強迫性障害で仕事が続かない理由と働き続けるためのコツとは?

強迫性障害で仕事が続かない理由と働き続けるためのコツとは?

強迫性障害とは、ある考えが頭を離れなかったり、それによって必要のない行動をしてしまったりするこころの病気です。

例えば、「ドアの鍵を閉め忘れたかも」と浮かんだ考えが頭から離れず、何も手につかなくなってしまったり、「手が汚い」といった強い不安や恐怖に襲われ、ずっと手を洗い続けてしまったりするなど、様々な症状が現れます。

また、仕事にも影響を与えます。具体的には、何度も確認しないと気が済まなかったり、自分でやったことに対する不安に押しつぶされそうになったりすることで、なかなか仕事が進まないという悩みや周囲の人に迷惑をかけているのではないかという心配を抱えている人もいるでしょう。

このように、強迫性障害による不安やこだわりにより、思うように働けない、仕事が続かないと悩んでいる人は、まず自分の行動を振り返り、どんな時に症状が出るのかを考えてみましょう。 自分の症状の特徴を知ることは、仕事が続かないという悩みを解決するための糸口になります。

今回は、あなたと同じように強迫性障害を抱えながら働いている人の悩みと解決策をまとめ、強迫性障害を持ちながら働くための工夫について解説します。

症状は人それぞれですが、共通点をてがかりに仕事を続けるための工夫を探してみてください。

*この記事は久木田みすづさんに監修していただきました
久木田みすづ

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。




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目次

1.強迫性障害とは

2.強迫性障害で仕事が続かない理由とは?

3.強迫性障害の方が働き続けるコツとは?

4.まとめ

1.強迫性障害とは

強迫性障害とは

強迫性障害とは、自分でも意味のないことだと頭ではわかっていても、一度浮かんだ考えが頭から離れず、繰り返し同じ確認をするという行動を起こすこころの病気です。明らかに大袈裟な強い不安や恐怖を感じたり、こだわりすぎたりすることによって、日常生活に支障が出ます。

頭の中に浮かび続けて離れない考えを「強迫観念」、ある一定の行動を我慢できずに繰り返してしまうことを「強迫行為」と言います。

一見、ただの癖のようなものに見えることもあるので、こころの病気であることに気づかず、苦しんでいる人も多いのですが、強迫性障害は、治療によって改善が見込めると言われています。



強迫性障害の症状

「強迫観念」と「強迫行為」の2つの症状があります。

代表的な症状には、汚染されたと思い込み洗い続けることやドアノブなど共有のものを触れないという「不潔恐怖と洗浄」、自分の決めた手順で行わないと恐ろしいことが起きるという不安から、手順に対し以上な執着を持つ「儀式行為」、不吉や幸運と数字を結びつけ縁起を担ぐことにレベルを超えてこだわる「数字へのこだわり」などがあります。

他にも、物の配置や対称性にこだわることや、何度も確認しないと気が済まない「確認行為」など症状はさまざまですが、共通するのは、そのコントロールできない考えや行為によって「日常生活に支障をきたす」ことと「周囲の人を困らせる」ことです。

参考:みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)

2.強迫性障害で仕事が続かない理由とは?

強迫性障害を抱える人が仕事を続けるためには、まず自分の症状を知り、どのような時に症状が出るのか特徴を掴むことが大事です。強迫性障害を抱えながら働く人の声を集めたので、どのような時に働きにくさを感じるのか、仕事上でどのようなことに悩んでいるのか、詳しくみていきましょう。


働く上での悩み1:同じ行動を繰り返す

強迫性障害の症状のひとつである「強迫行為」は、強迫観念から生まれた不安により行動を起こします。決まった手順でないと気が済まない、何度も同じことを繰り返してしまうなどといった行動は、仕事という責任を感じる場面でも起こりやすく、悩みは多岐に渡ります。 特に、強迫行為が出やすい場面を見ていきましょう。

確認行動を繰り返す

電話が終わっても。チェック項目であれ聞いたっけ?これ聞いたっけ?などの事柄が気がかりで自宅に帰っても気になることがありました。男性
強迫性障害がひどく、確認行動がハンパない。特に出がけの戸締りの時は、不安で不安でしかたなく、何回も何回も確認してしまい、結果約束の時間に間に合わずいつも遅刻してしまう。女性
強迫性障害により、運んだ搬入物の数を何度も数える日々があった。男性
実際は戸締りがしっかりと行われていたり、仕事上においてもミス無く熟す事が出来たりしていても「大丈夫かな」という不安感に駆られてしまい、何度も確認を行い、確認作業だけで1時間も掛かる事も多々ありました。男性
仕事では書類や資料に間違いがないか何度も確認するので時間がかかり困っている。女性
安全確認をするのにいつもの癖で何回も確認してとても時間がかかってしまい、迷惑をかけてしまいました。女性

汚染不安

自分が汚いと思ってしまったら最後です。手を洗わないと気が済みません。床に落ちた物は消毒しないと触れません。他の人が床に落ちた物を棚に乗せると、その棚は私にとって汚い物になってしまいます。そういうことが続くと行動できる範囲が狭くなり、仕事の作業をするのにも気にしてしまって困りました。女性
強迫性障害の不潔恐怖症という病気なので、手洗いの回数が多いのと洗っている時間が長いので、忙しい時は仕事が溜まったり同僚に迷惑をかけたりしていました。女性

ふと家に帰ってお茶でも飲もうかというときに、突然茶碗を取る瞬間などにこの病気が発生してしまうことがあります。この茶碗はよく見ると汚れているんじゃないかと考えるようになり、茶碗を突然洗い出したりなどし出します。男性
手が汚れている気がして大変でした。歯科助手だったのですが麻酔針や注射器などをみると怖くて、患者さんが病気だったら病気がうつったらどうしようなどと不安になってしまい怖くて大変でした。女性

強迫性障害の症状の一つである「強迫行動」による度を越えた確認行動は、作業が遅れて周りの人に迷惑をかけるという悩みや、通勤時に鍵の閉め忘れが気になり遅刻するなどの悩みにつながっています。

また、仕事や日常的に使用するものが汚染されているという不安から「洗浄行為」を繰り返し、仕事に支障が出るという悩みもありました。

このような自分ではコントロールできない行為により、仕事に費やすべき時間が減ったり、集中力を欠いたりしてしまい、結果として周囲の人にも迷惑をかけていることに罪悪感を抱いている様子がわかります。このような気持ちのままでは、働き続けることは難しいでしょう。



働く上での悩み2:薬の影響で集中力が下がる

強迫性障害で使われる薬には、睡眠作用のあるものも多く、服薬によって仕事に影響が出ることがあります。強迫性障害に対処するために服用した薬であるにも関わらず、眠気や集中力の低下を招き、強迫性障害の症状とは違った仕事の悩みが生じてしまうのです。

薬を大量に飲むので1日中ボーとしている。集中出来ない。女性
バス運転士という職業柄、服薬しながらの乗務は懸念されると思ったので、自分に合う薬を見つけるのが大変でした。男性
薬の副作用で注意力 集中力が落ちたりするので、状況を判断しててきぱきと動かなくてはならない調理の仕事は大変だった。女性

薬の種類にもよりますが、治療薬のひとつである抗うつ薬の副作用には眠気があり、内服すると眠気が抑えられず、集中力が低下してしまうという人もいます。仕事への影響を考慮した上で、薬の種類や量、内服の選択を医師と相談すると良いでしょう。



働く上での悩み3:病気を理解されづらい

強迫性障害は、見た目では分かりづらいものです。そのため、こちらから言わなければ、周囲から気づかれにくいという特徴があります。また、強迫性障害のことを知らない人からは、こころの病気というだけで偏見を持たれたり誤解されたりすることもあります。

明らかに変な人扱いされる。職場に理解がないと、明確に差別されやすい。特に女性から嫌われ、病気へのからかいがある。男性
日常生活に支障が無くても病名があるだけで不審がられ、配慮の無い人からは「何の薬?」と聞かれました。健康診断の時が一番苦痛です。女性
一番辛かったのは、病気を理解してもらえずなまけている・変わっていると思われていたことです。女性
同僚や上司にも自分の症状がどこまで理解してもらえるか心配だったので、自分の病気を打ち明けることなく勤務を続けましたが、上司との打ち合わせ中に症状が出てしまい、やむなく自分の病気を説明するという事がありました。女性
障害者として探しても仕事は少なく、相談窓口の方の対応も酷かった。「頭おかしい人への働き口はない」とまで言われたので。女性

強迫性障害は適切に治療をすれば症状の緩和が望め、うまく付き合いながら働くこともできます。しかし、このような正しい知識が無い人からは、薬や病名だけでその人の人格まで判断され、誤解されるケースもあります。

また、誤解されることを恐れ、採用面接や今の職場の上司や仲間に強迫性障害であることを伝えずに就労している人もいます。

理解されづらい病気であるからこそ、正しく伝えることが難しく、正しく理解されないから伝えられずに辛い症状を我慢しながら働くという悪循環を招いているのではないでしょうか。



働く上での悩み4:症状のコントロールが難しい

強迫性障害は、治療の成果が出るまでに時間のかかる病気です。そのため、根気よく治療を続けることが必要ですが、治療効果が表れるまでの症状のコントロールが難しい期間は、治療と仕事の両立による新たな不安やストレスを感じることもあり、疲れや体調不良に悩むことも多くなります。

作業量の割に時間がすごくかかったり、逆にそのプレッシャーで症状が悪化してしまったりなど、精神的にすごく疲れました。女性
体調によって変わるので、仕事に手をつけられない事などがあり、周りに迷惑かけてしまう。男性
先行きが見通せないと不安になったり、気温の変化に弱くて体調を崩しやすい。男性
ストレスが溜まってくると、体調を崩しがちになり、決まった時間に起きたり支度できずに遅刻や欠勤をしてしまう。女性
有給などを使い仕事の調節をしますが、休みがちの時は会社の人に良く思われないこともあり障害理解を求めることも出来ずに少し悩むことがありました。女性

強迫性障害が発覚するまではもちろん、発覚してもすぐに症状が治まるわけではありません。また、内服治療の開始に伴い、薬の副作用で集中力の低下を伴ったり、日中の眠気で生活リズムが乱れたりして、仕事に影響が出ることがあります。

3.強迫性障害の方が働き続けるコツとは?

ここまでは、強迫性障害を持つ人の悩みを見てきました。強迫性障害という病気はこころの病気であることから、強迫性障害の症状だけでなく、周囲の人との関係性や視線に関しても悩んでいる人が多いようです。

しかし、強迫性障害を抱えながらも、周囲の理解を得ながら働いている人もいます。
その人たちのアドバイスをもとにまとめた「働き続けるための工夫」は下記の3つです。

  1. しっかりと治療する
  2. 病気について理解する
  3. 周囲の理解を得る

具体的に見ていきましょう。


①しっかりと治療する

強迫性障害は、自分の体質や症状に合わせた治療を行えば、症状をコントロールすることが可能です。

ただ、治療に使われる抗うつ薬は、眠気や吐き気などの副作用を引き起こすものがあり、自分に合った薬や量に出会えるまで時間がかかる場合があります。副作用がつらく、内服をやめてしまうということがないように、医師と相談しながら調整していくことが大切です。

服薬によって症状がコントロールできるようになれば、仕事中の強迫観念や強迫行為が徐々に抑えられ、作業時間の短縮や集中力UPにつながり、働きやすくなります。働きやすくなれば治療経過や自分に自信が持てるようになるので、治療や仕事にも前向きになれます。


②病気について理解する

強迫性障害は、治療経過も長く、症状がコントロールできるようになるまでに時間がかかりますが、その間も強迫観念や強迫行為はあらわれます。治療や症状とうまく付き合いながら働くことが求められますので、医師と相談した上で、自分なりに工夫したりルールを設けたりしながら仕事を無理なく続けることも必要です。


また、自分が病気をコントロールするための工夫を知っていれば、周囲の人にも伝えて、協力を得ることができるので、より働きやすい環境を作ることにつながります。


③周囲の理解を得る

強迫性障害を持つ人が仕事をする上で、周囲の協力は必要不可欠です。

強迫観念や強迫行為による辛さは本人しかわからないですが、理解しようとしてくれる同僚がいるだけで、気持ちが穏やかになるのではないでしょうか。

周囲の人の中には、強迫性障害のことをよく知らず、どのように接していいのかわからないという不安やとまどいのある人もいます。

そのためにも、自分から病気のことを伝えてみましょう。一度はじまった強迫観念や強迫行為は、なかなか自分では抑えられないこと、普段の接し方や症状が出たときの対応方法など、注意点や配慮してほしい点を伝えていくことで、徐々に理解を得られるようになるでしょう。

症状や配慮してほしい点を伝える際は、「〇〇を繰り返し行ってしまう」「〇〇をしてほしい」などと、具体的に表現すると分かりやすいです。
できること、できないことを共有することで、仕事の割り振りを調整してもらえれば、あなたの負担を軽減することにもつながります。

また、強迫観念や強迫行為の症状がある人は、時間の管理などで同僚や上司の理解を得ないと仕事が成り立たない場合も多いです。なるべく入社の時点で伝えられると、働きやすい環境により早く近づきます。 こころの病気は、なかなか理解してもらえないこともあります。しかし、最近ではニュースなどで取り上げられることも増えており、こころの病気に関する理解は少しずつ進んでいます。

なかなか理解されないのはつらい部分もありますが、全ての人に理解してもらおうとせず、まずは身近な人に理解してもらおうという気持ちで、自分のことを素直に話せる人を一人でも作れると楽になるかもしれません。

4.まとめ

強迫性障害によって仕事が続かないという人に必要なこととは?

まず、強迫性障害による自分の症状や行動を理解し、自分にあった治療を進めていきましょう。そして、自分でできる仕事の工夫を取り入れながら。周囲の人からの理解を得ることができれば、ストレスや悩みを減らすことにもつながり、働きやすい環境になっていくことでしょう。

症状に対する仕事での工夫や対策がわからないという場合は、強迫性障害を持つ人の体験談を参考に、自分の状況と似ている点を探してみるのもおすすめです。医師に相談してみるのも良いですね。

強迫性障害を知らない人は、強迫性障害に対してどのように対応して良いのかわからないこともありますし、誤解している人もいるでしょう。

誤解を恐れ、強迫性障害であることを話すと良くない反応をされるのでは?仕事を続けられなくなるのでは?と考える人もいると思います。しかし、一人でも理解してくれる人がいれば、あなたの症状や精神的負担を和らげることにつながるはずです。

強迫性障害はうまく付き合いながら働き続けることができます。だからこそ、その時々に必要なサポートを得て、その時にできることを一生懸命取り組みましょう。そのためには、まずは自分の症状を具体的に把握し、どんな工夫ができるかを考えることから始めてみてくださいね。

【監修者:久木田みすづさんからのアドバイス】

強迫性障害は外から見ただけでは分かりにくい疾患なので、他人へ理解を求めることはもちろん、自分自身でも「いつ強迫行為が出てしまうのか」という恐れや、強迫観念がなかなか頭から離れないことへの悩みで、日々不安を抱えながらの生活を送っている方も多いかと思います。

仕事を続けるうえで支障が出やすい疾患でもあり、特に治療を始めた頃は症状がひどい場合も少なくありません。しかし、治療が進んでいくと、症状が落ち着いて行くとともに、自分でも症状が出やすい場面やタイミングを把握できるようになることもあるので、ある程度の時間をかけて強迫性障害と向き合っていこうという気持ちが大切になります。

また、症状が著しくひどい時期に無理をして仕事をすると、焦りやストレスから余計に悪化してしまう可能性があります。そのため、そういう時には思い切って休職をしたり、入院治療をしたりなど、自分自身のケアに集中した方が良いケースもあることを覚えておきましょう。



強迫性障害のある方が働いている企業が一覧で確認できます。参考になさってください。
▼強迫性障害(強迫症)のある方がお仕事、雇用をされている企業一覧


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監修者

大学で社会福祉学と心理学を専攻。精神保健福祉士・社会福祉士、認定心理士の資格を取得し、カウンセリングセンターにおいて、メンタルヘルス講座の講師や心理カウンセラーとして活躍する。 その後、いくつかの精神科病院にて、うつ病などの患者さんや、その家族に対するカウンセリング・相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルス系の記事を執筆するライターとして活動中。

保有資格

著者

看護師、保健師資格を保有。大学卒業後、大学病院にて救急・集中治療に従事しました。その経験を活かせる場所として、地域密着型総合病院の集中治療室に転職。地域の方一人ひとりに向き合い、帰宅後の生活を見据えた看護をしてきました。現在は、SNSで情報発信を行い、一人ひとりが「自分らしい働き方」を選ぶためのサポート活動をしています。

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