発達障害とは、生まれつき脳の働きに偏りがある障害で、ADHD(注意欠如・多動性障害)・ASD(自閉症スペクトラム障害)・学習障害(LD)の三種類が知られています。それぞれ少しずつ異なった特性があるため、得意・不得意な分野が異なります。
発達障害の特性は仕事上の悩みになることもあれば、得意分野を活かした強みに変えることもできます。それでは、ADHD、ASD、LD、それぞれの特性と照らし合わせながら、悩みや強みを見ていきましょう。
ADHDの特性による悩みと強み
ADHDをお持ちの方の中には不注意傾向が強くミスを繰り返す方もいれば、多動・衝動傾向が強く後先考えずに行動してしまう方もいます。不注意と多動・衝動が混合しているタイプの方もおり、人によってADHDの特性は大きく異なります。
ADHDの方が経験する仕事上の悩みには次のようなものがあります。
ADHDの悩み
- 優先順位がつけられない
- マルチタスクが苦手
- 仕事の期限を忘れてしまう
- 興味のない仕事を放置してしまう
- ケアレスミスや忘れ物が多い
このような発達障害の悩みは仕事を続けるのが難しい要因になります。しかし、ADHDの特性は得意分野で活かされるなら強みにもなります。
ADHDの強み
- 行動力があり、思いついたことをすぐに実行できる
- いろいろなことに興味を持ちチャレンジ精神がある
- 好きなことや得意なことには人一倍集中できる
- 創造性があり新しいアイデアを生み出せる
このようなADHDの特性を持つ方が、向いている職種を見つけると実力を発揮することができます。向いている仕事についている発達障害の方は、企業にとっても大きな戦力となります。
ASDの特性による悩みと強み
ASDは自閉症スペクトラム症と呼ばれています。知的発達には遅れがないものの、対人関係やコミュニケーションに問題を抱えることが多い発達障害です。それゆえにASDの方は職場での人間関係につまずくことが多いですが、基本的な学習能力が高いため適材適所で働ける場合には特性が強みになることも多くみられます。
ASDの方が経験する仕事上の悩みには下記のようなものがあります。
ASDの悩み
- 相手の気持ちが理解できない
- 曖昧な指示の意味が理解できない
- 口頭での説明を聞き取れない
- 一つの作業にこだわって集中しすぎてしまう
- 感覚が過敏になりすぎて集中力を失ってしまう
このようなASDの悩みは、職場での人間関係問題に発展することがあります。ASDの方は、仕事ができるのに、付き合いづらい人と見なされて孤立してしまうことがあるからです。その一方で、発達障害の特性を活かした職種で働けるなら、仕事で優れた成果をあげることもあります。向いている仕事を見つけ長所を活かすなら、ASDの特性は高く評価されるでしょう。
ASDの強み
- 決まった作業をマニュアル通りに進めることができる
- ミスや漏れの無い正確な作業ができる
- 一つの作業に集中すると生産性が高い
- 人間関係や感情に左右されずにルールを守らせることができる
ASDの方は、自分の特性に向いている仕事や職種を見つけましょう。それが発達障害の方が就職や転職に成功する秘訣です。人間関係のストレスに煩わされずに仕事に打ち込めるなら、専門分野を極めてスペシャリストと見なされることもあるでしょう。
LDの特性による悩みと強み
LDは知的発達の遅れを伴わない学習障害のことです。読んだり、書いたり、計算したりする時に困りごとが発生します。障害が生じるのは、ごく一部の学習分野であるため、周囲の人から理解されづらく、本人もLDであることに気づきづらい発達障害です。LDの悩みには次のようなものがあります。
LDの悩み
- マニュアルを理解できない
- 指示を聞きとることができない
- メモを書くのに時間がかかる
- 簡単な計算でも間違えてしまう
LDをお持ちの方は学習能力が低いわけではありませんが、マニュアルを読んだり、指示を受けたりするなど特定のことができないことで自信を失いがちです。特にLDは公表する方が少なく、自分の特性を相談しづらいというケースも見られます。
その一方で、発達障害の特性を強みとして活用するなら仕事に貢献することができるようになるでしょう。
LDの強み
- イメージ情報を記憶するのが得意
- 物事の全体像をつかむことができる
- 発想力があり斬新なアイデアを生み出せる
LDの方の強みは学習では得られないものですから、天性の才能として活かしていきたいものです。
発達障害の方は、自分の障害特性を理解し、適切なツールを活用するなど工夫をしたり、サポートを得たりすることで仕事を続けることができるようになります。
併存性が高いのも発達障害の特徴
ADHD、ASD、LDの特性を述べましたが、発達障害は併存性が高く、ASDだけ、LDだけという方は少ないかもしれません。例えば、ASDとADHDが併存している方やASDとLDが混在している方、すべてが併存している方もいます。
ADHDと診断されているけれど計算が苦手な方や、こだわりや衝動性が強い方という場合、一般的にADHDの特性といわれている以外の特性に不安を覚える場合もあります。
最近は、発達障害の診断テストが変わり、併存性が認められるようになりました。不安な方は、診断を受ける際に、どの特性が一番影響しているのかを確認したり、困りごとを書き出してみたりすると、どの特性の傾向が強いのかを把握しやすくなります。