経験者に聞く「自閉症と仕事」、転職活動を成功させるためには?

自閉症の方が仕事について考えるとき、その特徴から様々な悩みを抱えることもあるでしょう。自分にあった仕事をこれから探す「就職活動、転職活動」となると、非常に大きなストレス感じるかもしれません。

たとえば、「人間関係の複雑な職場で本当にやっていけるだろうか?」「仕事が決まっても続けられるだろうか?」「失敗やミスをして怒られるのではないか?」といった悩みはありませんか?

そのような悩みから、仕事に対して前へ進む一歩を踏みだそうか迷っている方は、ぜひ同じように自閉症と診断されながらも転職に成功した方々や、満足できる職場で働いている方の声を参考にしてみてはいかがでしょうか?

自閉症の方々から集まった仕事に関するアンケートには、今、イキイキと仕事をされている方の声がたくさん届いています。

それらをもとに、「働きやすい職場を見つけるためにどんなことに注意したか」「自閉症特有のミスや失敗を減らすための秘訣」「人間関係に悩まないコツ」など、具体的なノウハウをお伝えします。

また、転職活動において「面接前に行うとよいこと」「面接時に確認すべきこと」「オススメの企業名やその特徴」など、復職や転職活動の参考になる情報もご紹介します。

※注:「自閉症」「アスペルガー症候群」は、現在「自閉症スペクトラム」いう診断名に統合されています。「自閉症」は実際の診断名としては用いられなくなりつつありますが、日常生活や行政の場などでは現在も広く使用されているため、この記事では「自閉症」という名称を用いています。

経験者に聞く「自閉症と仕事」、転職活動を成功させるためには

目次

1.自閉症とは

自閉症とは


「自閉症は
1. 対人関係の障害
2. コミュニケーションの障害
3. パターン化した興味や活動
の3つの特徴をもつ障害で、生後まもなくから明らかになります。最近では症状が軽い人たちまで含めて、自閉症スペクトラム障害という呼び方もされています。

自閉症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられています。」


参考:厚生労働省e-ヘルスネット

自閉症の方の中には、知的障害を伴っている方やADHDやLD、てんかんなどの合併をおこす方もいらっしゃいます。約3割の方は知能に遅れがない高機能自閉症と呼ばれ、学業成績が良い方もいらっしゃいます。しかし会話が苦手というケースもみられるようです。

ではまず、自閉症の方が仕事をするとき、どのようなことに悩みを抱えているのでしょうか?アンケートに届いた、リアルの声をみてみましょう。

2. 自閉症の人はこんなことで悩んでいる

自閉症の人が仕事をする際にぶつかる壁には、どのようなものがあるのでしょうか? 当事者にしかわからない辛い気持ちや、共通のパターンなどを見ていきましょう。あなたにも思い当たる場面がありませんか?

2-1 伝えたいことが正確に伝わらない

「思ったことがうまくまわりの人に伝えられなくて、誤解されたり悲しい思いをしたり、嫌われているのではないかと悩むことが多い」

「クレームがあった際に、言葉でうまく伝えるのが苦手なため、上長に内容がうまく伝わらないことがありました。顧客からのクレーム以前に、うまく伝えられない私自身に上長の苛立ちが募り、理詰めのような追加質問が繰り替えされ、顧客対応どころでなく個人攻撃のようになってしまいました。このようなことがあったと、更に上の部署へ報告しても『お前が悪い』『甘えるな』と取り合ってもらえず、どんどん孤立していくのに誰にも相談できず、八方塞がりになって退職せざるを得なくなりました。」

自閉症の特徴のひとつに、自分の意思を正確に伝えるのが難しいことが挙げられます
真意が相手に伝わらないためにコミュニケーションに問題が生じ、結果として職場の人間関係が悪くなることもあります。

自閉症の特性を同僚や上司に理解してもらえないことで、辛い思いをすることや、退職に追いやられることもあるようです。

2-2 指示を正確に理解できない

「いわゆる『察する』ということができません。暗黙の了解、言葉にならない曖昧なルール、意図が汲み取れず、明確に言葉にされたこと以外への対応が難しいです。」

「言われたことをそのまま受け取ってしまい指示を出した方の明確な意図を読むことができません。あとになって、指示と違うことをしたことを責められ、実はこのような意図があったのにわからないのかと叱責を受けることが日常です。」

「人の表情や声のトーンから気持ちを読み取ることが困難で、自分では気づかない内に相手を怒らせてしまうことや、その場の空気が読めないことで集団から孤立してしまいます。」

相手の言っていることの真意を理解するのが難しいというのも、自閉症の特徴のひとつです。相手の言葉を額面通りに受け取ったことが原因で誤解が生じ、相手をいらだたせてしまうこともあります。

相手が自閉症の特性についてよく知らない場合は、厳しい対応を受けがちです。本人はまじめなので辛い思いをすることも多いようです。

2-3 要領が悪いように見られる

「注意力散漫で、短期記憶が弱いため、一度に複数のことをいわれたり、長い話だと聞き漏らしが多く、メモを取りながら指示受けや、電話応対ができない。回りの様子を見ながら動けず、優先順位をつけて仕事ができない。」

「一度に1つの事しかできないため、マルチタスクになると頭がフリーズし、吃音、失声となり何もできなくなります。」

「一定の作業を一定時間内にひたすらこなすことになりますが、例えば盛り付けが綺麗にできない、スピードが追いつかずラインを止めてしまうと、後ろのベテラン層の方からの罵声が飛んできます。要領をつかまないとひたすら罵声の標的になります。」

自閉症の人はこだわりが強いことが多く、一つひとつの作業を正確に行うことが得意です。しかし、複数の作業を同時に進めるのは苦手という人が多いようです

自分のペースで進めることができれば簡単に成功することも、同僚や上司にせかされたり怒られたりすると、途端に失敗やミスを多発してしまうこともあります。その結果「仕事のできない人」と見られてしまうことがあるのです。

上記のように、自閉症の特性が原因で、職場の人間関係がうまくいかなかったり、辛い思いをしたりというのは、多くの自閉症の方が経験しているようです。
今を読んでいる方も、同じような経験をしたことありませんか?

でも、安心してください。
自閉症を抱えながらも、復職・転職活動に成功している方がたくさんいます。自閉症の特性に合った仕事を見つけ、サポートしてくれる人たちのいる環境に身を置くことができれば、きっとうまくいくでしょう。

では、自閉症と向き合いながら実際に仕事復帰に成功した方々の声を元に、その成功の秘訣を見ていきましょう。

※他に自閉症の方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
→自閉症の方の体験談はこちらへ

3. 「働きにくい職場」と「働きやすい職場」の違いとは

職場環境への満足度と周囲の配慮の有無の関係

3-1 自閉症の人が「働きにくい」と感じた職場とは?

まずは、自閉症の人が働きにくいと感じた職場について、アンケートに寄せられた声を見てみましょう。大きくわけて以下の2点が挙げられました。

福利厚生が弱い
同僚のサポートが得られない

では、それぞれをコメントとともに、詳しく見てみましょう。

①福利厚生が弱い


「大きな会社だが産業医がおらず、うつで休職した際どのタイミングで復帰するのがベストか相談する相手がいない。休職していると金銭面で大きな不安があるが、うつで休職した際、その間有給休暇が使えるのかどうかも分からず、何も連絡がなく不安な毎日を過ごす。」

福利厚生がしっかりしていることは重要です。特に産業医やカウンセラーによる専門的なアドバイスやサポートは、自閉症の人にとって大きな支えとなるでしょう
職場の人間関係に悩んだときや仕事に行くのがつらいとき、仕事を辞めたくなったときなど、相談できる環境が整っていれば、乗り越えられるかもしれません。

②同僚のサポートが得られない


「時短勤務にしてくれた事は助かりましたが、『なぜお前は時短なんだ、事業所としての作業効率が上がらないから早く来い』『時短なんだから人より頑張って数字出さないと生き残れない、もっと頑張れ』と平気で言うような人が多く、非常に肩身の狭い思いをしました。」

「常に人員不足の現場では障害のことを配慮するどころか、打ち明けられる環境でもないため、何を言われても受け流すか耐えられる鈍感さが必要でした。店長や社員はフォローする余裕もないので悩みを抱えがちになりました。」

「スキルアップが望めない。昇給ボーナスがない。ずっと新人になりそう。障害者がたった一人で疎外感を感じ、生意気だと思われないよう気を遣うので精一杯。完全アウェイ状態。安心して失敗してスキルアップする機会がない。」

自閉症は「障害」と認知されないことも多く、さまざまな誤解が生じがちです。自閉症のことをよく知らない人からは「人の話を聞かない」「失敗やミスばかりしている」などと見なされてしまうことがあります。
一緒に働く人たちに自閉症の特性を知ってもらい、適切なサポートを得ることが重要です

3-2 自閉症の人が「働きやすい」と感じた職場とは?

自閉症の人が働きやすいと感じるのはどのような職場なのでしょうか?

まとめてみると次の2点がポイントとなるようです。
自分のペースで働ける
周囲の理解がある

特に「周囲の理解がある」という点においては、職場における満足度と周囲のサポートの関係性を表したグラフからも、重要視すべきだということがわかります。

周囲の配慮(サポート)がある:職場への満足度は高い
・周囲の配慮(サポート)がない:職場への満足度は低い


では具体的なコメントを交えながら、自閉症の方がオススメしている企業名も具体的にご紹介します。

①自分のペースで働ける


「勤務日の融通が利くので、連勤のような負荷がかかることがなく、自分のペースで働けます。」

「①自分ひとりで静かにコツコツできるもの、②文字や数字ばかりに偏らず図解やイラストのスキルが活かせるもの、③常に座ってできるもの、である。」

「集団の中で一人ひとりの表情やその場の空気読みに失敗すると、どうしても孤立してしまい居づらくなることがあります。適応していければ問題ありませんが、もし難しい場合は思い切って少人数でまわす仕事を選んでもまったく問題ありません。自分の得手不得手を把握し、負担の少ない職場を選ぶことができれば、安定して勤務でき、スキルを身に付けることができます。」

自閉症の特性のひとつに、チームワークが苦手ということがあります
高いコミュニケーション能力が求められるような仕事は合わないという人が多いでしょう。

人間関係に気を遣う必要が少ない仕事に就くことができれば、この面でのストレスを大きく軽減できます。また、一つの作業に集中できるような業務も向いているでしょう

アンケートでは、以下のような会社がオススメの企業として挙げられました。

株式会社東京アカデミー
「食事を他人ととることができないことを伝えると、職員の方も私が食事の時は一人でいれるようにしてくれた。いつも一人で行動でき、急な予定変更は一切なし。食事も自分のペースで一人でとれるから。それぞれの障害(個性でもあると私は考えますが)を受け入れ、困っている人がいたら助け合いながら業務をこなしている。」
満足度:★★★★★
配慮 :★★★★★
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株式会社日本公文教育研究会
「基本的にはシングルタスクで、次々と仕事を振られるような急かされる状況は基本的に発生しません。また学習教室なので、苦手とするがやがやした騒音も無く、落ち着いて自分のペースで仕事ができます。」
満足度:★★★★★
配慮 :★★★★★
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② 周囲の理解がある


自閉症の人にとって、職場の人々の理解が得られることは大きな助けとなるでしょう。職場での毎日の人間関係は仕事を継続できるかに直接影響します。

自閉症の人は、コミュニケーションが苦手でも任された仕事は人並み以上にきっちり行えることが多いので、自分に合った仕事が割り当てられると実力を発揮できます。理解のある上司や同僚がいる企業がオススメです

アンケートでは、以下のような会社がオススメの企業として挙げられました。

株式会社マミーマート
「障害があってもそのために時給を安くすることはなく、ほかのひとと同じだと言われた。やさしい人もいっぱいいるので、自分がお客様に難しい事を聞かれて困った時、代わってくれたり助けてもらえる。 シフトの相談ものってもらえる。」
満足度:★★★
配慮 :★★★
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第一貨物株式会社
「上下関係はあまり反映されず和気藹藹としたアットホームな職場でした。また、仕事でわからない事や困った事があった場合は、上司に声をかければ教えてくれたり手助けしてくれたりしました。仕事の内容もシンプルで休みも好きな時にとれるので、自分のペースで働きたい人におススメ出来ます。」
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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4. 自閉症の人が働きやすい業界・業種

アンケートから分かるように、自閉症の人は、同僚や上司との人間関係に難しさを感じる人が多いようです。
ということは、その点がクリアできれば、復職・仕事復帰に成功しやすくなるでしょう。

人間関係はその会社に入ってみないと、なかなか知ることができません。
しかし仕事の仕方や傾向として、比較的人間関係で悩むことが少ないとされるオススメの業界をいくつか候補としてあげてみましょう。

①家庭教師など1対1でできる仕事


集団での人間関係は苦手でも、1対1の関係では問題を生じにくいという人が多いようです。家庭教師や小規模な塾などで働いて仕事のやりがいを見いだしている方は多くいます。

②小規模な事業所


チームワークが必要な職場では、ストレスを感じることが多いでしょう。しかし、地元の中小企業や、人間関係が密な職場ではうまくいくことが多いようです。とくに、自閉症に理解のある上司や経営者に恵まれると仕事が長続きします。

どのような会社や業界が向いているのか、参考になりましたか?

では次に、自分に向いている企業をどのように見つければ良いのでしょうか?
そして、転職活動を行うといっても、いったい何から始めれば良いのしょうか?

ここからは転職を考えている方、これから仕事を探す方へのアドバイスをまとめていきたいと思います。

※他に自閉症の方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
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5. 仕事探しはどうやって行えばよいの?

自閉症だと診断されたとしても復職・仕事復帰に成功している方はたくさんいます。
とはいえ、一人で就職・転職活動を行い続けるのは大変です。何から始めればよいのかわからないことも多いですよね。

そんな時は、サポート制度を上手に活用してみるのはいかがでしょうか?
今は、様々な専門的なサポートやシステムがありますので、紹介していきます。

5-1 ハローワークを活用する

ハローワークには障害のある方専門の窓口があるため、相談やアドバイスを受けることができます。求人数や障害のある方への求人情報も多く扱っています。実際に活用した方の声もあります。

「ハローワークの相談員さんの細かな援助を受けました。」

→ハローワークインターネットサービスはこちらへ
参考:厚生労働省職業安定局「ハローワークインターネットサービス」

5-2 人材紹介会社の専門のアドバイザーを活用する

人材紹介会社のサービスを使うこともできます。とくに障害者の転職活動を支援する専門のアドバイザーの助けを活用するのもオススメです。

このようなサービスを活用すると、専門のアドバイザーと一緒に自分にできること・できないことを考え、企業に配慮してほしいことなど自分の要望をまとめていきます
それらを、面接を受ける前にアドバイザーが採用担当者に伝えることで、自分の状況を予め理解した採用者と面接を受けるといったこともできる人材紹介会社もあります。

また、面接の練習や履歴書の書き方など、就職活動を進めるうえでのサポートを受けることもできます。親身に相談に乗ってくれて、時には面接に同行してくれることもありますので、人材紹介会社の特徴を調べてみると良いでしょう。

5-3 就労支援施設を活用する

「世田谷区の自立支援窓口『ぷらっとホーム』に世話になっている。そこの紹介で、昨年2月より就労移行支援施設『マナビト』を利用した。利用するきっかけになったのは、①集団プログラムに参加するか否かは個人の自由(←自分ひとりで何か学習したりしてOK)、②AdobeのイラストレーターやフォトショップのあるPCがある、の2点である。」

「LITALICO(入所時はウイングル)とさら就労塾を利用しました。 LITALICO→障害がわかってから初めて利用した就労移行支援事業所。 レクリエーションの他、ビジネスセミナー受講、応募書類添削、面接の練習や同行をしてもらいました。LITALICO独自の求人より書類選考と面接を受けて、総合病院への入職が決まりました。 」

このように、ハローワークの障害者窓口や専門の人材紹介会社、就労支援施設など、サポートを行っている機関はたくさんあります。それらをおおいに活用しましょう。悩みを相談するだけでも楽になるでしょう。
多くの方の就職・転職活動を成功させてきた専門の支援を使いこなすことをオススメします。

では次に、面接を受けるときのポイントを紹介します。自閉症の方が実際に面接を受けて成功した事例もふくめて、参考になる意見が多く届いています。

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6. 自閉症の人が面接を受ける際のポイント

6-1 面接の準備段階ですべきこと

面接と聞くだけで緊張したり、焦ってしまったりという経験はありませんか?
気持ちを落ち着かせるためには、まず面接の準備に時間をかけるようにしましょう。

面接に備えて行ったことは大きく分けて以下の2点です。
自分についてよく知る
無理なく働ける職場、配慮事項を整理する

では面接前にどんなことを意識し準備をしているのか、アンケートに寄せられた自閉症の方々の具体的な声を紹介します。

①自分についてよく知る


「自分は何が得意か、何で今まで困って来たのか、自分の障害はどのような特徴が有るのか、自分をよく知ることがとても大切だと思います。自分が障害者であることを認めたくない気持ちは、完全に拭い去るのは難しいかも知れません。でも、1日5秒だけでもいい、そんな自分を一旦受け止めることで、吹っ切れて楽になる瞬間も必ずあります。楽になる瞬間を増やしていくことで、企業で働くにせよ、自営業にせよ、何かあった時に状況を客観的に見る余裕が出てきます。それさえできれば、元々尖った能力を持っている自分の生かし方を模索する余裕も生まれます。」

この方のように、自閉症の人は、特定の分野において他の人にはない非常に優れた能力を発揮することがよくあります。そのような得意分野を仕事に活かすことができるよう、自分の特徴をよく理解しておきましょう。得意なこと、不得意なことを細かく書き出して、整理しておくとよさそうです

自分の得意なことを仕事にできると、自分にとっても会社にとってもプラスになることでしょう。

②無理なく働ける職場、配慮事項を整理する


「100%自分の希望に合った給与や条件を満たす企業にはなかなか出会えないのが普通。理想を高く持ちすぎず、無理なく働ける労働時間や仕事内容を探すのが最優先と感じる。何よりも再発させないことが大切である。また、自分の得手不得手、不得手に対しての自分なりの工夫や配慮事項をしっかり整理してから仕事に就くことを勧めます。」

「精神的に参ってしまい、前職を辞めたような場合は、どうしても募集の多い接客業や現場の仕事を選んでしまいがちです。しかし現場の仕事は基本的にマルチタスク且つストレスフルのため、採用され易い点はメリットですが、ある程度の期間継続できるかどうかを視野に入れて、慎重に職場を選択してもよいかも知れません。」

無理をせずに長く働ける仕事環境を選ぶことが重要です。特に自分の希望する配慮事項をまとめておくと、企業側もより自閉症について理解を深めるきっかけになります。

また実際に仕事を行うときの状況が想像しやすくなるでしょう。自分にとって、できるだけストレスなく働き続けられるような仕事環境につながるよう、予め自分の意見をまとめておくとを良いでしょう

6-2 面接の際に気をつけたこと

では、実際の面接の際には何に気をつけるとよいでしょうか?
障害を抱えながら転職活動に成功した方々の声をご紹介します。
(自閉症以外の障害も持つ方のご意見を含みます)

①自閉症であることや自分の特性を伝える


「障害、特に知的・精神障害のある方は、障がい者枠の有無をキチンと調べるのは勿論のこと、どんな配慮がされているかを細かく尋ねたほうが良い。その時点で、①返事に具体性が無い、②対応がおざなりになる等、ちょっとでもひっかかる点があったら、そこの企業は選ばないほうが良いと思う。 また、自分は何が得意でどんなスキルがあるか、それをどのように仕事に活かしたいか等もきちんとアピールしたほうが良い。」

「障害者の雇用を積極的にしている企業を選ぶのが最良ですが、実際の仕事内容の詳細は働いてみないとわかりません。明らかに出来ないような仕事ならば断るべきですが、出来そうであれば会社の担当者に自分の障害の特性を伝えておく必要があります。」

多くの方が面接で自分の障害について伝えることを勧めています。「自閉症である」という事実だけではなく、できること・できないこと、得意なこと・不得意なことを採用担当者にはっきり伝えることが大切です

自閉症の特性に合っていない仕事を割り振られると、ミスや失敗が多くなり、結果的に働きづらい状況に陥ってしまうかもしれません。
面接の段階で、自閉症についてオープンにして、自分の特性についてきちんと伝えることで、自分に合った仕事を担当させてもらえる可能性が高まります

しかし、面接では言わないほうがよいという意見も少数ながらありました。

「職場を探す前に、自分の病気の状態とどのような環境が自分にあった職場か(定期的なフルタイム、イレギュラーなフルタイム、在宅ワーク)をよく考える必要があると思います。また、面接時には最初から自分の病気の事は話さず、しばらく勤めてそれとなく仲の良くなった社員に打ち明ける方がよいと思います。」

自閉症者への偏見・差別の可能性や、なかなか就職が決まらないリスクなどを考慮すると、あえて最初から伝えないほうがよいのでは、という声もありました。

その場合は、面接前に自分のできること、できないことをしっかり理解したうえで就職先を選ぶことが必要です。自分の特性に合った仕事を選ぶことができれば、あえて自閉症であることを伝える必要がないこともあるでしょう。

大切なのは、自分の特性に合う仕事を選ぶことです。雇ってくれそうな会社の面接に手当たり次第行っても、良い結果にはつながらないでしょう。このようにして決まった仕事は、結局長続きしないかもしれません。

自分と企業の特徴をよく理解し、的を絞って面接を受けに行くようにしましょう。それがスムーズな復職・仕事復帰につながるのです。

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7. 入社後に心がけたこと

転職活動が成功して入社が決まったら、その仕事はできるだけ続けていきたいですよね。 そのためには、どんな工夫をすると良いのでしょうか?

工夫を紹介する前に、もう一度、自閉症の人が仕事をするうえで陥りがちな状況について、当事者の皆さんの声を見てみましょう。

7-1 自閉症の人にみられるパターンとは

「人の表情や声のトーンから気持ちや意図を読み取ることができません。また言外のあいまいなことや、暗黙のルールが理解できないため、その場に不適切なことや、上司からの指示と違うことをしてしまい叱責を受けることが多々あります。」

「興味あるものとそうでないものとの差が大きすぎる。その為、自分の好きな(或いは得意な)作業の時は時間が経つのを忘れてしまう程没頭してしまう。が、自分の嫌いなもの・不得手な作業の時は作業そのものに手がつかず、結果周りに凄く迷惑をかけてしまう。今まで経験した仕事でも、自分が好きなもの或いは『やりがいがある!』と感じた仕事に出会った時は、面白い位いくらでも続くのに、そうでない仕事に出会ってしまった時は朝起きた時点で体調が悪くなってしまい結果休みがちになって退職してしまっていた。」

「複数の仕事を同時に依頼されての同時進行になるため、キャパオーバーになると何もできなくなり、客からのクレームや怒りをダイレクトに受けることで更に精神面でダメージを負います。」

自閉症の人には、人間関係の微妙な気づかいができないゆえの苦労がつきまといます。しかし、この特性を理解して工夫することで、復職・仕事復帰に成功している方がいるのも事実です

では、どんな工夫があるでしょうか。具体的なポイントを紹介します。

7-2 確認する

「業務内容や報連相の内容を整理するのに時間がかかるため、まとめる時間を頂いている。 一つずつ具体的な指示を頂いている。」

「分からないことは近くにいる人に聞いて、仕事が終わったらきちんと報告することを忘れない」

「具体的な言葉や文字、映像に直して手順をしっかり把握すればその通りにこなせるので、上司の機嫌を損ねる前に指示内容の詳細をできるだけ聞きだし、メモをして自分だけの手順書を作成しました。」

「周りをよく観察することと、メモを取ることを徹底しています。ずるいかも知れませんが、周りと違うことで目立って叱られるので、周りと同じことをすれば波風を立てず、心の平穏を保ち仕事ができます。」

「各業務内容の優先順位付けと、具体的に何をするかメモをしっかり残すことを徹底しています。」

自閉症の人は、相手の言っていることの真意をつかめないことがあります。また、自分の気持ちを上手に伝えられず、誤解が生じてしまうことも多いようです。そのため、周囲の人から見るとミスや失敗が多く見えてしまう傾向があります

これを防ぐためには、ひたすら「確認」することです。

同僚や上司に自閉症の方の特徴を理解してもらったうえで、お互いに確認し合いながら仕事を進めることは、ミスを防ぐのに役立ちます。特に、メモをとることもオススメです。

7-3 できることを一生懸命やる

「普段言われなければ気が付かないことや、空気の読めない点も多いので、もし自分が人に言われる前に気がついたら率先して動く。 力仕事や、人の嫌がる仕事でも自分では苦にならないものも中にはあるので、率先してやる。それをよく頼まれるようになって得意なことになれば、苦手やどうしても正確にできないことをやることも少なくなったり、頼みやすくなる。」

自閉症の方はとてもまじめな方が多いです。ただ、不器用に見えたり、要領が悪いように思われたりしてしまうだけなのです。
長所・短所だけではなく「働く姿勢」をしっかり見てもらえるようにしましょう。一生懸命努力している人は、必ず同僚や上司に評価されるようになります

時にミスや失敗をしても「あれだけ一生懸命やっているやつはいないよ」とフォローしてくれる人が出てくるかもしれません。
できないことは恥ずかしがらずに助けを求め、できることは出し惜しみせずやりましょう。お互いに理解し合えると、職場での人間関係はよくなっていきます

※他に自閉症の方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
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8. 最後に

「なかなかコミュニケーションがとれない」「人間関係がうまくいかない」と悩み続けて・・・実は「自閉症」だったと診断された方もいるでしょう。
診断名を聞いたときには仕事をどうするべきか悩んだ方もいるでしょう。復職・仕事復帰は無理だと感じた方もいるでしょう。

しかし、ご紹介したアンケートからわかるように、自分に合った仕事を見つけて就職・転職に成功している方が大勢います。

まずは、自分のことを良く理解しましょう。そしてできないことは無理しない、できることは一生懸命にやりましょう。まじめな働き手を探している企業はたくさんあります。

あきらめることなく、自分らしい働き方を実現させていきましょう。

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