ナビゲーションブックとは?作り方とメリットを紹介

ナビゲーションブックとは?作り方とメリットを紹介

「ナビゲーションブック」を知っていますか?自分の「トリセツ」とか「マニュアル」という言い方をすることもあります。

障害や病気のある方が就職や転職をする上で、重要だと言われているのがナビゲーションブックです。

なぜ大切なのか?
どうやって作ればよいのか?

今回は、ナビゲーションブックについて詳しく説明していきます。
簡単に作れるツールも紹介していますので、ぜひ自分のナビゲーションブック作りにチャレンジしてみてください。



*この記事は松好伸一先生に監修していただきました
松好伸一先生

仙台白百合女子大学 人間学部 人間発達学科 講師。保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。日本発達支援学会(監事)。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数。




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目次

1.ナビゲーションブックとは

2.ナビゲーションブックの必要性

3.当事者のメリット

4.企業側のメリット

5.ナビゲーションブックを作るコツ

6.torisetu(トリセツ)で作成してみよう

7.ナビゲーションブックの使い方

8.まとめ

1.ナビゲーションブックとは

ナビゲーションブックは、以下のように書かれています


「ナビゲーションブック」は、自分を分析する→自分を知る→自分のことを文章で表す→自分のことを他者に伝えることが可能になります。
そして、ナビゲーションブックを作ることは、就職や転職の面接にも有効なのです。

2.ナビゲーションブックの必要性

なぜ、障害者雇用においてナビゲーションブックは必要なのでしょうか?

2-1.企業は障害や病気に関するその人の情報を詳しく知ることができる

障害や病気のある方の中には、障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)を取得している方もいます。障害者雇用に応募する場合は、手帳の有無が条件となるケースも多いでしょう。

しかし、手帳に書かれているのは「障害名と等級」だけです。障害者雇用に応募できたとしても、どんな仕事ができるのか、どんなサポートが必要なのかということを伝えることはできません。

そこで活用したいのが、ナビゲーションブックです。
履歴書や職務経歴書に「ナビゲーションブック」をプラスして提出すれば、自分の障害や病気のことを説明できるのです。

2-2.短い面接時間でも効率よく自分のことを伝えることができる

面接では、面接官が履歴書や職務経歴書などのその人がわかる資料を見ながら、もっとよく知りたいことや考え方について質問します。

そこにナビゲーションブックがあれば、面接官は障害や病気の特徴や苦手な仕事など、聞きたい情報をあらかじめインプットしておくことができます。

そのことにより、以下のようなメリットがあります。

  • 一から障害や病気の説明をする必要がなくなる
  • 言いづらいことも記入しておけば伝えることができる
  • 面接官は、書かれていることに沿って質問することが想定されるので答えやすくなる


面接はだれでも緊張するものです。さらに、短い時間であれもこれも言わなければいけないと思うと、余計に焦ってしまいます。

ナビゲーションブックがあれば、その緊張や焦りをカバーできるのではないでしょうか?

3.当事者のメリット

ナビゲーションブックを作ると、多くのメリットがあります。

3-1. ナビゲーションブックを作成するメリット

①自分のことを整理してより深く知ることができる

ナビゲーションブックは、自己分析をしながら作ります。自分を深く知ることで、自分の傾向や特徴を見つけることができます。

【苦手なことについて】

・苦手な仕事は?→緊張する場面が苦手→電話対応は環境に慣れるまで避けたい
・苦手な環境は?→騒がしいところが苦手→端の席であれば集中できる

職場にお願いすることで、仕事の効率があがり、働きやすくなって長く続けられるかも!

企業側に相談してみよう!!

このように、苦手なこととうまくつきあうために必要なことを洗い出すことで、仕事との向き合い方がわかるようになります。

3-2. ナビゲーションブックを利用するメリット

①自分のことを説明しやすくなる

ナビゲーションブックを作ると、自分のことをよく知るために、自分の傾向や特徴、気持ちを整理できます。
整理した内容は文章にして覚えておけば、面接でも話しやすくなりますね。

②企業や上司にやる気をアピールできる

自分の考えをまとめ、スムーズに伝える姿は、仕事に必要な人材として映ります。
  • 自分の考えをまとめられる
  • 自分の言葉で話すことができる
  • 堂々と伝えることができる
  • 苦手なことがあっても、仕事に対する意欲がある
面接でわかるこれらの力は、プラスの印象を与え評価を高めることにもつながります。

③働く上で必要な配慮をお願いしやすくなる

お願いしたい配慮事項を伝えるとき、「こんなこと言っても良いかな?」「こんなことお願いしたら不採用かな?」と不安になることはありませんか?

しかし、企業側にとって障害者雇用は、配慮事項を十分に考慮した上で採用することと認識していますので心配はいりません。むしろ、どのような配慮が必要なのかをはっきり知りたいと思っている企業がほとんどでしょう。

だから企業側は、できるだけ面接で配慮事項のすり合わせを行いたいと思っています。 そこに、ナビゲーションブックがあれば、スムーズに配慮事項の話をすることができるのです。

また、口では言いづらいことも記入して渡すのであれば、気持ちが少し楽になるということもありますよね。

配慮事項のすり合わせがうまくできれば、採用される可能性も高くなりますし、採用された後も働きやすい環境が期待できるでしょう。

4.企業側のメリット

ナビゲーションブックがあることで、企業にも多くのメリットがあります。

①障害や病気についてのその人の特性を知ることができる

障害や病気の程度は、人によって異なります。悩みもさまざまです。 悩みが異なれば、職場の対処法も異なります。

しかし企業にとって、すべての障害や病気について深く理解し、様々な対処法をいつも準備しておくことは難しいものです。

そんなときナビゲーションブックがあれば、その人の状況を詳しく知ることと、必要なサポートの両方を一度に知ることができます。

②的確な対策を知り、実施することができる

企業は、せっかく入社してもらったからには、長く続けて働いてほしい、そして企業の生産性を上げたいと思っています。

そのためにも、当事者1人1人にあわせたサポートを講じることが必要です。

しかし先述のように、悩みと必要なサポートは十人十色です。入社時にすり合わせを十分に行わなければ、当事者が働きやすいと思える環境を整えることはできません。

そこでナビゲーションブックがあれば、当事者の状況を知りながら、その人にあったサポートをイメージしやすくなります。配属する部署や担当業務も検討し、調整することもできるでしょう。

イメージができると、一緒に働きたい!と思ってもらえる可能性も高くなるのではないでしょうか?

5.ナビゲーションブックを作るコツ

ナビゲーションブックの必要性やメリットを紹介してきましたが、作るとなると何から始めたらよいのか、どうやって言葉に表せばよいのか、わからないこともあります。

ここからは、作り方を順に説明していきましょう。

5-1.自分の悩みをあげてみる

まず、障害や病気により働く上で悩むことは何でしょうか?

例えば、仕事を辞めた経験があれば、その理由が悩みの1つになる場合もあります。その悩みを攻略しなければ、同じように仕事を続けられないかもしれないからです。

例として、口コミを見てみましょう。

【障害特性による悩みの事例】
・会話が読み取りにくく、言われたことを記憶するのが困難で状況に応じた行動が取れない。
(発達障害)

・身体がだるく疲れやすい。寝つきが悪く不眠の症状が出る。人と接することが苦手になる。
(うつ病、精神障害3級)

・予期せぬ出来事に遭遇してしまった場合に過呼吸や動機などの症状がでます。
(パニック障害)

・下痢が止まらず、日常生活にも支障がでている。電車通勤にたいへん苦慮している。
(過敏性腸症候群)

【苦手な仕事の事例】
・日によって痛む関節が変わるが、常にあるのは手の指の関節が曲がりにくく痛む為、重いものが持てない。
(関節リウマチ)

・電話応対や来客応対など、突発的なことには異常に緊張して対応できない。
(精神障害3級)

・小さい声や高い音などを上手く聞き取ることが出来ない。
(聴覚障害4級)

【苦手な環境の事例】
大きな音が苦手、疲れやすい、体調を崩しやすい。
(精神障害2級)

聴覚過敏になりやすく、大きな音は辛いです。
(発達障害、精神障害3級)

音や光が苦手で仕事に影響がある。閉鎖空間や人に囲まれたりすると体調が悪くなる。
(自閉症、ADHD、学習障害、不安障害、精神障害3級)

閉塞感と圧迫感に耐えられず、朝の混雑した電車に乗れない。
(うつ病)

【体調に関することの事例】
全身の痛みが特徴的で、朝起きた時の身体の痛みや随伴症状によって勤務可能か勤務不可能かが決まります。
(線維筋痛症、身体障害者手帳5級)

朝、特に気持ちが不安定になり仕事をうまくできる自信がなくなる時があります。
(精神障害2級)

朝は調子がいいけど、夕方以降、眠気やだるさに襲われる。そして、大半の夏は気分が下がっている。
(双極性障害、精神手帳2級)

【精神的なことの事例】
気分障害の1つで躁と鬱を交互に繰り返し、躁の状態ではハイテンションになり、鬱の状態では気分の落ち込みや身体や精神が重たくなってしまう。
(双極性障害)

必要以上にミスを恐れているので、実際にミスをすると気分の落ち込みが激しい。立ち直りに時間がかかる。
(精神障害)

他人が何気なく言った言葉を悪い意味で解釈をして、その解釈により気分が悪くなったりする。
(統合失調症)

【通院に関することの事例】
入院しての手術で1ヶ月近く不在になること。かなりの回数の通院が必要となる。
(乳がん)

腎不全で血液透析を受けており、週3回5時間ほど通院が必要で勤務時間の調整が難しい。
(腎疾患、身体障害1級)

月に2度の通院と月に一度の血液検査、数カ月に一度の肺機能検査等が必須。
(全身性エリテマトーデス)

通院が必要で残業できないときや会社を休む必要がある。
(聴力障害)

5-2.自分でやっている対策、やりたい対策をあげる

できないこと、苦手なことを伝えるだけでは「働きたい」という意欲を伝えることはできません。できないけれどこんな工夫をしてやってみたい、苦手だけどこんな対策をすればできるという「やる気」を伝えてみましょう。

【自分の対策の事例】
人とのコミュニケーションを図ることで、孤独にならないように気を付けています。
(双極性障害、精神障害3級)

周りをよく観察することと、メモを取ることを徹底しています。
(自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群、うつ病、精神障害3級)

薬を肌身離さず持つことで安心感があります。有るのと無いのとでは全然違います。
(パニック障害、バセドウ病)

休憩時間などを使って、少しでも外に出てリフレッシュできる時間を作りました。
(うつ病)

耳栓やイヤーマフといった防音装置を使って体調を崩さないようにしています。
(広汎性発達障害)

5-3.お願いしたいこと、相談したいことをあげる

自分の悩みと対策をまとめたあとは、その上で企業にお願いしたいことや相談したいことをまとめていきます。

ここは、以下の観点から必要なことをあげていくと良いでしょう。

  • より働きやすい環境で長く働くためにあると良いこと
  • より仕事の効率や生産性を上げるためにあると良いこと
  • より障害や病気を悪化させないためにあると良いこと
【企業にお願いしたい事例】
時間・終了時間や休暇などを調整して頂いた。事務内容も体に負担が掛からないよう配慮して頂きました。
(腎不全)

勤務中に体調が悪くなった時、救護室で休ませてもらえたり早退させてもらえたりすることが可能でした。
(うつ病、精神障害3級)

会議や説明会など複数の場ではパソコンを使ってノートテイク、もしくは後日説明してくれました。
(先天性難聴)

うるさい場所が苦手なため、比較的静かな作業場に席を設けてくれています。
(発達障害)

通勤時間や出勤時間が朝のラッシュになる時間帯を避けて設定してくれている。
(発達障害、うつ状態、不眠症、精神障害2級)

仕事に没頭しすぎて休憩を忘れていたときに、休憩をするように声をかけていただいている。
(広汎性発達障害、適応障害、精神障害2級)

いかがでしたでしょうか?
自分の悩みをあげて、自分でできる対策を考えてみる。そして対策だけではカバーできないことを企業に相談してみる。

ナビゲーションブックで整理していくことは、働きやすい環境を作っていく上でとても有効ですね。

6.torisetu(トリセツ)で作成してみよう

ナビゲーションブックは、自分の考えを文章にしていきます。実際に記入する用紙は、ダウンロードできるものもありますが、決まったフォーマットはありません。

しかし、文章を書くのが苦手という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな方は、ぜひtorisetu(トリセツ)を使ってみてください。
torisetu(トリセツ)は、ナビゲーションブックが簡単に作れる便利なツールです。

torisetu画面


使い方は、自分の悩み→自分の対策→企業にお願いしたいことの順番に質問が出てきますので、回答を選択肢から選ぶだけです。
終了後、選択した回答がまとまったA4サイズのシート「トリセツ」が完成します。

torisetu完成シート


torisetuを利用して、実際に面接を受けた方もいらっしゃいますので、感想を紹介します。

    『今、自分はどうして欲しいのか。どんな対策を企業側や一緒に働く同僚に求めるのか。』
    そういう内容がものの20分足らずで適切にまとまった資料が完成した。
    私はいくつかの面接にこの資料を持参した。
    企業側は資料があることにより、『採用に至った場合今後の対策が取りやすい。』とのことだった。
    そして私自身といえば、資料があることにより比較的冷静に、自分の病状や特性について企業側に伝えられた。

    引用:「双極性障害、発達障害を始めとする疾患や障害、特性とともに生きる」
torisetuは無料で利用できます。そして、登録すればシートを何度も取り出すことや、URLで共有することもできます。

▼torisetu(トリセツ)はこちらから

▼アンブレに届いた口コミも、自分の回答を見つけるのに役立ちますので、よろしければ参考にしてみてください。
アンブレの口コミはこちらから

7.ナビゲーションブックの使い方

作成したナビゲーションブックは、さまざまな場面で使ってみましょう。

7-1.採用面接で使う

採用面接では、履歴書、職務経歴書と一緒にナビゲーションブックを渡してみましょう。

先述のように、面接は短時間で行われることが多く、いかに伝えたいことを伝えるかが重要です。また、緊張して話すことを忘れてしまったという経験もあるのではないでしょうか?

ナビゲーションブックが1枚あれば、言いたいことが言えなくても見てもらうことができます。そしてなにより、ナビゲーションブックを作ったという事実が、その企業への前向きな気持ちや働きたいという意欲として伝わります。

ぜひ、実践してみてください。

7-2.上司との面談で使う

ナビゲーションブックは、就職や転職だけで使うものではありません。職場の上司との面談で活用することもできます。

日々の仕事での悩みや伝えたいことをまとめることができます。
人と話すことが苦手な方は、文章で伝えることができます。

そして、自分を振り返るという行動が、セルフケアにもなりますし、次への成長を促すための前向きな行動として評価されるでしょう。

現状を見つめ、今後の働き方や目標を上司と共有するために活用してみましょう。

7-3.自分と向き合う

ナビゲーションブックは、誰かに見せるためだけに使うものでありません。自分自身を分析したり、振り返ったりすることにも使えます。

例えば、体調が悪くなる傾向を知るだけでも、症状の改善につなげることができます。 苦手なことがわかれば、向いている仕事を見つけることにも役立ちます。

自分と向き合うためのツール、そして客観的に自分を見るためのツールとして活用してみてはいかがでしょうか?

8.まとめ

ナビゲーションブックはたった数枚の紙ですが、障害や病気とうまく付き合いながら働くために必要な情報やメリットがたくさん詰まっています。

そして大切なことは、ナビゲーションブックを定期的に更新することです。

例えば、入社する前と実際に働き始めてからでは、悩みや必要なサポートは変わってくることがあります。
また、企業のサポートや自分で行っている対策が功を奏して、できることが増えていくこともあります。

そんなときは、次の目標をたててみましょう。目標をたてることは、やりがいにもつながります。

仕事はやりがいがあるほど、続けて働きたいと思えるものです。

ぜひ、ナビゲーションブックを多いに活用して、自分に向いている働き方を見つけてください。そして働きやすい環境を作っていきましょう。

【監修者:松好伸一先生からのアドバイス】

自分で自分を分析する作業は思いのほか難しいものです。近しい友人や家族に作成したものを見てもらったり、自分のことを思い出してトリセツを作ってみてください。





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監修者

保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数で、2022年3月29日「幼児教育方法論」(共著・一藝社)を刊行。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

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