ADHDの人が仕事をするコツを3ステップで紹介

ADHDの人が仕事をするコツを3ステップで紹介

ADHDの特性により苦手な作業があっても、働いている方はたくさんいらっしゃいますが、なかには、繰り返すケアレスミスが原因で仕事に自信が持てないという方もいらっしゃいます。そのような場合は、

・なぜミスをするのか
・ミスを減らすためにどのようなことができるのか
・ミスを減らすためにどのようなサポートをお願いすればよいのか

など、具体的な対策を考えてみましょう。

ADHDのある方は、優先順位を決めることが苦手、片付けられない、コミュニケーションが苦手など様々な特性があり仕事に悩むこともありますが、解決していく方法は少しずつ異なります。

つまり、仕事を続けるためには、仕事が続かない理由を具体的に見つけ、その理由に合わせた対策とサポートを得ることが必要になります。

このコラムでは、ADHDのある方からアンブレに届いた体験談をもとに、仕事を続けるためのコツを3ステップで紹介していきます。

*この記事は松好伸一先生に監修していただきました
松好伸一先生

仙台白百合女子大学 人間学部 人間発達学科 講師。保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。日本発達支援学会(監事)。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数。




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目次

ステップ1:ADHDによる困りごとを把握して仕事ができない理由を考えましょう

ステップ2:自分なりの工夫や対策で働きやすくしてみましょう

ステップ3:仕事に必要なサポートや配慮事項を考えましょう

最後に

ステップ1:ADHDによる困りごとを把握して仕事ができない理由を考えましょう

まずは、仕事が続かない理由を考えてみましょう。
「ADHDの特性により仕事が続かない」と思う方はADHDの「どの」特性によって「どのような」状況になり働きづらくなるのかを深く掘り下げて考えてみると、仕事が続かない原因がみえてきます。

アンブレには、ADHDのある方からのお仕事に関する体験談が280件以上届いています。その悩みをひとつひとつ見ていくと、ADHDの特性により仕事で悩む方は多くいるものの、、悩みを解決するための方法は違うことがわかります。

ご自身の仕事が続かない理由を具体的に把握できないときや確かめたいときは、同じ境遇の方の体験談を参考にしてみるのもおすすめです。

ここからは、体験談を参考にADHDによる困りごとをタイプごとにわけながら、仕事が続かない理由を紹介していきますので、ご自身の様子と照らし合わせながらご覧ください。

仕事が安定して続かない理由は7つ

ADHDのある方の体験談(口コミ)として寄せられた「仕事が続かない理由」をみてみると、大きく7つに分類できます。

  1. 空気が読めない、おしゃべりと思われてしまう
  2. 優先順位をたてることが苦手
  3. ケアレスミスがある
  4. 約束を守れない
  5. 片づけられない、物を紛失してしまう
  6. 忘れ物をしてしまう
  7. 落ち着きがない
これら7つの理由について、詳しくみていきましょう。

仕事が安定して続かない7つの理由を深掘りする

仕事が続かない理由1:空気が読めない、おしゃべりと思われてしまう

自分の思ったことをそのまま話してしまって気づかないうちに人を傷つけてしまい、徐々に周囲の人とのコミュニケーションがうまくいかなくなったという悩みはありませんか? その悩みは「周囲の様子や空気を読み取ることが苦手と」というADHDの特性によるものかもしれません。

暗黙のルールがわからず人の視線が気になる、人との距離感がわからずコミュニケーションがうまくいかないという方は、居心地が悪くなり、仕事へ行くことが辛くなってしまいます。

仕事が続かない理由2:優先順位をたてることが苦手

優先順位を間違えてしまう、わからないという悩みはありませんか?
その悩みは「全体像や先の予定を把握したり想像したりすることが難しい」というADHDの特性によるものかもしれません。

同時に複数の指示をもらうと、どの順番で仕事をしてよいかわからなくなってしまったり、マルチタスクを必要とすると混乱してしまったりするという経験はありませんか?

「聞く」「メモを取る」「応答する」などを一度に求められる電話応対も、臨機応変な対応と優先順位が求められる業務なので、苦手だという方も多いのはないでしょうか。

苦手な作業を無理して行うと、時間がかかりミスも発生しやすくなります。それを繰り返せば、あせりや不安から仕事への自信を無くすもあり、仕事へのやる気が失せてしまいます。

仕事が続かない理由3:ケアレスミスがある

把確認不足によるミスや、仕事の工程を飛ばしてしまうといったミスが多いという悩みはありませんか?
その悩みは「注意欠陥」というADHDの特性によるものかもしれません。

しかし、ADHDかどうかに関わらず、多くの人はケアレスミスをした経験があるために、単なる「やる気の無さによるミス」と誤解されてしまうこともあるかもしれません。

また、ADHDは落ち込みやすい傾向があり、ケアレスミスが起こるたびに自分を必要以上に責め自信を無くす方もいます。

ケアレスミスを防ぐためにできる努力をすることは必要ですが、それでもミスが起こってしまった場合は、ADHDの特性によるミスであることを自分自身で納得し、自分を責めすぎないということも大切です。

仕事が続かない理由4:約束を守れない

把握していた予定を忘れてしまうという経験はありませんか?
その悩みは「時間感覚が弱いために先の予定を立てられない」とか、「注意を持続することができない」というADHDの特性によるものかもしれません。

仕事では、就業時刻に遅刻することや納期を忘れてしまい注意を受けることもあるかもしれません。注意されたにも関わらず同じことを繰り返すと、職場での信頼がなくなってしまい、職場に居づらくなってしまいます。

ADHDの特性によるものではありますが、予定を守るために自分でできる対策もあります。さらに、ADHDの特性によるものだということを職場から理解されると、誤解が解けより働きやすい環境になります。

仕事が続かない理由5:片づけられない、物を紛失してしまう

片付けや整理整頓ができないことに悩んでいませんか?また、物をすぐ失くしてしまうということはありませんか?
その悩みは「空間認知が苦手」というと特性や「物事を先延ばししやすい」というADHDの特性によるものかもしれません。

仕事をする環境が雑然としていると、だらしない印象を与えてしまいがちです。さらに、仕事で必要なものをよく失くすなどのトラブルが続くと、信用にも関わってきます。

また、紛失などのトラブルが続くことで「どう思われているのだろう」といった周囲の視線を意識しはじめ不安を抱えると、次第に仕事に行くことが辛くなってしまいます。

仕事が続かない理由6:忘れ物をしてしまう

やるべき作業を忘れてしまったり、物をどこかに置いたまま忘れてしまったりするという悩みはありませんか?
その悩みは「一時的な記憶を留めたまま別のことをする」ことが苦手というADHDの特性によるものかもしれません。

頼まれていた仕事を何度も忘れてしまうと、周囲の人たちに「やる気がないのではないか」と思われてしまう可能性もあります。こうした雰囲気のなか働き続けるのは辛いことです。

メモの活用など自分でできる工夫と併せて、リマインドの声かけなどの職場サポートを得られると、働くうえでのストレスは軽減されやすくなります。

仕事が続かない理由7:落ち着きがない

やるべき作業を忘れてしまったり、物をどこかに置いたまま忘れてしまったりするという悩みはありませんか?
その悩みは「じっとしていることが苦手、気が散りやすい」というADHDの特性によるものかもしれません。

こうした特性があると、周囲の環境に仕事のパフォーマンスが大きく左右されることがあります。
また、集中が続かなければ、仕事のスピードも質も落ちてしまいます。

そのために「自分は仕事ができない」という自己嫌悪を、仕事を続けることが困難になる方もいます。

仕事が続けられない理由を把握したら、次は自分でできることを考える

アンブレに届いたADHDの方からの口コミをもとに、様々な悩みから仕事が続かない理由を紹介してきました。ご自身の悩みと照らし合わせることで、仕事が続かない理由を把握することはできましたか?

理由が把握できた方は、次のステップに進みましょう。
次は、仕事を続けるために自分でできることを考えていきます。少しの工夫や対策で、悩みは解決に近づくかもしれません。

仕事が続かない理由をリアルな口コミとともに紹介しているこちらのコラムもぜひご覧ください。
▼ADHD(注意欠陥・多動性障害)により仕事が続かないという方へ


ステップ2:自分なりの工夫や対策で働きやすくしてみましょう

アンブレには、ADHDでありがながら仕事を続けている方から多くの口コミが届いています。ここからは、それらの成功体験をもとに、仕事を続けるためにできることを考えていきましょう。

仕事を続けるためには、まずステップ1で述べてきた「仕事が続かない理由」を把握した上で、少しずつ乗り越えていく必要がありますが、そのためには次の2つの方法があります。

  • 自分でできる工夫や対策を心がける
  • 周囲に協力やサポートを相談する
2章では、「自分でできる工夫や対策」を以下の8つに分けて紹介していきます。

  1. 空気が読めない人は、周りの人の会話を参考にして一呼吸おくことを心がける
  2. 優先順位が立てられない人は、メモやチェックリストを作成する
  3. ケアレスミスをしてしまう人は、ダブルチェックを行う
  4. 約束が守れない人は、アラームやリマインド機能を活用する
  5. 片づけられない人・物を紛失しやすい人は、事前準備で大事な物の紛失を防ぐ
  6. 忘れやすい人は、確認方法を工夫する
  7. 落ち着かない人は、タイミングをみて動く
  8. ADHDについてオープンにする
ご自身の悩みに合わせてこれらの対策を取り入れれば、できないことができるようになるなど悩みを解決していくことが期待できます。

しかし、すべてを一度に取り組むことは大変ですので、できることから少しずつ取り組んでみてください。

できそうな対策から取り組んでみる

対策1:空気が読めない人は、周りの人の会話を参考にして一呼吸おくことを心がける

衝動的な行動をとってしまうことや、思ったことをそのまま発言してしまうなど、いわゆる「空気を読む」ことが苦手な方からは、発言や行動を起こす前に一呼吸おくという工夫が寄せられました。

「どのような時に衝動的な発言をしてしまうのか」という自分の傾向を把握しておくと、どのような時に一呼吸おくと良いのかがわかりやすくなります。
また、失言や過度なおしゃべりをしてしまう方は、話すより「聞く」ことに集中したり、話に深入りしないように気を付けたりすると良いでしょう。

「しゃべりすぎている」という自分の状況を客観的に把握するように努めて、気が付いた時には聞き手に回ることを心がければ、失言を減らしていくことができそうですね。

対策2:優先順位が立てられない人は、メモやチェックリストを作成する

仕事や作業を順序立てて行うことが苦手な方には、次のような対策が多く寄せられました。

・メモを活用し、見える所に貼る
・チェックリストを作成して確認しながら仕事を進める
・自分の思い込みだけで優先順位を決めずに、周囲に確認する

優先順位をつけるときは周囲に確認しながら行うと、優先順位をつけるときのルールやコツが少しずつ見えてきますし、勘違いによるミスを減らすことにもなるでしょう。

対策3:ケアレスミスをしてしまう人は、ダブルチェックを行う

「自分でダブルチェックをしているのにミスをしてしまう」という方も多いのではないでしょうか。

ダブルチェックをする際は、次のような対策を実践してみましょう。

・確認事項を整理したマニュアルやチェックリストを事前に作成する
・ダブルチェックをする時間を決め、それ以外のことはせず、じっくり取り組む
・自分で確認した後に周囲にも確認をお願いする

マニュアルやチェックリストを事前に作成しておくと、確認漏れを防止したり作業をスムーズにしたりできますね。さらに、自分で確認した後に周囲の方にもダブルチェックをお願いすれば、よりミスを減らすことができるでしょう。

ケアレスミスは、集中力が低下すると起こりやすくなりますので、集中力を維持することもポイントです。集中力が途切れそうになったらトイレ休憩などをはさみ、あえてその場を離れてリフレッシュすることも心がけてみましょう。

対策4:約束が守れない人は、アラームやリマインド機能を活用する

時間感覚が弱いために、準備に必要な時間を見積もれない方が多くいらっしゃいます。こうした悩みを抱える方からは、スマートフォンやパソコンのアラーム機能やリマインド機能を使って、時間の管理をするという対策が寄せられました。

約束を覚えておくためにメモを取ったのに、そのメモを見ることを忘れてしまったということはありませんか?
アラームは、こうしたケースにも有効ですね。さらに、アラームが鳴れば、一つの作業に集中していても次の作業を思い出すことができるというメリットがあります。

アラームやリマインド機能を活用すると、他の作業に集中しすぎて約束を忘れてしまうということも防げそうですね。

対策5:片づけられない人・物を紛失しやすい人は、事前準備で大事な物の紛失を防ぐ

物が片付いていないことが原因で、仕事で使う道具を紛失してしまうという方は、次のような対策が有効です。
・必要な道具は前日に準備しておく
・必要なものをまとめておく
・物を決まった位置に収納する

事前に必要なものを用意しておけば、心に余裕ができますね。仕事で細々した道具を使う場合は、一つのケースにまとめて入れておいたり、チェーンなどでつないでおいたりすると、失くし物を防ぐことができそうです。

さらに、仕事用のかばんとプライベートのかばんを分けるなどして、物を決まった位置に収納すると、出し入れの機会を最小限に抑えられるので物を失くすリスクを減らすことができます。

対策6:忘れやすい人は、確認方法を工夫する

注意力が散漫になり集中力が途切れてしまうと、指示されたことを忘れたり、作業の工程を飛ばしたりする方もいます。こうした傾向のある方は、やる事を書いたメモや目印を自分のわかりやすい場所に置いておくと良いでしょう。

また、口頭で受けた指示を覚えておくことが苦手な方は、次のような対策が有効です。

・指示を受けたらすぐにメモを取る
・復唱する、声に出して確認する

復唱すると、自分の中でやるべきことが明確になりますし、自分が指示の内容を正しく理解しているかの確認することもできます。

対策7:落ち着かない人は、タイミングをみて動く

じっとしていられず落ち着かない、不安定でイライラしやすい方は、無理にその場に留まって集中しようとせず、少し動いてみると良いでしょう。

しかし突然席を離れるのではなく、「今は席を立ってもよいタイミングだろうか」と、一旦状況を客観的に把握するように努めてみましょう。

じっとしていることが苦手な方は、常に動いていられる仕事を選ぶということも、対策のひとつになります。

対策8:ADHDについてオープンにする

仕事を続けるためにご自身でできることを紹介してきましたが、一番必要なことは「ADHDであることを周囲の方々に伝え理解を得ること」なのかもしれません。

忘れ物や短い集中力は、ADHDであるかどうかに関わらず、多くの人が経験しています。そのため、ADHDへの理解がない方からは、本人の性格によるものと誤解される場合もあります。

ADHDの特性について正しく説明し、ご自身の傾向について周囲の人から理解を得ておくと、より働きやすい環境になるでしょう。理解を得られれば、自分の望むサポートや協力を相談しやすくなります。そのためにも、まずは自分のことをご自身で把握することが大切ですね。

仕事を続けるためにできることをリアルな口コミとともに紹介しているこちらのコラムもぜひご覧ください。
▼ADHDで仕事を休みがちな人にもおすすめ 自分でできる9つの対策


自分で心がける対策に加えて、職場のサポートがあればさらに心強い

ここまでは、仕事を続けるためには、自分の悩みを把握し、自分でできる工夫や対策を心がけることの必要性を紹介してきました。

しかし、工夫や対策だけでは職場を働きやすい環境に変えられないこともあります。できないことは、周囲のサポートや配慮で補うことができれば、より前へ進めますね。

次は、職場に相談したいサポートについて詳しくみていきましょう。

ステップ3:仕事に必要なサポートや配慮事項を考えましょう

サポートや配慮のある職場で働いている方は、そうでない職場で働く方に比べて、職場や仕事への満足度が高い傾向にあります。

それでは、具体的にどのような配慮やサポートを職場に相談すると良いのでしょうか。求めたい配慮やサポートについても、アンブレに届いたADHDの方の口コミがとても参考になります。

仕事に必要な職場サポートは8つ

口コミを見ていくと、ADHDのある方が必要とする職場からのサポートは大きく分けて8つありました。

  1. 業務を変更してくれる
  2. 指示の仕方を工夫してくれる
  3. 優先順位を明確にしてくれる
  4. 時間配分を共に考えてくれる、リマインドをしてくれる
  5. 一緒に確認してくれる
  6. 距離感について考えてくれ、コミュニケーションの方法を工夫してくれる
  7. 疲れやすさを考慮してくれる
  8. 責めないでいてくれる
それぞれを詳しくみていきましょう。

必要なサポートを相談してみましょう

必要なサポート1:業務を変更してくれる

ADHDの特性により苦手な業務があることについて悩んでいる方は多くいらっしゃいます。

例えば「聞く」、「メモを取る」、「臨機応変に返答する」などの対応が即時に求められる電話対応など、特定の業務を苦手だと思った経験はありませんか?
苦手な業務を毎日しなければならない場合、それが例え1日のうちのほんの少しの時間だったとしても、仕事に行くこと自体が負担になってきてしまうものです。

例えば、電話対応や簡単な書類の記入など毎日行う業務であれば、他の方に担当を変わってもらえるように相談するのも良いですね。しかし、仕事内容全般が特性に合わないと感じる場合は、担当業務や部署を変えてもらうということも検討する必要があります。

職場の人も、苦手な作業でミスが増えるよりも、得意な作業で力を発揮してほしいと望んでいるものです。つまり、自分に向いている仕事をすることは、本人だけでなく、職場にとってもメリットになります。

なお、業務の変更などについての相談を円滑に進めるためにも、ご自身の苦手な作業と得意な作業を把握しておくことが重要です。

必要なサポート2:指示の仕方を工夫してくれる

注意が他のことに移りやすい傾向のある方は、指示を忘れたり作業の手順を飛ばしたりというミスを起こしがちです。また、優先順位づけが苦手な方は、一度にたくさん指示されると、どの順番で作業をするべきなのか混乱することもあります。

こうした困りごとに対して、職場から得られると嬉しいサポートは次の通りです。

・メモを取る時間を確保してくれる
・指示は口頭だけでなくメモで渡してくれる
・図やイラストを使って指示を出してくれる
・声かけによりリマインドしてくれる

指示を忘れないためにメモをとるという対策は、多くの方が取り入れています。しかし、聞きながらメモを取ることはADHDの方にとって大変な作業でもあります。
メモを取る様子を確認しながらペースをあわせて指示を出すように配慮してもらえば、指示を受ける際も焦らずに済みます。

指示を出す側としても、1回の指示で理解してもらえるのはありがたいことです。
職場に相談する際は、指示の出し方を工夫してもらうことで、結果として、指示をする側、される側双方の作業の効率化につながるということを説明すると、その必要性をより理解してもらえます。

必要なサポート3:優先順位を明確にしてくれる

優先順位をつけるのが苦手な方は、自分で優先順位を考えたとしても、間違っていることやそのことを指摘されることもあり、さらに自信を無くすこともあるのではないでしょうか。

優先順位をつけることが苦手という人は、次のようなサポートが働きやすさにつながります。

・優先順位を明確にしたうえで指示を出す
・優先順位が固定的に決まっている作業の場合、表などを作って本人が確認しやすいようにする
仕事をしていると、突発的に臨機応変な対応が求められることもあります。こうした場合、あらかじめ優先順位をつけたうえで指示を出してもらえると安心ですね。

また、職場によっては「この作業が発生したら、必ず優先して行う」など、優先順位が明確なケースもあります。こうした場合は、表などを作成していつでも確認できる状況にしておくと、優先順位を把握することができますね。

確認表の作成や優先順位を明確にした指示は、ADHDの有無にかかわらず、すべての従業員のミスを減らすことに役立ちます。職場に相談する際は、他の従業員のメリットにもなるという点を併せて伝えてみましょう。

必要なサポート4:時間配分を共に考えてくれる、リマインドをしてくれる

仕事に遅刻したり、仕事が納期に間に合わなかったりして、職場での信用が下がってしまうという方は、時間を見積もることができないという特性によるものです。

そのような方は、以下のような職場サポートがあると働きやすくなります。

・タイマーなど、ツールの導入を許可してくれる
・時間配分を明確に指示してくれる
・仕事の時間配分を共に考えてくれる
・締め切りなどのリマインドをしてくれる

本人の作業スピードを把握していなければ、時間配分を明確に指示することは難しいものです。まずは、自分自身で「早くできる得意な作業」と「時間がかかる苦手な作業」を把握し、一緒に時間配分を決めてみましょう。

必要なサポート5:一緒に確認してくれる

ケアレスミスに悩むADHDの方は多くいらっしゃいます。自分でダブルチェックをすることは重要ですが、それでもミスを防ぎきれないこともあるでしょう。そんな時は「一緒に確認する」というサポートがあると心強いですね。

職場の中でも、信頼できる人、自分の近くにいる人など、確認をお願いしやすい人を見つけておくと、安心感が持てます。
また、ケアレスミスはADHDの特性によるためであることを職場に説明し、理解を得た上で確認のお願いを相談すると、サポートの必要性を伝えることができますね。

必要なサポート6:距離感について考えてくれ、コミュニケーションの方法を工夫してくれる

いわゆる「空気を読む」ということが苦手な方や、職場でのコミュニケーションに悩みを抱えているADHDの方は多くいらっしゃいますが、こうした悩みは以下のような職場サポートがあると働きやすくなります。

・チャットやメールを使ったコミュニケーションを取ってくれる
・適度な距離感を保ってくれる

チャットやメールなど、文字でのコミュニケーションであれば、過度なおしゃべりや失言を心配しなくてよくなりますね。

コミュニケーションに悩んでいる方の中には「話しかけてもらえると嬉しい」という方もいれば、「適度な距離を保ってくれると嬉しい」という方もいます。まずは、ご自身がどのようなコミュニケーションのスタイルを望むのかを明確にしてみましょう。

必要なサポート7:疲れやすさを考慮してくれる

ADHDの特性とうまく付き合いながら仕事を続けるために、毎日気を張って仕事をしていませんか?
もしくは、感覚過敏があるのに、我慢しながら仕事をしていませんか?

無理をしている状況は、疲れやストレスをためやすくなりますが、こうした悩みのある方は次のようなサポートがあると働きやすくなります。

・こまめに休憩をとらせてくれる
・体調や気分に応じて、業務量を気にかけ柔軟に対応してくれる
・感覚過敏など、周囲の環境に過敏な方へも配慮してくれる

日頃の声かけなどにより休暇や休憩を取りやすい雰囲気をつくり、さらに他の従業員が欠勤をカバーできるような体制を整えている職場は、まさに理想的ですね。

さらに、ADHDの特性として感覚過敏がある方は、次のような配慮を得られると嬉しいですね。

・聴覚過敏の方は、耳栓やヘッドホンが使える
・触覚過敏の方には、肩をたたくなどの行為を控える

たとえ困りごとにより働きづらい状況があっても、その内容がわからなければ、周囲の人たちはサポートの実施することができません。サポートが必要な場合は、自分の困りごとを職場の人たちと共有しましょう。その際は、必要なサポートの具体例がわかると、スムーズに気持ちが伝わります。

必要なサポート8:責めないでいてくれる

ADHDがある方は落ち込みやすい傾向があり、ケアレスミスや物忘れなどの自分のミスに対して自己嫌悪になることがあります。周囲の人から怒られたり責められたりすれば、さらにその傾向は強くなります。

ミスや失敗を責めないでくれる職場は理想的ですが、「そんな職場はあるの?」と思ってしまいますよね。実際に、ミスや失敗を責めないでくれる職場はありますが、それらに共通することは次の点です。

・本人がミスを防ぐ工夫を精一杯していることを理解している
・ADHDの特性を理解している

本人がミスを防ぐための工夫や対策をしているかどうかで、その人に対する職場からの印象は大きく異なります。ご自身の努力を理解してくれる職場であることが、安心して働き続けるためには必要ですね。

仕事を続けるために必要なサポートをリアルな口コミとともに紹介しているこちらのコラムもぜひご覧ください。
▼ADHDが原因による仕事のミスを減らし、働きやすくするためにお願いしたい8つのサポート


自分に必要なサポートを職場と共有する方法

自分に必要なサポートが整理できたら、次は職場の人たちに相談してみましょう。

しかし、入社前であれば面接などを利用して合理的配慮のすり合わせを行うこともありますが、すでに働いている場合は定期的な面談がない限り、話す機会やタイミングを見つけるのは難しいかもしれません。

そんな場合は、ご自身の気持ちや考えをまとめた「ナビゲーションブック」を作ってみましょう。

ナビゲーションブックは、自分の障害や病気のことを把握し説明するためのツールとして、履歴書や職務経歴書と一緒に利用することが多いのですが、就職や転職だけでなく働いている職場でも活用することができます。

ナビゲーションブックは、以下のこと順番にまとめることができます。

・困りごと(仕事が続かない理由)
・ご自身でできる工夫や対策
・職場にお願いしたいサポート

中でも「トリセツ」は、質問に答えていくと、ご自身のことをA4一枚のシートにまとめることができるツールとしておすすめです。

まとめた1枚の用紙を見ながら話すことで、落ち着いて自分の気持ちを伝えることができますし、職場の方々に用紙を渡して話す機会を設けてもらうようにお願いすれば、より気持ちが伝わるはずです。

トリセツの使い方はこちらのコラムで紹介しています。
ナビゲーションブックは難しくない!作ってみよう自分のトリセツ


最後に

ADHDの方が仕事を続けるためのコツを、3ステップに分けて紹介してまいりました。

ステップ1:ADHDによる困りごとを把握して仕事が続かない理由を考える
ステップ2:仕事を続けるために自分でできる工夫や対策を心がける
ステップ3:仕事に必要なサポートや配慮事項を考える

まずは、仕事が続かない理由を詳しく分析してみます。その理由は、ご自身の工夫で解決できることもあれば、職場のサポートを得ることで解決することもあるからです。また両方が必要な場合もありますね。

そして、ご自身の状況を職場と共有するときも、この3ステップがとても大切です。

企業の担当者に話しを伺ってみると、企業側は手順を踏んで話を聞くことで、その人が単なる要望だけでなく、自分のことをよく理解し努力をしていることや仕事への熱意を持っていることが伝わってくるため、要望を受け入れやすくなると言います。

一番大切なことは、ADHDとうまく付き合いながら仕事をすることです。無理をせず、ご自身のペースで取り組んでみてください。

【監修者:松好伸一先生からのアドバイス】

ADHDであることを理解してもらおうとするときは、精神障害者手帳を提示したり、医師の診断書に本人の得意・不得意分野を書いてもらったりして、診断を受けていることを明示できると、より理解されやすいことがあります。

ただし、公的証明を示しても理解されなかったり、逆に腫れ物に触るような扱いを受けたりすることもあります。ある程度働いてみて、自分への対応や職場の様子が変わらないようであれば転職を考えることも必要でしょう。

また、ADHDの方は自己評価が低いこともあり、自分が手伝っても邪魔になるのではないかという消極的な態度をとりがちです。コミュニケーションを取らないことで、周りから浮いくことや「扱いづらい人」と思われることもあります。
まずは積極的にコミュニケーションをとるなど、自分でできることから取組み、働きやすい環境を作っていきましょう。





ADHDのある方の体験談はこちらからもご覧いただけます
▼ADHD(注意欠如・多動症)のある方のお仕事・職場口コミ一覧




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監修者

保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数で、2022年3月29日「幼児教育方法論」(共著・一藝社)を刊行。

保有資格

著者

より望ましい職業の選択や能力開発における相談・助言を専門とする国家資格「キャリアコンサルタント」のほか、米国CCE, Inc.認定の「GCDF-Japanキャリアカウンセラー」の資格を取得。福祉・医療介護分野の研究などにも従事しています。

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