まずは、ご自身のことを考えるためにも、統合失調症を抱えながら働いている方がどのような症状で悩んでいるのか把握することが大事です。今回は統合失調症の経過に沿って、症状と症状にともなう仕事での悩みをまとめました。
前兆期に起こりやすい不眠・不安感・神経過敏による悩み
前兆期では、不眠や過度な不安感、神経過敏などの症状を感じる方も多いのではないでしょうか。これらの症状は、日々の生活に影響を与えるだけでなく、仕事にも大きな影響を及ぼします。
不眠
睡眠障害もあったので、寝ないで仕事に行ったこともありました。そうすると、モロに動作が鈍くなって、周りに迷惑をかけてしまいました。男性
不眠。規則正しい生活が出来ず、中々生活リズムが調わない。男性
夜眠れないときは仕事のときにしんどくなりました。頭痛が起きてどうしても動けないときは、仕事を休む事もありました。女性
統合失調症の初期症状には、不安感や神経過敏によって、不眠の状態になりやすいと言われています。睡眠不足の状態で働くのは、誰でも辛くやる気が起きません。また、睡眠不足により生活リズムが乱れると、症状の悪化を招くおそれもあります。
不安
人と関わることが苦手でストレスに弱く、そのため疲れやすいです。女性
お客様の急な問いかけに対して「何を言われるのだろう」とドキドキしました。男性
人間関係のことや普通の仕事レベルで働くことができるかの不安。女性
接客業なので、人との接触に毎回緊張や恐怖心がありました。常に緊張状態が続きましたし、ボーっとしたり、物忘れもあったりしたので、同僚に迷惑をかけて大変でした。男性
オペレーションを間違えてしまうのが怖かったので、受注後の後処理に時間がすごくかかった事です。女性
仕事は責任感や緊張感を伴うものですから、統合失調症の初期にみられる強い不安感を、より感じやすくなるのではないでしょうか。緊張や不安は必要以上に疲れやストレスを招くので、統合失調症の症状を改善するところか、悪循環に陥る心配もあります。疲れやストレスを緩和する方法を身に付ける必要がありそうですね。
神経過敏
小中学生の多い環境なので大きい声などが負担になる。女性
気温や室温の影響で暑かったり寒かったりするので、体調が崩れてしまいます。男性
音が気になる、敏感になる、疲れやすい。女性
人の話し声など細かなことが気になってしまい、圧迫感でミスをしやすい。女性
他の方が気にならない周囲の雑音も、統合失調症のある方には気になって仕方がなく、仕事に集中できないだけでなく、疲れやストレスとなっています。雑音や話し声などから遠ざかった場所で働ける環境であれば、そのストレスも緩和できるでしょう。
しかし、席や作業場所の移動などの職場環境は、自分の意志だけでは変えられないことが多く、周囲の方の理解や協力を得ることが必要ですね。
急性期に起こりやすい幻覚や妄想などの陽性症状による悩み
急性期では、幻覚や妄想などの陽性症状に悩む方も多いのではないでしょうか。幻覚や妄想は、統合失調症の代表的な症状として知られていますが、その辛さは実際に経験しないとわからないものです。
幻覚や幻聴
主な症状としては幻聴が聞こえることです。ひどいときは仕事中にも聞こえ、集中できないこともありました。女性
勤務中、移動中などに声が聞こえて集中できず、気分が落ち込む。男性
幻聴か実際に言われているのか区別がつかないことがある。女性
幻聴が聞こえる。幻聴が自分を攻撃してくる。 眠れない。男性
仕事中に幻覚や妄想があらわれると仕事どころではありません。また、いつ症状があわれるかわからない症状に不安を抱えることにもなります。仕事に集中したくてもできない状況に多くの方が悩んでいます。
妄想
統合失調症で「被害妄想」がひどいです。周りの声で私は自分の冷静さを取り戻すことができません。男性
周りの人たちが異星人に思えて恐ろしかった。男性
集中力が減る、被視妄想、被害妄想。同僚に見張られてる気がする。男性
噂されていると思う、被害妄想がすごい、疲れやすい、幻聴が聞こえる。女性
時々知らない他人から殴られるという被害的な妄想が出てきます。男性
仕事中の被害妄想は、周囲の方の印象を変えることもあり、人間不信になることで人間関係にも影響してしまうのかもしれません。また、監視や暴力などの恐怖を抱える毎日は、周囲の方には想像できないほど辛いものです。
休息期に起こりやすい抑うつや無気力などの陰性症状による悩み
休息期では、抑うつや無気力などの陰性症状でつらい思いをする方が多いのではないでしょうか。その症状は、前兆期や休息期とは違う辛さがあります。
抑うつ・無気力
体調が悪い時や気分が悪い時があるので無理が出来ない。人に会いたくない。無理して話をしたくない。女性
陰性症状といって無気力になる傾向があり、職場に行くまでが億劫。女性
感情がコントロール出来なくなる。悲観的になり急に何もやる気がなくなってしまう女性
気持ちがコントロールできず、頑張ろうと思い過ぎた為に鬱っぽくなり薬が増える事となった。その為体が動きにくくなり、体重も増加した。なかなか施設の職員に理解されず通所できない時に注意される事もあった。男性
気分転換しても落ち込み、少しマイナス思考になります。男性
人間関係が苦手で、すぐに鬱傾向になりやすく体調を崩しやすい。男性
やる気がでない、落ち込むといった抑うつ症状は、仕事にも直接影響を与えます。出社したくないという行動にも表れたり、仕事に対する意欲がなかったりすることで、周囲の方に与える印象も悪くなります。
自分の意志ではなく、統合失調症の症状によるものであることを理解されないと、誤解にもつながってしまいます。
回復期に起こりやすい認知機能障害による悩み
回復期には、認知機能の低下を生じることがあります。新たな症状に戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
認知機能障害は、物事を判断して行動できなかったり、段取りよく作業ができなかったりするので、仕事にも大きく影響します。
同時にいくつもの仕事をこなさなくてはならない事や、覚える事が沢山ある事が、認知機能障害がある為に苦痛でした。女性
人の話を聞いても理解するのに時間がかかってしまい、テキパキと行動できない。
複数の仕事に優先順位をつけて作業をすることが苦手でした。特に、郵便局では障害についてはクローズで働いていましたので、障害に対する配慮もなく甘えも許されませんでした。とにかく仕事の正確さと迅速さが要求される業務でしたのできつかったです。男性
同時になにかはできない。何かをしているときに違う仕事の指示があると、その前の作業を忘れたりする。女性
認知機能の低下による仕事への影響は、抑うつや無気力といった症状とは別の悩みがあります。やりたくてもできない、どうすれば良いかわからないというもどかしさがあるのではないでしょうか。
統合失調症により困難を生じていることを理解されないままであれば、周囲の方と同じ能力を求められてしまい、その辛さから仕事を続けることが難しいと感じてしまうかもしれません。