てんかんを持つ方が仕事を続けるためには、まず現状を知ることが大切です。どのような理由で、働きにくさを感じるのか、仕事上でどのようなことに悩んでいるのか、実際の経験者の声を交えて詳しく見ていきましょう。
働く上での悩み1:常に発作の心配がある
抗てんかん薬で治療し、てんかん発作が抑えられていたとしても、環境の変化やストレス、疲れなどによって発作が起きる場合があります。発作の起きるタイミングをつかむことは難しく、また、実際に発作が起きないと自分自身でもストレスなどに気付きにくいため、常にいつ発作が起きるかわからないという不安を抱えながら仕事をすることになります。
発作が起きるタイミングがわからない
いつ倒れて発作が起きるか自分でも分からないです。(男性)
偽発作と発作があり、これも見分けるのが難しいのですが、偽は数秒で終わります。(男性)
発作がいつ出るか分からない不安と常に戦ってはいた気がします。(女性)
てんかんはいつどこで発作が起きるかわからない。倒れることもあり、すぐに対応しなければ死に至ることもある。(女性)
季節の変わり目や頭を使う仕事等の場合、短い発作が起きたりするのでなかなか自分に合うお仕事を見つけることが難しくて大変だった。(女性)
てんかんはいつ発作が起きるかわからないので、対応の仕方も説明しにくく休みもとりづらかった。(女性)
毎日欠かさず抗てんかん薬を飲んでいても、発作が起きてしまうことはあります。その不安を抱えていること自体がストレスになることもあるでしょう。発作が起きるタイミングは誰にもわかりませんが、ストレスがかかることや、疲労が蓄積している時に起きやすいので、そのような状況を出来るだけ避けるように心がけてくださいね。
発作が起きた時の恐怖
大発作を起こし記憶を失い、曖昧な記憶しかもっていないです。(男性)
行き帰りの通勤電車がラッシュ時間と重なるので倒れないか等、凄く不安になり、毎日会社に無事にたどり着けるか心配しながら通勤していました。(女性)
てんかんは発作が起きると後々つらい。(男性)
てんかん発作は薬でコントロールできる人が多いものの、何かのきっかけで発症することも多く、発作があまり起きなかった人ほどタイミングを掴むことが難しくなります。
また、大きな発作を起こした経験が強く記憶に残り、同じような状況になることに不安と恐怖を感じ、いつ来るかわからない発作と闘っている人も多いようです。
働く上での悩み2:負荷がかかると症状が悪化する
てんかんは、ストレスや疲労の蓄積で体調が悪化し、薬を飲んでいても病状が安定しないことがあります。自分がどのような時に体調が悪くなるのかを把握しておけば、発作への備えや仕事への影響を最低限にすることができます。
過度なストレスで発作が起きる
仕事などで過度のストレスをかけると意識を失ってしまう。(男性)
寝不足になっている状態で仕事に行った場合で稀に気分が悪くなり、就業が上手くいかない時がある。(男性)
仕事の疲労で免疫力が低下したり、睡眠不足の場合に発作が起こることがある。(男性)
ストレスや疲労は、発作を誘発する原因となります。人間関係や仕事量など、何に対してストレスが大きくなるかは人それぞれです。どんな時に自分がストレスを感じるのか、疲れやすいのかを把握し、それを出来るだけ避けたり、減らしたりする工夫が必要です。
働く上での悩み3:てんかんを理解されにくい
てんかんは、見た目ではわかりづらい病気なので、周囲から気づかれないということもあります。また、てんかん自体の知識が無い人からは理解を多く得にくいことから、誤解を招き冷たい対応をとられたり、人間関係に悩んだりすることが大きな悩みになっています。
てんかんであることを言いづらい
てんかんと持病を話したら、大体の会社に断れられた。(女性)
「てんかんをもっている」というだけで多くの仕事に落ちた。前の職場では、てんかんを隠して働いていて、発作はなかったが最終的には上司に持病を知られることになり、てんかん持ちが原因で退職となった。(女性)
病気に関しては、隠して仕事をしていたので、配慮は受けなかった。(女性)
正社員採用なのに1年契約だった。有給休暇を届けても受け入れられなかった。(男性)
逆に公にするとやめさせられる。(男性)
てんかんがあるというだけで、採用を断られるケースもあり、そもそも就業するのが難しいという意見も多くあります。何社受けても採用されないという経験がストレスとなり、てんかんの病状にも影響を与えることもあります。
また、就業することができたとしても、てんかんを隠し通さなければ退職を余儀なくされるという不安から、配慮されないことを承知で仕事を続けなければならないという現状も伝わってきます。
働く上での悩み4:体調が優れず休みがちになる
てんかんは薬でコントロールできていても、ささいなことがきっかけで体調を崩すことがあり、仕事を休む頻度が高くなるという悩みもみられます。休みがちな働き方は、同僚や上司の目に留まりやすく、気を遣う場面も多くなるのではないでしょう。
常に体調が不安定
てんかんは朝起きれなくなり夜は寝れなくなるので、どうしても8時からの仕事が出来ない。(女性)
体調が悪い時は休憩や早退、休みにさせてくれたりしました。(女性)
発作後の翌日には倦怠感があらわれ仕事を休まなければならない。(男性)
抗てんかん薬や病気の影響で、昼夜のリズムがつきづらいのもてんかんの特徴です。また、発作が起きると回復するまでには時間がかかります。倦怠感は見た目にはわかりづらく、風邪などと誤解されることもあるでしょう。発作の辛さは本人でないとわからない部分であり、周囲の協力や理解を得なければ働くのは難しいのが現状です。
薬の副作用による仕事への影響
薬の副作用で眠くなる事があるのが辛い。(女性)
発作後はとても疲れてしまうため、就寝前に発作が起きると朝起きられないこともある。(女性)
抗てんかん薬の副作用に眠気があります。また、発作による体力の消耗などで健常者よりもより多くの睡眠や休息を必要とする場合が多いです。しかし、てんかんや副作用の影響であることを知らない人には、ただの睡眠不足とも捉えられかねないため、誤解されることもあります。
薬の影響に加え、病気の特性上、いつも同じサイクルで仕事ができるとは限りません。その日の体調によって左右される不安定な働き方から、周りの理解を得ることが難しくなり人間関係にも悩むといった悪循環を招くこともあります。
働く上での悩み5:できない業務や苦手なことがある
てんかんの症状は人それぞれであり、1日の中でも変化します。日常生活ではさほど影響がない症状も、仕事となると違ってきます。特に、てんかん発作を誘発する要因がわかっている場合は、できない仕事もあります。症状がコントロールできていても、どんな仕事でもできるわけではないことが、てんかんを持ちながら働く上で重要になってきます。
仕事内容に向き不向きがある
症状自体は安定しているが、視野が狭い点においては日常に困る場合がある。(男性)
意識障害はないが、めまい(物が小さく見える等)がひどいので立ち仕事や運転作業ができないので、仕事だけでなく生活にも不便だと思っている。(男性)
物忘れがあり、面倒かけている。(男性)
仕事ではやれる仕事がある程度のものが決められている。(男性)
私は癲癇が原因で幼い頃から気持ちが弱く暑さに弱かったので調理作業時、作業場がとても暑く(揚げ物やオーブンを使う料理が多かった為)、貧血や熱中症のような症状が出てこらえるのが大変だった。(女性)
光過敏症てんかんなのでテレビや太陽光を見ないようにしていた。(女性)
薬の副作用で、物が二重に見えるとパソコン作業が辛くなった。(女性)
てんかん発作が起きなくても、普段から避けたい仕事はあります。特にてんかんを誘発する要因がある仕事には就けません。しかし、すべての仕事はできないわけではなく、一部の仕事さえ免除できれば良いものの、できない仕事でもやらなければいけない状況により仕事が続けれられなくなってしまうケースもあります。
苦手なことがある
習ったことをノートに書いてそれでもわからなかったら図に書いて、覚えるまで何度も見返した。(女性)
仕分けは住所によって分けられるので、その住所を必ず口に出して言ってみること。(女性)
指定されたことが出来ないことがある。(女性)
急な行動不可能。初期は毎日通うだけから始めてくれたので長く続いた。(女性)
人との会話で決まったことは割とスムーズに出来るが、初めての行動の時は言葉が理解できなかったり、数字を間違えたりする。(女性)
頭部外傷や腫瘍など、後天的な理由でてんかんを発症した場合は、脳の損傷部位により記憶力や計算能力が低下していることもあり、てんかんの症状以外にも苦手な業務があることがあります。
苦手なことに対しては、自分なりに工夫をして仕事に取り組んでいる方もいます。しかし、周囲の理解を得なければ、常に間違ってはいけないという不安を常に抱えることにもなります。仕事を長く続けるためには、周囲の理解とサポートが必要なのではないでしょうか。
自分のできなさに苦しむ
申し訳ないという気持ちが毎日あり、このまま続けていいのか不安にもなる。(女性)
単純作業なのですが、仕分けでケアレスミスをしてしまうこと。(女性)
仕事の終盤でいきなり集中力が落ちます。(女性)
仕事に復帰した際に周りの方から気を遣って頂くことが申し訳なく思った。(男性)
てんかんがあっても、健常者と同じレベルでの成果を求められる場合があり、理想と現実のギャップに苦しむことが多いようです。仕事に関して配慮されるかどうかは、人員の問題や、周りのスタッフの性格などに左右されることもあり、自分ではコントロールしにくいところからストレスを感じやすくなっています。