発達障害の方におすすめしたい「メモの取り方」

発達障害の方におすすめしたい「メモの取り方」

発達障害の方はケアレスミスが多かったり、優先順位のつけ方がわからなくなったりして仕事でミスを連発することがあります。また、受けた指示を理解できなかったり、思い込みで行動して怒られたりすることもあるでしょう。

そんな悩みを持つ発達障害の方にお勧めしたいのがメモを取ることです。発達障害の特性に応じた上手なメモの取り方を覚えれば、ミスは減り、余裕をもって仕事ができるようになります。とはいえ、「どのようにメモを取ればよいかわからない」「なかなかメモが取れない」という悩みを抱える方もいます。

そこで、今回のコラムではアンブレに届いた口コミを分析し、発達障害の方がメモを取るときに困っていることや、おすすめしたいメモの取り方を解説します。

*この記事は松好伸一先生に監修していただきました
松好伸一先生

仙台白百合女子大学 人間学部 人間発達学科 講師。保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。日本発達支援学会(監事)。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数。




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目次

1.発達障害のある方にとって、仕事で「メモを取る」ことは必要不可欠

2.発達障害の方のメモにまつわる困りごと

3.おすすめのメモの取り方

4.まとめ

1.発達障害のある方にとって、仕事で「メモを取る」ことは必要不可欠

アンブレに届いた口コミを分析すると、発達障害の方が仕事で直面する困りごとに対するアイデアとして、圧倒的に多いのがメモを取る習慣でした。

発達障害の方はワーキングメモリー(短期記憶)が弱いため、受けた指示を覚えられなかったり、業務の手順を忘れてしまったりすることが多くなります。
また、聴覚からの情報処理が苦手なため、口頭による指示を正確に聞き取ることができないこともあります。

そこで、小さなことでもメモをする習慣を身につけると、仕事での困りごとになりがちな発達障害の特性に対処できます。

人の名前や顔がなかなか覚えられなかったり、上司の指示や同僚・後輩のお願い・依頼をすぐに忘れてしまい、信用されなくなりコミュニケーションに支障があったりする。自分が何をしようとしていたかも忘れる時が多々あり、思い出すまでに時間がかかることがある。メモ帳や付箋を使って何を依頼・お願いされたか忘れても、それを見ればこの後何をするべきか思い出すようにしています。(男性)

発達障害の特性で、覚えたことをすぐに忘れることや計算等学習面において苦手があります。短記憶が弱いので、仕事の前には必ずマニュアルや自分でメモをしたことを復習しています。その日にやるであろうことを予測して勉強してから仕事に向かいます。(女性)


また、臨機応変な対応が苦手な発達障害のある方は、予想外のことが起こるとパニックになりがちです。そこで役立つのが「メモを活用する」ことです。事前に自分なりの手順書を作ったり、段取りをメモして準備したりすることで、想定外の事態が生じても余裕をもって対応できるようになります。

同時に複数のタスクがあると注意散漫になったり、時間的に切迫していても注意散漫になり日常生活や社会生活でミスや忘れ物などが目立ち、支障をきたします。段取りを事前に確認してメモでチェックしながら実施しています。(男性)

患者さんが一度に複数人来院し、他の患者さんの会計作業なども重なってくると、何から手をつけて良いか分からずアタフタしてしまいました。優先順位のつけ方に対して注意された事をメモして、上から優先順位が分かるようにリストを作りました。やる事が重なってアタフタしそうな時は、時間がかかってもそのリストを見ながら作業する事で、手が止まってしまわないようにしました。(女性)

仕事中も複数の業務を円滑に進めることができずミスを頻発していた。メモ帳に1日の仕事の順番(タイムスケジュール)を書くようにし、休憩時間の時に確認するようにしました。(男性)


メモを上手に活用する習慣を身につけると、発達障害の特性を補うことができます。発達障害の方が仕事でミスを防ぐためには、自分の特性に合ったメモ術を活用することが必要です。

2.発達障害の方のメモにまつわる困りごと

発達障害の方は、上手にメモを取る技術を磨くことで仕事の困りごとを減らせます。しかし、その一方で発達障害の特性からメモを取ることを難しく感じている方もいます。

メモの取り方がわからない

発達障害の中でもASDをお持ちの方は、言われたことを全部書き取ろうとして、結局メモが取れない悩みを抱えることがあります。メモを取ることで仕事の能率が余計に下がってしまわないためにも、ポイントを絞ったメモの取り方を知る必要があります。


メモを取るのに時間がかかる

発達障害のひとつLD(学習障害)には書字障害があり、1枚のメモを書くのに時間がかかります。そのため、メモを取ること自体がストレスになる場合もありますが、こうした自分の特性に気づかず、メモを取れないことに悩む方もいます。


メモを無くしてしまう

発達障害の中でもADHDの方は、物を失くしやすく、せっかく書いたメモを紛失してしまうこともあります。そのため、こまめにメモをしていても肝心な時にメモが見つからないといった悩みもあります。


見慣れてメモの存在を忘れてしまう

発達障害の中には、メモを目の前に貼っておくという方もいるでしょう。しかし、貼り続けていると、その風景に見慣れてしまい、メモを意識しなくなってしまう場合があります。そういう方は、書いたメモを気付くための意識づくりが必要です。



このように、同じ発達障害といっても特性により、注意すべきポイントが異なります。大切なのは、自分に合ったメモの取り方を習得することです。そうすれば、発達障害の方が感じる仕事上のストレスを大幅に軽減できるでしょう。

3.おすすめのメモの取り方

それぞれの発達障害の特性に合ったおすすめのメモの取り方を説明します。自分に合ったメモの取り方を習得して、仕事で直面する困りごとを減らしましょう。


メモのとり方がわからない方や時間がかかる方へ:メモのフォーマットを決める

発達障害の方は、メモに何を書いてよいか分からないことが多いので、あらかじめメモのフォーマットを決めておくのが良いでしょう。会議メモ、業務指示メモ、電話対応メモなど、様々なシーンごとに書き出す内容を決めてフォーマットを作っておきます。


「いつ、どこで、何を、誰が、どのように」など決められた項目をメモしていくので、迷うことが減ります。また、情報を分類してまとめるのが苦手な方は、情報を時系列にしておくのもおすすめです。日付や時間をさかのぼりながら思い出すと必要な情報にたどり着きやすくなるでしょう。

メモを無くしてしまう方へ:メモを身につける

発達障害の方は、書いたメモを失くしてしまい、必要な時にメモが見つからないことがあります。そのためメモを失くさないように、常にメモを身につけておくのも良い方法です。例えば、メモ付きのカードホルダーやスマホケース、ペンとセットのメモなどを活用すれば、大事なメモを失くさずに済みます。

また、書いたメモや貼ったメモをスマホのカメラで撮影しておくと、メモを無くしたときに確認することができ、おすすめす。


メモを無くしてしまう方へ:メモを1冊にまとめる

発達障害の方は何冊ものメモを使っているうちに、どこに書き込んだかがわからなくなり、必要な情報を見つけられなくなることがあります。そのため、失くしにくい大型のメモ(ノートや手帳)を使い、情報を1冊のメモに集約している方が多いようです。

以前は約束ごとをあちこちのメモ帳や紙切れにかいてはその紙をなくしてしまい、忘れてしまうことが多かったが、一つの手帳を絶対に手放さないようにしています。(男性)


メモ帳は2冊使用し、1冊目は教えられたことをとりあえず書くメモ帳、2冊目は、1冊目の内容を分かりやすくまとめた綺麗なメモ帳として使い分けました。更にそれらをExcelにまとめ、分からない個所をすぐに検索できるようにしたのですが、これが上手くいき、仕事の効率が上がりました。(男性)


付箋紙にメモをとり、普段使う資料に貼り付けていました。(女性)


付箋にメモし、そのメモを後から1冊のノートに張り付けたり、走り書きしたメモを仕事が終わってから清書しなおしたりするのも良い方法です。付箋をメモ代わりに活用する方は多く、走り書きした付箋を並びなおして優先順位を決定したり、メモを見ることを忘れないようにPCの画面やデスクに貼っておいたりする方法も行われています。


メモのとり方がわからない方や時間がかかる方へ:デジタルツールやアプリを活用する

発達障害の中でもLDの方は、手書きのメモを書くのが苦手です。そこで、おすすめなのが手書きではなくデジタルツールやアプリを使ってメモをとったり、ボイスレコーダー・動画などの形でメモを撮ったりすることです。

その際には、予め上司や同僚に発達障害の特性を説明し、アプリの使用や録画の許可を得ておくとスムーズでしょう。

また、以下の口コミにあるように、デジタルツールやアプリなどのアラーム機能などを活用して、強制的に思い出せるようにすると、書いたメモを見忘れや紛失を防ぐこともできます。

outlookでアラームをかけるなど、自分で期限を通知するような設定をしたり、スケジュールに入れて、必ずスケジュールを毎日チェックする習慣をつけることで、仕事の漏れがなくなるように工夫をしていました。(女性)


タスク管理やスケジュール管理に役立つアプリは下記の記事で説明しています。自分の特性に合ったアプリを試してみてください。

▼ADHDの方におすすめ!メモとして活用できるアプリ


見慣れてメモの存在を忘れてしまう方へ:バーチカル型(縦型)のスケジュールリストを利用する

バーチカル型(縦型)のスケジュールは、「〇時~◎時」のスケジュールが一目でわかりますし、記入するときに「〇時から」だけでなく「〇時まで」を確認する習慣づけにもなります。ダブルブッキングもなくなるのでおすすめです。

4.まとめ

発達障害のある方は、指示を忘れてしまったり、作業の優先順位が分からなくなったりして仕事のミスが増えがちです。しかし、こまめにメモを取る習慣を身につければ、発達障害の特性による仕事の悩みを減らすことができます。

しかし、発達障害の特性のゆえに、メモの取り方が分からない方もいるでしょう。言われたことを全部メモしてしまったり、メモを書くのに時間がかかりすぎたり、せっかく書いたメモを失くしてしまったりすることもあります。

そこで、発達障害の特性に合ったメモの取り方を知りましょう。例えば、あらかじめ用件に合わせたメモのフォーマットを作っておいたり、メモを失くさないように身につけたり、情報を1冊にまとめたりするのも良いですね。
また、デジタルツールやアプリを利用してメモを取るのが向いている方もいます。

同じ発達障害でも人により特性は異なります。自分の特性を理解して、自分なりのメモの取り方を工夫しましょう。このコラムの内容が、発達障害の方のメモを取るヒントになればうれしいです。

【監修者:松好伸一先生からのアドバイス】

メモは自分なりの書き方が定まるまで、なかなかうまく書けないものです。いつも自分が何を記入していないのか、忘れてしまうのは内容か、時間か、手順か、などこれまでの仕事での失敗を振り返って、メモの様式を自分なりに工夫してみましょう。

また、メモをすること自体が習慣化するまでも時間がかかります。会議や打ち合わせなどに持っていくもののセットを作り、ペンやメモ、名刺や付箋など必ず使うものをひとまとめにして持つことも有効です。最近はアプリで会話を文字化するものも出てきています。精度の問題はまだありますが、文字化されたものを読むと思い出しやすくなるので、人によってはボイスレコーダーよりも使いやすい人もいると思います。

モノを失くしてしまう人は、切り離せないメモ帳の方が管理しやすいでしょう。 学生の時は「メモして」と言ってもらえますが、社会人に対して「メモを取ってください」と言ってくれる人はほとんどいません。自分で対処することが求められますので、自分でできる形・タスクが習慣化できるよう工夫してみてください。

メモを貼ったことを忘れる方は、こちらの記事もご覧ください。
▼メモを貼ったことを忘れがちなADHDの方必見!おすすめの解決法を紹介

発達障害のある方の口コミがご覧いただけます。どのようなお仕事をされているのか参考にしてみてください。
▼発達障害のある方の仕事口コミ一覧


※この記事は投稿いただいた口コミから生まれています。
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監修者

保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数で、2022年3月29日「幼児教育方法論」(共著・一藝社)を刊行。

保有資格

著者

発達障害・心理系のコンテンツを発信するWEBライター。大学で臨床心理学を学び、発達障害や精神疾患への知見を深める。自身もADHD(グレーゾーン)でありつつ社会で働いた経験や、事業を経営してきた経験をもとに、ADHDの仕事・働き方に関する著書を出版。障害を持たれる方が、自分の強みを理解し、イキイキと働けるように支援する活動をライフワークとしている。著書「ADHDの集中力アナドレン: 発達障害に負けない仕事術・タスク管理術 」「大人のADHD読書術」も好評。

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