の検索や、仕事の紹介を受けられるだけではなく、必要に応じて面接のサポートを受けられることも、ハローワークを利用するメリットです。

続いて、2番目に活用している方が多い「就労移行支援施設」について、口コミをご紹介します。

【就労移行支援施設】

就労移行支援事業所を利用してから入社しましたが、スタッフがすごく親切にしてくださいました。特に何度も何度も面談の時間を設けてくださり、面接や企業の人事担当者や上司との面談に同席してくださったのが良かったです。
(メーカー・製造系、軽作業、男性)

2年間就労移行支援施設で、簡単なPC作業や接客、軽作業の訓練を行いましたが、事務職が苦手なことがわかったので、相談員さんのいる障害者の福祉施設に就職出来るよう働きかけてくれました。
(サービス・外食・レジャー系、医療・介護・福祉、女性)

就労移行支援のスタッフが仕事を見つけてくださり、面接にも同行、そして週に一度ほど職場に様子を見にきてくれていました。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、女性)

就労移行支援施設では、履歴書の添削や面接の練習など、仕事探しに関する実践的なサポートだけでなく、技術の習得や職場での実習の機会なども提供しています。働くことに関するあらゆる不安に対応したサービスが受けられるのが特徴です。

就職までのサポートはもちろん、就職後も職場に馴染めているか様子をうかがいながら、ご本人と職場両方のサポートを行う「就労定着支援」のサービスもあります。

働きたい気持ちはあるけれど、何から始めて良いかわからない方や、今すぐに働き始めるのは不安という方は、就労移行支援施設に相談してみると、職場探しのヒントがみつかるかもしれませんね。

6. 専門家からのアドバイス

仕事探しを考えている知的障害のある方へ、障害者雇用の専門家 みちしたさんからのアドバイスを紹介します。

■働くことを迷っている知的障害のある方へ

周りと同じ仕事ができないから「役に立つか心配」と思うかもしれませんが、そのようなことはありません。
「適材適所」という言葉があるように得意・不得意は誰にでもあります。

前述のデータを見てみると、サービス・外食・レジャー系で約半数の方が働いており、軽作業などで日々活躍されている方が多いようです。
記事の口コミなどを参考にしながら、自分がやりたいことを探してみましょう。

そして合理的配慮を受けられる、良い職場を見つけるには、働く職場を慎重に選ぶ必要があります。
ハローワークや就労移行支援施設には、就労のプロがいます。1人で考え込まずまずは相談してみてはいかがでしょうか。

■これから働く知的障害のある方へ

皆さんの能力を必要としている職場はたくさんあります。
前述の満足度を示すデータでは、満足している方、そうではない方の割合はほぼ半々でした。
少しずつ理解がある職場が増える一方、まだまだ働きづらい環境があるようです。

働きやすい職場で共通していることは「人間関係」「給料・福利厚生」が良い点です。
人間関係では「何でも相談できる人がいるか」「安心できる雰囲気か」などが挙げられ、実際に職場の雰囲気を見極めながら探すことが大切です。

給料・福利厚生では「仕事内容と給料のバランスが良いか」「キャリアアップの見通しはたてられるか」「有給がとりやすいか」などが挙げられていました。
知的障害への理解がなく、合理的配慮が受けられないと長く勤めることは難しい場合が多いです。
このような点に注意しながら、自分にとって働きやすい職場を探してみましょう。

7. まとめ

ここまで、知的障害のある方に向いている仕事、働き方についてご紹介しました。

■満足度の高い職場とは?

  • 人間関係が良好
  • 無理のない範囲で仕事ができる
  • 休暇制度や福利厚生が整っている
満足度の高い職場には、上記のような特徴がありました。
このような職場は、知的障害の有無に関わらず、誰にとっても働きやすい職場といえますね。また反対に、企業として初めての障害者雇用である場合、どのような合理的配慮が必要かわからず、就業者と職場側の配慮にミスマッチが起こってしまうケースもあり、職場への満足度が低い方という方がいるのも事実です。

■知的障害のある方が働いている業界とは?

  • サービス・外食・レジャー系
  • メーカー・製造系
働いている業界として挙げたのは上記の業界でした。
上司や同僚の目が行き届いており配慮があることや、様々な仕事内容があり、自分にあった仕事ができることから選ばれていることが多いようです。しかしながら一方で、業務量の多さや上司の異動で状況が変わってしまう職場などもあり、不満に思われる方もいるようでした。

■知的障害のある方が働いている職種とは?

  • 軽作業
  • 清掃
  • 事務
働いている職種として挙げたのは上記の職種でした。
時間の融通がきくことや周囲からの配慮を受けられる環境であることから軽作業を選ぶ方が多いようです。また、清掃は障害者雇用を積極的に行っている職場が多く、事務については体力面への負担が少ないことが選ばれる理由にありました。一方で、キャリアアップが望めなかったり、上司の異動が多かったりなどの不満もあるようでした。

■知的障害のある方が活用した求人サービスとは?

利用した求人サービスに関しては「ハローワーク」が最も多く、次いで「就労移行支援施設」でした。昨今では就職活動に関する選択肢が増えていることから、ハローワークや就労移行支援施設だけでなく、自分に合った方法を模索することも重要です。


知的障害といっても症状は様々ですので、その特性により、向いている仕事は違ってくるものです。これまでにご紹介した口コミやデータはほんの一部であり、症状は人それぞれ、業界や職種の特色もそれぞれ異なります。

まずはご自身の症状や、できること、できないことについてまとめてみましょう。そのうえで、自分にあった仕事や働き方を自分のペースで見つけてください。

さまざまな企業の中で、あなたが幸せに働ける環境に出逢えることを、私たちは心から願っています。

知的障害のある方が働いている企業が一覧で確認できます。
知的障害のある方がお仕事、雇用をされている企業一覧

障害者雇用枠の求人の探し方について紹介しています。
ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介
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監修者

社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取得。障害者支援施設にて支援員を8年経験した後、福祉資格を持つ地方公務員として採用され、ソーシャルワーカーとして活躍。現在はフリーのWEBライターとして、福祉に関する情報を発信している。

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著者

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