自分の特性に合う適職に出会えたADHDの方は、転職に成功しています。そこで、ここからは、適職に出会えたADHDの方のコメントから、ADHDに向いている仕事を取り上げます。
※ADHDの特性には個人差があり、ご紹介するお仕事が全ての方に向いているというわけではありません。ひとつの例としてご参照いただけますと幸いです。
一つのことに集中できる仕事
ADHDの方の中でも「マルチタスク作業が苦手」な方は、複数の業務を同時に行う仕事を避け、一つの業務に集中してコツコツこなせる仕事が適職になります。
例えば、事務系の職種を選んだ場合でも、担当する業務により向き不向きがあります。様々な書類の処理や電話対応を同時に任される部署もありますし、決まったデータを毎日コツコツと入力する部署もあります。
同じ事務という仕事でも、担当する業務によって向き不向きがあるのではないでしょうか?
ADHDの方は、自分の好きなことや、得意なことをしている時には集中力が高まり、強みとして力を発揮することも期待できます。自分に向いている仕事であれば、やりがいをもって取り組むことができるでしょう。
工場・製造系の仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
- コツコツ同じことを続けるのが好きな方
- 自分で優先順位をたてるのが苦手なため、決まった流れの中で仕事がしたい方
■多動・衝動タイプ
- じっとしていられないため、身体を動かしていたい方
- 人間関係が苦手なため、モクモクと一人で作業したい方
ADHDの適職の一つに、工場・製造系の仕事があります。ADHDの方の中には、優先順位をつけることが苦手な方がいます。自分の仕事をしているところに、来客や電話などの臨機応変な対応が必要な業務が入ってくると、パニックになることがあります。
一方、工場や製造系の仕事であれば、一定の流れの中で自分の担当だけをこなすことが求められるため、突然発生する業務に慌てることがありません。突発的な仕事が苦手なADHDの方は、一つのことに打ち込めるシンプルな仕事が適職といえそうです。
工場・製造系の仕事には、決められた手順があり、一つの作業に集中できるのがメリットです。同時に複数のことに手をつけて、頭が混乱してしまうタイプのADHDの方は、シンプルな作業をメインとする仕事に就くことが、転職に成功するポイントです。
介護・福祉系の仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
- 自分の得意な仕事には集中することができる方
- 計算や記帳など、事務系の仕事に苦手意識がある方
■多動・衝動タイプ
- 複数の人と関わるのが苦手で、一対一の関係に強みがある方
- 他の人から「おせっかい」だと思われるほど、人の世話に関心がある方
ADHDの方は、チームワークが必要な仕事を苦手とする傾向があります。そのため、利用者と一対一になれる介護・福祉系の仕事が適職だと感じている方もいます。
介護・福祉系の仕事は、障害に対しての理解を持つ職員も多く、ADHDの方にとっても働きやすい業界の一つです。自分のペースを保ちやすく、一人一人を大切にした風土のある施設や会社に転職できるなら、ストレスなく仕事を続けられそうです。
店舗・販売系の仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
- 複数の作業を同時に行うマルチタスクが苦手な方
- 指示された通り、一つのことに集中する仕事が得意な方
■多動・衝動タイプ
- デスクワークなど、じっとしているのが苦手で、常に動き回っていたい方
- おしゃべりで声が大きく、表情が豊かな方
ADHDの方は、マルチタスク能力や臨機応変な対応が求められる接客業を苦手とします。しかし、店舗・販売系の中でもレジ打ちやバックヤードでの品出しなど、一つの業務に集中できるポジションに就くなら、ADHDの特性は強みになります。そのような店舗・販売系の仕事は、ADHDの特性を活かした適職になる可能性があります。
マニュアルがあり、決まったパターンで仕事をこなせる飲食店もADHDの方に向いているでしょう。店舗系の仕事は、一連の作業を覚えるまでが大変ですが、一度覚えてしまうと、複雑な仕事ではないので、ADHDの方の適職になるかもしれません。
ゆっくりしたペースの仕事
ADHDの方は、ケアレスミスが多くなりがちです。ミスをすることだけでも落ち込むところ、さらに上司や同僚に叱責されると、より自分に自信がもてなくなってしまいます。ケアレスミスの原因が自分の努力不足ではなく、ADHDの特性によるものなのですから、いっそうどうすれば良いのか悩んでしまうのではないでしょうか?
しかし、ADHDの方でも、一つ一つの作業を確認する余裕があれば、ミスを減らせます。そのためには、時間の余裕があり、急かされない仕事であることが必要です。そのような余裕のあるゆったりとした仕事が、ADHDの方の適職となることもあります。
余裕のある店舗系の仕事
【向いているタイプ】
■不注意
- 忙しい接客や、時間に追われる仕事が苦手な方
- 怒られるとパニックになったり、頭が真っ白になってしまったりする方
忙しい店舗での接客業は、ADHDの方が最も苦手とする仕事です。しかし、業界によっては、ゆとりがあり、じっくりと接客できる店舗もあります。余裕のある店舗系の仕事はADHDの方にとって適職となる場合があります。
一人一人を丁寧に接客することが求められるような店舗では、仕事にやりがいを持つことができているADHDの方が多いようです。そのため、ADHDの方が店舗系の求人に応募する場合、接客や業務のペース、そして環境が自分に合っているかどうかを確認するようにしましょう。そうすれば、接客業であっても適職になるかもしれません。
公的機関・研究所等の仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
■多動タイプ
- チームワークで行う仕事など協調性が求められる職場が苦手な方
- 自分の意見やアイデアで物事を進めていきたい方
公的機関や研究所などの仕事は、他の人のペースに振り回されずに、余裕を持って取り組むことができる業務が多いため、ADHDの方の適職となり得ます。
ADHDの方は、仕事内容だけではなく、職場の環境を確認して、余裕を持って仕事できるかどうかを転職の判断基準にしましょう。じっくりと考えて行える仕事は、ADHDの方にとって適職となる可能性が高いと言えるでしょう。
自分でシフトを組める仕事
ADHDの方は、スケジュール管理をしたり、優先順位を決めたりするのが苦手です。遅刻したり、納期を守れなかったりするっことで、職場に迷惑をかけることもあります。そのため、ADHDの方にとっての適職は、自由度が高く、自分でシフトを組める仕事になります。
派遣の仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
- 約束や時間を守るのが苦手で、他の人が決めたシフトでは働きづらい方
- 長い時間、一つの仕事に集中するのが苦手で長時間勤務が辛い方
■多動・衝動タイプ
- じっとしているのが苦手で、身体を動かす仕事をしたい方
- 長期間一つの仕事に就くと飽きてしまうので、短期間で様々な仕事をしたい方
派遣の仕事は、スタッフの数が多い職場であれば自由にシフトを組めるところもあります。また、様々な仕事のバリエーションがあるため、一つの職場に長く勤めるのが苦手なADHDの方でも働きやすい仕事を見つけられる可能性があります。
ADHDの方は、日常的に気を遣って過ごしていることが多いので、体調不良になりやすく、疲れやすい傾向があります。そのため、体力に余裕を持てるように自分でシフトを組める仕事が適職となることが多いのです。
在宅ワーク・フレックスタイムの仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
- 気が散りやすく、定期的に休憩を必要とする方
- 遅刻や欠勤が多く、会社に通うのが負担になる方
■多動・衝動タイプ
- チームワークで働くのが苦手で、一人でコツコツ仕事を進めたい方
- 集中力を保てる時間に自分のペースで仕事を進めたい方
在宅ワークやフレックスタイムの仕事は、就業時間を自分で決められる場合が多いので、ADHDの方にとって適職になりやすいでしょう。ペースを乱されづらく、集中力を保ちやすい環境で働けると、ADHDの特性を長所として活かせます。
ADHDの方には自由度の高い働き方が向いています。そのため、ADHDの方の中には、転職を繰り返した後、最終的にフリーランスや自営業を選択する方も多いのです。
創造性を活かせる仕事
【向いている人】
■不注意タイプ
- 好きなことに対しては、どこまでも集中力が発揮できる方
- 誰かが決めたスケジュールやタスクに縛られたくない方
- 正確さや緻密さが求められるような仕事にストレスを感じる方
■多動・衝動タイプ
- 思いついたらすぐに行動に移す方
- チームワークが苦手だけれど、独創性がある方
ADHDの方は、独特の感性を持ち、優れたセンスを持っている場合が少なくありません。そのため、創造性を活かせる仕事はADHDの方にとって適職となります。
ADHDの特性により得意なことを自分の長所だと理解している方は、いたずらに転職を繰り返すのではなく、自分の好きなことや熱中できることを突き詰めて、自分なりの適職を作り出すこともあります。
ADHDの特性に合う適職の具体例を取り上げてきましたが、ADHDの方でも、一人一人特性は異なるため、適職は一つではありません。
様々な職種・業界の選択肢があるので、自分に向いている仕事に就けるまで、あきらめずに転職活動を続けるなら、自分にとっての適職を必ず見つけられるでしょう。