適応障害の方が仕事を両立するために職場にお願いしたい3つのサポート

適応障害の方が仕事を両立するために職場にお願いしたい3つのサポート

はっきりしたストレス要因によって、社会生活に困難が生じる適応障害。適応障害の症状とうまく付き合いながら仕事を続けるためには、ストレス要因から遠ざかることが必要です。

中には、自分で仕事のやり方を工夫してストレスを減らしたり、こまめな休憩をこころがけストレスを少しずつ発散したりするなど、努力をしている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、シフト調整や業務内容の変更など自分の努力だけでは解決できない事柄については、職場のサポートが不可欠です。職場のサポートにより、より働きやすい環境が望めるのであれば、ぜひ相談してみましょう。

職場にサポートを相談するときは、まず自分の悩みや困りごとを整理して、どのようなサポートがあると働きやすくなるかを考えてみることが大切です。

本記事では、アンブレに届いた適応障害のある方の口コミから、特にあるとうれしい職場サポートを紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。


*この記事は久木田みすづさんに監修していただきました
久木田みすづ

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。




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目次

職場サポート1. 休みやシフトの調整がしやすい

職場サポート2. 個人に合わせてコミュニケーションをとってくれる

職場サポート3. 特性に応じて業務内容や職場環境に配慮してくれる

仕事を続けるために必要なサポートについて相談するコツ

まとめ

職場サポート1. 休みやシフトの調整がしやすい

適応障害のある方は、心身の状態が不安定になりやすく、急に仕事を休むこともあります。また、定期的な通院のために、決まった曜日にまとまった時間を確保したい方もいらっしゃるでしょう。

休みやシフトの調整をお願いすることは気が引けるという方もいらっしゃるかもしれませんが、職場の理解を得て柔軟に対応してもらうことで体調管理や通院がしやすくなり、適応障害とうまく付き合いながら仕事を続けることができます。

【シフトや勤務時間の調整】

私が午後から夜のシフトに入る代わりに午前中のシフトに入ってくれた。
(女性)

無理なシフトはなく、なるべく意向に沿ったシフトにしていただきました。
(清掃、男性)

会社では、急なシフト変更にも対応してくれました。
(女性)

【休みの調整】

体調が悪くてお休みを頂くこと、睡眠薬に副作用があることに関して、理解を示してくれました。
(女性)

復調を最優先に休暇取得・相談などは細かくしていただきました。
(男性)

体調が悪い時は休ませてくれました。
(事務、女性)

病院に行く日は休みがとれました。
(女性)

適応障害に限らないことですが、体調が悪いときは無理をせず、悪化する前にしっかり休むことが大事です。休みの相談がしづらいからと言って、具合が良くないのに無理をするとかえって治療が長期化し、仕事復帰するまでに時間がかかってしまいます。

休みをお願いしづらいという方は、いざというときに休みやシフトの相談をしやすくするためにも、日ごろから勤務時間を守りしっかり仕事に取り組むなど、仕事に対する前向きな姿勢を見せておくことが大切です。

職場の人に快く協力してもらうためにも、日頃から責任をもって仕事を行い、信頼関係の構築に努めていきましょう。

職場サポート2. 個人に合わせてコミュニケーションをとってくれる

仕事には、職場の方々との人間関係が少なからず影響してきますし、コミュニケーションも欠かせません。しかし人間関係は、適応障害を生じるストレス要因にもなりやすいので注意が必要です。

適応障害の方の中には、自分ではどうすることもできない上司や同僚とのやり取りに強いストレスを感じる方もいらっしゃるでしょう。また、適応障害であることを理由に、腫れ物に触るような扱いを受けて悲しい気持ちになったという方もいます。

適応障害の方が仕事を続けるためには、ストレス要因から離れることやなるべくストレスを受けない状況で働くことが重要です。

職場での人間関係やコミュニケーションのとり方に悩んでいる方は、適応障害への理解を求め、自分の望む距離感で接してもらえるよう相談することも必要です。

では、職場の方々にどのように接してもらうことが働きやすさにつながっているのでしょうか? アンブレに届いた口コミから、具体的に見ていきましょう。

【積極的に関わりをもってくれる】

他の人との話に行き詰まると、会話の手助けをしてくれました。

こうしたらいいんじゃないかなど案を出してくれたり手伝ってくれたりしてくれた。
(女性)

出来るだけ話し合ってくれるようになった。
(女性)

【そっとしておいてくれる】

具合が悪くなり、精神状態が不安定になっても過剰な励ましなどもしないで、そっとしておいてくれたのがとても心地よかったです。
(女性)

休みの連絡にマイナスの反応をせず、休み明けもいつもと変わりなく接してくれた。
(女性)

【仕事を評価してくれる】

出来た作品をほめてもらうことで自信がわき、何気ない日常会話をすることで気が紛れた。
(女性)

【気にかけてくれる】

不安がないかよく声をかけていただき大変感謝しました。
(女性)

上司はあまり理解のない人でしたが、他職種の人が気にかけて話しかけてくださるようになりました。
(女性)

「大丈夫?」「無理しないでね」等と声をかけていただけるようにもなりました。 また、社内はほとんどが男性だったので、直接言いにくいことは女性の上司がお話を聞いてくださりました。
(女性)

【何度も教えてくれる】

優しく何度も教えてくださったり、フォローをしてくださったり前向きに助けてくれた。
(女性)

聞きやすく「いつでも聞いて下さい」と言っていた社員もいた。
(人事・経理・総務・企画、女性)

「欠勤の後でも普段と変わらない態度でいてくれること」「こまめに気にかけてくれること」など、人によって負担にならない接し方というのは様々です。

口コミのような会話は単なる同僚としての最低限の会話なのでは?と感じるかもしれませんが、その人に合った声かけ一つが立派な職場のサポートになるのです。

積極的に話しかけてほしい人、必要な会話だけ望む人など、望ましいコミュニケーションのとり方は人それぞれですが、あなたがどのような関わりを望んでいるかということは、周囲の方にはなかなか伝わらないものです。

もし職場の人と働き方について相談する機会がある場合は、「どのように接してほしいか」「どのようなコミュニケーションであれば負担にならないか」という視点で希望を伝えてみるのも一つの手でしょう。

そして、自分が心地よいと感じるコミュニケーションを取ってくれる人に対しては、感謝の言葉も忘れないようにしたいですね。

職場サポート3. 特性に応じて業務内容や職場環境に配慮してくれる

日によって体調が不安定で、抑うつ状態が続く適応障害。同じ仕事をしているにも関わらず作業効率が低下して、集中して仕事を続けることが辛いと感じる日もあるのではないでしょうか。

職場の雰囲気や人間関係が良くても、苦手意識やミスをするのではないかという不安を抱えた状態で仕事を続けていれば、ストレス要因を取り去ることにはなりません。

適応障害の症状は人によって様々です。個々の特性や症状に応じ、業務内容や職場の環境に対して職場からサポートが得られると働きやすくなります。

①業務内容への配慮

配属を転換してくれた。
(女性)

事務仕事に自分が向いていたのも大きかった。15:00までという勤務時間も自分にあっていた。
(事務、女性)

サポートなどの自分にできそうな仕事を選んでもらえました。無理な仕事を言われなかったので、良かったと思います。
(清掃、男性)

私の負担を減らそうと、なるべく責任の少ない業務を与えてくれたのは良かったです。
(医療・介護・福祉、女性)

適応障害は、症状を引き起こすストレス要因が明確です
。 もし、そのストレス要因が携わる業務内容そのものであれば、業務自体を見直す必要があるでしょう。

例えば、人と関わる業務に苦痛を感じるのであれば、一人で取り組める業務を担当するとストレスを緩和することが期待できます。また裁量や責任のある仕事が苦手なのであれば、リーダーを別の人にお願いすることで、ストレスを回避することも可能です。

これらの対策は自分の一存では決められないことですが、周囲に理解を求め実現できれば安心して長く働くことができます。そのためにも、自分が仕事を続けるうえでの困りごとを職場に説明し、理解を得ることが必要です。

ただし、会社の方針や人員の都合により、業務内容や部署の変更が難しいという方は、以下のような職場サポートを相談することも検討しましょう。

②業務量への配慮

同じ部署に所属する先輩に気にかけていただき、仕事を振られても「後回しでいいからね」と言っていただいた。場合によっては肩代わりしてもらい 負荷を軽くしようとしていただきました。
(男性)

自身の障害に理解があって、仕事の分担や分量などを配慮して貰えたため。
(公務員、男性)

顧客を減らして、他の人に引き継ぎを即座に行い、かなりの量の負担を減らしてくれたことで、 体調が少しずつ回復していきました。
(販売・接客・サービス、男性)

割り振る仕事の量を調整してくれた。
(男性)

会社の方針により業務内容や配置を変えることが難しい場合は、業務量を減らしてもらうことが負担軽減の一助となります。

多くの仕事を任されると、仕事を休みにくいというプレッシャーを感じる方や、やり遂げることができるか不安になる方もいるでしょう。自分に合っている仕事でも業務量が膨大であれば疲労やストレスを感じますし、残業が多くなるなどの生活リズムの乱れも引き起こしかねません。

業務内容そのものを見直さなくても、業務量の調整に柔軟に応じてもらえると精神的な負担が減り、ストレスの軽減につながります。

③職場環境への配慮

職場でのストレスを緩和できるよう、人事の配置を工夫してくださいました。
(女性)

隣に人がいない端っこのブースを用意してくれたり、両方の耳がふさがるヘッドフォンを支給してくれたりしました。
(男性)

パニックや過呼吸が起きたときは、静かな場所で落ち着くまで10分から20分程度まで休む事を許してくれていました。
(女性)

ちゃんと細かく自分のことを話しました。 話してからは、トイレに行くことも、バックストックで少しお休みを頂くことも上の方が快く承諾してくださっていたのですごく助かりました。
(女性)

職場のサポートには、以下のような職場環境に関するものもあります。

  • 対人関係にストレスを感じる場合は人員の配置を考慮してくれた
  • 業務に集中するために、端の座席やヘッドフォンを用意してくれた
  • 体調が悪くなったときに小休憩をとることができた

適応障害の症状を和らげるために、なるべくストレス要因から距離を置けるように、職場が配慮してくれたという口コミが多く寄せられました。

不安を減らして仕事をしていくには、仕事内容そのものの調整も大切ですが、職場環境自体を自分自身が働きやすいように物理的に変化させることも必要だと言えます。

上記の口コミ以外にも、「通勤距離を短くするために自宅近くの支社で勤務する、あるいはリモートワークを増やす」「静かな環境で業務を行うために、電話機から離れた席に座る」「刺激を避けるために明るい照明や周囲の人から離れた場所で仕事をする」などの職場サポートもあります。

仕事内容や業務量に加え、職場環境への理解やサポートがあれば、適応障害を抱えながらでも仕事が続けやすくなります。そして、自分にとって働きやすい環境については、職場の上司だけでなく医師や産業医とも相談してみると、より具体的な方法が見つかるかもしれません。

仕事を続けるために必要なサポートについて相談するコツ

適応障害による自分の困りごとについて把握し、自分でできる対策を講じていたとしても、自分では解決できないことはたくさんあります。自分で解決できないことは、職場の方々の理解を得て、その人の困りごとにあわせたサポートを受けることで、より仕事は続けやすくなります。

しかし、自分の障害や原因となるストレスについて打ち明けて、サポートをお願いすることは簡単なことではありません。口コミにも以下のような意見が寄せられました。

周囲には伝えていなかったので支援はしてもらえなかった。言いづらかった。
(女性)

上司に相談したが対応してもらえなかった。
(女性)

自分でもわからない所だらけで、どのように伝えたら良いのかわからない。
(軽作業、女性)

このように、「冷たい態度を取られたらどうしよう」「職場に相談したことにより同僚から何か言われるのではないか」と不安に思う方もいます。人によっては、他の人に頼み事をすることに慣れておらず、緊張してしまったりコミュニケーションに不安を感じたりする方もいらっしゃるかもしれません。

では、どのように必要なサポートについて相談すれば良いのでしょうか?
ここからは、その方法についてご紹介します。

ナビゲーションブックを利用する

ナビゲーションブックは、自分の障害や病気、生活や仕事のしづらさについて把握・説明するためのツールで、職場に説明するときにも非常に役立ちます。

ナビゲーションブックには、作成するときのルールや決まった書式はありません。自分の障害や病気について文章で説明できれば良いのです。

ただし、文章で説明するためには、まずはご自身が自分の障害や病気についてよく理解しておく必要があります。いわゆる「自己分析」です。

自分のことは自分が最も良く知っているはずですが、うまく言葉で表すことができないという方も多いのはないでしょうか。そのような場合は、以下の順番で自分のことを言葉に表していきましょう。

  1. まずは、仕事における自分の困りごとを把握しましょう。
  2. そして困りごとに対して自分でできる工夫や対策を考えてみます。
  3. その上で周囲の協力やサポートが必要な場合にはその内容を挙げてみましょう。
このような手順でナビゲーションブックを作っていくと、自分のことを見直すきっかけにもなり、情報を整理することができます。


ナビゲーションブックについて詳しく説明しています
▼ナビゲーションブックとは?作り方とメリットを紹介




ナビゲーションブックが簡単に作れるツール「torisetu(トリセツ)」

ここからは、ナビゲーションブックを簡単に作れるツール「torisetu(トリセツ)」を紹介します。

torisetuは、「仕事の悩み、自分で行っている対策、企業に相談したいこと」という順番で質問が出てきますので、選択肢から回答を選んでいくだけです。そして最後まで答えると、自分のトリセツがA4サイズ1枚にまとまって出てきます。

無料で使用できるツールですので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。





作成したご自身のトリセツは、自分の障害について把握するだけでなく、そのまま職場の上司や同僚に見せて共有することもできます。

面談などで、自分の考えを的確に伝えられるか不安な場合には、情報が1枚にまとまったトリセツを見ながら説明することでより分かりやすく伝えることができます。話を聞く側も、トリセツを見ながら聞くことができるので理解がより深まるでしょう。

トリセツはご自身のことを把握するだけにとどまらず、職場や周囲と共有するためにも活用できますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

適応障害がありながら長く仕事を続けるために、自分でできる対策を講じている方も多いでしょう。しかし、自分では解決できないことに対しては職場のサポートが必要になることもあります。

サポートの内容は人それぞれです。日頃の声掛けや気遣いから、シフトや配属の調整まで多岐にわたりますが、自分が望むサポートを受けることが、働きやすさや安心感につながります。

そのためには、自分に必要なサポートについて職場と共有する必要がありますが、まずはご自身が適応障害による困りごとを把握していないと分かりやすく説明することはできません。

自分のことを分析するためには、トリセツなどのナビゲーションブックを利用すると簡単に取り組むことができます。ナビゲーションブックは自分自身を把握するためだけでなく、職場の方々と適応障害のことや自分の望むサポートについて共有するときにも活用できるのでおすすめです。ぜひ試してみてくださいね。

【監修者:久木田みすづさんからのアドバイス】

適応障害の症状に悩まされていても、「仕事上でサポートしてほしい」と職場の人に伝えるのは、とても勇気が必要ですよね。ただ、困りごとを伝えずに我慢するよりも、伝えたことで良い方向に進むケースもたくさんあります。いずれにしても、「伝えること」で何かしらが前進して行くはずです。

そのためには、自分の症状や悩み、どのようにサポートしてほしいかを客観視し、ナビゲーションブックにまとめる作業はもちろん大切ですが、それらの困りごとを上司などに伝えるタイミングに対しても、気を配ることをおすすめします。

職場では、大抵忙しい曜日や時間帯があるものです。そのような時に相談事をすると、上司なども、ゆっくりと向き合う気分になれなかったり、重要な部分が頭に入らなかったりする場合があり、結果的に上手く伝わらずに、余計に悩みが大きくなることもあるでしょう。そうならないためにも、困りごとを聞き入れてもらいやすいタイミングを考えたうえで話を切り出すことも重要なポイントになります。





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監修者

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。 その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。

保有資格

著者

精神保健福祉士社会福祉士の資格を取得。大学卒業後、精神科病院にてソーシャルワーカーとして勤務。入院患者やご家族への説明やカンファレンスへの参加など多くの業務に携わる。その後、精神科クリニックに勤務し、患者への就労プログラムや生活支援プログラムを提案する業務に従事。特に発達障害や精神障害のある方への就労支援、ストレス対処やコミュニケーションに関する講座を開くなど様々な実務経験を積んでいる。

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