ASDの特性を持っている人には、社会生活や対人関係の問題を招きがちな3つの特徴があります。コミュニケーションの問題、こだわりが強すぎること、感覚が過敏だったり鈍感だったりすることです。
それでは、ASDの人が仕事を続けるうえで、どんな点が悩みとなっているのか口コミから見ていきましょう。
困りごと1:コミュニケーションがうまくいかない
ASDの人は総じて人間関係を築くのが不得意です。人の気持ちを察することが苦手で、言われたことを文字通り受け取ってしまうことがあります。また、目を合わせたり、微笑んだり、豊かな表情を作ったりするのが苦手なため「何を考えているか分からない」とみられることがあります。
ASDならではのコミュニケーションの悩みをさらに詳しく見ていきます。
口頭での指示を理解できない
ASDの人は、上司から出される「指示」を聞きとることが困難です。そのため「話を聞いていない」と誤解されることがあります。
疲れやすい、集中力の維持が難しい、一度に多くの事を言われると混乱する。(女性)
辞める決意をする頃には、仕事(職場)に行っただけで居ても立っても居られないような状態で、何を言われても頭に入らないし、頭の中が痺れるような感覚になっていた。(男性)
口頭での長い説明が頭に入ってこなかったり、内容を勘違いしてしまったこと。(女性)
ASDが指示を聞きとれない理由の一つは、耳から入ってくる情報の処理が苦手だからです。そのため、口頭での指示や業務連絡、電話などが主業務である場合には大きなストレスを抱えることになります。
業務上のちょっとした口頭でのやりとりが負担でした。電話対応はもっとしんどかったです。(女性)
口頭での指示理解が飲み込みにくい。頭の中を整理するのに時間がかかる。(女性)
言われたことがうまく理解できないため、何度も聞かないといけない。(女性)
耳からの情報を頭の中で上手く整理出来ない。(男性)
耳で聞いたことをすぐに理解できない(そのため、音声のみのやりとりとなる電話応対や複数人での打ち合わせが苦手)。(男性)
耳で聞いた情報が記憶できないため、電話対応に苦労しています。(女性)
口頭での指示や業務連絡を理解できないと「指示を無視している」と見られることがあり、職場内での人間関係に支障をきたし、仕事が続かないでしょう。
曖昧なことが苦手
ASDの人は明確なマニュアルがあったり、ルーティーンに従ったりするのは得意ですが、曖昧な指示を出されると混乱してしまう傾向があります。
曖昧な指示が理解できない(特に、人によってやり方の違う作業や、そのときによって柔軟に対応しなければいけない作業)。(女性)
全体像や業務内容や指示されたことの定義がはっきりしていないと業務を遂行することが難しく、立ち止まってしまうときがあった。(女性)
「自分で考えて行動して」など抽象的な指示が多くて混乱してしまった。(その他)
指示が曖昧な言い方だとなかなか理解するのに苦しく、先輩などに質問も難しくて無駄な時間を過ごしてしまう。質問した方が良いのは分かっているがそれができないで困ってしまう。(男性)
特に、わからないことがあったときに周りに聞けない。また、聞くべきことなのか、自分で考えるべきなのか、明確でないあいまいなことが苦手である。(女性)
ASDの人にとって難しいのは、「もっと自分で考えてやってください」とか「雰囲気を察してください」という曖昧な指示です。言葉の背後にある気持ちを理解できずに、何をしてよいかわからなくなってしまうのです。
また、確認したり、分からない気持ちを表現したりすることができずに、職場の中で孤立してしまい仕事が続かない状況が繰り返されるのです。
困りごと2:こだわりが強い
ASDの人は、ひとつのことにのめり込むことがあり、決まった手順や方法にこだわります。この特性は、長所にもなりますが、協力しながら仕事をしている職場環境ではトラブルの原因になりがちです。
集中しすぎてしまう
ASDは得意なことや、好きなことには徹底的に集中します。この特性は周りが見えなくなる危険もあることを意味します。
業務の際中にどうしても過集中状態になってしまいがち。(男性)
ASDの特徴で、夢中になったり興奮すると、時間に気づかず進めてしまい、エネルギーが無くなってしまう。(男性)
自分の中でのこだわりポイントがあるところです。気をつけないと見直し作業に必要以上に時間がかかってしまいます。(女性)
自閉スペクトラム症障害。一般的なコミュニケーションや空気を読むことが苦手。自分の中でのルールなど、強いこだわりを持つことが多く、他人や集団に合わせて行動することが難しい。(女性)
発達障害により、仕事上の優先順位を付ける事が苦手であり、重要な案件を後回しにしてしまったり、今する必要の無い事をやり続けてしまう。また、自分のやり方にこだわってしまう為、職場内の連携を乱してしまうことが多く、人間関係の悪化を招いてしまう。(男性)
臨機応変な対応ができない
ASDは、自分だけのルールを作り、それが乱されるとパニックになったり、対応できなくなってしまったりすることがあります。そのため、臨機応変な対応が求められるような仕事では問題を抱えがちです。
予定外の事が起こると焦ってしまい余計に失敗ばかりしてしまう。(女性)
私は臨機応変な対応が苦手で一つのことを黙々と作業している時に急に違うことを頼まれると自分の中にあるスケジュールが狂ってしまい頭の中でパニック状態になります。何時頃にどの作業をしてその作業が終わったらこれ…。というように自分の中でルーティーンがあるのです。それを理解してもらうのにも大変でした。また、マルチタスクが苦手で一度に2つ以上のことをこなすことができません。スーパーにはレジがありますが、レジはレジ打ち、商品をカゴに移す、お客様対応など一度に複数のことをこなします。私には難しいことです。(女性)
自閉スペクトラム症の特徴として想像力が欠如しているため、想定外のことが起きるとパニックに陥りやすいというものがあります。お店では毎日のお客様や関連業者様、本部への対応は常に想定外の連続でした。・・・ひとつの作業中にほかのことを言われると優先順位がわからず固まってしまうことなどがありました。(女性)
業務上の急な予定変更があった場合に臨機応変な対応ができず、パニックになることもあります。(男性)
職人仕事のように、一人で技術を磨き上げていくような仕事であれば、ASDの特性が長所になりますが、チームプレイが求められる職場では浮いてしまうことが多いでしょう。
また、既存のルーティーンや職務の内容に変更が受け入れにくいのもASDの特性になります。例えば「来週から朝礼で一人一言今日の目標を言ってもらいます」とか、「明日から始業前に掃除をします」などといった提案など、周りの方は仕方が無いと言って受け入れるようなことも強い拒否を示し、時には退職のきっかけになることもあります。
急な変更を受け入れられないことが積み重なると、本人も周囲もストレスを感じるようになり、仕事が続かない状況になってしまうのです。
困りごと3:感覚過敏
ASDは聴覚や触覚などの感覚が過敏になって、普通の人が気づかないようなことも、大きなストレスになります。
聴覚過敏の為に騒がしい場所が苦手です。疲れてくると、音が大きく聞こえ過ぎ、更にストレスになって体調を崩します。(女性)
視覚と聴覚がとりわけ敏感で、見たもの聞いた言葉を全て拾ってしまい、頭の中がすぐにいっぱいになりパンク状態となります。厳しい言葉や大きな音も全て拾うので常に神経が高ぶっている状態で消耗が激しいです。(男性)
感覚過敏で音が非常に苦手。作業中、ガムテープを使う機会が多くそれを剥がす音を聞いていると体調を悪くしてしまう。他にも音の処理が苦手で、何をいっているのかよく分からないことがある。(女性)
感覚過敏によるストレスです。コールセンターという職場の性質上、至るところで電話のコール音が鳴り響き応対をするオペレーターの声があちらこちらから聞こえます。聴覚過敏の中でも人の話し声が苦手なタイプで、尚且つ色々な音の中から必要な音を聞き取る能力が低い私にとっては鬼門と言ってもいい環境でした。働き始めて二ヶ月目以降になると、そのストレスからフルタイムで働くことも難しい程体調を崩してしまいました。(女性)
感覚過敏を持つASDの人が合わない仕事や職場環境を選んでしまうと、その場にいること自体が大きなストレスになってしまいます。何の対策もしなければ、ASDの特性に向いていない仕事は続かないでしょう。
困りごと4:理解されない
ASDの特性は見た目では分かりづらいものです。ASDの人は、仕事を遂行する能力や学力は高いため、「怠けている」とか「非協力的だ」と見なされ、周囲からの理解を得るのが難しい場合があります。
見た目では分からない
最近ではテレビでも発達障害の事は取り上げられるようになったが、私が働き出した頃は自分でも障害の事をよく分かっていなかったくらいの認知のレベルで、目に見える障害ではないのでコミュニケーションの面ではかなり苦労した。(女性)
目に見えない病気であるため、理解されるということが難しく、円滑な人付き合いが困難になることもありました。(女性)
自分にとっては共通の話題が持てない人達がほとんどで、雑談についていけず、昼食の時間はいつも手の震えが止まりませんでした。(女性)
相手との信頼を築くためにも休憩時に話をするが、なかなか会話のキャッチボールが続かない。(女性)
ASDは特にコミュニケーションに障害を抱えることが多いため、同僚と親しくなることができず「変わり者」と見なされてしまうことがあります。
ここまで見てきた、ASDの特性は仕事を続けていくうえでの困りごとになります。しかし、ASDの特性は、同時に「強み」にもなります。
では、次に、ASDの長所を活かす方法を考えてみましょう。