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3.転職や就活で高次脳機能障害をオープンにするかクローズにするか
高次脳機能障害を抱えながら仕事している方の中には、うまく付き合いながら理想の職場で働いている方もいらっしゃれば、悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
例えば、集中力が続かない、感情的になってしまう、身体的に負荷がかかるため作業時間が長くなってしまうなど、疾患による特有の悩みを感じることはありませんか?
そんなときは、同じように高次脳機能障害を抱えながら仕事をしている方々の声に耳を傾けてみてください。今回のコラムでは47人の高次脳機能障害がある方の口コミをもとに
・仕事の悩みとその解決方法
・仕事の探し方
といったアドバイスをご紹介していきます。
障害者雇用の専門家みちしたさん(社会福祉士、精神保健福祉士)にもアドバイスをいただきました。
仕事との向き合い方や職場について悩むこと、不安に感じることがある方は、ぜひ寄せられた声を解決のヒントにしてください。
高次脳機能障害の中でも特に記憶障害の部分で困っていた。周りは障害の事も知っていて助けてはくれたが、ひどい時には助けてもらったきっかけの出来事も記憶にないことがあり大変でした。
(小売・流通・商社系、男性)
物忘れが時々起こる。複数の情報を同時に処理するのが不得手。発想の転換、思考の柔軟性の低下、とっさの出来事への対応が上手くいかない。自己能力の過信。
(メーカー・製造系、技術系、男性)
人と話すことや理解する力、記憶する力が弱くなっているため、電話応対が難しいです。わからないところから電話がかかってくると、はじめになんと挨拶すればいいかわからないです。
(サービス・外食・レジャー系、女性)
日常からなにに関しても常にメモを取る様にし、メモの内容も必ず時間を書き込み時系列がわかるようにしていた。
(小売・流通・商社系、男性)
薬を持っていて、倒れることもあることを周りの人に言っておくことや、記憶が悪いのでデジカメをいつも持っていて商品を写して、倉庫の仕分けなどの順番をメモしている。(2年勤めて、最近はデジカメがだんだん不要になっている)。また、マジックとメモ帳を持っていて従業員の共有スペースに自分のメモを貼って、自分がどんなことをしているかを貼ってみんなに理解してもらっている。新人さんが入ると、それが新人さんにも参考になるので好評。
(小売・流通・商社系、軽作業、男性)
メールや書面などの視覚情報で業務上の確認事項を把握しています。口頭でコミュニケーションを取ることに備えて、PCでメモをしたり、内容を要約するよう努めたり苦手な面を補う努力をしています。眠気に対しては、昼休み中に仮眠をとっています。
(IT・通信・インターネット系、コールセンター・オペレータ、男性)
易疲労性により、データの入力ミスが増えてしまうので他の同僚の力を借りてボーっとすることを防いでいた。具体的には、眠くなってきたときには周りと話したり、逆に眠そうであれば声をかけてもらったりした。また、注意ややることの意識付けという点も難しいのが特徴なので、他のメンバーに作業をする順番を決めていただいたりもした。慣れてくると、作業する順番も分かり始めたので、自分で優先順位を考えて周りの人に合っているかを聞いたりもした。
(医療・介護・福祉、男性)
難治性てんかんと小脳梗塞での後遺症。小脳梗塞の後遺症では、歩行が困難なことが何よりも大変です。てんかんでは月に2回は発作を起こすので、仕事面では危険な作業は出来ない状態でした。
(メーカー・製造系、その他、男性)
くも膜下出血と脳梗塞のため高機能障害。疲れやすい、ミスが多い、長時間労働ができない。運転ができない。就職先がない。
(不動産・建設・設備系、人事・経理・総務・企画、女性)
複視対策としてモニターアームを設置。可能な範囲で正常な視界を確保するべく調整している。 めまいは勤務時間経過とともに悪化するため残業せずに帰宅する。
(IT・通信・インターネット系、技術系、男性)
身体的に困難な作業は、時間や日を短くする等、上司と相談し無理しない程度にしています。片麻痺なのでなるべく健常者と同じような作業を工夫して行っています。どうしても出来ない作業は周りの従業員の方にフォローしてもらっています。
(サービス・外食・レジャー系、医療、介護、福祉、女性)
自分の同僚に力を借りて、交代で仕事をこなしてもらっている。正直に現状・症状を話して、手を借りるときは遠慮せずに手を借りる。その代わり、自分が役立てるときは、積極的に自分から仕事をとるようにしている。この持ちつ持たれつの関係が大事だと思う。
(サービス・外食・レジャー系、男性)
高次脳機能障害により感情のコントロールができないので、たまにお客様とどうでもいいことでもめてしまう。また、この障害による記憶障害も持っているので、頼まれたFFを入れ忘れたり、間違えたりしてしまう。そして半盲もあるので左側に気を付けていないと、お客様にぶつかったりしてしまう。
(小売・流通・商社系、男性)
高次脳機能障害から感情のコントロールができないので、笑ってはいけない場面で笑ってしまうこともあり、お客様と些細なことで口論になってしまいました。
(小売・流通・商社系、男性)
注意力と記憶力が低くなった。 イライラすることがかなり多くなって耐えられない。 自分にもかなりイライラする。
(小売・流通・商社系、営業、男性)
お客様ともめてしまったときは、一呼吸置くようにして、相手に言いたいことをすべて吐き出させてから謝り倒すようにしていました。
(小売・流通・商社系、男性)
自分の出来ている所できない所を分析してもらうため職場の人に聞く。 少しでも迷ったり不安なことはすぐ聞く。
(小売・流通・商社系、営業、男性)
大きい日記をつけて忘れないようにしている。何に怒ったかが分かるようにしている。
(小売・流通・商社系、営業、男性)
障害者枠で採用されているため比較的マイペースで作業ができるから。
(その他、軽作業、男性)
日々体調が変化することを深くご理解くださって、休憩を取らせてもらったりしていました。働いてすぐに発作が起こり入院してしまいましたが、その後は作業内容を変更するなど気を使って柔軟に対応してくださったためです。
(サービス・外食・レジャー系、女性)
自分の障害を理解してくれる環境は、本当にありがたいです。理解してくれる人がいるということで、すごく心が軽くなります。
(サービス・外食・レジャー系、女性)
自分を偽らなくても助けてくれる環境があり、卑屈になることもなく仕事ができる。自身を持って社会人として対等に接してくれる仲間、上司がいる。もちろん仕事においての厳しさもきちんと学びながら様々な経験を積める。
(メーカー・製造系、人事・経理・総務・企画、女性)
何らかの障害やハンディキャップがあっても、健常者と同じ仕事、シフト内容なので容赦がない。
(運輸・交通・物流・倉庫系、販売・接客・サービス、男性)
自分で工夫してなんとかなっていますが、依然として見た目でわからない障害からくる無理解がまだまだ強いと感じます。また、人の入れ替わりが激しいため人によって障害への理解がまちまちです。
(サービス・外食・レジャー系、女性)
障害による体調不良に対して理解が無く、否定的な言葉をかけられたことがある為。
(IT・通信・インターネット系、コールセンター・オペレータ、男性)
これまでの仕事はすべて面接では「健康体です!」と答えていた。服薬時は堂々と飲んでいた。もし誰かに薬のことを訊かれても「今日はちょっと頭痛がして」と答えるつもりだった。ものを覚えることや思い出すのが難しいため、お客様にはアドリブで対応していた。わからなければ社員を呼んでもらっていた。たまたまレジや電話応対しなくてよい業務だったから続けられた。
(小売・流通・商社系、軽作業、男性)
病状を知らない人から無理解な待遇を受けた。
(コンサルティング・専門サービス系、その他、男性)
研修体験ができる場合は、必ず受けたほうがいい。受けてその会社の雰囲気を見るべき。他の障害者がいるなら、その人に対する対応の仕方も必ず見ておく。自分の障害の事は些細な事でも隠さずに話すことは必要。相手も障害が分からないと対応できない。無理をしても続かないので、お金で釣られて入るより、働きやすい所を探す方がいい。
(事務、男性)
無理をした就職はしない方がよいと思います。ダメな職場は、早めに見切る事がとても大切だと思います。一般的には健常者の方と同じ負担にたいして高次脳機能障害の場合無理を強いると未達成感から自己嫌悪に陥りがちです。自らを責めるような職場は、早めにやめた方が結果良かったと実感しています。
(IT・通信・インターネット系、デザイナー・クリエイティブ、男性)
就職支援の職員に相談とリハビリを受けながら就職先を探しましたが、長く探してもなかなか合ったものがなく、職業安定所の紹介も受けながら決めました。
(事務、女性)
ハローワークにいる精神保険福祉士に相談するとよい。仕事の悩みを聞いてくれるだけでもストレスから少しは開放される。
(サービス・外食・レジャー系、軽作業、男性)
試用期間テストで1週間出社いたしました。具体的に客観的な自分を知る事が出来ました。
(IT・通信・インターネット系、デザイナー・クリエイティブ、男性)
一般就職する前は、8年ほど障害者施設にいて就労移行支援で慣らしました。その体験が生きたと思います。
(小売・流通・商社系、軽作業、男性)
実際に働いている人が知人でいたら、詳しく聞いた方が良い。体験または見学時には全体の雰囲気を知った方が良いと思う。社員の態度は良いか?挨拶はちゃんと出来ているかも確認した方が良いと思う。責任者の考え一つで、職場の雰囲気が変わると思う。
(サービス・外食・レジャー系、医療・介護・福祉、男性)
会社見学だけでは実際の仕事内容の詳細はわかりません。ですが、行ってみることでそこの雰囲気などわかるので重要だと思います。 会社見学をしてみて、自分ならどの程度ならできるかなど、自分のことを詳細に伝えておくと仕事内容なども見直してくれたりするのでいいと思います。
(サービス・外食・レジャー系、事務、女性)
実際に見学させてくれる企業はよく見たほうがいいだろう。とくに表に出ない部分が見られるチャンス。しっかりした先のある企業か見学で少し察すると思うのでぜひ見学はさせてもらいましょう。お互いを知ることも大事。
(サービス・外食・レジャー系、販売・接客・サービス、女性)
求人はあるものの、実際にその企業が本当に障害者を雇いたいと好意的に思っているとは限らない。問い合わせや面接で冷たくされることも多々あると思うが、自分に合った自分ができるやり甲斐のある仕事に妥協する必要は全くない。自分の個性を認めてくれる企業は必ずある。出来る事をアピールし誠実さを忘れないことが大切。
(メーカー・製造系、人事・経理・総務・企画、女性)
一番重要なことは、周りの人々が症状や病気を理解して柔軟に対応してくださることだと思います。そのためには、面接時に自分の病気や発作の状態を話して、医師に相談してどのような仕事ならしてよいかの目安をたてておき、障害者支援センターで他の障害者の方のお話を聞くなど、情報を収集することが大事だと思いました。
(サービス・外食・レジャー系、女性)
自分の障害の特性、状況などをなるべく会社に的確に伝えて、その中でどのぐらいできるかなどを可能な限り見極めた上で仕事を行うかどうかを決定すべきです。 会社の中で、直属の上司や担当者、もしくは管理者との話し合いになりますが、報告、連絡、相談の中で良い落とし所を見つける努力は必要です。
(メーカー・製造系、技術系、男性)
より望ましい職業の選択や能力開発における相談・助言を専門とする国家資格「キャリアコンサルタント」のほか、米国CCE, Inc.認定の「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」の資格を取得。福祉・医療介護分野の研究などにも従事しています。