アンブレに投稿された口コミから、知的障害者が働きやすい職場に関する事例を引用して整理しました。
4-1.関係者全員に障害について伝達してくれる職場
入社までに配属先に自分の特性を伝えていてくださって、スムーズに初日を迎えることができた。
男性、療育手帳・知的障害(B・中等度)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、掃除、下げ膳、洗い場、食品の計量等
前の職場では上の人は私が障害者だと言う事は把握されていたように思うが、一緒に働く人たちにまではあまり伝わっていなかったのかなと言うように感じた。今の職場はちゃんと伝わっているのか、私の様子を見て再度説明してくれたり、休憩していいよと声を掛けて下さったりと配慮を感じる。連休で忙しい時には体調を気遣って下さったりと、肉体面ではしんどい事も多いが精神面ではとても安定して過ごせている。
女性、療育手帳B2級、自閉症スペクトラム、旅館で清掃、簡単な調理
上記の口コミから、配属先の関係者に障害特性の伝達がなされていたためにスムーズに働けたエピソードを確認できました。また、障害について上層部は把握していたが、現場の同僚には伝達が不十分であったために転職を試み、情報伝達がしっかりしている転職先では働きやすくなったエピソードを確認できました。
これらのエピソードに共通している良いところは、当事者の障害特性について職場の関係者全員にしっかりと伝達していることです。
このように会社組織として関係者全員に障害について伝達してくれる職場は働きやすいと言えるでしょう。
これは3-1で記載した「職場の関係者全員に障害に対する理解がない」ことの裏返しでもあります。
障害に関する情報伝達は、知的障害を抱えながら安定した就職を継続していくには極めて重要な要因と言えるでしょう。
4-2.融通の利く社内制度が整っている職場
体調が悪いときは途中で帰らせてくれたり休ませてくれたりと体調面を気遣ってくれた。
男性、療育手帳B判定・発達障害、段ボールの仕切り作業や清掃
朝の満員電車が苦手な社員には通勤ラッシュの時間をずらした10時を始業開始にしてくださったり、毎日終礼を行うときに社員の最近なにか困っていることや体調等、かゆいところまで気にかけてくださるので障害のある方はもちろん、障害のない方にも働きややすい会社。
男性、知的障害者手帳B2、雑務、データ入力
「勤務時間も実習のペースでまず慣らしてから時間をのばしたいと伝えると、ほぼ同じ時間帯での勤務時間に調整してくれて、ペースを早くつかむことができた。
男性、療育手帳・知的障害(B・中等度)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、掃除、下げ膳、食品の計量等
週4日の勤務も了承してもらえたり、急な体調不良で欠勤したり、しんどくなって作業を中断しても皆さん理解してくれている。
女性、軽度な発達障害・脊髄小脳変性症の疑い・療育手帳B1、障がい者施設で入所者対応、介護の補助
上記の口コミから、体調が悪い時の早退、始業時間の調整、勤務時間の調整といった社内制度の融通により、就労が上手くいったエピソードを確認できました。
融通の利く社内制度が整っている職場は知的障害者にとって働きやすいと言えるでしょう。
知的障害の特性は多種多様であり、一定の社内制度ではカバーできない事例が発生している現場も多いのではないでしょうか。
就職・転職を検討する際には、皆さんの障害特性に応じて生じる不安な点について、社内制度の範囲内で対応が可能であるのか確認し、不明点は具体的に質問するように心がけましょう。
理解の不一致により、後々に問題が起きないようにするためにも必要なことです。
4-3.直属の上司が障害に理解がある職場
毎朝、出勤すると上司が必ず「夜はよく眠れたか」や「朝食は食べれたか?」「今の気分はどうか?」といったことを聞いてくれて「わたしのことを人間として見てくれているんだな…」ということを感じることができて、それと同時に「わたしは会社の中で必要とされているんだな」という印象を持った。
男性、知的障害者手帳B2、会社敷地内の雑草を採り、園芸業務等
いつも自身の体調や最近困っていることがないかということ等を朝会社に来たときに一番に気にかけてくださったり、良いところを上司が人事担当者や管理職のいる目の前でものすごく褒めてくださったため、仕事をする上でモチベーションが上がったと同時にとてもやりがいを感じた。
男性、知的障害者手帳B2、オフィス内の雑務
上記の口コミから、当事者と直属の上司がとても良い関係で仕事をできていることが推察できます。これは、直属の上司が障害に理解があることが前提となっているからでしょう。
職場いる時間は、睡眠やプライベートと同じくらい長い時間です。給与や福利厚生制度などの定められた条件が、就職・転職に大切であることは言うまでもありません。
しかし、そのような条件だけに固執せずに、同僚との相性も職場選びの視点として踏まえておくと良いでしょう。
とても長い時間を費やす職場で一緒に過ごす同僚、特に直属となる上司との相性は、働きやすい職場に重要な要因になります。
もちろん、障害に理解がある直属の上司が異動になることもあります。これは前述した問題点です。
従って、直属の上司が障害に対して理解があることは、職場選びの最重要条件とは言えません。
しかし、良い上司に恵まれることで就労に対して前向きに取り組むことができ、楽しく社会経験を重ねることができます。そのような社会経験の中で、自分自身が気づかないうちに自信を持てるようになることや、スキルアップしていることも期待できます。
私も初めて就職した会社の上司がとても良い方であったので、激務でも頑張り抜くことができ、とても成長することができました。その機会によって得られた自信とスキルは現在の仕事に役に立っています。
就職・転職をする際には給与や福利厚生制度等の条件ばかりに注目しすぎず、直属になる上司との相性に注目してみることも良い職場選びに必要かもしれません。
4-4.障害に理解がある社風の職場
入社式のときに「どんなに小さな困りごとでも相談してください、店舗に相談しづらいようであれば本社に伝えてくれてもいいよ。」と。開かれた会社だなと思った。
男性、療育手帳・知的障害(B・中等度)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、掃除、下げ膳、食品の計量等
合わない部署に配属されたときは、精神的に苦痛で耐えられなかったのもあり、上司の方に部署を異動してもらうよう頼んだりすると応じてくれたことが助かった。突然、仕事が減ったり増えたりして、その日によって何をするかが変わってくるので不安な気持ちもあったが、周りの方にも色々と相談し、仕事の作業量等を調整してくれたり、大変ありがたいなと思っていた。
女性、知的障害2級。寡黙症、書類のファイリング、PC打ち込み等
上記の口コミから、障害に理解がある社風が読み取れます。
仮に、障害者雇用に関する社内制度が細かく定められ、かつ社員全員が遵守しているとしても、単なるルールとして運用されているだけでは障害者が働きやすい社風にはならないでしょう。
逆に、社内制度が全くない会社でもあっても、現場関係者が障害に寛容である職場もあるでしょう。
社風は一時的なものではなく、その会社の伝統の一部とも言えます。
障害者雇用に関する社内制度の有無や内容だけにとらわれ過ぎず、障害に対して理解がある社風かどうか注目することも大切です。
就職・転職を検討する際には、職場見学を通じて働いている人たちの雰囲気から社風を感じ取っておくと良いでしょう。
また、見学した会社に障害者雇用で働いている先輩社員がいれば、社風について質問することをお勧めします。見学だけではわからなかった側面を知ることができるかもしれません。