ここまで見てきたように、ADHDの方は自分に向いていない仕事や、理解のない職場環境で働く場合、転職を繰り返してしまいがちです。しかし、ADHDの方が転職に失敗する理由がわかれば、これ以上、転職を繰り返さないための方法が見えてきます。
そこで、ここからはADHDの方が転職を繰り返さないために必要な2つのポイントを取り上げます。
転職活動に成功したADHDの方の体験談や口コミからヒントを得ましょう。
向いている仕事を見つける
ADHDの方は、得手不得手がはっきりしています。向いていない仕事では、ミスや納期の遅れが続きうまく仕事がこなせないという人でも、向いている仕事に就いていれば難なく仕事ができることも多いのです。
そこで、転職活動を焦らず、自分に向いている仕事を選ぶようにすれば、転職の成功率は上がります。ADHDの方にはどんな仕事が向いているのでしょうか。
一つのことに集中できる仕事
ADHDの方は、複数の業務を同時にこなしたり、臨機応変な対応をしたりできない傾向があります。そのため、マルチタスクではなく、シングルタスクの仕事を選ぶようにしましょう。
決まったパターンでこなせる仕事に就けると、ストレスなく仕事を楽しめる方が多いようです。
出来るだけ決まった形の業務が多い職場を見つけること。新しい仕事を覚えたり、応用を利かせたりすることは予想以上に時間がかかります。
男性
レジ打ちなど、1つのことに集中できる仕事はしっかりこなすことができたので自信がつきました。
男性
対外的なやり取りや、複数の部署と連絡をやり取りしながら進める仕事は向かないと思います。なるべく一人作業が適していると思います。条件が揃えば集中力が発揮できます。
女性
毎日やることの内容が変わる仕事では臨機応変に対応することが出来ないので、繰り返し行う一定作業の仕事の方が向いていると思う。
女性
ADHDの方は、複数のプロジェクトを管理したり、優先順位を考えてスケジュールを組んだりするのが難しい傾向があります。そのため、管理職ではなく、任された仕事をこなすポジションで実力を発揮できることが多いようです。
接客・品出し・掃除・電話・発注にレジ応援などその場で臨機応変にやっていかなくてはいけませんが私にはできず、レジ担当にしていただきました。やる事がぐんと減りますので自分のペースでやっていく事ができました。
女性
コールセンターは一度仕事を覚えれば、お客様と自分だけの世界に入れます。同僚の友達を作らなくても一人で仕事ができます。
女性
業務の優先順位(例:ラーメンの提供>客席へのご案内>食器洗い>仕込みなど)が分かるところがやりやすいです。以前事務職として勤務しておりましたが、ADHDにとって事務職は難しいものでした。現在の職種は、飲食業の中でもメニュー数も少なく工程もセントラルキッチンがあるため簡略化されており、複数の店舗展開を始めたことからマニュアルもしっかりあるため、ADHDでもスムーズに働くことができる環境だと思います。
男性
毎日やることが決まっている仕事や同じことを繰り返す仕事は、余裕を持ってこなせます。マニュアルがある仕事や、やり方が予め決まっているなど仕組みが整っている飲食店やコールセンターなどの職種が向いている方もいます。
自分のペースでできる仕事
ADHDの方は、不注意傾向があるのでミスが多くなりがちです。しかし、確認作業の時間を取ればミスを減らせます。ADHDの特性を理解したうえで、自分のペースでじっくり取り組める仕事に就いている方が転職に成功しています。
障害を持っていてもクリエイターとしての仕事なので自分のペースで仕事ができました。
男性
なるべく小規模、極端に言えば自分のテンポで出来る自営業や、フレックスタイム制を導入した『焦り』の少ない企業が向いていると思う。
男性
自分でスケジュール管理を行うため、疲れているときはときは予定を減らすなど工夫して仕事に取り組むことが出来る。
女性
自分の仕事をメモに控え、頭の中を整理して仕事できる環境を作り、ミスが多い事をしっかりと自覚し、ゆっくりでいいから一つ一つ丁寧に作業する事を意識すれば、少しは改善出来ると思います。自覚するだけでもミスは減ったと自分では考えてます。
男性
発達障害は、自身が身を置く環境がとても重要だと言われています。実際、私もそのように感じています。静かな環境でデスクワークを行うとビックリするくらいはかどります。
女性
デイサービスに転職してから、デイサービスのヘルパー部門で働き始め、基本的に一人で利用者さんの対応をしたり自宅を訪れたりします。この仕事をしてから、自分のペースで利用者さんと接することが自分には向いていると感じました。何箇所も転職を繰り返してきた私にとっては、やっと自分に向いている仕事だと思いました。
女性
チームで行う仕事は能率を上げることが要求され、自分でペース配分ができないことが多いでしょう。そのような環境ではミスも増え、焦りから実力を発揮できなくなります。そのため、ADHDの方は一人で行う仕事や、在宅ワーク、スケジュールに余裕があり自分のペースを乱されない仕事に就くことで、長所を活かして働けるようになります。
職場環境を整える
ADHDの方の転職活動が失敗してしまう理由の一つは、ADHDに対して職場の理解が得られないことです。多少向いていない仕事に就いていても、職場内でサポートし合える環境や良い人間関係があれば、長く働き続けることは可能です。
コミュニケーション能力を磨き、ADHDの特性を知ってもらう工夫により、働きやすい職場を見つけてきた方の体験談は参考になるでしょう。
障害の特性を伝える
ADHDという症名を知る方は増えてきましたが、本当の意味での認知度は高くありません。ADHDを他の精神疾患と誤解されたり、差別されたりすることもあります。そこで、ADHDについて、いつ、誰に、どのように伝えるかを、よく考えましょう。
一番直接仕事を教えてくれる人となるべく早いうちに信頼関係を結び、こっそり話しておくというのも個人的には効果的です(勇気はいりますが)。
女性
自分の症状を話しても理解してくれることが少ないため信頼関係を気づいてから話すべきなのかなと思っている。リーダークラスの方は理解してくれる方が多いためその方だけに伝えるという方法を取った方が良いと思う。
女性
また、ADHDという症名をオープンにするだけではなく、自分は何ができて、何ができないのか障害の特性を知らせる努力も大切です。上司や同僚がADHDの方の特性を知れば適材適所の配置に就けてくれたり、サポートをしてくれたりするようになるかもしれません。
自分の特性と取り扱い説明書を考えて把握して書き出してみることをおすすめする。自分だけではわからなかったら、友人や支援者に尋ねてみるといいと思う。気づいていなかったことを自覚出来て、気持ちの整理整頓にもなると思う。
女性
障害の名称の知名度はあっても内容を知らない人のほうが多いと思うので、自分の特性や「これが苦手、これが得意、こうすれば仕事しやすい」という分析を説明できると良いと思います。
女性
自分の特性、得意なことと苦手なこと、フォローが必要なことなどを整理し、就職する相手に伝えられるようにすることが大切です。障害があるのであれば、できれば障害名や医師の見解を伝え、合わせて上記の点を伝えることをお勧めします。伝えることで相手がどのように答えるかを、あらかじめ確認できるからですし、相手にとっても理解して関わっていくことができるからです。
男性
ADHDの特性を上手に伝えるためには、自分のことを知ることが欠かせません。転職活動を繰り返す前に、自己分析のために時間を取り、自分の長所や短所を伝える準備をしましょう。
苦手な仕事を替わってもらう
ADHDの特性は得手不得手の差が大きいため、苦手分野の仕事から外してもらったり、別の分野の仕事と交代してもらったりするようにしている方もいます。そうすることで、職場の中で働きやすいポジションを得られるのです。
同時に複数の仕事をする事が出来ず、不注意が多くなってしまう。人混みが苦手なので、祝日等の客数が多い日に気遣って貰いバックルームの作業に専念させて貰えた。
男性
最初はみんななんとかしようとしてくれたが、なんともならんとわかると、できることだけやらせてくれるようになったから。
男性
障害の特性にあった業務を任せて頂ける為、集中してやり甲斐を持って業務に取り組むことが出来るから。
女性
ADHDの方が、苦手な分野の仕事を替わってもらうために大切なことがあります。それは、苦手な仕事でも一生懸命行うことです。苦手分野でも一生懸命に取り組んでいる姿を見てもらえると、努力してもできないことがあると理解してもらいやすくなります。
そして苦手なことでもしなければならない場面は出てくる可能性はあり、その時もとにかく一生懸命に行うことができるか、他の職員の仕事に対して積極的に協力することができるか、この2点が非常に大切です。一生懸命に仕事をすることで、周囲は心が動き、協力してくれます。
男性
仲間意識を強固に共有することで、多少の失敗には目を瞑って頂ける点等、支え合っていける点が素晴らしい内容であると思いました。
男性
周りの人たちに力を借りながら取り組めばきっと上手くいきます。人外関係が何よりも大切です。周りの人たちへの感謝の気持ちを忘れずに、協力して働くことです。
男性
ADHDの方は、得意分野の仕事に関しては、他の人よりも優れた能力を発揮できる場合も多いでしょう。そこで、自分の強みを活かして同僚の苦手分野を積極的にフォローしたり、他の人が嫌がるような仕事も進んで引き受けたりするなら、信頼関係を築けるので、困った時に助けてくれるようになるはずです。
こまめに相談する
ADHDの方が、職場で働きづらくなってしまうのは「不真面目だ」という誤解を受けがちだからです。こまめに自分の特性や困りごとを相談して、自分のことを知ってもらうなら理解を得やすくなります。
特に、身近な上司には、こまめな相談や報告をするようにしましょう。お互いの気持ちを理解することで、職場の皆が働きやすい職場環境になります。
上司には仕事の困ったことを相談するようにし、適宜サポートしてくれました。同僚は私の愚痴をしばしば聞いてくれました。人間関係には恵まれ、苦労はしましたが長い間勤務できたからです。
女性
就労サポートからの紹介でこの職場で働いたこともあり、はじめから上司には自分の障害の特徴を伝えておいたので隠さずに勤められたことは心が楽な点でした。
女性
また、一緒に働く同僚との人間関係も大切です。仕事の話だけではなく、日常のコミュニケーションを欠かさないようにしましょう。仲が良くなると、いざという時に助けてもらいやすくなります。
様々なパート従業員の方や、女性アルバイトの方々と悩みを分かちあえたりすることが至福の時間でした。
女性
冷たい雰囲気ではなく、日常のことを話したりできる相手がたくさんいた。
女性
私の職場は、仲間同士で声を掛け合って、サポートし合うことができているのでよい。
男性
転職した職場で、最初から働きやすい職場環境が整っていることは少ないでしょう。
しかし、ADHDの方が努力して自分の特性を伝え、コミュニケーションを図るなら、徐々に職場は働きやすくなっていくはずです。
職場環境が良いものであれば、業務の中に多少の苦手分野があったとしても、仕事を辞めずに続けることが可能です。