まずは、双極性障害とつきあいながら働いている方の「仕事の困りごと」を見ていきましょう。
困りごと1:気分の浮き沈みが激しい
双極性障害は、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。その極端な状態をいったりきたりするのが特徴です。
「躁」と「うつ」の極端な状態は、以下のように仕事にも影響を及ぼします。
- 集中力に差がでる
- 気持ちや体調が極端に異なり仕事のペースが不安定になる
- 睡眠障害を生じやすく、翌日の仕事にも影響する
- 気持ちや体調の落差から自己嫌悪や罪悪感をもちやすい
- 状態の変化は急にあらわれるため、遅刻や欠勤をすることがある
それぞれの状況を口コミから詳しくみていきましょう。
集中力に差がある
【うつの様子】
集中力がなく、仕事が継続できない。出勤が不規則になることがある。
体調に波があり、仕事に集中出来ない。常にだるい。
出社前に気分がふさぎ込みになりながらもそのまま店舗に向かいピッキング作業時を行いましたが、注意散漫でピッキングの個数を間違えてしまうことがありました。
うつの時は、気分の落ち込みが激しく仕事のミスにも神経質になるのでつらく、体調をくずしやすくなる。ミスしたことや叱られたことはいつまでも心に残って次の仕事が怖くなり、不安が強くなって萎縮するため仕事の要領が得ない。
接客もする時があるので、気分が沈んでいるときは笑顔で対応するのが大変。
【躁の様子】
躁状態はテンションが上がり、声が大きくなったりする。
仕事をし過ぎてしまう。集中しすぎていることに気がつかない。
躁状態の時期は張り切りすぎて仕事が雑になったり、所定の手続きを忘れたり無理をして労災になりそうな行動をとったりしてしまう。
気分が高揚する日はおしゃべりが止まらないし、何かしたり動いたりしていないとダメで、自分ではコントロールができない。
また、このような躁とうつのギャップにより、次のような悩みを抱えています。
躁状態と鬱状態の時で集中力に差があり、同一作業を繰り返すのが困難で体調不良になる場合もある。
気分の変化が激しく、やる気の出る時と、落ち込んだ時の、作業効率が大きく違う。
集中力に差があると、仕事のクオリティが定まりません。周囲の方が双極性障害であることを知らない場合は、その違いに驚く方もいるのではないでしょうか。
仕事のペースが不安定
気分の波は、集中力の問題だけでなく、仕事全体にも影響を及ぼします。躁のときに仕事を頑張りすぎて、うつになったとたんその反動で全く動けなくなる方も少なくありません。
【うつの時の様子】
うつ状態となると就業は困難でこれまで何度か休職している。
仕事に向かう気力すら出ないことがあり欠勤せざるをえないときがある。
特に鬱のときは身体が鉛のように重く仕事が出来ません。
【躁の時の様子】
薬によってはいきなりハイテンションになることもある。気持ちをコントロールすることが困難。
躁状態のときは仕事を入れすぎて、結果的にガス欠状態になる。
テンションが上がり頑張りすぎて疲れてしまったり、一人で抱え込んだりしてしまう。
躁状態になると饒舌になり、周りのメンバーにも迷惑がかかることがあった。
また、このような躁とうつのギャップにより、次のような悩みを抱えています。
感情や気分の浮き沈みがあり、波があります。そのため、テンションが高くなって、行動や発言が過剰、多弁になります。低いときは、死にたくなることもありました。変化のきっかけは些細な事ですが、いつどうなるかわからず不安定でした。
双極性障害は、気分がジェットコースターのように目まぐるしく上下する病気なので、調子のよい時は周りと同じように仕事が出来るのですが、鬱になってしまうと布団からでることすらできなくなってしまいます。そうして出勤ができなくなり、会社に迷惑をかけてしまうことが本当に心苦しいです。
1番困った事は気持ちの浮き沈みが激しい事です。ハイになっている時はいくらでも働けると感じてたくさんシフトを入れるのですが、必ずその反動で気持ちが沈むのでコントロールが難しいです。時には休みを取らざるを得なく、周りの人に迷惑をかけてしまいます。
躁とうつがいつ変わるのかという不安と、仕事が急にできなくなるときの周囲への心苦しさに悩んでいることがわかります。
睡眠に影響する
双極性障害のある方は、不眠や仮眠などの睡眠障害を生じる方もいます。
慢性的な不眠症があるため、夜なかなか寝付けないことがあります。眠れない日が続くと翌朝起きるのがしんどいため、欠勤することがありました。
1番困ったことは睡眠についてです。職業柄、すぐに寝付いてすぐに起きなければならない勤務形態だったので、躁鬱によって生じる不眠の症状が1番辛かったです。一日中睡眠不足による集中力の低下があるような状態でした。
過眠の傾向にあり、午前中に起きることが難しいので午後からの出勤にしてもらっている。
不眠の状態が続けば、朝起きることが辛く、遅刻や欠勤が続いてしまう方もいるでしょう。
また、質の悪い睡眠は、精神面や体調面にも悪影響をあたえ、悪循環を生じやすくなります。
自己嫌悪や罪悪感、絶望感をもつ
調子がいい時は残業から人の手伝いから何から何まで無敵状態なのですが、それは躁状態の時で、切れた瞬間の無気力や絶望感が凄いです。
躁状態が酷い時は職場でも他人に攻撃的になり、思いつきの言動を繰り返し周囲に迷惑をかけました。辛いのは、その時を覚えており、気分が落ち着いた時に思い出して自己嫌悪に陥ることです。
鬱状態の場合1ヶ月程仕事を休んでいたので、周りに迷惑をかけているんじゃないかとか、嫌われてしまうのではないかといった不安や罪悪感と自己嫌悪で、更に心も体も辛くなりとても悪循環でした。
うつになった際は、朝から動くこともできず、結局、仕事を長期・中期に休みがちになり、会社や同僚に迷惑をかけていると自分を責めることが辛いです。
日や時間によっての浮き沈みが激しく、躁状態の時に人と話すと喋りすぎ、鬱状態の時だと完全に一人で居たいという、よそ目にはとても自分勝手な人間に見られます。それに対してまた自己嫌悪…。
周囲を困惑させることが多々あります。後々の罪悪感でまた体調が悪くなったりするので悪循環ですね。
双極性障害は、脳の病気と言われています。自分の意志ではどうにもならないもどかしさが、自己嫌悪や罪悪感を招いてしまうのではないでしょうか。
体調を崩しやすい
朝起きたときにその日の体調がわかるので、当日に電話で「お休みします」と連絡を入れなければならないことがしょっちゅうです。
朝起きるのが辛くて決まった時間に起きられずに、遅刻してしまうことがある。
体調がその日によって異なり、決まった時間に起きることができないので遅刻していた。
朝起きて出勤の準備をするのが辛い時がある。
双極性障害のある方の中には、躁とうつによる気分の変化だけでなく、日ごろから体調に波がある方がいます。ストレスなどの影響を受けやすいということも関係してくるのでしょう。休みや遅刻を重ねることが、さらにストレスに繋がってしまうということも考えられます。
困りごと2:コミュニケーションをとるのが苦手
双極性障害のある方の中には、コミュニケーションを苦手とする方がいます。そのときの気分がコミュニケーションにも反映されることで、取り方がわからなくなるという様子が伝わってきます。
発症後対人関係に弱くなってしまい、指導であっても強い口調で話されると緊張してしまう。
気分にむらがあり、周囲とのコミュニケーションが上手く出来ない。
気分が上がったり下がったりの幅が大きいので、時に周囲を困惑させてしまうことがあるため、コミュニケーションの取り方が難しい。
気分の浮き沈みにより、うまくコミュニケーションが取れずにチームでの作業が円滑に進まないことが何度もありました。
塾講師という職業なので生徒とのコミュニケーションが一番大事だったのですが、自分の中で鬱状態が続いている中での勤務は非常に難しかったです。
躁状態うつ状態により人との接し方が異なるため、周囲からどのようにみられているのだろうと不安になることも1つの要因です。あらかじめ、双極性障害であることと状態により対応が異なることを伝えておけば、話しやすくなるのではないでしょうか。
困りごと3:神経が過敏で周囲の影響を受けやすい
双極性障害のある方は、神経が過敏になりがちです。気になることが少しでもあると、気持ちや体調に大きな影響を与えます。
職場環境や人の話声、騒音、天候などにより気分の変調が出やすい。
神経が過敏になり、人の話し声や笑い声が、頭の中に響く事があります。
仕事をする上でも、対人関係の面でも不安や緊張を強く抱きやすく、外部の環境の変化に過敏で少しのストレスで体力を消耗してしまう。
変わったことがあると気が動転してしまう。新しい環境に対応するのに相当の時間がかかってしまう。
環境の変化は、気温や気候、季節から職場環境まで多岐に渡ります。職場で生じる大きな音や話し声などに対しては、許可が得られればイヤホンなどを使用することである程度防げるでしょう。また、周囲の方々の理解と協力を求めることで、さらに改善できるかもしれません。
困りごと4:ストレスに弱い
双極性障害のある方は、ストレスを感じやすく、ストレスにより心身に不調を生じることもあります。
ストレス、特に人間関係に対するストレスに弱く、ストレスが溜まると病状が悪化する。
気持が上下しやすいです。時間に追われるときや、ストレスがかかった状態では、気分がひどく落ち込みます。
ストレスを溜めすぎると、朝起きられなくなる。
ストレスや天候に左右されやすいとは思うものの、実際何が原因で鬱になってしまうのか自分でもしっかりと把握しているわけではないため、予防や対策が取りづらい。
うつ症状になったときに、ストレスを抱えるとより症状が重くなってしまう方もいます。もしストレスを感じやすい状況や傾向がわかっているのであれば、うつ症状のときは特にそのストレス要因から遠ざかることで、悪化を防ぐことができるのではないでしょうか。
困りごと5:薬の副作用
双極性障害は薬による治療を行うことがありますが、その副作用が仕事に影響を与えている方もいらっしゃいます。
処方されている薬のせいか業務中に眠くなってしまい、さらには居眠りしてしまうこともあるのが困りました。
精神安定剤等の薬を服用していたが、副作用で眠くなってしまうのが難点だった。
薬の副作用で手が震えやすく、接客の際に患者様から指摘を受けることや、粉薬の調剤に支障があった。また、薬の副作用で太ったため、立ち上がったりしゃがんだりする作業が辛かった。
薬の副作用で薬物性パーキンソン病になり、疲れていると手の震えが出て食器が持てない事もあります。時々、体全体が震えていることもあります。
最初は双極性障害だと黙っていたけれど、薬の副作用で猛烈な眠気に襲われ、仕事の途中で居眠りをしてしまったり、躁状態でテンションが異様に高くなってみんなを驚かせてしまったりした。
多くの場合、治療薬は長期間服用し続ける必要があります。副作用は人により症状や重さが異なりますが、仕事に支障が出るぐらい辛い場合は、薬の変更を医師に相談してみるのも良いでしょう。