強迫性障害を抱える人が仕事を続けるためには、まず自分の症状を知り、どのような時に症状が出るのか特徴を掴むことが大事です。強迫性障害を抱えながら働く人の声を集めたので、どのような時に働きにくさを感じるのか、仕事上でどのようなことに悩んでいるのか、詳しくみていきましょう。
働く上での悩み1:同じ行動を繰り返す
強迫性障害の症状のひとつである「強迫行為」は、強迫観念から生まれた不安により行動を起こします。決まった手順でないと気が済まない、何度も同じことを繰り返してしまうなどといった行動は、仕事という責任を感じる場面でも起こりやすく、悩みは多岐に渡ります。
特に、強迫行為が出やすい場面を見ていきましょう。
確認行動を繰り返す
電話が終わっても。チェック項目であれ聞いたっけ?これ聞いたっけ?などの事柄が気がかりで自宅に帰っても気になることがありました。男性
強迫性障害がひどく、確認行動がハンパない。特に出がけの戸締りの時は、不安で不安でしかたなく、何回も何回も確認してしまい、結果約束の時間に間に合わずいつも遅刻してしまう。女性
強迫性障害により、運んだ搬入物の数を何度も数える日々があった。男性
実際は戸締りがしっかりと行われていたり、仕事上においてもミス無く熟す事が出来たりしていても「大丈夫かな」という不安感に駆られてしまい、何度も確認を行い、確認作業だけで1時間も掛かる事も多々ありました。男性
仕事では書類や資料に間違いがないか何度も確認するので時間がかかり困っている。女性
安全確認をするのにいつもの癖で何回も確認してとても時間がかかってしまい、迷惑をかけてしまいました。女性
汚染不安
自分が汚いと思ってしまったら最後です。手を洗わないと気が済みません。床に落ちた物は消毒しないと触れません。他の人が床に落ちた物を棚に乗せると、その棚は私にとって汚い物になってしまいます。そういうことが続くと行動できる範囲が狭くなり、仕事の作業をするのにも気にしてしまって困りました。女性
強迫性障害の不潔恐怖症という病気なので、手洗いの回数が多いのと洗っている時間が長いので、忙しい時は仕事が溜まったり同僚に迷惑をかけたりしていました。女性
ふと家に帰ってお茶でも飲もうかというときに、突然茶碗を取る瞬間などにこの病気が発生してしまうことがあります。この茶碗はよく見ると汚れているんじゃないかと考えるようになり、茶碗を突然洗い出したりなどし出します。男性
手が汚れている気がして大変でした。歯科助手だったのですが麻酔針や注射器などをみると怖くて、患者さんが病気だったら病気がうつったらどうしようなどと不安になってしまい怖くて大変でした。女性
強迫性障害の症状の一つである「強迫行動」による度を越えた確認行動は、作業が遅れて周りの人に迷惑をかけるという悩みや、通勤時に鍵の閉め忘れが気になり遅刻するなどの悩みにつながっています。
また、仕事や日常的に使用するものが汚染されているという不安から「洗浄行為」を繰り返し、仕事に支障が出るという悩みもありました。
このような自分ではコントロールできない行為により、仕事に費やすべき時間が減ったり、集中力を欠いたりしてしまい、結果として周囲の人にも迷惑をかけていることに罪悪感を抱いている様子がわかります。このような気持ちのままでは、働き続けることは難しいでしょう。
働く上での悩み2:薬の影響で集中力が下がる
強迫性障害で使われる薬には、睡眠作用のあるものも多く、服薬によって仕事に影響が出ることがあります。強迫性障害に対処するために服用した薬であるにも関わらず、眠気や集中力の低下を招き、強迫性障害の症状とは違った仕事の悩みが生じてしまうのです。
薬を大量に飲むので1日中ボーとしている。集中出来ない。女性
バス運転士という職業柄、服薬しながらの乗務は懸念されると思ったので、自分に合う薬を見つけるのが大変でした。男性
薬の副作用で注意力 集中力が落ちたりするので、状況を判断しててきぱきと動かなくてはならない調理の仕事は大変だった。女性
薬の種類にもよりますが、治療薬のひとつである抗うつ薬の副作用には眠気があり、内服すると眠気が抑えられず、集中力が低下してしまうという人もいます。仕事への影響を考慮した上で、薬の種類や量、内服の選択を医師と相談すると良いでしょう。
働く上での悩み3:病気を理解されづらい
強迫性障害は、見た目では分かりづらいものです。そのため、こちらから言わなければ、周囲から気づかれにくいという特徴があります。また、強迫性障害のことを知らない人からは、こころの病気というだけで偏見を持たれたり誤解されたりすることもあります。
明らかに変な人扱いされる。職場に理解がないと、明確に差別されやすい。特に女性から嫌われ、病気へのからかいがある。男性
日常生活に支障が無くても病名があるだけで不審がられ、配慮の無い人からは「何の薬?」と聞かれました。健康診断の時が一番苦痛です。女性
一番辛かったのは、病気を理解してもらえずなまけている・変わっていると思われていたことです。女性
同僚や上司にも自分の症状がどこまで理解してもらえるか心配だったので、自分の病気を打ち明けることなく勤務を続けましたが、上司との打ち合わせ中に症状が出てしまい、やむなく自分の病気を説明するという事がありました。女性
障害者として探しても仕事は少なく、相談窓口の方の対応も酷かった。「頭おかしい人への働き口はない」とまで言われたので。女性
強迫性障害は適切に治療をすれば症状の緩和が望め、うまく付き合いながら働くこともできます。しかし、このような正しい知識が無い人からは、薬や病名だけでその人の人格まで判断され、誤解されるケースもあります。
また、誤解されることを恐れ、採用面接や今の職場の上司や仲間に強迫性障害であることを伝えずに就労している人もいます。
理解されづらい病気であるからこそ、正しく伝えることが難しく、正しく理解されないから伝えられずに辛い症状を我慢しながら働くという悪循環を招いているのではないでしょうか。
働く上での悩み4:症状のコントロールが難しい
強迫性障害は、治療の成果が出るまでに時間のかかる病気です。そのため、根気よく治療を続けることが必要ですが、治療効果が表れるまでの症状のコントロールが難しい期間は、治療と仕事の両立による新たな不安やストレスを感じることもあり、疲れや体調不良に悩むことも多くなります。
作業量の割に時間がすごくかかったり、逆にそのプレッシャーで症状が悪化してしまったりなど、精神的にすごく疲れました。女性
体調によって変わるので、仕事に手をつけられない事などがあり、周りに迷惑かけてしまう。男性
先行きが見通せないと不安になったり、気温の変化に弱くて体調を崩しやすい。男性
ストレスが溜まってくると、体調を崩しがちになり、決まった時間に起きたり支度できずに遅刻や欠勤をしてしまう。女性
有給などを使い仕事の調節をしますが、休みがちの時は会社の人に良く思われないこともあり障害理解を求めることも出来ずに少し悩むことがありました。女性
強迫性障害が発覚するまではもちろん、発覚してもすぐに症状が治まるわけではありません。また、内服治療の開始に伴い、薬の副作用で集中力の低下を伴ったり、日中の眠気で生活リズムが乱れたりして、仕事に影響が出ることがあります。