まずは、自分のことを知るために、学習障害(LD)を持ちながら仕事をしている方がどのような悩みを持っているかを見ていきましょう。
困りごと1:指示を理解することが苦手
学習障害をお持ちの方は、上司や同僚からの指示を聞きとり、理解するのに困難を覚えることがあります。その理由のひとつには、耳から入ってくる情報の処理を苦手とする方が多く、指示や業務連絡を注意深く聞いているのに「理解できない」と感じているからです。
作業の説明が聞き取りにくい。(女性)
仕事内容について理解力が追いつかなく、他スタッフに迷惑をかけたこと。(男性)
指示を聞き間違えてそのまま処理してしまったりして、後でキツく怒られることがありました。(男性)
音の処理が苦手で、何をいっているのかよく分からないことがある。それから数字がうまく読めず、数を間違えてしまうことが多い。(女性)
聴覚の学習障害があり、音が聞こえていても何を言っているのか頭で変換することが苦手なので、いつもその場の状況などから判断して聞き取っています。そのため、急に話しかけられると、何を言われたのかわからないときがあります。(女性)
また、次の章で紹介するように「読むこと、書く事への障害」があるためマニュアルに目を通しても意味が分からなかったり、書くことに対する障害があるためメモを取ることができなかったりすることも理由のひとつです。
学習障害の症状を理解してもらえないと、上司や同僚から「不真面目だ」と見られたり、「指示に従わない人だ」と誤解されたりします。本人は頑張っているのに、障害ゆえの特性が理解されないと、大きなストレスを感じ心身ともに疲労してしまいます。
困りごと2:計算や数字が苦手
学習障害(LD)をお持ちの方は、簡単な計算や数字を扱う業務が含まれる仕事を苦手とします。
一桁の足し算引き算でもできないほど計算能力が乏しいので「誰でもわかるような暗算」ができません。(男性)
小学生高学年になっても簡単な足し算引き算ができなかった。(男性)
計算障害があるので、レジなどお金に関する業務が何一つこなせなかったです。(女性)
どの仕事にも金銭の計算が関係した業務があるため、数字を扱う苦手分野になると能率が著しく落ちてしまいます。
困りごと3:読むことが苦手
学習障害(LD)をお持ちの方の中には、読むことが苦手な「読字障害(ディスレクシア)」の方もいます。そして読字障害は、学習障害と診断された人の中で一番多く見られる症状とも言われています。
文字を読むことが苦手な理由は、文字がぼやける、黒いかたまりになっている、逆さまに見える、図形に見えるなど、文字が違って見えるという特徴により、認知の仕方が変わってくるからです。
また、話を理解するプロセスには、文字への置き換えが必要となりますが、ディクレシアのある方はそれも難しくなります。
例えば、「このしょるいをさんじまでにしあげてとりひきさきのかいしゃまでとどけてください」と言われたときに、「この書類をsanjimadeni仕上げtetorihikisakino会社made届けてkudasai」というように認識し、意味が理解できない音の羅列のように聞こえることがあるのです。
そして、読字障害は結果として文字を書くことにも困難を感じる場合が多くなります。
また、見た字を音にすることができないという方もいます。
仕事では、多くの場面で読むという行動が必要になってきますので、周囲と同じようにメールやマニュアルを渡されると、できないという悩みにぶつかってしまいます。
困りごと4:理解されない
ADHDやASDなどの発達障害と同じように、学習障害(LD)も見た目では障害が分からないため、周囲からの理解を得られないことが多いでしょう。
上層部の方に感覚過敏や、同時に作業を行うマルチタスク作業、学習障害による算数障害について、説明をしたが「障害を持っているようには見えない」、「特別扱いはできない」などと言われ、全く配慮をしてくれなかった。非常に働きづらさを感じた。(女性)
配置替えはして頂ける形になったのですが、やはり仕事ができないと言う形でレッテルを貼られる形になり、非常に辛い思いをする形になりました。(男性)
やはり障害等告白してはいけない雰囲気なので、グレーゾーンの状態で業務に従事しております。そのため、職場では仕事のできない人、天然な人と言うレッテルがはられておりますが、これで定年まで行けるならこれで行きたいと思っております。(男性)
普通の人の出来損ないとしてやっていくと、怒られてばっかりで辛いです。毎日怒られています。どの仕事でも良い歳して泣いていて情けないです。(女性)
見た目が普通なので障害をオープンにしているが、なかなか理解してもらえない。また同僚、上司からパワハラ、モラハラがあった。管理職も対応が正直難しいんだと思う。相談は一応しているが。(男性)
努力不足ではないのに、学習障害により苦手な分野があるため「仕事ができない人」とみなされたり、誤解されたりすることがあります。
また、学習障害という言葉は広まってきていますが、症状についての理解が進まないために、自分から言い出しづらいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
困りごと5:疲れやすい
学習障害(LD)を抱えつつ、普通の人と同じレベルで働こうと努力すると、疲れ切ってしまうでしょう。仕事の後には他のことができないほど、エネルギーを使い果たしてしまうことさえあります。
過剰適応して自分の能力以上の事を一生懸命続けていると疲れがたまってしまい、仕事が終わった後電車で帰ることもままならないほど精神的にダメージが強く出てしまうのです。(女性)
計算が出来ない。人前に出られない。ゴミの分別等も分からない。睡眠障害。常に疲労感あり。(男性)
学習障害であっても、問題なく働ける仕事はたくさんあります。しかし、一部の苦手分野が足を引っ張ってしまい、本人が自信を失ってしまうと、仕事を続けるのは難しくなります。