自閉症のある方が転職を成功させるためのポイント

自閉症のある方が転職を成功させるためのポイント

自閉症のある方は、特性により仕事で悩むこともあるでしょう。

例えば、
「人間関係の複雑な職場で本当にやっていけるだろうか?」
「仕事を続けることができるだろうか」
「ミスをして怒られるのではないか」
といった悩みはありませんか?

このような悩みから、復職や転職活動への一歩を踏み出せずにいる方は、同じ境遇の方の体験談を参考にしてみましょう。
自閉症のある方による口コミには、いきいきと仕事をしている方の声がたくさん届いています。

このコラムでは、向いている仕事の探し方や、ミスを減らすための工夫、人間関係に悩まないコツなどを紹介していきます。
発達障害の専門家 松好伸一先生(石巻専修大学人間学部人間教育学科 特命教授)にもアドバイスをいただきました。

復職や転職活動の参考にご覧ください。

※注:「自閉症」「アスペルガー症候群」は、現在「自閉症スペクトラム」いう診断名に統合されています。「自閉症」は実際の診断名としては用いられなくなりつつありますが、日常生活や行政の場などでは現在も広く使用されているため、この記事では「自閉症」という名称を用いています。

*この記事は松好伸一先生に監修していただきました
松好伸一先生

仙台白百合女子大学 人間学部 人間発達学科 講師。保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。日本発達支援学会(監事)。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数。


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目次

1. 自閉症とは

2. 自閉症の特性と仕事での悩み

3. 自閉症のある方にとって「働きにくい職場」と「働きやすい職場」

4. 自閉症のある人が働きやすい業界・職種

5. 仕事の探し方

6. 面接を受けるときのポイント

7. 入社後に心がけたこと

8. 専門家からのアドバイス

9. まとめ

1. 自閉症とは

自閉症とは
    「自閉症は
    1. 対人関係の障害
    2. コミュニケーションの障害
    3. パターン化した興味や活動
    の3つの特徴をもつ障害で、生後まもなくから明らかになります。最近では症状が軽い人たちまで含めて、自閉症スペクトラム障害という呼び方もされています。

    自閉症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられています。」
参考:厚生労働省e-ヘルスネット

自閉症のある方の中には、知的障害やADHD、LDやてんかんなどの合併症がある方もいます。約3割の方は知能に遅れがない高機能自閉症と呼ばれ、学業成績は良いが、コミュニケーションは苦手というケースもみられます。

まず、自閉症のある方は仕事にどのような悩みを抱えているのでしょうか?口コミに届いた、リアルの声を交えながらみていきましょう。

2. 自閉症の特性と仕事での悩み

自閉症のある方が仕事で悩むことは何でしょうか? 当事者にしかわからない辛さや共通の悩みをみていきましょう。あなたにも思い当たる場面がありませんか?

2-1.伝えたいことが正確に伝わらない

「思ったことがうまく周りの人に伝えられなくて、誤解されたり悲しい思いをしたり、嫌われているのではないかと悩むことが多い。」

「クレームがあった際に言葉でうまく伝えるのが苦手なため、上司に伝わらないことがありました。顧客からのクレーム以前に、うまく伝えられない私自身に上司のいらだちが募り、理詰めのような追加質問が繰り替えされ、顧客対応どころでなく個人攻撃のようになってしまいました。更に上の部署へ報告しても『お前が悪い』『甘えるな』と取り合ってもらえず、どんどん孤立していくばかり。誰にも相談できず、八方塞がりになって退職せざるを得なくなりました。」

自閉症の方は、自分の意思を正確に伝えることが難しいことがあります。
真意が相手に伝わらないために、コミュニケーションに問題が生じて、職場の人間関係が悪くなることもあります。

自分の意志をうまく伝えられないことが、自閉症の特性によるものであることを同僚や上司に理解してもらえないことで、辛い思いをすることや退職に追いやられることは悲しいことです。

2-2.指示を正確に理解できない

「いわゆる『察する』ということができません。暗黙の了解、言葉にならない曖昧なルール、意図が汲み取れず、明確に言葉にされたこと以外への対応が難しいです。」

「言われたことをそのまま受け取ってしまい、指示を出した方の明確な意図を読むことができません。あとになって、指示と違うことをしたことを責められ、このような意図があったのにわからないのかと叱責を受けることが日常です。」

「人の表情や声のトーンから気持ちを読み取ることが困難で、自分では気づかない内に相手を怒らせてしまうことや、その場の空気が読めないことで集団から孤立してしまいます。」

相手の真意を理解するのが難しいというのも、自閉症の特徴のひとつです。察することが難しく、また曖昧な指示を受けた場合は、額面通りに受け取るため程度ややり方を理解することができません。この特性により誤解が生じ、相手をいらだたせてしまうこともあります。

自閉症の特性によることを知らない方は、なぜそのような態度をとるのか、なぜわからないのかと厳しい対応をしがちです。自閉症のある方はまじめな方が多く、周囲の対応に辛い思いをすることもあります。

2-3.要領が悪いように見られる

「フリーズし、吃音、失声となり何もできなくなります。」

「一定の作業を一定時間内にひたすらこなしています。例えば盛り付けが綺麗にできない、スピードが追いつかずラインを止めてしまうと、後ろのベテラン層の方からの罵声が飛んできます。要領をつかまないとひたすら罵声の標的になります。」

自閉症のある方は、一つひとつの作業を正確に行うことが得意です。これは、こだわりが強いことでの現れでもありますが、周囲のペースを考えることなく、目の前の仕事に集中しこだわりを持って取り組んでしまうこともあり、独りよがりにみられてしまいます。 一方、複数の作業を同時に進めること(マルチタスク)は、苦手な人が多い傾向にあります。

また、自分のペースで進められれば簡単に成功することも、同僚や上司にせかされたり怒られたりすることで、失敗やミスを多発してしまうこともあります。その結果「仕事のできない人」と見られることがあります。

このように、自閉症のある方の多くが、自閉症の特性により職場の人間関係がうまくいかなかったり、辛い思いをしたりしています。
今、この記事を読んでいる方も、同じような経験をしたことありませんか?

しかし、自閉症を抱えながらも、復職や転職活動に成功している方はたくさんいます。自閉症の特性に向いている仕事を見つけ、サポートのある環境であれば、仕事を続けられるでしょう。

では、自閉症と付き合いながら復職や転職に成功した方の声をもとに、その秘訣をみていきましょう。

※他に自閉症のある方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
→自閉症のある方の体験談はこちらへ

3. 自閉症のある方にとって「働きにくい職場」と「働きやすい職場」

職場環境への満足度と周囲の配慮の関係

3-1.自閉症のある方にとって「働きにくい」職場の特徴

自閉症のある方が「働きにくい」と感じた職場に関する口コミをみてみましょう。大きくわけて以下の2つの特徴が挙げられました。

  • 福利厚生が充実していない
  • 同僚の理解が得られない
では、それぞれ詳しくみていきましょう。

①福利厚生が充実していない

「うつ病で休職したとき、復帰するタイミングを相談する相手がいなかった。休職していると金銭面で大きな不安があるが、その間有給休暇が使えるのかどうかも分からず、連絡も無いので不安な毎日を過ごした。」

福利厚生や制度が整っていることは重要です。特に、産業医やカウンセラーによる専門的なアドバイスやサポートは、自閉症のある方にとって大きな支えになります

職場の人間関係に悩んだときや職場に行くのが辛いとき、仕事を辞めたくなったときなどに、相談できる環境が整っていれば、乗り越えられるかもしれません。

②同僚の理解が得られない

「時短勤務にしてくれたことは助かりましたが、『なぜお前は時短なんだ、事業所としての作業効率が上がらないから早く来い』『時短なんだから人より頑張って数字出さないと生き残れない、もっと頑張れ』と平気で言うような人が多く、非常に肩身の狭い思いをしました。」

「常に人員不足の現場では障害のことを配慮するどころか、打ち明けられる環境でもないため、何を言われても受け流すか耐えられる鈍感さが必要でした。店長や社員はフォローする余裕もないので、悩みを抱えがちになりました。」

「スキルアップが望めない。昇給ボーナスがない。ずっと新人のままになりそう。障害者がたった一人で疎外感を感じ、生意気だと思われないよう気を遣うので精一杯。完全アウェイ状態。安心して失敗して、スキルアップする機会がない。」

自閉症の特性は、「障害」と認知されないことも多くさまざまな誤解が生じがちです。自閉症のことをよく知らない人からは「人の話を聞かない」「失敗やミスばかりしている」などと、みなされてしまうことがあります。

まずは、職場の方々に自閉症の特性を理解してもらいましょう。

3-2.自閉症のある方にとって「働きやすい」職場の特徴

自閉症のある方が「働きやすい」と感じた職場に関する口コミをみてみましょう。大きくわけて以下の2つの特徴が挙げられました。

  • 自分のペースで働ける
  • 周囲の理解がある
特に「周囲の理解がある」ことは、職場の満足度と周囲のサポートの関係性を表したグラフからも、重要であることがわかります。

  • 周囲の理解がある→周囲の配慮(サポート)がある→職場への満足度は高い
  • 周囲の理解がない→周囲の配慮(サポート)がない→職場への満足度は低い
具体的なコメントを交えながら、自閉症のある方がおすすめする企業も見ていきましょう。

①自分のペースで働ける

「勤務日の融通が利くので、連勤のような負荷がかかることがなく、自分のペースで働けます。」

「①自分ひとりで静かにこつこつできるもの、②文字や数字ばかりに偏らず図解やイラストのスキルが活かせるもの、③常に座ってできるものが向いている。」

「集団の中で一人ひとりの表情やその場の空気読みに失敗すると、どうしても孤立してしまい居づらくなることがあります。適応していければ問題ありませんが、もし難しい場合は思い切って少人数でまわす仕事を選ぶと良いです。自分の得手不得手を把握し、負担の少ない職場を選ぶことができれば、安定して勤務できスキルを身に付けることができます。」

自閉症の方は、チームワークが苦手という特徴があります。
高いコミュニケーション能力が求められる仕事は、向いていないと感じる人が多いでしょう。

そのような方は、人間関係に気を遣う必要がない仕事であれば、コミュニケーションによるストレスを軽減できます。また、一つの作業に集中できるような業務も向いています。

以下は、口コミで働きやすさを評価された企業です。その様子をご覧ください。

株式会社東京アカデミー
「食事を他人ととることができないことを伝えると、職員も私が食事のときは一人でいられるようにしてくれた。いつも一人で行動でき、急な予定変更は一切なし。それぞれの障害(個性でもあると私は考えますが)を受け入れ、困っている人がいたら助け合いながら業務をこなしている。」
満足度:★★★★★
配慮 :★★★★★
→この企業に関する口コミはこちらへ

株式会社日本公文教育研究会
「基本的にはシングルタスクで、次々と仕事を振られたり急かされたりする状況は発生しません。また学習教室なので、苦手な騒音もなく落ち着いて自分のペースで仕事ができます。」
満足度:★★★★★
配慮 :★★★★★
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② 周囲の理解がある

自閉症のある方にとって、職場の方々の理解が得られることは大きな助けとなります。また人間関係は、仕事を継続できるかどうかに大きく影響します。

自閉症のある方は、コミュニケーションが苦手でも任された仕事はきっちりと遂行することができるので、自分の特性に合った仕事が割り当てられると実力を発揮できます。

以下は、口コミで働きやすさを評価された企業です。その様子をご覧ください。

株式会社マミーマート
「障害があっても時給を安くすることはなく、他の人と同じだと言われた。やさしい人もいっぱいいるので、自分がお客様に難しいことを聞かれて困ったとき、代わって助けてもらえる。 シフトの相談にものってもらえる。」
満足度:★★★
配慮 :★★★
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第一貨物株式会社
「上下関係はあまりなく、和気あいあいとしたアットホームな職場でした。また、仕事でわからないことや困ったことがあった場合は、上司に声をかければ教えてくれたり手助けしてくれたりしました。仕事の内容もシンプルで休みも好きなときにとれるので、自分のペースで働きたい人におすすめです。」
満足度:★★★★
配慮 :★★★★
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4. 自閉症のある人が働きやすい業界・職種

口コミから分かるように、自閉症のある方は、同僚や上司との人間関係に悩むこともありますが、解消できれば仕事復帰がしやすくなります。

人間関係は、職場で働いてみないと実態を知ることは難しいものですが、比較的人間関係の悩みが少ないとされる業界もあります。口コミをもとに、おすすめの業界をいくつか挙げてみましょう。

①家庭教師など1対1でできる仕事

集団での人間関係は苦手でも、1対1の関係では問題を生じにくいという方もいます。そのような方は、家庭教師や小規模な塾の仕事にやりがいを感じるようです。

②小規模な事業所

チームワークが求められる職場は、コミュニケーションが苦手な自閉症の方にとってストレスを感じやすくなります。しかし、地元の中小企業や、限られた人数で働く小規模な職場では、働きやすくなることもあります。特に、自閉症に理解のある上司や経営者に恵まれると仕事が長続きします。



次は、自分に向いている企業の探し方や、転職活動の始め方を確認していきましょう

▼自閉症のある方が働いている企業が一覧で確認できます。
満足度の高い企業をチェックしてみましょう。
詳しくはこちら

5. 仕事の探し方

自閉症のある方で、復職に成功している方はたくさんいます。
しかし、一人で就職・転職活動を続ける場合、何から始めればよいのかわからないことも多いことでしょう。

そんな時は、求職サービスを活用してみてはいかがでしょうか?
現在は、さまざまな専門的なサポートやシステムがありますので紹介していきます。

5-1.ハローワークを活用する

ハローワークには、障害者専門の窓口があり、担当者への相談や仕事探しに関するアドバイスを受けることができます。障害者雇用に関する求人情報も多く扱っています。実際に活用した方の声もあります。

「ハローワークの相談員さんの細かな援助を受けました。」

参考:厚生労働省職業安定局「ハローワークインターネットサービス」

5-2.障害者専用の人材紹介会社(エージェント)を活用する

人材紹介会社(エージェント)のサービスもあります。特に、障害者の転職活動を支援する人材紹介会社では、専門のアドバイザーによる手厚いサポートが受けられます。

面接の練習や履歴書の書き方など、就職活動を進める上で必要なアドバイスや、企業との事前調整や面接への同行をする人材紹介会社もあります。

それぞれの人材紹介会社の特徴を調べてみると良いでしょう。

5-3.就労支援施設を活用する

「世田谷区の自立支援窓口『ぷらっとホーム』に世話になっている。そこの紹介で、昨年2月より就労移行支援施設『マナビト』を利用した。利用するきっかけになったのは、①集団プログラムに参加するか否かは個人の自由(←自分ひとりで何か学習したりしてOK)、②AdobeのイラストレーターやフォトショップのあるPCがあるの2点でした。」

「LITALICO(入所時はウイングル)とさら就労塾を利用しました。 LITALICO→障害がわかってから初めて利用した就労移行支援事業所。レクリエーションの他、ビジネスセミナー受講、応募書類添削、面接の練習や同行をしてもらいました。LITALICO独自の求人から書類選考と面接を受けて、総合病院への入職が決まりました。 」

このように、ハローワークの障害者窓口や専門の人材紹介会社、就労支援施設など、障害のある方への専門のサポートを行っている機関はたくさんあります。これらを有効に活用しましょう。悩みを相談するだけでも楽になるでしょう。

では次に、面接を受けるときのポイントを紹介します。自閉症のある方の成功事例も含めて、参考になる意見が多く届いています。

※他に自閉症のある方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
→自閉症のある方の体験談はこちらへ

6. 面接を受けるときのポイント

6-1.面接前に準備すること

面接と聞くだけで緊張したり、焦ったりするという経験はありませんか?
気持ちを落ち着かせるためには、丁寧に面接の準備をしましょう。

面接の準備は、以下2点です。
  • 自己分析
  • 希望する配慮事項の整理
どのようなことを意識し、準備を行ったのでしょうか?口コミを参考にみていきましょう。

①自己分析をしっかり行う

「自分は何が得意か、今までどんなことに困ってきたのか、自分の障害はどのような特徴があるのか、自分をよく知ることがとても大切だと思います。
自分が障害者であることを認めたくない気持ちは、完全に拭い去るのは難しいかも知れません。でも、1日5秒だけでもいい、そんな自分を一旦受け止めることで、吹っ切れて楽になる瞬間も必ずあります。楽になる瞬間を増やしていくことで、企業で働くにせよ、自営業にせよ、何かあったときに状況を客観的に見る余裕が出てきます。それさえできれば、元々尖った能力を持っている自分の生かし方を模索する余裕も生まれます。」

自閉症のある方は、特定の分野では他の人にはない非常に優れた能力を発揮するということがよくあります。得意分野を仕事に活かせるよう、自分の特徴をよく理解しておきましょう。得意なこと、不得意なことを細かく書き出して、整理しておくことをおすすめします。

自分の得意なことを仕事に活かせると、自分にとっても会社にとってもプラスになることでしょう。

②希望する配慮事項を整理しておく

「100%自分の希望に合った給与や条件を満たす企業にはなかなか出会えないのが普通。理想を高く持ちすぎず、無理なく働ける労働時間や仕事内容を探すのが最優先と感じる。また、自分の得手不得手、不得手に対しての自分なりの工夫や配慮事項をしっかり整理してから仕事に就くことをすすめます。」

「募集の多い接客業や現場の仕事を選んでしまいがちです。採用されやすい点はメリットですが、現場の仕事は基本的にマルチタスク且つストレスフル。継続できるかどうかを視野に入れて、慎重に職場を選択してもよいかも知れません。」

無理をせずに長く働ける仕事環境を選ぶことが重要です。自閉症の特性による不得意なことは、さけることやサポートを得ることで、働きやすさに変わります。特に自分の希望する配慮事項を事前にまとめておくと、企業側もより自閉症について理解を深めるきっかけになります。

例えば、あいまいな指示を理解できない方は、仕事の範囲や納期を具体的な数字や絵を使って指示していただけると、理解することができます。といった具合に、より詳しく伝えることを心がけましょう。

できるだけストレスなく働き続けられるような仕事環境になるように、あらかじめ自分の考えはまとめておきましょう。

6-2.面接で気をつけたこと

面接本番では、どんなことに気をつけるとよいでしょうか?
障害を抱えながら転職活動に成功した方の声をご紹介します。
(自閉症以外の障害がある方の意見も含みます)

①自閉症であることや自分の特性を伝える

「障害、特に知的・精神障害のある方は、障害者枠の有無をきちんと調べるのは勿論のこと、どんな配慮がされているかを細かく尋ねたほうがよい。その時点で、①返事に具体性がない、②対応がおざなりになる等、ちょっとでもひっかかる点があったら、そこの企業は選ばないほうがよいと思う。また、自分は何が得意で、どんなスキルがあるか、それをどのように仕事に活かしたいかもきちんとアピールしたほうがよい。」

「障害者の雇用を積極的にしている企業を選ぶのが最良ですが、実際の仕事内容の詳細は働いてみないとわかりません。明らかにできないような仕事ならば断るべきですが、できそうであれば会社の担当者に自分の障害の特性を伝えておく必要があります。」

多くの方が、面接で自分の障害について伝えることをすすめています。「自閉症である」という事実だけではなく、できること・できないこと、得意なこと・不得意なこと、必要な配慮事項を採用担当者にはっきり伝えましょう。

自閉症の特性に向いていない仕事を割り振られると、ミスや失敗が多くなり、結果的に働きづらい状況に陥ることもあり得ます。
面接の段階で、自閉症の特性を正確に伝えることで、自分に合った仕事を割り振ってもらえる可能性が高まります。

しかし、面接では言わないほうがよいという意見も少数ながらありました。

「職場を探す前に、自分の病気の状態とどのような環境が自分に合った職場か(定期的なフルタイム、イレギュラーなフルタイム、在宅ワーク)をよく考える必要があると思います。また、面接時には最初から自分の病気のことは話さず、しばらく勤めてそれとなく仲の良くなった社員に打ち明ける方がよいと思います。」

自閉症のある方への偏見や差別の可能性や、なかなか就職が決まらないリスクなどを考慮すると、あえて最初から伝えないほうがよいのでは、という声もありました。

その場合も、面接前に自分のできることとできないことをしっかり把握した上で就職先を選ぶ必要があります。自分の特性に向いている仕事と環境を選ぶことができれば、あえて自閉症であることを伝える必要がない場合も出てくるでしょう。

大切なのは、自分の特性に合う仕事を選ぶことです。
自分と企業の特徴をよく理解し、的を絞って面接を受けるようにしましょう。

▼他に自閉症のある方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
→自閉症のある方の体験談はこちらへ

7. 入社後に心がけたこと

入社が決まった方は、その仕事をできるだけ続けていきたいと思うはずです。
仕事を長く続けるためには、自分なりの工夫も必要です

工夫を紹介する前に、自閉症のある方が仕事で陥りがちな状況について、コメントをみてみましょう。

7-1.自閉症のある方によくある状況

「人の表情や声のトーンから気持ちや意図を読み取ることができません。また言外のあいまいなことや、暗黙のルールが理解できないため、その場に不適切なことや、上司からの指示と違うことをしてしまい、叱責を受けることが多々あります。」

「興味あるものとそうでないものとの差が大きすぎる。そのため、自分の好きな(あるいは得意な)作業のときは時間が経つのを忘れてしまうほど没頭してしまう。が、自分の嫌いなもの・不得手な作業のときは作業そのものに手がつかず、結果的に周りにとても迷惑をかけてしまう。今まで経験した仕事でも、自分が好きなものあるいは『やりがいがある!』と感じた仕事に出会ったときは、面白いぐらいいくらでも続くのに、そうでない仕事に出会ってしまったときは朝起きた時点で体調が悪くなってしまい、結果的に休みがちになって退職してしまっていた。」

「複数の仕事を同時に依頼されての同時進行になるため、キャパオーバーになると何もできなくなり、客からのクレームや怒りをダイレクトに受けることで、さらに精神面でダメージを負います。」

自閉症のある方には、人間関係の微妙な気遣いができないゆえの苦労がつきまといます。しかし、この特性を理解して工夫することで、仕事復帰に成功している方がいるのも事実です。

では、どんな工夫があるでしょうか。具体的なポイントを紹介します。

7-2.確認することを忘れない

「業務内容や報連相(報告・連絡・相談)の内容を整理するのに時間がかかるため、まとめる時間をいただいている。一つずつ具体的な指示をいただいている。」

「分からないことは近くにいる人に聞いて、仕事が終わったらきちんと報告することを忘れない。」

「具体的な言葉や文字、映像に直して手順をしっかり把握すればその通りにこなせるので、上司の機嫌を損ねる前に指示内容の詳細をできるだけ聞き出し、メモをして自分だけの手順書を作成しました。」

「周りをよく観察することと、メモを取ることを徹底しています。ずるいかも知れませんが、周りと違うことで目立って叱られるので、周りと同じことをすれば波風を立てず、心の平穏を保ちながら仕事ができます。」

「各業務内容の優先順位付けと、具体的に何をするかメモをしっかり残すことを徹底しています。」

自閉症のある方は、優先順をつけられないことや、やり方を忘れてしまうことがあります。そのためミスや失敗をし、周囲から注意されることもあります。

ミスや失敗を防ぐためには、とにかく「確認」しましょう

ただし、1人で確認するだけでなく、同僚や上司の協力を得て一緒に確認し合いながら仕事を進めることも必要です。また、何度も同じことを繰り返さないためにも、覚えるべきことはメモをとりましょう

7-3.できることを一生懸命やる

「普段言われなければ気が付かないことや、空気の読めない点も多いので、もし自分が人に言われる前に気がついたら率先して動く。力仕事や、人の嫌がる仕事でも自分では苦にならないものもあるので、率先してやる。それをよく頼まれるようになって得意なことになれば、苦手やどうしても正確にできないことをやることも少なくなり、頼みやすくなる。」

自閉症のある方はとてもまじめな方が多いです。ただ、不器用に見えたり、要領が悪いように思われたりしてしまうだけなのです。
職場では、長所や短所だけではなく、「働く姿勢」をしっかり見てもらいましょう。一生懸命に努力している人は、同僚や上司に評価されるようになります。

ミスや失敗をしても「あれだけ一生懸命やっているやつはいないよ」と支えてくれる人が出てくるものです。
できないことは恥ずかしがらずに助けを求め、できることは出し惜しみせずやりましょう。お互いに理解し合えると、職場での人間関係はよくなっていきます。

▼他に自閉症のある方の仕事に関する体験談がたくさん届いています。
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8. 専門家からのアドバイス

仕事探しを考えている自閉症のある方へ、発達障害の専門家 松好伸一先生からのアドバイスを紹介します。

働くことを迷っている自閉症のある方へのアドバイスとは?

働く場合、「誰と働くのか」が気になることの一つです。「チーム」で業務にあたることが障害特性として難しいため、個人で進められる業務や少人数の職場はストレスが少なく良いでしょう。

人数が多くなると人間関係が複雑になり、自分を理解してくれる人ばかりではなくなる可能性もあります。
職場にサポートや理解がどの程度あるのかは、一見してわかる「人数や業務形態(チームか個人か)」などをまず確認してみましょう。

これから働く自閉症のある方へのアドバイスとは?

自閉症の特徴の一つに自己理解・障害自認が進みにくいというものがあります。
周りから指摘を受けても「自分のことをわかってくれていない」と感じてしまい、受け入れられないことです。

「周りが理解していない」から「誤解される」のであれば、「なぜ誤解されるのか」「なぜ理解されないのか」の視点で自分自身を振り返ることも必要です。
人は、コミュニケーションを通して相互理解を進めていくものです。自分のことを話しながら相手のことも聞くという「コミュニケーション」を積極的に図ることも「誤解」を減らす方法の一つになります。

9. まとめ

「コミュニケーションがうまくとれない」「人間関係がうまくいかない」と悩み続けて、実は「自閉症」だったと診断された方もいるでしょう。
診断を受けたとき、仕事との向き合い方に悩んだ方もいるでしょう。

しかし、紹介した口コミからもわかるように、向いている仕事と出会い、就職・転職に成功している事例が多くあります。

まずは、自分のことをよく理解しましょう。そして、できないことは無理をせず、できることは一生懸命にやりましょう。まじめな働き手を探している企業はたくさんあります。

あきらめることなく、自分らしい働き方を実現させましょう。


自閉症のある方が働いている企業が一覧で確認できます。
▼自閉症のある方がお仕事、雇用をされている企業一覧

障害者枠(オープン就労)や一般枠(クローズ就労)についてはこちらでもご紹介しています。
▼障害者枠(オープン就労)か一般枠(クローズ就労)か?良かった点と悩みを解説

障害者枠(オープン就労)の求人の探し方はこちらでご紹介しています。
▼ハローワークだけじゃない、障害者雇用枠の求人はここでも!求人サービスを紹介


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監修者

保育士や幼稚園教諭、障害児支援に長年従事。またサービス管理責任者として障害者支援の経験を持つ。発達障害や保育に関する教科書など著書も多数で、2022年3月29日「幼児教育方法論」(共著・一藝社)を刊行。

保有資格

著者

障害、病気のある方の企業や仕事に関する口コミサイト「アンブレ」を運営中。 丁寧な取材や口コミの分析を通して、病気や障害の特性に配慮した働き方や仕事との向き合い方を提案。理想の職場に出会うための、そしてより働きやすくなるための情報を発信しております。障害や病気があってもぴったりの仕事を。

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