適応障害と付き合いながら仕事を続けるコツとは?

適応障害と付き合いながら仕事を続けるコツとは?

適応障害による抑うつや不眠、吐き気などの様々な症状により、仕事が続けられないと悩んでいませんか?

適応障害は、特定のストレス要因によって社会生活に困難が生じる疾患ですが、そのストレス要因から遠ざかることができれば症状の緩和は望めます。
しかし、ストレス要因が仕事にあるという方も多いのではないでしょうか。

適応障害とうまく付き合いながら仕事を続けるためには、仕事によるストレスを減らしたり、遠ざかったりしながら働くことが必要です。

この記事では、適応障害が仕事に与える影響とその対策に注目しながら、仕事を続けるためのコツを紹介して参ります。


*この記事は久木田みすづさんに監修していただきました
久木田みすづ

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。




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目次

1.適応障害とは

2.適応障害が仕事に与える影響

3.適応障害と付き合いながら仕事をするための2つのコツ

4.まとめ

1.適応障害とは

適応障害とは

適応障害とは、特定の出来事や現在置かれている状況から強いストレスを受け、落ち込みや焦燥感、不眠などのさまざまな症状が現れる精神疾患です。原因となるストレスがはっきりしており、環境を変えるなどしてそのストレスが解消されると、半年以内に症状が治まることもあります。


適応障害の症状

適応障害によりあらわれる症状は実にさまざまです。

ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)によると、抑うつ気分、不安、怒り、焦りや緊張など精神面に症状があらわれますが、過度の暴飲暴食や無謀な運転、けんかなどの攻撃的な行動がみられることもあります。さらに不安や緊張が強まると、頭痛や吐き気、動悸、めまいなど身体面にも症状があらわれることがあります。

誰もが、様々なストレスに適応しながら生活しています。ストレス要因やストレスへの適応能力は人によって異なりますが、このストレスに適応できず、耐え難い状況になったときに様々な症状を引き起こす疾患が「適応障害」です。


他の精神疾患との違い

適応障害に似ている疾患に「うつ病」がありますが、両者には大きな違いがあります。
うつ病はストレス要因が無くなった後も慢性的に抑うつ状態が続く場合もありますが、適応障害はストレス要因から離れることで症状が改善することが多いと言われています。

しかし、適応障害と診断されても、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されています。適応障害は、実はうつ病の前段階の可能性もありますので注意が必要です。


適応障害の症状を緩和するために必要なこと

適応障害の症状は、特定のストレス要因がありそのストレスに耐えられなくなったときに、精神面や行動面にあらわれます。

そのため、症状を緩和するために一番大切なことは「原因となるストレス要因から遠ざかること」です。ストレス要因から離れられない、取り除けない状況では症状が慢性化してしまうこともあります。

また、症状の改善にはストレスを溜めこまないことや体調を整えることも有効です。体調を安定させるために、心療内科での治療やカウンセリングを受けるのも良いでしょう。

参考:東京都立松沢病院「こころの病気のミニ事典」

2.適応障害が仕事に与える影響

では次に、適応障害の症状が仕事に与える影響について考えていきましょう。症状は主に「精神面」と「体調面」にあらわれ、その症状が仕事に様々な影響を与えます。

精神面にあらわれる症状が仕事に与える影響

精神面にあらわれる抑うつ気分や不安感、集中力ややる気の低下、焦燥感やイライラ感などの症状は、仕事に以下のような影響を与えがちです。

  • 上司や同僚に言われたことを真に受けて落ち込みやすくなる
  • 感情のコントロールが難しく、焦燥感やイライラ感で仕事が手につかなくなる
  • 不安や不眠、集中困難によりパフォーマンスが低下してしまう

このように、適応障害の症状は仕事に悪影響を与えることもあり、そのまま仕事を続けることは簡単なことではありません。

精神症状が悪化したときには「疲れているだけ」「気持ちの問題」などと片付けず、体の具合が悪い時と同様に、しっかり休息することが必要です。

身体面にあらわれる症状が仕事に与える影響

身体面にあらわれる倦怠感や動悸、めまい、吐き気などの症状は、仕事に以下のような影響を与える可能性があります。

  • 疲労感や頻発するめまいのため、仕事中に立っていられなくなる
  • ストレスを感じやすい特定の仕事や人と関わると、吐き気等の症状が出る
  • 出勤の直前まで寝込んでしまったり、満員電車でさらに体調を悪化させてしまったりして、遅刻してしまう

適応障害と診断されていない方がこれらの症状を経験すると、体のどこかに異常があるのかもしれないと思うかもしれません。しかし、内科的な所見が見当たらない場合は、適応障害のような精神疾患が身体症状を引き起こしているということもあるのです。

どんなに体調管理に努めていても、原因であるストレスを減らさない限り身体症状を無くすことは難しく、仕事を続けることが困難になってしまいます。

また、「仕事をさぼっていると思われるのではないか」「やる気がないからこうなるのではないか」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、これらは適応障害の症状が行動面にもあらわれている状況です。個人の特性ではなく疾患によるものであると整理し、理解していくことも必要です。

適応障害が仕事に与える影響について体験談も交えながら詳しく紹介しています。
▼適応障害により仕事が長く続かないとお悩みの方へ

3.適応障害と付き合いながら仕事をするための2つのコツ

適応障害と付き合いながら仕事をし、ストレスを遠ざけたり避けたりするためには、以下の2つのコツが必要です。

  1. 自分でできる工夫を心がけること
  2. 必要に応じて職場や周囲のサポートを受けること

まずは、自分でできる対策や工夫を講じることで、ストレスの緩和を試みましょう。そして、自分だけでストレスを遠ざけることができないことに対しては、職場や周囲のサポートを受けながら改善することも必要です。

では、これらの2つのコツについて詳しく見ていきましょう。

適応障害と付き合いながら仕事をするためのコツ1:自分なりに工夫をする

自分に合ったストレス対処法を見つける

適応障害とうまく付き合いながら仕事をするためには、症状を悪化させずにできるだけ緩和させることが大切ですが、そのために一番必要なことは適応障害の原因となっているストレスを避けることです。

しかし、仕事や生活を続けていく限り、ストレスを完全に無くすことはできません。そのため、少しでもストレスを溜めないことを心がけましょう。

ストレスを溜めないためには、こまめに休憩をとったり気分転換をしたりすることが有効です。仕事中でもできる気分転換の方法をいくつか取り入れて、その都度ストレスをうまく発散していくと良いですね。

気分転換の方法は、ちょっとしたことで構いません。例えば、好きな飲み物やお菓子を買う、こまめに休憩を取る、疲労がたまった時にはオフィスの外に出て深呼吸をする、好きな香りを嗅ぐなど色々な方法があります。

もちろん、自宅や休日の気分転換も大切です。休みの日は仕事のことから離れて、自分の時間を楽しみましょう。
何もしないと仕事のことを考えてしまうという人は、趣味に打ち込むことや友人や家族と話をすることでリフレッシュするのも良いですね。

規則正しい生活で体調を整える

不規則な生活は、精神を安定させる働きをする「セロトニン」の分泌に支障をきたすこともあります。そのため、適応障害に関わらず、精神疾患を抱える方にとって生活リズムを整えることは気持ちを安定させるためにとても大切なことです。

当たり前のように思うかもしれませんが、早寝早起きを意識する、三食きちんと食事を摂るといった生活の基本を改めましょう。そして、残業などをなるべく減らし、日ごろから自分の時間にゆとりが持てると、生活のリズムを整えながら落ち着いて生活することができます。

どんなにこまめにリフレッシュし、ストレス発散に努めていても、基本的な生活リズムが乱れていては、体調を崩すきっかけになってしまいます。健康を管理し身体を整えておくことは、適応障害でも仕事を続けていくために欠かせないことです。

通院や服薬により症状をコントロールする

適応障害は様々な症状があらわれ、体調が日ごとに変化する方もいます。あらゆる症状に対応していくには、定期的な通院や服薬により、症状をコントロールしていくことが必要です。

診断を受け服薬治療に臨むことで、改めて適応障害としっかり向き合うことができますし、症状にあった薬が出されることで安心感を得たという意見もあります。

心の病気も身体の病気と同じく、適切な治療と服薬により症状を安定させることができます。安心して仕事を続けるためにも、症状をコントロールすることが大切です。

ADHDの方から寄せられた体験談とともに働きやすくするためのポイントを紹介しています。
▼適応障害の方が仕事を続けるために心がけたい8つの対策



適応障害と付き合いながら仕事をするためのコツ2:職場のサポートや配慮を得る

仕事内容に対する配慮

適応障害の一番の誘因となっているストレス因から遠ざかることが、症状の緩和への近道です。もし、そのストレス因が携わる業務内容そのものであれば、業務自体を見直す必要があるでしょう。

例えば、責任や裁量を任せられることにストレスを感じているのであれば、リーダー業務を外してもらうようにお願いすることや、周囲の視線が気になり仕事に集中できないことにストレスを感じているのであれば、一人で取り組める業務を担うことや在宅ワークを認めてもらうといった方法があります。

しかし、会社や業務の都合で、自分の要望を叶えることが難しい場合もあります。そのようなときには、次の方法も検討してみましょう。

業務量に対する配慮

会社の方針により、業務内容や配属先を変えることが難しい場合は、自分の業務量を見直してみましょう。

自分に合っている仕事内容であっても、業務量が膨大であれば疲労はつきものです。また、残業時間が多くなると生活リズムが乱れやすくなり、体調を崩すきっかけになってしまいます。自分のキャパシティを超えない業務量におさめれば、安定して働くことができます。

一方で、自分の業務量が減るということは、その分周囲の人の協力が必要になるということです。協力してくれる人に対しては感謝の気持ちを忘れずにいたいですね。

職場環境やシフトに対する配慮

職場のサポートには、職場環境の調整も含まれます。

例えば「特定の人との関係がストレス要因である場合は、離れた座席に配置を変えてもらうこと」「体調が悪くなったときにこまめな小休憩を取ることこと」「朝が苦手なので遅い時間のシフトに変更してくれること」なども、働きやすくするための配慮やサポートです。

職場や周囲の配慮やサポートと聞くと、携わる業務内容や勤務時間の調整に目が行きがちですが、働きやすいように職場の環境を整えてもらうことも、周囲の協力を必要とするサポートのひとつです。

もし、今の環境を変えることでストレスを減らすことができるのであれば、相談してみると良いですね。

必要な職場サポートと職場に必要なサポートを相談する方法について詳しく紹介していますので参考にしてください。
▼適応障害の方が仕事を両立するために職場にお願いしたい3つのサポート



4.まとめ

適応障害は、特定のストレスにより様々な症状に悩まされる疾患です。精神面や身体面にあらわれるそれらの症状は、仕事にも影響を与え働きにくさにつながることもあります。

そのため、適応障害と付き合いながら仕事を続けることに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

もちろん体が一番大切ですので、症状が辛い場合は適応障害の治療を行うことと、そのストレス要因から離れることを優先すべきです。もし仕事がストレスの原因となっているのであれば、仕事そのものからしばらく離れることも必要でしょう。

しかし、適応障害とうまく付き合いながら仕事を続けていきたいと望む方は、以下の3つのコツを意識してみましょう。

  • 自分のストレス要因と適応障害による困りごとを理解すること
  • 困りごとに対しては自分なりの対策と工夫を心がけること
  • 解決が難しい困りごとに対しては職場のサポートを受けること

まずは手軽にできる対策として、ストレス対処法を見つけてみてはいかがでしょうか?飲み物を飲む、好きな香りをかぐなど、仕事中でもできる気分転換の手段を取り入れてみましょう。また、通院と服薬により症状をコントロールすることも、安心感につながります。

一方で、自分でできる対策や工夫には限界があります。ストレス要因そのものから距離を置くためには、仕事内容そのものの見直しや業務量の調整が必要になることもあります。これらの自分の一存では決定できない調整は、職場のサポートを得ながら進めていきましょう。

仕事を続けるためのコツを意識しながら、ご自身のペースで働きやすい環境を作っていってください。適応障害とうまく付き合いながら、自分らしく働けることを応援しています。

【監修者:久木田みすづさんからのアドバイス】

適応障害はストレスがどの程度かかるかどうかで、症状の出方や回復のスピードが異なってきます。そのため、自分が許容できる範囲のストレスを良く見極めることが大切です。

ストレスというものは、生きている限り完全に消したり失くしたりということはできません。つまり、自分が耐えうるストレスを理解し、それらに上手く対処していく方法を学びましょう。
ただ、自分だけでは対処できない問題も出てくることかと思います。職場のサポートを受けられる場合は遠慮せずに甘えてくださいね。

しかし、職場によっては悪気がなくても適応障害への知識がないがゆえに、希望するサポートを受けられないこともあるかもしれません。その際には、障害者雇用を採用している企業への転職を考えたり、障害を持つ人が職業訓練を受けることができる就労移行支援のサービスを利用したりすることなども選択肢に入れておくと、安心ですよ。



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監修者

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。 その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。

保有資格

著者

精神保健福祉士社会福祉士の資格を取得。大学卒業後、精神科病院にてソーシャルワーカーとして勤務。入院患者やご家族への説明やカンファレンスへの参加など多くの業務に携わる。その後、精神科クリニックに勤務し、患者への就労プログラムや生活支援プログラムを提案する業務に従事。特に発達障害や精神障害のある方への就労支援、ストレス対処やコミュニケーションに関する講座を開くなど様々な実務経験を積んでいる。

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