パニック障害でも仕事を続けるために必要なこと

パニック障害でも仕事を続けるために必要なこと

パニック障害があっても仕事を続けるコツは、

発作がおきた時の対処法を周囲と共有することと、
体調不良や発作が起こりやすい状況をご自身で把握し、なるべくその状況を避け症状を抑えることです。


例えば、発作が起きた時は安静になれる場所へ移動させてもらうとか、過呼吸になった時の対処法が共有できていると、職場でも安心感を持って働くことができます。

また、発作が起こりやすい状況をあらかじめ知っておけば、その状況を避けることで発作や広場恐怖といった症状を抑え、不安を和らげることができます。

そのためには、ご自身の困っていることや苦手なことを把握しながら整理し、働きやすい環境を作ったり選んだりことが大切です。

このコラムでは、あなたと同じように、パニック障害がありながら働いている方の体験を参考にしながら、仕事を続けるコツを詳しく紹介していきます。

*この記事は久木田みすづさんに監修していただきました
久木田みすづ

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。


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目次

1.パニック障害とは

2.パニック障害による仕事の悩みを把握する

3.仕事を続けるコツは、症状が起きやすい状況をさけることと周囲の協力を得ること

4.自分の困りごとを把握し周囲と共有する方法

5.まとめ

1.パニック障害とは

「パニック障害」も「不安障害」も、近年よく用いられるようになった病名ですが、正確にいうと、両者は並列関係にあるものではなく、「パニック障害」は「不安障害」の下位分類のひとつです。

「不安障害」というのは、精神疾患の中で、不安を主症状とする疾患群をまとめた名称です。その中には、特徴的な不安症状を呈するものや、原因がトラウマ体験によるもの、体の病気や物質によるものなど、様々なものが含まれています。中でもパニック障害は、不安が典型的な形をとって現れている点で、不安障害を代表する疾患といえます。

パニック障害は、不安を感じることでパニック発作などの症状を引き起こします。
職場にも、仕事のやり方や人間関係など、不安を感じる要素は多くあります。

まずは、自分が何に不安を感じているのか、どの傾向を把握することが大切です。
同じようにパニック障害でありながら働いている方の体験談を参考に、ご自身の仕事上での悩みを把握してみてください。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」

2.パニック障害による仕事の悩みを把握する

まずは、ご自身の傾向を把握するためにも、パニック障害がありながら働いている方がどのようなことで悩んでいるかを見ていきましょう。

困りごと1:突然のパニック発作

パニック発作とは、突然、動悸やめまい、発汗、息苦しさ、吐き気、手足の震えといった発作を起こすことで、自分ではコントロールできないと感じるほど強くあらわれます。

突然極度の不安感に襲われ、呼吸がしづらくなり手足がしびれて目眩がしてきます。
(女性)

仕事中に理由不明の恐怖感や不安に恐われ、心臓の動悸が激しくなり発狂してしまいそうになることがありました。
(男性)

朝は調子が良くても、出社してから調子を崩す事も多々。一番困ったのは、仕事中に吐き気や不安、過呼吸に襲われたことです。
(男性)

いつパニック発作が起こるのかという不安と、発作が起きた時にどうしたらよいかわからなくなる恐怖。仕事中も、不安と恐怖に怯えながら過ごしている様子が伝わってきます。

困りごと2:苦手な環境や業務によって起こるパニック発作

パニック発作には突然起こるものもあれば、発作を起こしやすい環境や状況があるものもあります。

発作を起こしやすい状況について、口コミを参考に詳しくみていきましょう。

①気候や体調不良、ストレスが原因となる場合

発作が出ると、冷や汗が出て心臓がバクバクし、死んでしまうかもという不安に苛まれる。特に生理中や睡眠不足のときなどホルモンのバランスが崩れているとき、疲れているときに出やすい。
(女性)

急な不安感、動悸、めまい、吐き気、胸の圧迫感、過呼吸など。気圧の変化や寝不足、精神的ストレスが引き金になる。
(女性)

症状は動悸、めまい、頭痛、手足の震え。寒くても汗が出たり、何もする気にならなくなったりする。パニック障害の症状は3月~5月の季節の変わり目が一番出やすい。
(男性)

②苦手な環境にいる場合


蒸し暑い環境や人混みが引き金となり、パニック障害の発作を起こしそうになることがある。
(男性)

苦手な人がいて、その人と会話をするだけで、息苦しい時もあり、コミュニケーションを取るのが辛かったです。
(女性)

自分ではない人が激しく叱咤されているのを聞いてしまうと動悸がしてしまい、その場にいられなくなりました。
(女性)

ネクタイを付けた男性を見ると、発作が起こり過呼吸状態になります。また自身がネクタイを付けると強烈な吐き気に襲われます。
(男性)

③仕事の状況が影響する場合

仕事のタスクが複数になると、どうしても「焦る気持ち」から「手が震える」「死ぬんじゃないのか」って感覚に襲われる。
(男性)

先の予定が入っているとプレッシャーになり、体調を崩しやすい。
(女性)

緊張する場面になると動悸や息切れがしてしまうので、接客中や電話対応中に言葉が出なくなってしまうことがありました。
(女性)

ドクターの隣につくときに器具の受け渡しを間違えたらどうしよう等の不安が募ると、どうしてもドキドキなってくる。
(女性)

残業が続き疲労がピークに達するときや、深夜の残業が多かった時期に、パニック発作により数分動くことができなくなった。
(男性)

④業務内容が影響する場合

業務内容が体調に影響する方もいらっしゃいます。業務内容ごとにみていきましょう。

■接客業

接客業だったのですが急にお店が忙しくなった時、自分は落ち着いて仕事をしようとしても、周りで必要以上に慌てる人がいるとつられてパニックになってしまい困りました。
(女性)

威圧的なお客さんに当たったときや、胃の調子が悪く元々吐き気があるときは特に不安から発作が起きやすいです。
(女性)

接客をしている時など、発作が出てはいけない状況が余計に悪化させます。
(女性)

お店が混んできた時やクレーム対応など、精神的に不安になり始めると息苦しくなったり吐き気がしたり心臓に違和感があったりして、体の異変に更に不安になってしまい「息ってどうやってするんだっけ・・・。」というように、呼吸ですらもまともにできなくなってしまいます。
(女性)

勤務中に他店に移動することがあります。移動を伴う業務があると移動中にパニック発作が出るのではないかと不安になった。
(女性)

■電話対応

電話対応もパニック障害による症状を引き起こしやすい業務として、口コミで多く挙げられました。聞き逃してはいけない、間違えてはいけないというプレッシャーや、知らない人と話をする緊張感がその理由です。

お仕事をする上でどうしても営業の電話をしていると回数を稼ぐうちに手が震えてきます。そこで体調が悪くなります。
(男性)

拘束されると恐怖を感じるので、乗り物、電話の応答等色々な場面で不自由が出てくる。
(女性)

パニック発作を引き起こすものには、気候、体調不良、睡眠不足、ストレスなどの生活環境の他に、仕事状況、職場環境、業務内容など仕事に直接関係するものもあります。

このように、パニック発作を起こしやすい環境や状況などに傾向がある場合は、その傾向を自分で把握していれば、あらかじめ対策をとりながら仕事と向き合うことができます。

困りごと3:予期不安

パニック障害のある方は、パニック発作をくりかえすうちにその不安が強くなり、次の発作がさらに激しくなるのではないか、気がおかしくなってしまうのではないかという恐怖を常に感じるようになる場合があります。これを予期不安といいます。

発作が再度起こるかもしれないという恐怖で対人関係が苦手になる事、発作が以前起こった場所に怖くて行けなくなるなどの特徴があります。
(女性)

予期不安で、通勤ラッシュの時間に会社に向かえない時がありました。苦しくなってくると人混みなどが怖くなるので、その場から逃げたいという気持ちになります。
(女性)

パニック発作がいつ起こるのかという予期不安に陥る事です。そうすると、どうしても仕事どころじゃなくなってしまって、早退する事もあります。
(女性)

発作に対する不安を抱えているだけでなく、過度におびえ、仕事に集中できない、職場に居られないという状態にまでなっている様子がわかります。

困りごと4:広場恐怖(アゴラフォビア)

発作が起きそうで苦手な場所がある。または、発作が起きた時に逃れられない、助けてもらえないという場所がある。それらの理由から特定の場所や状況を避けるようになることを「広場恐怖」といいます。

「広場」とつくからといって、広場に限った症状ではありません。狭い空間や電車、会議室などは広場恐怖を感じやすい場所の1つです。

ドアを閉めてそこから出られない状態になる場合に、突然発作が出ていました。工場勤務でしたので、閉鎖的な空間でした。
(女性)

私の症状は、狭い空間に何人も人がいる状況が怖くなってしまう時があり、時々デスクで作業ができないことがありました。
(女性)

逃げ場がないと急に気分が悪くなり、公共交通機関の利用時に発作が起きると通勤ができない。
(男性)

人が密集している場所や逃げられない場面で動悸、息苦しさ、発汗、目の前が白くなり倒れそうになるなどの症状が出ます。エレベーターで移動しなければならないときに苦しくなることがあります。
(女性)

一度乗るとその場から逃げられないバスや電車などの公共交通機関は、広場恐怖の対象となる傾向があります。バスや電車に乗れないことで、通勤できない、出社できない、遅刻してしまうなどの状況を招き、仕事へも大きく影響もしてしまいます。

困りごと5:体調が不安定

パニック障害のある方の中には、非常に疲れやすい方がいます。常に発作への不安を抱えているという精神面も関係してくるのでしょう。

疲れやすい。疲れている時に無理をするとめまいが出る。
(女性)

倦怠感は常に感じ、そちらが気になることで、集中力が散漫になってしまう。そして普段やらないようなミスをしてしまう。
(男性)

常に疲れやすく、横になることも多いです。
(女性)

疲れやだるさは仕事への気力を無くしてしまいます。また、疲れがパニック症状を引き起こすという悪循環にもなりかねません。
いつまでもその状況が続くと、うつ病などの精神疾患を併発することもありますので、無理せず休養したり医師に相談したりすることをおすすめします。

▼パニック障害のある方のお仕事に関する口コミが多く届いています。ぜひ参考になさってください。
パニック障害のある方のお仕事・職場口コミ一覧


3.仕事を続けるコツは、症状が起きやすい状況をさけることと周囲の協力を得ること

パニック障害による症状を引き起こす原因がわかる場合はそれを避けること、突然あらわれる症状である場合は周囲に伝えて協力を得ること。これらが仕事を続けるために必要なことです。

パニック発作がおこりやすい状況がわかっている場合や、広場恐怖のように狭い空間や逃げられない場所、助けを求められない閉鎖的な空間にいくことでパニックになりやすいという場合は、職場でもその状況や場所を避けることで症状を抑えることができます。

しかし、職場で症状を起こしやすい状況や場所を避けるためには、あらかじめ避けられる職場を選ぶことも1つの方法ですが、すでに働いていて避けられないという方もいらっしゃるでしょう。

その場合は、周囲に理解や協力を得ることが必要になります。そのためにも、自分で把握したことを伝えてみましょう。

また、突然のパニック発作や予期不安、体調が不安定であることは、避けようがありません。その場合も、やはり周囲の理解や協力を得て、発作や症状が出た時に対処してもらうことが必要になります。

自分の困りごとを把握して、周囲と共有すること。これが働き続けるためには大切なことですね。

4.自分の困りごとを把握し周囲と共有する方法

自分でも何に困っていて、どのように改善すべきなのかを適切に把握することは、なかなか難しいことです。さらに、その内容を周囲の方と共有することも簡単ではありません。

ここからは、少しでも把握や共有がしやすくなるように、方法を紹介していきます。

ナビゲーションブックを利用する方法

ナビゲーションブックは、自分の障害や病気のことを説明できるツールの1つで、障害や病気のある方が就職や転職をする上で、履歴書や職務経歴書と同じぐらい大切なものなのです。

しかし、ナビゲーションブックは就職や転職だけでなく、今の職場でも活用することができます。

ナビゲーションブックに決まりごとはありません。自分の障害や病気について、文章で説明できれば良いのです。ただし、自分で自分の障害や病気について理解していないと、うまく説明することはできません。つまり自己分析が必要です。

自己分析は、以下の順番で行っていくとまとめやすくなります。

  1. まずは、仕事における自分の困りごとを把握しましょう。
  2. そして困りごとに対して自分でできる工夫や対策を考えてみます。
  3. その上で周囲の協力が必要な場合は、協力してほしい内容を挙げてみましょう。

このようにナビゲーションブックを作っていくと、自分のことを見直し、整理してまとめることができます。



▼ナビゲーションブックについて詳しく説明しています
ナビゲーションブックとは?作り方とメリットを紹介




ナビゲーションブックは簡単に作れる

「自分のことを文章でまとめる」と聞くと、それだけで難しいと思う方もいるでしょう。また、何から始めればよいか迷う方もいます。

そのような方には、ナビゲーションブックを簡単に作れるツール「torisetu(トリセツ)」がおすすめです。

「仕事の悩み、自分で行っている対策、企業に相談したいこと」という順番で質問が出てきますので、選択肢から自分にあった回答を選ぶだけです。
最後まで答えると、自分のトリセツがA4サイズ1枚にまとまって出てきます。

パニック障害トリセツ悩み


パニック障害トリセツ対策


パニック障害トリセツ相談


パニック障害トリセツ全体


無料で使用できるツールですので、ぜひ一度チャンレンジしてみてください。





5.まとめ

パニック障害とうまく付き合いながら仕事を続けるためのコツとは?

まず、自分のパニック障害による困りごとを把握することが大切です。
困りごとがどのような症状によるものなのかを知れば、症状を起こしやすい状況を避けることもでき、パニック発作や広場恐怖などを抑えることにもなります。

また、突然のパニック発作や予期不安など、自分では避けることが難しい困りごとは、周囲の協力を得ることが必要です。

症状が起きやすい状況を避けるため、そして周囲の協力を得るためにも、自分のことを自分で把握し、周囲に伝えてみましょう。
伝えるときは、ナビゲーションブックなどを利用して自分のことを分析しまとめておくとスムーズです。ぜひ活用してみましょう。



【監修者:久木田みすづさんからのアドバイス】

■働くことに迷っている方へ
パニック障害を抱えていると、いつ強い発作や不安感が襲ってくるのか心配ですよね。だからこそ、働くことに躊躇する気持ちが湧いてくるのだと思います。しかし、パニック障害に焦りは禁物です。焦れば焦るほど問題となる症状を引き起こしてしまうことが、少なくありません。そのために、例えば、「1年後までに働く」というゴールを定め、まずは日常生活を安定させることから始めましょう。具体的には、規則正しい生活を心がけたり散歩を日課にするなどして、負担の少ない生活リズムを身につけてみましょう。

■これから働く方へ
パニック障害の方が働く際には、自分がどのような状況で問題となる症状が出やすいのかをしっかりと把握しておきましょう。例えば、「電車やバスで通勤をすると過呼吸が起きやすい」ということであれば、徒歩や自転車で通える範囲の仕事場を探したり、リモート勤務が可能な職場を見つけたりするのも良いですね。また、口コミにもあるように、パニック障害を持ちながら働くには、職場や周囲の理解が不可欠になります。きちんと自分の問題を伝えることができ、それに配慮してくれる職場を選ぶことが大切です。

さらに、1人で仕事を探したり復職するのが不安な方は、心療内科などで実施されているリワーク(復職支援プログラム)に参加するのも良いですし、一般企業への就労を目指す方に知識や技術を提供する、就労移行支援事業などのサービスを利用することもおすすめです。ただ、参加や利用条件が定められていますので、興味がある場合は主治医やその他の専門スタッフに相談したり、直接プログラムを展開している病院や施設に問い合わせてみてくださいね。





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監修者

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。 その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

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